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安全点検はまずブレーキから
メカニックによって整備の考え方は多少異なるのですが、私は自転車で一番大事な機能はブレーキだと考えています。それは、人の命に関わる機能だから。たとえば、タイヤがパンクしても乗り心地が悪くなるだけで、走ることはできます。ペダルが漕げなくても足で地面を蹴れば自転車は進みます。けれど、ブレーキが上手く働かないと、止まれずに怪我をしたり、人にぶつかったり傷つけてしまうことになります。今回は家でもできるブレーキ点検とメンテナンスの方法をお伝えします。
まずはブレーキの仕組みから!自転車が止まるメカニズム
ブレーキのパーツは主に
- ブレーキシュー(車輪に当たるゴムのパーツ)
- アーム(ブレーキシューを固定する金属部分)
- ワイヤー(ブレーキレバーから伸びるチューブと、そこから出ている細いワイヤー)
- ブレーキレバー(ブレーキの時に握るところ)
の4つで構成されています。後ほど、ご自身の自転車をチェックしてくださいね。
ブレーキレバーを握ると、ワイヤーがひっぱられ、アームが動き、ブレーキシューが車輪に当たり、スピードを落とす。これがブレーキの仕組みです。
ブレーキのメンテナンスは、この一連の流れをスムーズにすることが重要です。
注意!家で出来ることには限度があります
工具が無くてもできるブレーキ周りのメンテナンスは
- 注油
- 破損や故障のチェック
- ブレーキの効き具合の簡単な調整
の3つです。
工具や知識があれば、ブレーキシューやワイヤーの交換など、お店さながらに様々なことができます。しかし、ブレーキはヘタにいじると逆に事故を招く恐れがあるパーツ。しっかりしたメンテナンスは自転車屋さんに行く必要があります。とはいえ、上記3点のメンテナンスだけでも十分効果はあるので、まずはここから始めてくださいね。それでは具体的なメンテナンスの説明に入ります。
ブレーキまわりのHow to チェック
ブレーキレバーと注油の方法
チェックポイントは「握った時の動作」
動作が鈍い場合は、オイルを注してあげます。
オイルは自転車用の物がベストですが、100円ショップやホームセンターで手に入る、液状の機械油でも大丈夫です。スプレー式のオイルもありますが、油膜を作るタイプの「グリース」など、あらかじめ自転車に注してある油を溶かす恐れがあるため、使用しないで下さい。
オイルを注すには、まずブレーキレバーを握ります。レバーを握ったり離したりしながら、その付近を観察すると、可動している箇所や、物と物がこすれている箇所が分かるはずです。それらの場所すべてにオイルを注し、レバーを何回か握ってあげると動きが良くなるはずです。
それでも動作が鈍い場合は、パーツ自体が壊れている場合があるので、自転車屋さんに持って行きましょう。注すオイルは数滴でかまいません、注油しすぎると逆に動きが悪くなってしまう場合もあるためです。
ワイヤー
ブレーキレバーから、ブレーキ本体に伸びているチューブがブレーキワイヤーです。チューブから出ている銀色のワイヤーが見えますか?これは「インナーワイヤー」と呼ばれ、ブレーキレバーと本体を結んでいます。
チューブはインナーワイヤーを保護する役割を持ち「アウターワイヤー」と呼ばれています。アウターワイヤーは表面の樹脂が剥がれていると、内部に水がしみこみ、サビが生じて動きが悪くなります。これもブレーキの効きが悪くなる原因なので、アウターが破損している場合は自転車屋さんで交換してもらいましょう。
次にインナーワイヤーがむき出しになっている箇所をチェック。ワイヤーが切れかけていたり、錆びていないか確認しましょう。ダメージにより弱くなったワイヤーは、力がかかると切れてしまうことがありますので、もしそのような状態になっていたら、これも自転車屋さんに相談してください。
アーム
アームは、曲がっていないかどうか、動作が鈍くないかをチェックしてください。確認の方法は、Webサイトなどで、新品のアームの形状を調べ、実物と写真を比べるのが一番分かりやすいです。変な方向に曲がっていたら、交換してください。
レバーを握って、アームの動きの良し悪しもチェックします。動きが少し鈍いなと思ったら、可動部分に注油をして、数回動かし様子を見ます。アームの動きが悪いと、止まるのに十分な力が得られないため、ブレーキが効きが悪くなる原因になります。
ブレーキシュー
ブレーキシューは
- 表面に油はついていないか?
- 表面に、金属や砂粒などがついていないか?
- すり減って表面の溝が無くなっていないか?
の3点をチェックしてください。
ブレーキシュー表面に油分がついていると、油で滑って止まれません。同様に、車輪のブレーキシューが当たる面にも油が付かないようにしてください。もし付いてしまった場合は、水で薄めた中性洗剤を布に少量しみこませ、表面を拭き取ります。
車輪に当たる面に金属片や砂粒がついていないかもチェックしてください。砂粒や金属片がついていると、車輪表面を削ってしまう場合があります。見つけたときは、取り去ってあげましょう。異物がシューに食い込んでいる場合は、カッターを使うと、取りやすいのでおすすめです。
次にすり減りのチェック。ブレーキシューには表面に溝が刻まれていますが、溝が無くなったら交換の時期です。すり減ったシューを使い続けると、シュー内部の金属部が露出し、車輪に当たって損傷の原因になります。
▲ロードバイクに多く用いられているキャリパーブレーキのブレーキシュー
▲クロスバイクやマウンテンバイクに用いられるVブレーキのブレーキシュー
レバーのネジの役割、知っていますか? 工具を使わないブレーキの調整方法
ブレーキが効き過ぎている、もしくは効きが悪い時には、ブレーキレバーについているネジを回すことで、応急処置をすることができます。
ネジの場所はレバーとワイヤーを繋ぐ箇所にあります。文章だけでは分かりづらいので、この項目は、できればお手持ちの自転車の前で読んでくださいね。
ネジはワイヤー側の部分と、レバー側の部分の二重構造になってます。ワイヤー側のネジはブレーキの調節用、レバー側のネジは調節したネジが動かないよう固定するためのものです。
調整の時は、まずレバー側の固定用のネジをゆるめ、その後、ワイヤー側の調節用ネジを手で回します。調節ネジをブレーキワイヤー側に「緩める」とブレーキの効きが「強く」なり、レバー側に「締める」とブレーキの効きが「弱く」なると覚えてください。
調節し終わった後は、車輪とシューが接触していないか確認してください。車輪とシューの間隔はだいたい2mm程度が良いとされています。
もし車輪とシューが接触している場合は、ネジを回し、シューの位置を調節してください。
最後に、調節用ネジが動かないように手で押さえながら、固定用ネジをしっかり締めて、終了です。
メンテナンスは自転車との「対話」
ブレーキの点検方法をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?
事故を防ぐ一番の方法は自転車の変化に気づくこと。日々メンテナンスを行うようになると、おかしな音がする、新車の時と乗り心地が違う、など様々な異変に気づくはずです。異変に気づき、修理などのケアをしてあげることで、自転車は正常に動いてくれます。
しっかりとした修理は自転車屋さんに任せる必要がありますが、まずは日々の簡単なメンテナンスを通して、自転車と対話するクセをつけていきましょう。日常的に対話を重ね、しっかりケアされた自転車はあなたを事故から守ってくれるはずです。