膝が痛くなったり腕が疲れたりするのはなぜ? 体の専門家に聞く、ロードバイクのお悩み解決講座
初心者はもちろんベテランの方も、長距離ライドやヒルクライムなどで膝や腰、腕などが痛くなることがありませんか?今回は動画クリエイターの今田イマオさんと丸井なみこさんが、理学療法士の知識を活かしたバイクフィッティングを行っているACTIVIKEのにっしーこと西谷さんに、痛みの原因や対処法について教えていただきます。
目次
理学療法士ってなに?
理学療法士とはざっくり言うと体の専門家。身体の動きに詳しい、本来は病院などでリハビリ等をする仕事です。にっしーさんは、その資格を活かしてバイクフィッティングを提供しています。
自転車を始めてよく聞くのが体の一部が痛くなる悩み。膝や腰はもちろん、首が痛くなったり腕が疲れたりすることもありますよね。
そんなとき「身体ではなく車体に問題があるんじゃないか」と思ってしまいがち。サドルなどのパーツをたくさん買って、結局正解がわからなくなる人も多いようです。
自転車に乗ると身体が痛くなるのは、フィッティングや体の仕組みが大きく関係しています。今回はにっしーさんに、初心者からベテランまでよくある身体の悩みについて、ポジションと筋肉や関節の動きの両面から、解説してもらいました。
質問1 膝の痛みについて教えてください
サドルそのものよりポジションの影響が大きい
サイクリストは膝の痛みに悩まれる方が多いと思います。実は膝の痛みはサドルそのものと言うよりも、高さや前後位置といったポジションの影響の方が大きいです。
初心者の方はサドルが高い人が多い
ロードバイクと言えば前傾姿勢と言うイメージがありますよね。特に初心者の方はサドルを上げたほうがかっこいいので、高すぎる方もかなり多いです。しかし、サドルが高すぎると踏み込んだときに膝が伸び切ってしまうので、痛める原因になります。
低すぎると膝に負担がかかる
逆に低すぎる場合には、膝が曲がった状態で回ることになり、ずっと窮屈な状態になってしまいます。つまり、膝以外の筋肉を使いにくい状態です。
ペダルを回す時は、股関節と膝と足首の3カ所を使っています。低すぎると膝以外が使えていない分、膝に全部負担がかかってしまうのです。
身体の使い方が合っていないと膝を痛めやすい
自転車をこぐときの力の入れ方も重要なポイントです。時計でいうと3時とか、遅いところから力を入れ始める方が多いですが、同じ力を使うなら上の股関節の筋肉を使って力を入れ始めるのが望ましいです。
- 大きい筋肉から使っていく
- 1ヵ所よりも数ヵ所使う
ことを心がけましょう。
ビンディングシューズを使っている人は?
ビンディングを使ってクリートで固定した場合、痛みの原因になりうるのでしょうか。
この点についてはサドルの前後位置とも関係しますが、例えばサドルが前に出過ぎたときクリートが前にありすぎると足首が後ろになってしまうので、踏むポイントのときに膝の曲がる角度が深くなってしまいます。足首の角度が膝の角度にも影響するので、痛みの原因になることも考えられます。ただし、ポジション的にはサドルの方が重要です。
身体が硬い人の対処法
人によっては身体の硬い人もいますよね?人にもよりますが、足首が硬いと膝で補おうとすることが多いようです。また、股関節など膝以外の関節が硬いとそれを補うように膝に負担がかかります。
膝に負担がかからないようにするには、普段からストレッチや準備運動はしておいたほうがいいですし、特に走る前の準備運動は絶対にやるべきです。
無理は禁物
「シートポストの高さは上げがちだと思う。かっこいいから」とイマオさん。確かにシートポストの高さを上げる人は多いですが、それを乗りこなすには体幹がしっかりしていないと厳しいことを理解しておきましょう。
質問2 首の痛みについて教えてください
サドルとハンドルの位置関係が原因
首の痛みはサドルとハンドルの位置関係が合っていないことが原因です。
ハンドルとサドルの位置の落差がきつすぎて、かつ体で支えられていないと首の筋肉で対処してしまうため首の痛みに繋がります。
ハンドルが遠すぎて肩の筋肉で手を届かせている場合も同じです。
初心者に多い首の痛み
シティサイクルとスポーツバイクではポジションが異なります。アップライトなシティサイクルに対し、スポーツバイクと言えば前傾のイメージですよね。スポーツバイクに初めて乗る人はスタイルの先入観から手を伸ばしがちですが、腕と肩だけでハンドルに届かせようとすると首を痛めてしまいます。胴の下側で前傾姿勢を作ることを意識することが大切です。
ママチャリ等で慣れていると体幹で身体を支えることはあまりありません。体幹を使えない以上、手を伸ばすしか無くなってしまいます。最初はハンドルを高めに設定し、身体を前に倒さなくて良い楽なポジションから始めましょう。乗っているうちに上体を支える筋力がついてくるので、慣れてきたら乗りやすい位置までハンドルを下げます。無理して乗っていたら、逆に危なくなってしまいます。筋肉と相談して合わせていくことが大事です。
体幹のトレーニングも大事
体幹ができていないと安全なコントロールは難しいです。体幹トレーニングは競技をするしないに関わらず、安全のために体作りの一環としてやっておくことをおすすめします。
首が痛いときの対処法
首を痛めないためには、まずサドルとハンドルの位置関係を見直しましょう。
- ハンドルを上げる
- サドルが後ろに遠くても良くない
- 腕が伸びきってはいけない
- 胸が潰れないようにする
質問3 腕の痛みについて教えてください
ハンドルの位置が重要
長時間走行しているときの腕の痛みは、腕を伸ばし切って体重をハンドルに乗せてしまうことが原因です。ハンドルに体重が乗り過ぎてしまって、手が痛くなるわけです。サドルに乗り過ぎてしまうのも痛みの原因のひとつ。ハンドルに体重が乗りすぎていると操作にも影響が出ます。安全面でもポジショニングは重要です。
初心者は体幹がうまく使えず、手で体を支えるしかないことも多いでしょう。上体で支えられる範囲のポジショニングが大事です。ハンドルを近づける、上げるなどして肘を軽く曲げられる余裕がある程度に調節しましょう。
逆に上体を使える人が休ませるために、腕を伸ばす乗り方もあります。初心者の場合は、まず胸で支えられるようにしないといけないので、肘で軽く支えて負担を軽減するポジショニングがおすすめです。
腕が痛いときの対処法
- 速くなりたいのであれば体幹を鍛えて深い前傾姿勢を安定させる
- 慣れてくると近すぎて肩が凝るのでその都度高さを下げる
無理な前傾姿勢を取ったり家でトレーニングをしたりしなくても、正しい姿勢で乗っていれば上体の筋力はついてきます。乗りながら意識することが大事です。
質問4 腰の痛みについて教えてください
普段乗っていて痛くなる場合
腰の上の方が痛くなるのは、背骨を腹筋と背筋でバランスよく支えられていないことが原因です。この場合は、腹筋の強化が対策のひとつ。腰が曲がらないようにポジショニングで落差を押さえるのも有効です。
お尻の方が痛い方は背筋が弱いことが原因なので、背筋を鍛える必要があります。
身体の使い方もひとつの原因
腰の痛みについては身体に原因がある場合が多いです。例えば、
- ペダルを回すときに腰の動きが大きくなってしまう
- 腰そのもの、腰の筋肉ばかりを使ってしまってしまう
という方は少なくありません。ダンシングにしてもヒルクライムにしても、腰だけでなくお尻や太ももなど大きい筋肉を使うことを意識してみましょう。
ダンシングしたとき腰が痛くなるという場合は、ダンシングの際に背中が伸びきってしまっていませんか?そうすると重心が前に行ってしまい、太ももの前に来るしかなくなります。そんなときはお尻をちょっとだけ引いてあげましょう。お尻を引くとおしりから太ももの裏の筋肉を使いやすくなります。
プロ選手を見てもお尻は後ろに残っている方が多いですよね。その状態を支えられる筋肉が大事だということです。
腰が反りきってしまったり、背中が反り返ってしまうのもよくありません。いろんな要素がありますが、筋力のバランスを整える事と楽なポジショニングを探る事が重要です。
質問5 脚がつる原因を教えてください
つる場所の筋肉を酷使することが原因
脚がつるのはつっている箇所を使いすぎているから。ペダリング中につま先を下に向ける動きが多くなるとつりやすくなります。ふくらはぎの場合は、サドルが高すぎるのとクリートが前すぎる事が原因です。
足や足首の硬さも原因のひとつ。同じ角度だと同じ負担しかかかりませんよね。足や足首が硬いと、足の指がつりやすくなります。
対処法
- 脚の付け根から下肢点までの距離を抑えるためにサドルを下げる
- クリートを後ろにするなどが有効
夏場は特に水分補給も大事
水分やミネラルの不足も、脚がつる原因となります。ヒルクライム中は余裕がないと思いますが、十分な水分補給を心がけることが大事です。
最初が肝心
これからロードバイクを始めようとする方は、アイテムを買う前にポジションを見てもらうことも大事です。最初間違えてしまうと、面白くなくなってしまいます。すでにロードバイクに乗っていて痛みなど悩みを抱えている方も、お店に行く前にぜひ動画をチェックしてみてください!
取材協力:ACTIVIKE
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WRITTEN BYFRAME編集部
FRAME編集部はロードバイク、MTB、ミニベロ、トライアスリートなど、全員が自転車乗りのメンバーで構成されています。メンテナンスなど役立つ情報から、サイクリングのおすすめのスポット情報、ロードレースの観戦まで、自転車をもっと楽しくするライフスタイル情報をお届けします。 https://jitensha-hoken.jp/blog/