自転車のギアが変わらない時の、変速機系統のメンテナンス方法
突然ですが、チェーンのメンテナンスはしていますか?「はい」と答えることが出来た方、素晴らしいです。「いいえ」と答えられた方も「いずれしなければならないとは思ってるんだけど……」と考えたことはあるはず。
それでは「はい」と答えられた方にもう一つお聞きします。変速機系統のメンテナンスはしていますか?
「変速機系統?」と首を傾げた方もいるかもしれませんね。自転車のギアの上げ下げがうまくいかない場合は、変速機系統のメンテナンスが必要です。
自転車の変速の原理は、シフトワイヤーを緩めたり伸ばしたりすることでディレイラーが稼働し、チェーンを他の段へ動かしてシフトチェンジする、というもの。ギアをスムーズに変えるなら、それぞれのパーツを調整しましょう。
目次
変速機系統とは?
レバー、ワイヤー、ディレイラー、スプロケット等、チェーンやブレーキ周りの様々なパーツを指して変速機系統といいます。
「そんなにたくさん……」と驚かれるかもしれませんが、この記事で一つずつ解説していくと同時に簡単なメンテナンス法もご紹介します。
チェーンの洗浄
チェーンというものはタイヤに次いで交換が必要な磨耗品ですが、適切な手入れさえ怠らなければかなり長い間使用することができるパーツです。
メンテナンス方法は思っているほど難しくはないので、あまり身構えずに調整してあげてください。
一番良いのは専用のチェーンクリーナーを購入するのが最も効果が高く、また手軽に行えます。
私を含め、面倒くさがり屋さんがいまいちメンテナンスに踏み込めない要因の一つが、色々と準備をしなければならず後片付けも大変ということなので、この“手軽に”というのは非常に重要です。
洗浄液はサイクルショップに売っているチェーンクリーナーのほかに、いわゆる台所洗剤等の中性洗剤でも十分代用できますので試してみてください。
チェーンクリーナーキットの使い方
まず、洗剤と水を1:1で混ぜ所定の位置にセットしてチェーンを回します。するとみるみる汚れが落ちてくるので、後は何回か水を入れてすすぎましょう。その後乾いた布などで水気を拭き取って水分をしっかりと飛ばした後、チェーンのコマ一つ一つに注油していきます。
また注油した後はそのままにせず、余分な油は拭き取ること。特にチェーンのサイドに残っていると、再び汚れやゴミが付着しやすくなってしまいますよ。
ちなみに”欠け”等があった場合、どうやっても綺麗な変速にはなりません。新しいチェーンに交換しましょう。
スプロケットの拭き掃除
リアホイールに取り付けられており、シフトチェンジの8割を占めるパーツがスプロケットです。汚れが目立つパーツですが、乾いた布さえ用意してしまえば新品のように綺麗にすることができます。
ホイールを取り外し、スプロケットの段と段の間に布を差し込み、ゴシゴシするだけであっという間にピカピカになっていきます。このとき、汚れがこびりついているようでしたらチェーンクリーナーを布に染み込ませて拭き取るのもよいです。
全ての隙間を綺麗にしたら再び取り付け、注油したチェーンを何度かシフトチェンジさせて馴染ませてください。
リアディレイラーの調整
スプロケット上のチェーンを別の段へ移動させるためのパーツがリアディレイラーです。「ギアがうまく入らないな」と感じた場合、ほとんどがこの部分の問題でしょう。リアディレイラーを動作させるワイヤーを調整するだけで、大体の不調は解消されます。
ワイヤーの伸び具合をチェック
まずは全体を綺麗に拭き上げた後、チェーンをトップの方へ移動させます。
シフトレバーとディレイラーを繋ぐワイヤーは劣化するもので、長く使えば使うほど伸びてきてしまいます。このトップにした状態で引っ張ってみて、ダルンダルンに緩んでいるようでしたら張り直しの合図。しっかりと伸ばして張り直してあげましょう。
これでローからトップまでスムーズに動けば問題はないのですが、たまにローやトップにだけギアが入らないことがあります。この場合はスムーズに動くまで調整しましょう。
買ったばかりなのに調子が悪い?「初期伸び」について
この記事をお読みの方の中には、「ロードバイクを買ったばかりなのに変速が決まらなくなった!」「ジャラジャラ音が鳴るようになった!」とお困りの方もいらっしゃるでしょう。実はこれ、初期不良でもなんでもなく、「初期伸び」という症状なのです。新品のワイヤーを張り、しばらく走行して馴染んでくるとワイヤーのテンションが落ちるために起こるもので、これも簡単な調整で解消されます。
調整方法
トップ/ローギアに入らない場合
ディレイラーの可動域は、2つのボルトで調整できます。これらはリアディレイラーの後ろに2つあり、上がトップギア、下がローギアの調整と連動しています。
それぞれがリアディレイラーの位置を調節する役割を持っており、トップ・アジャスタボルトを時計回りに回すと外側へリアディレイラーが動きます。反対に、ロー・アジャスタボルトは内側へ動きますのでご注意ください。
一番軽いギア、あるいは重いギアに変速した状態で、プーリーが最大・最小スプロケットの真下に来るよう調整できたら完了です。
音鳴りがする、スムースに変速できない場合
ジャラジャラと音が鳴っている場合や変速がうまくいかない場合には、ケーブルのテンションを調整しましょう。
まず、最小スプロケット(トップ側、一番重いギア)から2段目に変速します。ここから、シフトレバーを軽い方へ、遊びの分だけ動かしたときにチェーンが3段目に接触し、音が鳴る状態にセッティングします。
レバーを少し動かしただけで3段目に変速してしまう場合には、チェーンが2段目に戻るまでケーブル調整ボルトを時計方向に回しましょう。
反対に、レバーを動かしてもチェーンが全く動かない場合には、チェーンが3段目に接触するまでケーブル調整ボルトを反時計方向に回しましょう。
調整し終わったら最後に、可動部へオイルを一滴ずつ垂らしてあげると摩耗劣化を抑えることができますよ。
ちなみに、上記のことを試してみても思うようにシフトチェンジが行えなかった場合、ディレイラーハンガーの曲がりが考えられます。右側に転倒した時などにディレイラー部分に力が入るとこうなってしまうことが多いので、サイクルショップへ持っていきましょう。
チェーンリングの掃除
スプロケットは後輪で変速を行うパーツですが、チェーンリングは前輪でのシフトチェンジをするパーツです。こちらは後輪のように簡単に取り外すことができないので少々掃除がしにくいものですが、スプロケットと同じように乾いた布を隙間へ差し込んで拭き拭きすると綺麗になります。
フロントディレイラーの調整
リアディレイラーよりもシビアな判定で最も調整が難しい部分です。心配な場合はショップに持ち込んでプロにお願いするのが確実です。
セルフメンテナンスをする場合は、仕組みと要領をしっかり理解して行うようにしましょう。
フロントディレイラーはワイヤーを張り詰めていないと自動的にインナーへ落ちるように設計されています。言い換えれば、ワイヤーがきちんと張られていれば問題なくトップのほうへ変速されるということです。
調整方法
- まずは全体を綺麗に拭きあげます。
- ワイヤーを外した時の衝撃を抑えるためにフロントをインナーに入れ、リアをローへ落とします。
- ワイヤーを取り外し、チェーンガイドがアウターチェーンリングの上3mm以内、平行になるように再度取り付けてください。次に上部にある調節ネジで位置を設定します。
- インナー側の調節ネジを回し、インナーへ落ちているチェーンにチェーンガイドがギリギリ接触するかしないかの位置に持っていきます。
ここの隙間が広いとトップへ移動させた時に戻ってきてしまうので慎重に行いましょう。
- 再びワイヤーをしっかりと張りながらセットし、今度はフロントをアウター、リアをトップへ入れます。
この時、張りなおしたワイヤーの引きが弱いとアウターへ入ってくれませんのでその場合は再び繋ぎ直しましょう。
- 最後にアウター側のチェーンガイド位置の設定です。こちらもインナーと同様、アウターネジを回し、同じようにチェーンが触れるか触れないかの位置に調整します。
スムーズにシフトチェンジが行えることが確認できれば完了です。終わりに、可動部にオイルを一滴ずつ垂らしてあげると長持ちしますよ。
シフトチェンジについて
主に走行中はリアディレイラーを使用することになるでしょう。右手側のSTIレバーで変速を行います。
この時注意すべきことは、最大負荷の状態で変速しないことです。パワーがかかったままだと各パーツへ負担がかかってしまうので、気持ちスッと脚から力を抜く感じで行いましょう。
また、最適な段数というのも存在し、人によって様々ですが基本は1秒間に2回程度ペダルを踏めればよしとされています。一つの目安として覚えておくのもいいでしょう。
フロントの変速については各ライダーさんの好みで使用するのが良いですが、もっともノーマルな使い方としてはリアディレイラーのみでは走破できない激坂へ差し掛かった時などに使用します。この時、リアディレイラーを2段ほど上げてからフロントを落とせば、ガクンとした空回りの衝撃が緩和されますよ。
シフトレバーの種類を知ろう
上記のパーツ画像はロードバイクのものを使用しましたが、原理的にはクロスバイクやMTBでも同じです。しかし、シフトチェンジを行うためのそもそものレバーの形状はその自転車の種類によってそれぞれ異なっています。
STIレバー
変速を行うシフトレバーとブレーキレバーを一体化させたのがこのSTIレバーです。ロードバイクの標準装備となっており、独特な形状のドロップハンドルと一体化したフォルムとなっているのが特徴的です。
トリガーシフト
主にクロスバイクへ多く採用されているのがこのタイプです。後述するグリップシフトより楽に変速が行えるため、中グレードの自転車にはほぼこれが実装されているでしょう。
グリップシフト
ママチャリからスポーツサイクルルック車まで、恐らく一番普及しているタイプのものです。簡単な構造で低コストで製造できると同時にその扱いやすさから、広く親しまれています。
コンポーネント・グループセットと、そのグレードの知識
コンポーネント、略して”コンポ”は元々フレーム以外で自転車を構成する稼働パーツ全般を指す言葉として生まれました。上記のメンテナンスの際に説明したものは一部であり、この他にもボトムブラケットやブレーキ等も含まれます。
これらには様々なものが発売されていますが、SHIMANO社とカンパニョーロ社の2社のものが多く使用されています。また同じ会社の製品の中でも、さまざまなグレードが存在します。
SHIMANO
DURA-ACE
SHIMANO社最高品質のコンポであり、その性能は最高のライディングを約束してくれるでしょう。変速性能はもちろんピカイチで、誰よりも早くゴールへ導いてくれるはずです。
ULTEGRA
“DURA-ACE”と“105”の中間に位置するグレードで、ミドルモデル〜ハイエンドのロードバイクに標準装備されていることが多いコンポです。非常にバランスが良く、ここぞという時には必ず瞬時に反応してくれることでしょう。
105
“ULTEGRA”に次ぐ、エントリー〜ミドルモデルのロードバイクに多く標準搭載されているモデルです。コストパフォーマンスが非常に高く、使いようによっては上位機種と互角に渡り合えるような造りとなっています。
(シマノコンポーネント 画像出典:シマノ)
カンパニョーロ
全体的に価格設定が高く感じられるカンパニョーロはよく外車に例えられます。洗練されたデザインと性能は折り紙付きで、あなたのフレームを、走りをワンランク上のものに変えてくれるでしょう。
SUPER RECORD
カンパニョーロの中でも一番高いグレードに位置するSUPER RECORD。サイクリストの間では「スーレコ」と呼ばれることが多いです。現行モデルは発売当時、世界初の12速グループセットとして話題を呼びました。性能はもちろん、見た目の美しさも魅力的。
RECORD
SUPER RECORDの次に位置するモデル。加速性、操作性、どれをとっても欠点がなく素晴らしい走行体験を約束してくれるでしょう。
CHORUS
SHIMANO社のコンポが完璧に設計された機械というイメージであるなら、カンパニョーロのグループセットはアンドロイドといったところでしょうか。まるで対面で会話しているかのようなライディングを楽しむ事が出来るはずです。
CENTAUR
一度廃盤となったのち、新型として2017年に改めてデビューしたグループセット。スーパーレコード、レコード、コーラスといった上位モデルの性能を継承し、費用対効果に優れたモデルです。
カンパニョーロのグループセットをもっと知りたいという方はこちら!
(カンパニョーロコンポーネント 画像出典:カンパニョーロジャパン)
どちらのメーカーも上のグレードになればなるほど操作性や変換機能の差は開いていくのですが、それはあくまでもメンテナンスを怠らない場合の話です。
どれだけ高級なコンポに変えようと、錆びついてカサカサであればいくらDURA-ACEやSUPER RECORDといえどきちんと整備されたバイクには敵わないでしょう。せっかく悩み抜いて購入したものですので、愛着を持ってパーツ・コンポと向き合ってあげてください。
最後に
当たり前のことですが、シフトチェンジはストレスなくスムースに行えた方が精神的にもパーツ的にも優しいものです。その為にも日々のメンテナンスは欠かせませんが、なかなかお時間を取れない方が多いと思います。
ですが、最低でも2週間に1度はチェーンだけでもお掃除してあげた方が長く使用することができますし、結果として経済的に安く抑えることができるので、是非参考にしていただけたらと思います。