逆走する自転車に声をかけるべき?交通ルールとマナーを考える

FRAME編集部では自転車に乗っている時に遭遇する場面を例に、実際にどんな行動が良いのか考える連載を行っています。

以前FRAME読者の皆さんと考えた『車道走行中に正面から逆走する自転車が! あなたならどうする?』という逆走する場面のシチュエーションを考えました。

その時の内海さんの回答は声をかけるというものでした。ただこの回答を掲載したところ実際声をかけるとトラブルになりそうという声が多く聞かれました。

そのため、今回は第五弾として今回は再度このシチュエーションについて考えてみたいと思います。

この状況で何を考え・何をすべきか、FRAME編集部で日本で一番真剣に自転車乗りの権利を考えていると理解しているNPO法人自転車活用推進研究会事務局長の内海潤さんに再度回答をお願いしました。

内海さんのコラムに移る前に、FRAME読者の回答を見ていきましょう。

・やはり怒らせてしまいそう

・正しいものは正しいと伝える

・声掛けを続けて逆走自転車を減らしていきたい

それでは内海さんの回答をお読み下さい。

相手を見て声掛けをする

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相手を見る

前回、この稿で逆走する自転車に対して低姿勢で声掛けすることをお勧めしたら、読者から抵抗を示す反応があったそうだ。曰く「声掛けしたら文句を言われてトラブルになりそうだ」とのこと。ご指摘ごもっとも! 君子危うきに近寄らずと言うではないか。私とて、乗っている御仁の顔を見て声掛けするかどうかの判断をしている。外見がピコ太郎みたいな輩には絶対に声掛けしない。怒りのあまり何をしでかすか分からないからだ。さすがに拳銃はないにしても昨今のニュースを見る限り刃物が飛び出す危険性は十分にある。

皆様ゆめゆめ気をつけてもらいたい。違反している人の中で自分より明らかに非力な女性や子どもたちと、警察官には声を掛けることがある。むしろ最近は声掛けしないケースの方が多いくらいだ。

声掛けするチャンスとは

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なぜか。すれ違いざまに何か叫んでも、ほとんど相手に意味が伝わらないと気付いたからだ。考えてみてほしい。お母さんたちは夕食の献立を考えながら運転しているかもしれない。子どもたちはゲームのことや友達のことで、おじさんたちは会社や仕事のことで頭がいっぱいかもしれない。

そんな状態で自転車に乗っていて、急に前から来た人が何か叫んだとしよう。「は?」とか「え?」と思うのが関の山だ。すぐに忘れてしまうだろう。ところが正面衝突しそうになったら意識は相手の顔に集まる。「危ねえだろ」「いや、お前の方こそ」こうなれば頭は完全に目の前で起きていることに集中する。どちらが悪いのか決着を付けたい。

ここでもし本当に衝突していたら躊躇せず110番に連絡しよう。自転車の事故なんかで警察官を呼んでいいのかって? いいんです。と言うか自転車保険に加入している方、警察官の書いた事故調書がないと保険おりませんぜ。警察官が来たら説明してもらおう。(駆けつけた警察官が交通法規に明るいことを祈る)

まあ、事故未遂でも意識がこちらの顔に集中したらチャンス到来だ。自転車は左側通行だと伝えよう。どちらが悪いか瞬時に分かる。「どこに根拠が?」と訊かれたら更にチャンスだ。付近の道路にナビマークが描いてあることを祈る。何だか祈ってばかりだが、過渡期なのだから仕方がない。第一系統立った教育もないままルールを守れと言う方に無理がある。ピクトグラム(絵)と矢印なら子どもたちや外国人にも意味が分かる。路面表示は教育の一環なので早く広く拡散してもらいたい。それが広がることで根拠が示せるようになる。

例えば、千代田区で始まった路上喫煙禁止条例は区内全域の歩道上に路上喫煙禁止のステッカーを貼付したことと、過料を取って回る職員の活躍により路上喫煙が激減したばかりか、またたく間に全国へ広まった。私にも歩きタバコをする青年に足元のステッカーを指差して「ダメだよ」と諭した経験があるが、あれと同じことを自転車でもやればいい。日本人は、やればできる子(YDK)ばかりだ。信じよう。

では、どう走ればいいか

車道の左側をクルマと同じ向きに順走している我々には後方から来るクルマがミラーなしでは見えないが、逆走して来る自転車には前から来るクルマが良く見えている。であるならば、逆走する自転車に危険を冒してもらおうじゃないの。我々に逆走野郎を守ってやる義務はないから左端へ左端へと進む。逆走野郎は前から来るクルマを避けて右端へ右端へと進む。

どちらも車道の端へ向かって進むからアリさんじゃないけど、どこかでごっつんこすることになる。そこで顔を見合わせて何か言われたら「左側を走ってください」と言い返せばいいし、逆走野郎がリスクを取って車道中央側に寄ってすれ違えばそれもよし。少しヒヤリとしたはずだ。こりゃたまらんと改心してくれればなおよし。ただし、万が一逆走野郎がクルマと衝突したらザマアミロと言ってないで救助してやること。それが人情だ。懲りて二度と逆走しないはず。

愚痴をこぼしても始まらない

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自転車は原則車道、車道は左側を通行。1960年以来、変わらないルールだが、全くもって徹底されていない。なぜ、かくも情けない現状になっているかと言えば、日本独自の政策に起因する問題で、誰が悪いと名指しできないところに来ている。1970年代に大きくクルマ優先(自転車ないがしろ)へと舵を切ったツケが回って来ているのだ。旧建設省の元役人に話を聞くと良かれと思ってやったことで、今にして思えば愚策だったと述懐している。間違いだったと認めているのだから水に流してあげよう。むしろ、これからが肝心だ。警察も2011年から自転車の通行は車道左側を徹底と方針を変えた。お巡りさんたちにも徹底させてもらいたい。彼らを手本として子どもたちが自転車に乗る。お巡りさんに憧れて大人になる子もいる。自転車で違反をしたら取り締まりを受ける

そういう環境を作っていかないと子どもたちは混乱する。大人は嘘つきだと思うだろう。子どもたちは未来そのものだ。より良い社会を作るためには子どもたちへの教育が鍵である。現状に愚痴を言っても始まらない。まずは自ら手本を見せていこう

FRAME編集部より

いかがでしたか? 内海さんの回答は声掛けする相手とチャンスを伺った上で声をかける、また自分自身は左端、より左端へと進み見本となる自転車乗りを目指していくべきというものでした。

またFRAMEのTwitterで回答を募集したツイートでは、逆走する自転車乗りが減る為にきちんと伝えるべきだと主張する方がいる一方で、そこまでするのは現実的でなく難しいという意見が見られました。

こうした問いをきっかけに、安全に自転車に乗るためにどうするべきか今一度考えてみませんか。あなたのライド中にも他人事で済ませられない状況が発生するかもしれません。

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WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」「移動貧困社会からの脱却」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

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