元自転車屋が解説する【自転車パンク修理】 ママチャリでもスポーツバイクでもOK!
自転車を漕いでいると突然やってくる「プシュー」という音、悲しくなりますよね。パンクはおそらく、自転車に乗っていると最も多く見舞われるトラブルのひとつです。
そんなパンクを修理するのは自転車修理の基礎とも言われるもので、やってみると意外と簡単なもの。今回は初心者でも分かるパンク修理の方法を、元自転車屋がお伝えします。
目次
パンクの原因と回避
鋭利な石やガラスを踏んでしまい、それがタイヤを貫通しチューブにまで刺さってしまうとパンクが発生してしまいます。そのため、常に路面の状況に注意して走行し、時には押して歩く判断をすることが重要です。
加えて、タイヤの空気圧が低いと段差や亀裂などでパンクしやすくなります。できれば毎回乗車前に空気圧をチェックするようにしましょう。
パンク修理に必要な物
パンク修理に必要なものは、以下の7つです。
- タイヤレバー
- 修理パッチ
- ポンプ
- タオルやブルーシート
- 赤サインペン
- バケツ
- ゴム手袋
タイヤレバー
ホイールからタイヤを外すレバーです。パナレーサーのタイヤレバーは使いやすく、おすすめです。
修理パッチ
パンクの穴をふさぐシールです。
今回はイージーパッチというものを使用しています。これはのりを使う必要がなく、貼るだけで良いので初心者におすすめのパッチです。
ポンプ
普通の空気入れで大丈夫ですが、バルブの形式は自転車の種類によって異なるので必ず確認しましょう。
分からない場合は近くの自転車屋さんに行って聞いてみましょう。
タオルやブルーシート
チューブは砂や異物がつくと非常にパンクしやすくなります。
そのため、作業は必ずブルーシートなどを敷いた上でやるようにしましょう。
赤サインペン
穴が空いてる箇所に印をつけます。
バケツ
水を入れて、空気漏れの穴を探すために使います。
ゴム手袋
手のケガや汚れを防ぐために使います。
タイヤレバー、パッチ、ポンプは自転車屋さんでも手に入れることができます。
パンク修理の手順
手順1 タイヤ・チューブを外す
当記事では、写真撮影の都合上パンク修理をアスファルトの上で行っていますが、砂がついてパンクにつながる恐れがあります。これからパンク修理を行う予定の方は必ずブルーシートなどを敷いて試してみてくださいね。
スポーツバイクの場合は、自転車のフレームからホイールを外すことができます。そのため、タイヤ周りの整備の際にはホイールを外した上で作業することをおすすめします。
シティサイクル(いわゆるママチャリ)や電動アシスト自転車など、タイヤが外せない自転車の場合は、「3. タイヤの空気を抜く」から始められます。
1. ブレーキを解除する
ブレーキアーチが固定されたままでは、タイヤは外れません。そのため、先にブレーキを解除しておきます。
自転車の部品を触っていきますので、手の汚れが気になる場合は、あらかじめゴム手袋をはめておきましょう。
Vブレーキ
クロスバイクに付いていることが多いVブレーキの場合、ブレーキをかけたときに動くブレーキアーチを両側から押してあげると解除されます。
▼Vブレーキの外し方について、詳しくはこちら
カンチブレーキ
カンチブレーキの場合も同じように、ブレーキアーチを両側から押すと解除されます。
キャリパーブレーキ
ロードバイクや一部のシティバイクに付いているキャリパーブレーキの場合、向かって左に付いているレバーを上に上げるとブレーキが解除されます。
▼キャリパーブレーキの外し方について、詳しくはこちら
2. ホイールを外す
次に、ホイールを外していきます。
前輪の場合には車軸の脇に付いているレバーを掴み、反対側まで倒します。その後、反対側のつまみを固定しながら、レバーを反時計周りに3~5回転すれば外すことができます。この時にねじを外すまで回す必要はなく、フォークから外れる程度で大丈夫なので、緩めすぎないようにしてください。
後輪の場合、少し難しいですが順番にやっていけば問題ありません。あらかじめ後輪を持ち上げ、前後のギアをインナートップ(歯数が一番少ないギア)に変えておきましょう。こうすることで、ホイールが外れやすくなります。
次に、前輪の時と同じく車軸の脇に付いているレバーを掴み、反対側まで倒します。このとき、レバーを回転させる必要はありません。その後、サドルを持ち上げると後輪がフレームから離れます。
まだ歯車(スプロケット)にチェーンが掛かっているはずですので、サドルを持ち上げながらホイールを左上に持ち上げるようにすると外すことができます。
慣れないうちは難しいので、何度も練習してコツを掴むのがいいと思います。
前輪を外した場合、フォークの先が傷つかないよう、いらないタオルを下に敷いておきましょう。
後輪の場合、そのまま置くとパーツが壊れてしまう恐れがあるので逆さにすることをおすすめします。
その際、ハンドルに付いているライトやスマホホルダーなどは外しておき、接地する部分が傷つかないようにタオルを敷いておくとよいでしょう。
3. タイヤの空気を抜く
次に、タイヤの空気を抜きます。パンクしてしまい空気は抜けている状態かと思いますが、空気が抜けきっていない場合は全部抜いてしまいましょう。
MTBで使われている米式バルブの場合は、キャップを取り、バルブ頭頂部の真ん中にある出っ張りを押せば空気が抜けます。ロードバイクや、クロスバイクに使われることの多い仏式バルブの場合は、キャップを取り、バルブ頭頂部のネジをゆるめて、頭頂部を押せば空気が抜けるはずです。
タイヤを押して、空気が抜けていることを確認できたら、次のステップに向かってください。
4. タイヤをホイールから外す
タイヤをホイールから外します。この時、外すのはタイヤの片側だけです。
タイヤレバーをホイールとタイヤの間に挟み込み、力を入れてスポーク側まで倒します。挟み込むときには、手の腹を使ってタイヤをめくりあげるようにするのがコツ。タイヤの端をホイールから出したら、そのままタイヤレバーの持ち手のくぼみをスポークに引っ掛けます。このとき、タイヤレバーでチューブを挟み込まないように注意しましょう。
タイヤレバーを深く挟み込みすぎると、タイヤの中のチューブを巻き込み、新たな穴が空いてしまう恐れがあるので気をつけてください。
1本目に成功したら、2本目を挟み込みましょう。挟み込む位置の目安はスポークの間隔が2~3本分離れたところです。近すぎると外すのに時間がかかりますし、遠すぎると外しづらくなってしまいます。
2本目を挟み込んだら、1本目のレバーをホイールの外周に沿って滑らせていきましょう。
すると気持ちよくタイヤが外れていくはずです。外周を一周させ、タイヤの片側がすべて外れたら次のステップに進みます。
5. チューブをホイールから外す
タイヤの片側が外れたら、中からチューブを引き出します。仏式バルブの場合、バルブの根元に付いているネジを外すのを忘れないようにしてください。ネジが付いたままだと、チューブを外す事ができません。
また、外したホイールやタイヤの内側、チューブには必ず砂などがつかないよう気を付けてください。小さな異物でも、必ずパンクの原因となります。慣れないうちは、必ずブルーシートなどの上で作業するようにしましょう。
タイヤとチューブを完全に分離できたら次のステップに向かいます。
家でパンク修理できる場合ならまだしも、出先でパンクしてしまった場合は大変です。サイクリングの際は代わりのチューブを携帯し、パンクしてしまったらチューブの交換だけ行い、帰ってから修理する、という方法をおすすめします。その場合は、新しいチューブを装着する作業へ移りましょう。
6. タイヤに異物がついていないかチェック
異物を踏んでパンクした場合、タイヤにまだ刺さっている可能性があります。タイヤの外側はもちろん、内側もチェックしておきましょう。特に内側は指を入れて一周させ、本当に異物がないか確認する必要があります。その際、とがったものだと指をケガする可能性があるので必ずゴム手袋を装着しましょう。
手順2 チューブの穴を直す
7. 空気が漏れている場所を探す
次は、空気漏れをしている場所を探しましょう。取り出したチューブにポンプで空気を入れて膨らませます。膨らませたらポンプを取り外し、バルブのネジを締めます。
その後バケツに水を入れて、空気を入れたチューブを水に浸します。空気漏れを起こしている穴はごく小さなものが多いため、水に浸して気泡が出ている場所を確認するためです。
チューブを水の中にくぐらせて1周させると、小さな気泡が出ている箇所が見つかるはずです。気泡が出ている場所を見つけたら、赤ペンで印を付けてあげましょう。
空気漏れの穴は1カ所とは限らないため、チューブ全体を丹念にチェックしてあげてください。
あれ、穴が見当たらない?
丁寧に探しても穴が見つからない、なんてこともあります。シティサイクルによく用いられているバルブ(英式バルブ)から空気が漏れている音がする場合には「虫ゴム」という部品が劣化しているかもしれません。
ナットを外し、中のバルブを引き抜くと以下のような状態になります。
もしゴムが裂けていたり、無くなっていたりした場合には新しいゴムに交換しましょう。
8. パッチを貼って、穴を塞ぐ
全ての空気漏れの穴が見つかったら、チューブの空気を抜いて、穴付近の水分を拭きとります。この時、拭く物にはオイルが付いていないきれいなタオルを使ってください。チューブ表面にオイルがついてしまった場合、パッチがはがれやすくなります。
次に、穴付近にヤスリがけをします。これはパッチをはがれにくくするために必要な作業です。ヤスリがけをする範囲はパッチの大きさに合わせましょう。紙ヤスリはパッチを購入すれば付いてきます。
ヤスリがけが終わったら、パッチを貼ります。
この時、パッチの接着面にはなるべく指が触れないようにしましょう。指の油分が接着面に付くことで、パッチがはがれやすくなります。パッチを表面に貼ったら、タイヤレバーなどでパッチを上からこすりつけ、チューブとパッチをしっかり密着させてあげましょう。
パッチを貼り終えたら、念のためもう一度チューブに空気を入れ、10分ほど放置します。時間を置いてチューブがしぼんでいなければ、穴はしっかり塞がっているはずです。
手順3 タイヤ・チューブを装着する
9. チューブとタイヤを元に戻す
穴をふさいだチューブから空気を抜き、タイヤの中に格納していきます。最初にホイールに空いているバルブ穴にバルブを差し込む所から始めると作業がしやすいです。
この時、チューブの空気を少し残すことで格納の際にチューブのねじれ防止になります。また、この後タイヤをはめ込む際にもタイヤとホイールの間に挟まれづらくなります。
チューブを格納したら、タイヤをホイールにはめ込んでいきます。作業中、タイヤとホイールの間にチューブが挟まれないよう注意してください。
この時は、バルブの箇所からはめ込んでいくのがおすすめです。バルブ箇所をはめ込むときはタイヤとホイールの間にチューブが挟まれてしまうことが多いので、この箇所をはめ込んだ後にバルブを押し込んで動くかどうかを確認し、挟まれていないかをチェックしてあげましょう。
はめ込みの最後に残ってしまう箇所は、なかなかスムーズにはめ込めないことがあります。
慣れないとなかなか難しいとは思いますが、タイヤを揉むようにして既にはめ込んだ方から少しずつ寄せる、最後はタイヤレバーを使うことでやりやすくなります。
全部はまったら、タイヤをめくりあげ、タイヤの硬い部分にチューブが挟まっていないことを確認します。しっかりと一周しましょう。大丈夫だったら、バルブの固定ネジを付け(米式バルブにはネジがありませんので必要ありません)、空気を入れれば、パンクの修理は完了です。
次は、ホイールをフレームに戻しましょう。
10. ホイールをフレームに戻す
外した時と逆の手順で、ホイールを元に戻します。この時に車軸のレバーの方向を間違えないように注意。クイックレバーが正面から見て左側に来るようにしてください。
ホイールを付けたら、正面からホイールを見て、ブレーキの間隔が左右均等になっているか(センターが出ているか)をチェックします。ヘッドチューブから見て、タイヤがまっすぐになっていればOKです。
センターを出した後は、レバー反対側のつまみを持ちながら、レバーを時計回りに回し、車軸のネジを締めます。締め付けはレバーを上に上げて固定します。この時の固さの目安として、手のひらの親指側のふくらみに当てながらレバーを上げ、少し痛い程度がちょうどいい締め付け具合です。
レバーは前輪の場合上向きに、後輪の場合は前方斜め上方向に固定するとレバーが外れにくくなります。間違って下向きに固定してしまうと、タイヤが外れやすくなるため、ご注意を。
レバーはしっかり上まで押し上げ、その後、ホイールを掴んで左右にゆするなどして、きちんと固定されているかどうかをチェックします。
ブレーキを元に戻して、バルブの固定ネジを締め付け、バルブキャップをつければ完了です。
まとめ
パンク修理の作業は、初めての方でも30分程度、慣れれば10分程度でこなせます。慣れれば、水を使わず手の感覚で空気漏れの穴を突き止めることもできます。また、応用すればタイヤの交換も可能です。
自分で直すと愛着も一層増すのではないでしょうか。次、パンクした時はご自身で修理してみてはいかがでしょうか?
次回はこの技術を応用してタイヤの交換を行いたいと思います。
タイヤ交換についてはこちらの記事をどうぞ!
あわせて読みたい!
WRITTEN BYスズキ ガク
1986年生まれのライター・編集ディレクター・元自転車屋の店員/ 大学を卒業後、自転車日本一周と、ユーラシア大陸輪行旅行を行う。 編集ディレクターとしての担当媒体は「未来住まい方会議 by YADOKARI」