自転車からワクワクをひろげよう

  1. ホーム
  2. ライフスタイル
  3. 輪行マナーについて(2) 電車の車椅子スペースに自転車を置いて輪行するのはアリなのか?

輪行マナーについて(2) 電車の車椅子スペースに自転車を置いて輪行するのはアリなのか?

あわせて読みたい!
こちらの記事もチェック!

車椅子スペースは車椅子専用?

今、ツイッターで話題になっているのが車椅子スペースに自転車を置いて輪行する若者に苦言を呈した投稿だが、それに対する反論も出てプチ炎上状態になっている。そもそも車椅子スペースには車椅子以外の物を置いても構わないのだろうか? 

例えば、JR山手線の新型車両E235系には1号車と11号車に「フリースペース」と呼ばれる空間が設けられている。ピンクに塗られた床面には車椅子とベビーカーのマークが描かれ、反対側に優先席がある。
このフリースペースは車椅子だけでなく、ベビーカーやスーツケースなどの大型荷物を置くために設計されたそうで、つまり設計の狙いから考えれば自転車も大型荷物だから袋に入れてさえあれば問題ないように思える。

一般的に欧米でも車椅子スペースは大きな荷物を運んでいる人も使って良いとされており「実際に車椅子の方が乗ってくれば避けるのは当然」という了解のもと、他の乗客が目くじらを立てることはない。

JR山手線の新型車両E235系1号車と11号車の「フリースペース」と呼ばれる空間

使い方次第で印象が変わる

 この話は優先席の考え方とも共通する。
車内が空いている時は健常者が使ってもいい場所のはずだが、まだ日本ではコンセンサスが十分に取れていない。ネット上にある意見もバラバラで健常者なら近寄ることさえ避けるべきだとか、ベビーカーは畳んで乗るのがマナーじゃないか、といった意見がある一方で、大きな荷物を抱えて乗る場所がないのが問題だという声もある。

優先席は「一見すれば健常者」でも膝を痛めている人だとか、気分が悪い人なども当然使っていいのだが、見かけだけでは判断できないケースだってあるだろう。健常者の使用を禁止するならそれでもいい。専用席や専用スペースという名前に変え健常者に使わせないルールにする手はある。でも考えてみると、それも何だかやりすぎの感がある。あくまで優先席や優先スペースとし、思いやりゾーンにすべきだろう。ガチガチに縛ると、ただでさえ窮屈な社会がさらに殺伐とする。

今回のケースを見る限り、印象で損をした感が否めない。荷姿が大きいにも関わらず、「ルール通り自転車を輪行袋に入れているのだから文句ねえだろ」という印象を与えてしまったようだ。

筆者には車椅子ユーザーの友人がいるが、できる限りラッシュアワーの電車には乗らないようにしているし、車椅子だから譲ってもらって当然とは思わないようにしている。自転車専用ラックが設置された電車やサイクルトレインも各地でデビューしているが、まだまだ少数派だし、イベント時のみ走って普段お目に掛かる機会がなかったりする。
専用ラックが設置されていない通常の電車の場合は、自転車を車椅子スペースに置いても構わないが、見られ方に気をつけて遠慮がちに置くのが吉だ。

先人たちの努力のおかげで、まず1984年に有料かつ輪行袋に入れるという条件のもと許可された自転車の車内持ち込みは1999年にJRと営団地下鉄(現東京メトロ)で無料となった。我々は今、当然のように恩恵を受けているが2013年にはブロンプトンが槍玉に挙がった。シャワーキャップタイプの袋をかぶせてキャスターで転がすのはダメ、フレームのみならずパーツも、すべて袋に入れて担いでくださいとJRがポスター掲示をしたように、一般の乗客からクレームが入れば鉄道会社としても対応せざるを得ない。
キャスターがダメならスーツケースはどうなんだという声も出たが、そちらはクレームがないのでお咎めなし。理不尽だなと思うものの輪行自体を禁止されたら自転車旅の楽しみが大きく削られてしまう訳で、絶対そうはしたくない。一部の心ない輩のせいで多くのユーザーが迷惑を被る事態は避けなければならない。

パリ都市近郊電車トランシリアンのカラフルな最新車両

自転車と一緒に電車へ

 ローカル線に乗ると、地元のおばちゃんが自転車を抱えて乗って来るシーンに遭遇することがある。観光用の特別車両ではなく、地元の人が普段の足として使っている、乗って見て初めてサイクルトレインとわかる普通の電車だ。

台北の地下鉄で

自転車の車輪を外さず、輪行袋に入れることもなく、自転車と一緒に電車へ乗りこむ。見慣れないのでギョッとするが、車内はガラガラなので周囲の乗客は迷惑そうな顔をしたり奇異の目で見たりすることもなく自然に同乗している。おばちゃんは5つ目の駅で降りたが、乗っている間は隅の方、4人掛け席の前でガラ空きにも関わらず自転車の脇にずっと立っていた。電車は前後2両しかないので優先席はなく、車椅子スペースもない。言ってみれば全部が優先席。田舎だから実現できる環境ではあるが、自転車が生活の中に溶け込んでいる様子は理想的で実に羨ましい。

さすがに都会のラッシュアワーでは無理だが、時間帯をずらすとか自転車専用車両の増結などで実現は可能。もし専用車両を増結してくれるなら、自転車の車内持ち込みを有料に戻しても構わないので実際に走らせて欲しい。きっと話題になるし、気兼ねなく載せられるから存在が認知されたら利用者は確実に増える。一般客からのクレームも無くなるし、鉄道各社にとってもメリットが大きいはずだ。
JR四国予讃線の特急宇和海のように一両につき2台ずつサイクルルームを設けて袋なしで輪行できるのも新たな試みとして評価するが、ユニークな列車をラインナップすることで実績のあるJR九州あたりが一両丸ごと自転車ラックを搭載した増結車両をデビューさせてくれないだろうか。普段から虐げられているサイクリストたちは狂喜して九州中を旅すると思うのだが。

JR四国の試み、サイクルルームのある特急宇和海
特急宇和海のサイクルルーム

キーワード「お互い気持ちよく」

ネットで調べると関西の阪急電車が一時、優先座席をやめたという情報があったので出張の際に確認したら復活していた。

「全てが優先席」という思いで撤廃したものの、利用者から「席を譲ってもらえない」というクレームが相次いで、やむなく再開したそうだ。性善説だけで世の中は渡れない。様々な声に耳を傾けて幸せの最大公約数を探す不断の努力が必要となる。

自転車旅がマイナーだった頃から輪行するサイクリストたちは邪魔にならないよう列車の最後尾席を予約してシート裏のスペースに自転車を押し込んだり、デッキにスーツケーススペースがあれば置かせてもらったり、運転席の真裏に袋を括り付けたりして他の乗客からクレームが出ないよう配慮する人が多かった。そういった涙ぐましい努力を知る人からすれば、今回のケースは目に余る行為と映るだろう。

ガラガラに車内が空いていたり、実際に車椅子の乗客がいなければ車椅子スペースに輪行袋の自転車を載せることは問題ないが、当の車椅子ユーザーでさえ他の乗客の迷惑にならないよう普段から気を使っていることを考えると、できるだけコンパクトな荷姿にとどめ本当に必要としている人のために空けておくべきだろう。ついでに、その文脈で言えば輪行袋に関しても一部メーカーが販売している前輪だけ外して梱包するタイプは荷姿が大きいので避けるべきだ。
これまでは輪行する人数が少なかったから大きな問題にならなかったが、不快に思う人が増えると規制が始まる。「お互い気持ちよく」をキーワードに、なるべく他の乗客の迷惑にならないよう心がけることが首を絞めない秘訣だと思う。

スイス・チューリッヒの自転車が載せられる車両

これから将来を見据えて

将来のことを考えれば輪行する人数が増えて行動半径が広がり、地域活性化の救世主などと呼ばれるようになることで、国民の自転車に対する見方や考え方も変わることが期待できるし、受け皿が増えて活用推進、引いては医療費の削減などにつながる。新しい自転車を買ったけれども楽しみ方の提案が乏しいので結局乗らなくなったというのでは、あまりにもったいない。

それは自転車業界に限らず、国が自転車利用を後押しすると法で書いたのだから、この流れを止めてはいけない。

そのためにも環境整備は重要なのだが、ハードだけでなくソフトで対応できることはたくさんある。他人がどう思うか、他人からどう見られるのか。それを国会議員レベルでも理解できてない人がいて、辞任に追い込まれたりしているので何をか言わんやだが、将来、明確な基準によるコンセンサスが出来たとしても浸透するまでは常に他人の目を意識して輪行すべきだし、何と言っても最後は人と人なので、最近の若い者はと嘆くより分かってない輩にはこっそり教えてあげる必要がある。
知らなかっただけで案外素直に聞いてくれるかもしれない。これは自転車が市民権を得るためにも必要なプロセスなのだと思う。

自転車と電車の未来に
きっかけは輪行マナーに関するツイートの波紋最近何かと話題の「輪行」。きっかけはTwitterでサイクルライフナビゲーターで自転車MCと...
輪行マナーについて(1) これが、SNSで聞いてみたまとめです - FRAME : フレイム
https://www.youtube.com/watch?v=tBbGI4HPBVYFRAMEの動画ディレクターとしておなじみですよね、You Tuberけんたさん。この動画では、...
けんたさんが輪行マイスターに聞く!「完璧な輪行のやり方」そのポイント - FRAME : フレイム
B!

あわせて読みたい!

関連記事を読む

広告を表示できません。

最新記事を読む 同じカテゴリーの記事を読む
モバイルバージョンを終了