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安心して停められる駐輪場が増えると、自転車に乗る人がもっと増える!?

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新国立競技場に見る行政の「駐輪場過小評価」

新国立競技場に整備される予定の駐輪場は何台分あるか、ご存知だろうか? 

この規模にたったの90台!?

出典:JAPAN SPORT COUNCIL(日本スポーツ振興センター)

計画書を読むと90台程度を確保と書いてある。旧国立競技場が60台だったから収容人数が1.6倍に増えるので単純に掛けただけ。冗談じゃない。少なくとも1桁間違っているのではないか。シェアサイクルのポートも多数設置する必要がある。東京オリンピック・パラリンピックの開催という千載一遇のチャンスを活かして閉幕後にはレガシーとなる自転車インフラの整備を加速させたいが、通行空間の整備だけでは自転車活用の推進力に欠ける

自転車を安心して停める場所がないと、出掛ける際にためらってしまう。1人だし、天気もいいし、荷物も少ないからクルマではなく自転車にしようと思っても、行った先で安心して自転車を止められる確証がなければ「やはり電車かクルマにするか・・・」と思うだろう。都心にクルマの駐車場は山ほどあって空いているのに自転車の駐輪場は探すのが大変だ

自転車は「1日23時間」停まっている

自転車はドア to ドアで移動できるのが強みだが目的地から遠い駐輪場に停めるのならメリットは相殺されてしまう。まして高い自転車ならパーツを盗られやしないか、傷を付けられやしないか、ずっと心配しなければならなくなる。

カギを2つ、地球ロックでもプロに狙われたらひとたまりもない

ロックは2つ、ひとつはアースロックを心掛けていてもプロの手にかかれば瞬殺だ。バラバラに分解されてヤフオクで売り捌かれるか、海外へ持ち去られるか。ネット上で情報拡散を呼びかけても発見できないことが多い。自宅での管理も気が抜けない。知人はガレージに置いてあったロードバイクを盗まれた。屋内に置ける方ばかりではないし、自転車は1日の内23時間は停まっているものなので、もっと停める場所のことを考えたい。

サイクルラックは最高のおもてなし、愛媛県は行政主体で推進

先日、松山で全国会議があり半年ぶりに愛媛県を訪れた。ご存知の通り愛媛は中村知事がサイクルジャージでポスターに載るくらいの自転車推進県だから、県下の企業も協力体制ができている。

中村時広愛媛県知事は自転車を大々的にアピール

例えば愛媛県内にあるセブン・イレブンには全店舗にA型ラックが設置されている。しまなみ海道のブルーライン沿いにはコンビニをはじめ、要所に必ずラックが置いてある

しまなみ街道沿いのローソン

しまなみ街道沿いのサークルKにはテントとラック

尾道U2にも当然ラック

サイクリストの聖地にはユニークなラックが

サイクルオアシスにもA型ラック

サイクリストを歓迎する上でひと目で分かる「お・も・て・な・し」は自転車ラックの設置である。A型ラックは量産品だからリーズナブルだし、どのコンビニにも大きな駐車場があるから問題にならない。都会には駐車場のないコンビニやスポーツバイクの何倍も重たい電動アシスト自転車のユーザーも多いから簡単には行かないが、この一連の流れを愛媛県下だけでなく全国へと広めたい。

愛媛県提供のラック

大都市部の救世主、スーパーの駐輪場が抱える問題

また、スーパー店頭などにある「駐輪60分無料・その後は1時間ごとに100円」という時間貸し駐輪場を利用したことはないだろうか。買い物をするだけなら無料の範囲で十分足りるはずだが、実際は買い物に留まらず別の用を足しに店を離れる人が多いのでお金が落ちる。各店舗の精算機を監視センターとネットで結び、何かトラブルがあれば連絡することができるようになっているのだが、大きなトラブルもなく日々お金がチャリンチャリンと入る。

きちんと前輪がロックされた状態

寸止めでロックをかけず違法駐車している状態

聞けば、ラックに前輪をロックせず手前で寸止めする輩も多いらしい。駐輪ラックに収めず料金を払わないのはマナー違反と言っていいだろう。まあ駐輪機付近に置いているだけまだマシで、駐輪禁止と大書された看板が置かれた歩道上に堂々と停めて、スーパーを利用する不届き者も少なからずいる

これだけたくさん駐輪、放置禁止と書いてある前に堂々と停めている

運営側にしてみれば課金できるはずの利用者から料金を取り損ねている訳で、それで会社が立ち行かなることはないものの本来もっと収益が上がるはずだ。彼らは上がった収益の中から新たな設備に投資して、高機能駐輪場を増やしているので応援してあげて欲しい。彼らの営業努力で大きな都市の駐輪スペースが足りない場所に、この60分(時間は場所による)無料の駐輪場が増えている。

おちおちトイレにも行けない高級自転車オーナー

一方、高級自転車オーナーの中には自宅を出てから帰宅するまで、片時たりとも自転車から離れないようにしている人がいる。当然ながら公衆トイレにも持ち込む目を離すと盗られるかもしれないという不安から、変人と呼ばれても仕方ない行動を取ってしまう。彼らだって安心して停められる駐輪場があれば安心して用が足せるのに常に緊張しているのでは気の毒だ。わざわざトイレにまで持ち込んで見せびらかしたい訳ではあるまい。

せめて用足しくらい自転車を気にせずゆっくりしたい

高級自転車ユーザーのために外からアクセスできない自転車ボックスという商品も以前から存在した。海外には駅前などに鍵のかかるサイクルロッカーを設置してある都市もあるが、日本の駐輪場業界は場所を取るとか、どういう人が使うか見えないとか、導入コストがかかるとか、できない理由を次々に挙げて設置してこなかった

全国で何十万台も管理している駐輪場の一角を実験場として何種類かの自転車ボックスを試しに置いてみれば色々なことが分かるだろうに、全く怠慢にもほどがある。高級自転車ユーザーならば、一般の駐輪場より多少高くても安心を求めて利用するだろう。いくつかの企業がターミナル駅周辺に導入した事例も出て来たが、ユーザー側としては目的地付近に置いてくれないと使えない。

自転車を室内保管できて安心と好評のPEDALRest西新宿 (C)PEDALRest

 自転車を自動で搬送する機械式駐輪場が一部の駅前には設置されているが、やはり心配なく預けられる。カードとICチップの組み合わせで認証するタイプで地下深く、または地上高くにあるラックまで機械で搬送する。例えば技研製作所のエコサイクルは地下に204台収納できて、最短8秒出庫できるので待たされるという感覚はない。入庫したら人はアクセスできないから盗られる心配もない。

地上型の機械式駐輪場に入れた自転車をショーウインドウさながらにライトアップして見せるアイディアを提案したら、モバイルエコサイクルという移設可能な58台収納の駐輪場を開発してくれて国際会議Velo-city 2016 in 台北でお披露目したが、先日、港区が六本木に整備した地上型エコサイクルは428台収納で内部がライトアップされる最新型だ。六本木の新たな名所になりそうな予感がしている

六本木に誕生した地上型エコサイクル

ネット時代の新サービス駐輪場も続々登場

 自転車の駐輪場にIoTを導入することが、ひとつの活用推進策になりそうだ。空き駐輪場を検索できるサービスは既にカットオーバーしているが、どの駐輪ボックスが空いているか、使用中かを地図上で検索できる次世代のサービスが、まもなくカットオーバーする。既にプロトタイプが完成してサイクルモードに出展していた。株式会社プラン(本社:東京北青山、小林智明社長)が開発したBikeBoxは電源を屋上に設置したソーラーパネルで賄うから、低コスト運用が可能だ。施錠したら自転車にさわれないからパーツを盗られる心配もない。目的地の近くにあれば重宝しそうだ。

株式会社プランが開発中のBike Boxイメージカット

出典:株式会社プラン

 他にも、みんちゅうという完全成果報酬型の駐輪場・駐車場シェアサービスがある。こちらはデッドスペースとなっている空間を駐輪場として貸し出すことができる。あらかじめ空き地を登録してもらい、地図に駐輪場として掲載して利用者が予約できるシステムを提供している。手数料35%で65%が貸出者の懐に入る仕組み。

駐輪場・駐車場シェアサービスのみんちゅう

出典:みんちゅう

他人の敷地に勝手に停めると違法駐輪だが、料金を支払って了解の上で駐輪できるなら、選択肢は広がり土地の有効利用になる。初期費用0管理費0を謳い文句にしており、今後のサービス拡大に期待したい。ちなみに株式会社ドコモ・バイクシェアがシェアサイクルに関するアンケートを取り、以前は利用していたが最近は利用をやめたと答えた利用者の最も多かった回答は「ポートが目的地の付近にない」という理由であり、ポートが細かいメッシュで網羅されていることが利用拡大の必要条件になると分かっている。

もはや駅前駐輪場だけでは不十分、駐輪場増設の声を上げていこう

 長い間、自転車の扱いは一部のマニア以外を除いて下駄代わりだったから、駅やスーパーまでの足でしかなかった。1980年に成立した旧自転車法のことを駐輪場法とも呼ぶが、1994年に改正されて市町村が放置自転車を取り締まる根拠となった。施行により鉄道事業者の協力が得られ各駅には駐輪場が整備されたし、スーパーなどには付置義務が課された。自宅周辺には必要な台数の駐輪場が確保できて、往時は全国で100万台近くあった放置自転車は2015年には約8万台と1/10以下になっている

整備はされたがいまだ駐輪場は不足している状況だ

変化に対応できておらず今でも放置対策を自転車施策の中心に据えている自治体が散見されるものの、自転車は街の迷惑者から自転車活用推進法の施行によって国民の利益の増進に資する存在へと文字通り豹変した。自転車で出掛けようと思った人を心配させないよう通行空間に加えて、小規模でも安心して停められる駐輪場整備を同時に進めて行く必要がある。

とは言え、シェアサイクルのポート確保でも苦労しているのに一般の駐輪場が確保できるのだろうか? 諦めるのは早い。自治体も政治家も市民の声が一番怖い。声を上げよう、いたるところに駐輪場が欲しいと。

場所ならある。道路沿いの植樹帯やバス停の脇、シェアサイクルポートの隣、中央分離帯、そして空き地やビルの一角。冒頭に書いた通り都心には空いている駐車場も多い。クルマ1台分のスペースに自転車なら6台駐輪できる。駐車場の用途を自動車から車両に変えればいいだけの話だ。

声なき声は残念ながら届きにくいし、一人で叫んでいてもダメだ。仲間を集めよう自活研に入会してくれてもいい。今回紹介した新たなサービスにも期待大だ。少しずつ世の中を変えて行こう。

B!

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