カスタムグランプリ受賞者に聞く、理想の自転車を手に入れるコツ(前編)
皆さんは「カスタム」という言葉をご存知でしょうか?カスタムとは主に、自動車やバイク、自転車のパーツや色、機能を自分の趣味に応じて変えることを言います。
自転車の世界でもパーツ交換による性能アップや、色や見た目を変えて自分だけの自転車を作る人が増えており、自転車ブランドの「FUJI」の正規代理店株式会社アキボウが、2012年より自転車のカスタムコンテストを開催しています。
このコンテストの開催の意図として、株式会社アキボウの担当者山本氏に伺いました。
「この数年で国内で自転車を取り巻く環境は大きく変わりました。これまではスポーツや単なる移動手段という面が大きかったところに、ファッション、ホビー的な要素も大きくなっています。そうして完成車の選択肢が増加しシーンも成熟した今、かえって『個性』のない自転車が増えているのではないかと感じ始めました。
いつの間にか多くの人が『皆が乗っている』ものに乗ることで満足してしまっている気がする。『どうせ乗るなら誰も乗っていない自分だけの自転車に。』そのような自転車が増えることを願い、今回のコンテストを開催させていただきました。」
その意図に応えるように、今回も、個性豊かなカスタム自転車が数多く集まりました。
目次
FUJIカスタムコンテストでグランプリを受賞したminatoさんと竹洞さん
今回のコンテストでグランプリを受賞したのは、様々なカスタムに対応する工房を備えた練馬区の自転車屋さん「ゴーゴーホイーラーズ」の竹洞寛行さんと、学校教員のminatoさん。
グランプリを獲得したのは、ピストバイクのパイオニアとして有名なFUJIのFEATHERをカスタムした1台で、上品な小豆色の車体に、皮のサドルとバーテープ、木製の車輪を使用して個性を出し、クラシックにまとめた1台です。
今回のコンテストの応募資格は一般ユーザーのみでお店は応募できません。minatoさんが竹洞さんにカスタムを依頼する形で、この自転車は作られました。
今回は、FUJIカスタムバイクコンテスト「FUJISM AWARD 2014」のグランプリを受賞したminatoさんとカスタムを担当した竹洞さんに、その魅力や面白さをお聞きします。
カスタムの第一歩は良いお店と出会うこと
minato氏(以下、minato)「組み上がった自転車を見た時、色も形も、理想どおりだって思ったんです。」
自転車のオーナーのminatoさんは学校の教員を勤めていらっしゃいます。minatoさんは、もともとイタリアの自転車ブランド「Bianch(ビアンキ)」の自転車に乗っていましたが、ある日同僚とサイクリング中に竹洞さんのお店を発見します。お店でカスタムができると知ったminatoさんは、その日のうちに前輪のカスタムを竹洞さんに頼みました。
竹洞寛行氏(以下、竹洞)「僕がカスタムを行う時は、その人の服装や持ち物、それにどんな友達がいるかを参考にしています。毎日乗るものだから、その人に似合うものを作りたい。当然、通勤用なのか、サイクリング用なのか、走る環境に合わせてパーツを換えたりもします。」
そうして出来上がった1台目の自転車は、ターコイズブルーの車体に赤い車輪を組み込んだ1台になりました。
minato「竹洞さんに一度カスタムを手がけてもらうと、『点検するから1ヶ月に1度は店に来てね。』と言われるんです。できるだけ良い状態で乗って欲しいからって、営業時間外に行っても自転車を点検してくれます。そうしてお店に通ううちに、2台目の自転車が欲しくなったんです。」
理想の自転車をつくるコツ
その2台目の自転車が、今回グランプリを受賞した自転車でした。
minato「前からピストバイクに憧れがあって、車体は細身でかっこいいFEATHERを選びました。色は塗り替えができると言われたので、自転車をトレースした図に、色鉛筆で理想の色やパーツの指示を書き込んで、竹洞さんに伝えたんです。」
竹洞「お店側として、具体的にイメージを伝えてもらえるとカスタムしやすいです。あとは全面的に任せてくれたのでやりやすかった。車体のカラーは画像の様に色見本に忠実に再現してあります。塗装も昔のFUJIのロゴマークをネットで調べて再現したりして、細かいところまでこだわって、楽しみながら作らせてもらいました。」
自分が気に入った物を所有する喜びは大きなものですが、自分だけのオリジナルならば、喜びはより大きくなるはずです。
自転車の完成からグランプリ受賞まで
完成した自転車は、しばらくはminatoさんの生活の足として使われていました。そんな中、コンテストの話があり、応募をする流れになりました。?自転車は見事グランプリを受賞。その時の気持ちをお二人に聞いてみました。
minato「愛着のある自転車でしたが、普段の生活の足として乗っていたものなので、最初は入賞するなんて思っていませんでした。」
竹洞「FUJIのものづくりの考え方やデザインを活かすカスタムをしていましたし、出せば入賞する確信はあったのですが、コンテスト担当者の方々の満場一致だったと聞いた時は、やはり嬉しかったです。」
カスタムを行い、手をかけた自転車は愛着も人一倍湧くものです。?その自転車が人から認められた時の喜びは、乗る以上の楽しみをオーナーに与えてくれるのかもしれません。
受賞しても変わらない自転車との関係
グランプリを受賞した自転車は以前と変わらずminatoさんの生活の足として使われています。雨の日には汚れがつかないよう、1台目のBianchの自転車を活用しているそうです。
後編では、初心者がカスタムをするならどこから始めればよいかなど、竹洞さんとminatoさんに、より深くカスタムの魅力をお聞きします。
後編はこちらからどうぞ。
いくつになっても乗っていたい!グランプリ受賞者に聞くカスタムの魅力(後編)
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WRITTEN BYスズキ ガク
1986年生まれのライター・編集ディレクター・元自転車屋の店員/ 大学を卒業後、自転車日本一周と、ユーラシア大陸輪行旅行を行う。 編集ディレクターとしての担当媒体は「未来住まい方会議 by YADOKARI」