熱狂的自転車ロードレースファン、ツール・ド・フランスで見かける「悪魔おじさん」ってどんな人?
ツール・ド・フランス中継で必ず見かける、赤と黒の衣装のキテレツなあの人
ツール・ド・フランスの中継にしばしば登場する悪魔おじさん。いったいどこの人? 年齢は? 仕事はしているの? などなど、疑問に思うことも多いのではないだろうか?
そこで、悪魔おじさんを徹底的に解剖してみようと思う。
悪魔おじさんの本名は
名前は「ディディ・ゼンフト」、ドイツ人です。
もはやツール・ド・フランスの沿道のシーンになくてはならない存在となった「悪魔おじさん」ースペイン語でエル・ディアブロ(El Diablo)と呼ばれる。私もツールの取材中、毎日のように彼と遭遇し、そのたびに「ディアブロ、今日の調子はどうだい?」、「今日も絶好調だよ、日本の兄弟」なんていう挨拶をかわしていたものだった。一度、インタビューしたこともあったが、これまでそれを記事にしたことはなかったので、ここでご紹介したいと思う。
悪魔おじさんを実際にインタビューしてみたら
彼の名前は「ディーター・ゼンフト(Dieter Senft)」。一般的に「ディディ(Didi)」の愛称で親しまれている。出身はドイツ・ブランデンブルク州ライヒェンヴァルデ。生年月日は1952年2月7日で、今年65歳となった。彼はツール・ド・フランスを主催するA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシオン)に雇われているわけでもなければ、どこかのチームを特別に応援しているわけでもない。自転車レースが大好きで、ツールのみならず各地のレースへ応援に行く熱狂的な自転車ファンなのである。
トレードマークは、赤と黒の悪魔コスチューム。頭には角が生え、手には三叉槍を持つ。いつもクルマで移動していて、そのクルマは大きな自転車のモニュメントを牽引している。なので、遠くからでも「あっ、悪魔おじさんがいるな」とすぐわかる仕掛けとなっているのである。さらに、ツールの沿道でディディが応援している場所の手前数kmのところには、路面に三叉槍のペイントが施され、選手たちも「あっ、この先に悪魔おじさんがいるな」とわかる仕掛けとなっている。若い選手の中には、悪魔おじさんに応援されることによって、「ああ、ツールという非日常の空間にいるんだな」と感動に浸れることもあるというから、その存在意義は極めて大きいといえるだろう。
実は元アマチュア自転車選手、優勝経験もあり
ディディ自身も若い頃はアマチュアの自転車選手だったということで、ドイツ国内のアマチュアレースで何度か優勝したこともあるという。ツール・ド・フランスの沿道で悪魔コスチュームを着て応援するようになったのは1993年からで、以来2012年に手術を受けるために欠席しただけで、あとはすべてのツールに応援に駆けつけている。それだけではない。ジロ・デ・イタリアや世界選手権など、ツール以外のメジャーなレースに顔を出すこともしばしば。時には自転車レースだけでなく、マラソンの大会などにも現れるというから、そのバイタリティには驚かされる。現在は年金生活をしているため、その活動にはスポンサーの存在も重要なようで、「お金を出してくれれば、どこの大会にでも行くよ」ということだった。ジャパンカップやツアー・オブ・ジャパンなどの日本のレースにも招待すれば、大人気になること間違いなしだろう。