自転車の交通違反、悪質なら検挙されるのか?日本一自転車乗りのことを考える*自活研理事に聞いてみた

自転車の交通違反で検挙される!?

FRAME編集部では自転車に乗っている時に遭遇する場面を例に、実際にどんな行動が良いのか考える連載を行っています。
今回FRAME読者の皆さんと考えたいのは自転車で交通違反をした人の検挙・摘発の必要性についてです。なお、Twitterでの呼びかけのときには交通違反の検挙・摘発ののち、さらにその先にある“逮捕”をいう言葉を使いました。


※なおツイート内で逮捕という言葉を使っておりますが、正確には「交通違反で摘発」もしくは「検挙」でした。お詫びして訂正いたします。

第七弾として今回はこのシチュエーションについて考えてみたいと思います。

この状況で何を考え・何をすべきか、FRAME編集部で日本で一番真剣に自転車乗りの権利を考えていると編集部が考えているNPO法人自転車活用推進研究会事務局長の内海潤さんに回答をお願いしました。

内海さんのコラムに移る前に、FRAME読者の回答を見ていきましょう。

逮捕は当然必要

運用には慎重になるべき

取締まり自体をもっと厳格に行なうべき

そもそも取締まり自体されていない

あなたはどう考えましたか?
それでは内海さんの意見をお読み下さい。

2015年6月1日の道交法改正

一昨年の6月に道路交通法(以下道交法)の運用が改正され、14項目の危険行為が挙げられた。この14項目以外にも自転車の交通違反と、それに対応する罰則はあるのだが、中でも特に危険な行為を抜き出して明示した。従来は14項目を含む違反を犯した人に対し起訴猶予にして説諭(ダメだよ)だけで帰していたが、一向に事故や違反が減らないので重い腰を上げた形だ。

警察は今後、自転車に関しても特に危険な行為があれば摘発し、本人特定をし、3年以内に2回の摘発で講習を受けさせることにした。本来なら最初の摘発で起訴すれば有罪になる可能性もあるが、厳密に運用すれば前科者だらけになり、現場の職員たちも捌き切れずに音を上げることが見えているし、ルールの周知が徹底されているとは言えない状況の中「2回摘発で講習」という落とし所を見つけた苦肉の策と言える。

まだ浸透しているとは言えないが自転車利用率の高い大阪などでは積極的に取り締まる警察官も増えており、ようやく「自転車で何をやっても、お咎めなし」ではなくなりつつある。

逮捕される人が増えた方がいい?

そうは思わない。ルールを知らずに犯してしまった行為は罪に問いにくい。ただ周知がなされた後なら話は別。知っていて犯した行為は未必の故意と見なされて処罰されても仕方がない。法治国家として是々非々で対応するべきだ。お上が見ていなければ多少のズルや小悪はやるが、大悪はしないのが日本人のメンタリティー。

神様が常に見ている欧米とは精神構造が違うので、国ごとに運用の違いはあっていい。なので何度も書くが、

  • 1インフラ整備
  • 2教育・広報
  • 3取り締まり

この3本柱が揃って初めて自転車施策は上昇気流に乗って回り出す。とりわけ、3番の取り締まりは民間人の手に負えないので警察の力を頼るしかない。ただし周知というのが曲者で、どこまで行っても従来のやり方では徹底できないので、5,700円を払って3時間の講習を受けるという目に見える恐怖を武器にした。

説諭だけでは生ぬるいということで、免許証やマイナンバーカードを使って本人特定するとした。摘発となると互いに時間がかかるので可能な限りせずに済むよう対象の14項目を見える化して周知を図ることにした。

実は現在、周知期間に入っており、やがて周知が行き渡ったと警察が判断した時点から目にあまる違反は摘発されるケースが増えると見ている。「道交法が改正されて大騒ぎした割には変わんねーじゃん」と思っていたら、しっぺ返しを食うことになるかもしれない。それがいつかは分からないので、常日頃から大丈夫なように備えておくべきだろう。

理想的な状態とは

孔子の言葉や聖書などに「罪を憎んで人を憎まず」というのがあるが、違反する人を憎んではいけない。自転車ルール原理主義者の中には「人でなし」と見る向きもあるが、それは良くない。自転車のことなど大した問題だと思ってないケースが大半だからだ。世間で評価されている人でも自転車で歩道を暴走したり、車道を逆走したりすることがある。もちろん自転車で違反して事故を起こしたら、どんな著名人でも罪に問われるし摘発も免れない。本来あるべき姿とは言えないが、痛い思いでもしなければ覚えないという側面はある。

目指すべき社会のあり方として「皆が安心安全に快適に歩いて暮らせる街」という表現がある。日本も高度経済成長を終えて人口が減る時代を迎えた。これから高齢化が更に進む中で免許証を返納する人が増え、若者は免許を取らないから将来的にクルマは減ると予想される。安心して歩いて暮らせる街にするために都市間移動は高速道路や高速鉄道を使って素早く。人が渡らない高速道路の最高速度は、もう少し上げてもいい。ただし街中に入ったらクルマの速度を時速30km以下に落とす。それ以下なら、人がぶつかっても滅多に死なないからだ。既に欧州はメリハリを付けている。自転車は車道でクルマと共存させる。歩いて暮らせる街は高齢者だけでなく車椅子や資格障がい者など交通弱者にも優しい。自転車が歩行者を脅かして走る時代は、そろそろ終わりにした方がいい。そのために必要かつ最低限の取り締まりはあった方がいいと思う。

いかがでしたか? FRAMEのTwitterで回答を募集したツイートでは、検挙もやむを得ないという意見が多く寄せられた一方、そもそも交通違反をする人には交通法規に対して無知な人が多いため、子供の頃から正しい交通法規を身に着けさせることが必要では・・・という鋭い指摘もありました。

周知徹底のタイミングと捉えており、今後自転車に対してより厳格な取締まりが行われるようになるだろうという内海さんの意見を聞いて、日頃の自分の運転を反省する読者もいるのではないでしょうか。

こうした問いをきっかけに、より安全に自転車に乗るためにどうするべきか今一度考えてみませんか。逮捕されなければ良いというものではなくて、もっと先の自転車の未来、自転車と共存する社会の実現を考えてみませんか?

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WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」「移動貧困社会からの脱却」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

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