元自転車屋が教える!ロードバイクのアーレンキー(六角レンチ)の正しい回し方
今回は工具を使ったメンテナンスの基礎として、ネジの回し方と、アーレンキー(六角レンチ)の使い方をお伝えします。
目次
自転車のメンテナンスに必須なアーレンキー(六角レンチ)
自転車のネジのほとんどは六角のネジが使われており、ハンドルの角度調整や、サドルの調整など、アーレンキー(六角レンチ)がなければ修理をこなすことができません。
精度が高く、長い期間使えるアーレンキーセットは3000円くらいで買えるので、メンテナンスをするなら買っておきましょう。力がかけやすいため、持ち手は写真のように長い物がおすすめです。
写真のアーレンキーはドイツのwera(ヴェラ)社のもの。筆者も使っている物ですが、ネジが壊れにくいので、おすすめです。
「Wera 950PKL/13SZN ボールポイントヘックスキーセット」 3,793円(税込み)
アーレンキーの持ち方
持ち方は写真のように、親指以外の指でアーレンキーを軽く握り、親指でそれを支える形にします。持つ場所はアーレンキーの持ち手の端が小指にくるようにするのがベストです。こうすることで、力が入りやすくなるため、より疲れにくく、締め付けがしやすくなります。
持つ場所は毎回同じ場所を握るようにしてください、握る場所を変えてしまうと、毎回手にかかる力が変わってしまうため、ネジを締める強さの感覚が分かりづらくなります。
ネジをなめさせない、正しい回し方
ネジ山がつぶれることを「ネジがなめる」と言います。
メンテナンスの中でネジがなめてしまう事があると思うのですが、これはできるだけ避けたいことです。ネジがなめてしまうと、ネジを回すことが難しくなり、最悪の場合、パーツを取り外すことができなくなります。それでは、ネジをなめさせないためにはどうしたら良いのでしょうか?
コツは3つです。
1.アーレンキーをネジ山の奥までまっすぐ差し込む
まずは、「アーレンキーをネジ山の奥までまっすぐに差し込む」ですが、ネジ山に工具がしっかりとはまっていないと、工具とネジの設置面積が狭くなり、その分一カ所に多くの力がかかることになります。ネジ山の形が変わってしまったり、なめてしまう原因のほとんどは、これが原因です。
そのため、アーレンキーを奥までまっすぐに差し込むことを意識してください。
2.親指は固定する
ふたつ目の「親指は固定する」ですが、ネジを回す時は、工具とネジ山が密着するようにする必要があります。アーレンキーをネジ山の奥まで差し込んだ状態をキープするために、親指には力を入れて、動かないようにしましょう。親指で支えるだけで、アーレンキーがネジ山から抜け落ちることは少なくなります。
3.ネジ山を錆びさせない
3つ目の「ネジ山を錆びさせない」ですが、ネジ山の表面のサビも、なめの原因になります。これは工具を奥まで差し込めなかったり、ネジ自体が腐食でもろくなったりするためです。
普段から雨に濡れたらネジ山を拭いてあげる、さびが出たと思ったら油を塗ってあげるなど、ネジにもサビが出ないようにしてあげましょう。
ネジを「バカ」にしないための、正しい回し方
「なめる」の次に避けたいのがネジを「バカ」にしないこと。
ネジを「バカ」にするとは、ネジの軸部分にあるギザギザの切り込み部分がつぶれてしまうことです。これは、ネジの締め過ぎが主な原因です。
DIYをされた方は一度は経験があると思うのですが、ネジを締めすぎると、空振りしてしまい、少し緩んでしまうことがあると思います。それがバカになった状態です。そうなると締めようと思っても同じ箇所で空振りが続いてしまい、結局ネジは緩いままで止まってしまいます。
ネジをバカにすることで、パーツをしっかり固定できなくなってしまうなど、いくつかの不具合が生じます。
コツは「無理矢理回さないこと」
ネジをバカにしてしまうのは、ほとんどが力づくで回してしまうことが原因になっています。
「固いな、回らないな」と思ったら、無理に回そうとせず、いったんネジの軸部分に油を塗りましょう。滑りを良くして再度ネジを回せば、ネジをバカにすることは無いはずです。
おすすめのアーレンキーメーカー
メンテナンスにはアーレンキーが必須と書きましたが、どのようなアーレンキーを買ったら良いのでしょうか?L字型のアーレンキーには、写真のようなボールジョイント付きの物とそうでないものがあります。
ポールジョイントタイプ
ボールジョイントタイプは、狭い場所や障害物があり、うまくネジが回せない場合に使用するものです。また、少しネジを緩めて完全に外す時など、ボールジョイントを使うとくるくると回しやすいので重宝します。筆者はボールジョイント式のものをおすすめしますが、これは好みの問題でしょう。
おすすめメーカー「wera」と「KTC」
おすすめのメーカーとして、ドイツの「wera」、日本の「KTC」の2つのメーカーがあります。
工具や機械製品には「精度」という考えがあります。通常、ネジや工具は決められた寸法で作られているのですが、製造工程の段階で細かなサイズの違いが出てしまいます。
例えば、精度の悪いネジと工具を合わせると、その間に隙間が見えたりします。この隙間ができるとネジに無理な力がかかり、なめの原因になるのです。精度の高いネジや工具はサイズに狂いが無く、ネジ山と工具を合わせた時の隙間が少なくなるよう設計されています。
ご紹介したメーカーはどれも精度が高く、かつタフな使用にも耐えられる強度を持っています。
サイズと素材で選ぶ
weraとKTCの場合、自転車整備によく使う8mm、6mm、5mm、4mmのサイズとブレーキレバーなどの調整に使う3〜1,5mmがセットになっているものが、3000円〜4500円前後で売っています。
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サイズが分かりやすいよう色がついたものや、錆びにくいようステンレス製のものなど、色々な種類があるので、好みに合わせて選んでみるのも良いでしょう。
アーレンキーひとつで、自転車はもっと楽しくなる。
アーレンキーがひとつあると、整備調整や、パーツの交換、自転車のサイジングなど、自転車をいじれる範囲がぐっと広がります。自分の自転車に手を入れられるようになると、楽しみの幅も広がります。あまり高い買い物でもないので、1セット持っておくと、大変便利ですよ。
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WRITTEN BYスズキ ガク
1986年生まれのライター・編集ディレクター・元自転車屋の店員/ 大学を卒業後、自転車日本一周と、ユーラシア大陸輪行旅行を行う。 編集ディレクターとしての担当媒体は「未来住まい方会議 by YADOKARI」