日本一自転車乗りの権利を考える内海さんと考えた | どうして減らない? 自転車の飲酒運転について

皆様、こんにちは。FRAME編集部です。
梅雨も明け、暑くなってきて、野外フェスやビアガーデン、はたまた納涼会など、お酒を頂く機会が増えますよね。そこで問題になるのが「自転車の飲酒運転」。FRAMEでは、Twitterで以下の無記名アンケートを行ってみました。

FRAMEのTwitterフォロワーの皆さまは真面目な自転車クラスタが多いようです。でも実際、飲み屋街などでは飲み屋の外に客のものとおぼしき自転車が駐輪されているのを見かけることがありますよね。この問題について日本で一番自転車乗りの権利を考える*内海潤事務局長に、考えをお聞きしてみました。では、内海さんのエッセイをどうぞ。

飲み会あるから自転車?

 梅雨が明けて本格的な夏が到来した。さっそく暑気払いに行かれた方もいるだろう。この時期は夏バテ防止と英気を養う意味で、しっかり食べ、ぐっすり寝ることが重要だ。翌日まで疲れを残さず元気に夏を乗り切りたい。
 さて子どもたちが夏休みに入ったので、手の空いた部活顧問の先生方と保護者会の父兄が週末の夜に居酒屋へ繰り出す機会なども出てくるが、そんな時は自転車で出かける方も多いはず。少なくとも私の周りでは飲み会の帰り道に買い物をしたいからと、父兄の大半が自転車で飲み会に参加していた。彼らには「クルマと違って自転車には免許証がないから飲んで乗っても大丈夫」という感覚がある。それ以前に自転車にも飲酒運転の罰則があることを知らない人が多い。場所によっては居酒屋に駐車場まであって驚いてしまうが、客が車両(自転車を含む)を運転するのを分かっていて酒類を提供すると道路交通法(以下、道交法と略)違反で店も同席者も罰せられることを認識しなければならない。
 ほんの一杯のつもりが杯を重ね、判断力が落ちたところに飛び出しでもあると操作が間に合わずに轢いてしまう…。飲酒運転による事故は本人の「きっと大丈夫だろう」という軽い思い込みがベースにあるが、誤って前途ある若者を死なせてしまうと刑務所で一生かけて償うことになる。これまで飲酒運転して事故を起こさなかった人は、たまたま運が良くて犯罪者にならずに済んだだけ。十分に反省して今後一切やらないことだ。

飲酒運転の罰則強化の歴史

 道交法が施行された1960年の段階では飲酒運転の罰則規定がなかった(飲酒運転は最初から禁止)が、1970年に酒気帯び運転(呼気1L中のアルコール濃度0.25mg以上)は違反点数6点で3月以下の懲役または5万円以下の罰金、酒酔い運転(呼気濃度に関わらず正常な運転ができないと判断された場合)は15点で2年以下の懲役または10万円以下の罰金と定められた。しばらくこのままだったが、飲酒運転の悪質化に伴って2002年に酒気帯びの基準が下げられ呼気中濃度0.15mg以上0.25mg未満が違反点数6点で1年以下の懲役または30万円以下の罰金、0.25mg以上が13点で罰則は同じ、酒酔い運転は25点で3年以下の懲役または50万円の罰金となった。2007年には同じ基準で罰則が強化され、酒気帯びが3年以下の懲役または50万円以下の罰金、酒酔いが5年以下の懲役または100万円の罰金となる。さらに2009年には同じ罰則のまま違反点数が変わり酒気帯び0.25mg未満が違反点数13点(免停90日)、0.25mg以上が25点(免許取消)で欠格(免許取得できない)期間2年、酒酔いが35点(免許取消)で欠格期間3年と強化されて今日に至っている。もっとも軽い免停30日の場合、講習を受けると停止期間が短縮されて、最短で1日乗るのを我慢すれば晴れてまた運転することができるが、飲酒運転だと一発免停で短縮されても1カ月半は運転できない。免許取消で欠格期間ありの場合、人によっては生活に支障をきたす場合もあるだろう。ここまでしても無くならないのかという印象である。

海外とは事情が違う
海外とは事情が違う

自転車の飲酒運転は関係ない?

 ここまで読んで、クルマの飲酒運転は厳罰化で免許取消まであって大変だ。自転車なら一安心と思っていないだろうか? いやいや安心するのはまだ早い。この罰則そのまま自転車にも適用される。つまり自転車の飲酒運転でも事故を起こして酒酔いと判断されたら5年以下の懲役または100万円以下の罰金刑に処されることがあるので、対象外と安心していられないのだ。バレなきゃいいと繰り返している内に常習化してしまい摘発される事例が後を絶たない。先日、千葉で摘発された女性は3時間の有料講習で済んだが、事故で相手を死なせていれば講習受講では済まなくなる。クルマの免許をお持ちの方はさらに恐怖していただきたいが、2015年1月に東京都杉並区内の国道で男性が酒気帯び状態で自転車を運転し、漫然横断したことが原因でオートバイと事故が起き、オートバイ運転者は死亡、自転車を運転していた男性は骨折などの重傷を負うという事故があった。取り調べで飲酒運転に加えて、男性は以前から横断歩道や信号機が設置されているところまで遠回りするのを嫌い、漫然横断や右路肩通行を繰り返していたことも発覚。これを受け、公安委員会は「交通規則を守ろうとする意識に欠けており、クルマの運転中にも同様の危険行為を行う可能性がある」と判断、男性の運転免許を180日間の停止処分としたのだ。自転車の違反でクルマの免許が停止になる事例は全国で増えており、今後さらに加速するだろう。

美味しいお酒に飲まれないようにしたい
美味しいお酒に飲まれないようにしたい

なぜ厳罰化の傾向にあるのか?

 クルマにせよ自転車にせよ、人を轢いて死なせてしまっても故意でなければ殺人罪は適用されない。ところが飲酒運転で愛する人を失った遺族はやりきれない。あまりに罰が軽いのではないかと多数の署名を集め危険運転致死傷罪が新設されたことも厳罰化の背景にある。これ自転車運転者は対象外だが、事故を起こせば業務上過失致死傷罪または重過失致死傷罪に問われることはあるので決して「自転車だから安心」という話にはならない。また事故の大半は故意でなく過失。高齢者に良くある「今まで大丈夫だったから明日からも大丈夫」という根拠のない自信は捨てて自転車保険に加入すると共に「飲んだら乗るな、飲むなら乗るな」を徹底させてもらいたい。とにかく事故を起こしてしまってから反省しても遅すぎるのだ。緊張感を持ち、五感を集中させて運転するよう心がけていただきたい。そこに免許証のあるなしは関係ない。自転車でも事故を起こせば相手を死なせてしまう危険性があることを認識したい。事故で亡くなる人数は毎年減っているが、自転車の事故は減り方が少ない。もしも自分の子どもが飲酒運転の自転車に轢かれて亡くなったら交通事故だから仕方がないと簡単に諦められるだろうか? 罪を悪んで人を悪まずと納得できるだろうか。加害者が飲酒してなければ助かったかもしれないと思うとやりきれないのではないだろうか。加害者になって刑務所で一生を終えることになる前に考えたい。

いかがでしたでしょうか。友人がお酒を飲んだ後に自転車に乗って帰るのを「それは違反だよ」と言って止めるのは、なかなかハードルが高いかもしれません。でも、万が一のことを考えると、その友人のためになると思いませんか?

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

あわせて読みたい!

アバター画像

WRITTEN BYFRAME編集部

FRAME編集部はロードバイク、MTB、ミニベロ、トライアスリートなど、全員が自転車乗りのメンバーで構成されています。メンテナンスなど役立つ情報から、サイクリングのおすすめのスポット情報、ロードレースの観戦まで、自転車をもっと楽しくするライフスタイル情報をお届けします。 https://jitensha-hoken.jp/blog/

他の記事も読む

pagetop