自転車が欲しいけど高くて手が出ない。中古でいいから安く買えないかな。そんなニーズに応えるサービスが日本にはいくつかある。
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安物買いの銭失いにならないように
▲中国の廃棄シェアサイクルの山 画像出典:トーイチャンネット
中国で大ブレイクしたシェアサイクルが廃棄されて大量の金属ゴミになっているという報道を見るといたたまれない気持ちになるが、日本では物を大切にする文化が今後ますます浸透するだろう。
使っている自転車を譲渡して、そのまま別の人が使うことを厳密にはリユースと呼び、リサイクル自転車は修理してまた乗れるようにした物を指す。
現状で中古自転車の市場は中古自「動」車マーケットより桁外れに小さく、相場観も固まってない状態。素人が見ただけでは自転車の状態がまったく分からないので、信頼できる店から買うことが絶対条件だ。
個人間売買はハイリスク
▲個人間売買は返品が難しい場合が多く、ショックを受ける結果になることもある
筆者は昔ヤフオクで中古自転車を買った経験があるが、買った後でヘッドショックに難点を発見したという悲しい思い出がある。
個人間売買である以上3N(ノークレーム、ノーリターン、ノーキャンセル)を覚悟する必要があるし、出品者は何らかの事情があって手放すワケで、それが金欠だからなのか、盗品を捌きたいからなのか、不具合があるからなのか分からないことが多く、状態を触って確かめることも出来ないので、写真とコメントを信じて買うのはリスクが高いと言わざるを得ない。
ジャンク品と分かって買うなら別だが、完動品と書いてあったにも関わらず、まともに動かないケースだってゼロではない。自転車は一時的にせよ命を預ける乗り物なのだから、安さばかりを重視していると後でしっぺ返しを食らうことになるから要注意だ。
個人間売買以外の入手方法とは
ヤフオクやメルカリ、ジモティーなどを通じて個人間売買する方法は掘り出し物を格安でゲットできるチャンスもあるが、おしなべてリスクが高いことを理解してもらえたと思う。
では、それ以外にはどのような方法があるのだろうか。ひとつはリサイクルショップ(古物商)から買う方法だ。一口にリサイクルショップと言っても千差万別なので、その店が自転車をどのように考えて扱っているのかを確認する必要がある。
▲スポーツサイクル・パーツ買い取り販売のチェーン店、サイクリー 出典:サイクリー
例えば、サイクリーという自転車用品売買のチェーン店があるが、自転車専門でやっており自転車整備士などの資格を持った担当者が整備した商品を売っているので、まあ安心できる。
家具中心の一般リサイクルショップの場合、あくまで自転車は商品のひとつでしかなく完璧な整備状態が期待できないので基本的には手を出さないこと。自転車が何台も並び、メカニックが常駐しているような一般リサイクルショップがあるのかどうか知らないが、実在するとして、自転車がメンテナンスされた状態で売られているのであれば考えてもいい。その上で自転車の不具合があれば診てもらえるのか確認しよう。
たいがい街中のリサイクルショップの場合は自転車も他の商品同様に売り切りであり、販売後のメンテナンスまでは面倒を見てくれない。自転車という代物はママチャリからロードバイクまでメンテナンスなしに乗り続けることはできず、使っている内に不具合が出るのが当たり前だということを認識してもらいたい。
例えばペダルを漕ぐたびに異音が出るのは、どこかに不具合がある証拠。自転車は原則として無音でスムーズに走るものであり、定期的なメンテナンスが不可欠なので自転車を通販で買うのはオススメしない。
それとは別にカーボンフレームの自転車を中古で買うのはリスクが高いので、信頼できるショップで、かつ1年間保証を付けてくれるなどのヘッジがあれば検討してもいい。
カーボンフレームは軽くて振動吸収性に優れるが、金属製フレームに比べデリケートで小さな亀裂から広がってフレームが破断することがある。亀裂は内部で進行する場合もあるが、非破壊検査で確認済みのフレームならば安心できる。
自治体が販売するリサイクル自転車
▲錆びた自転車もキレイによみがえらせる 出典:交野市
自治体が放置自転車を強制撤去したあと、一定期間保管しても引き取り手が現れない場合は修理して販売することがある。
自治体の場合は実店舗を持たないので常に買えるワケではないものの、自治体主催のイベントなどで展示され、希望者が多い場合は抽選となるけれど、格安でゲットできる場合がある。地元シルバー人材センターの方々が必要最低限のメンテナンスをして販売するので品物は心配ないが、必ずしも希望する自転車が買えるワケではないのでコダワリのない方向け。
こちらも購入後のメンテナンスに関しては近所の自転車店に持ち込む必要がある。多くの自治体がホームページでリサイクル自転車の販売会を案内しているので、興味のある方はチェックしてみるといいだろう。季節ごとにイベントをやっている自治体が多い。
大学のサークルでリサイクルする場合も
▲チャリさがさいせいの活動の様子 出典:チャリさがさいせいFacebook
大学というところは毎年、新入生が大量に自転車を買う一方で卒業生は自転車を大学に置いて出て行くので、放置自転車が増えて仕方がない。このアンバランスな需給バランスを少しでも改善しようと悪戦苦闘しているサークルのメンバーがいる。
九州の佐賀大学には「チャリさがさいせい」という60名ほどのサークルがあるのだが、毎年出る大量の放置自転車からまず防犯登録を解除し、修理してから販売している。
新入生が新しい自転車を買う前にリサイクル自転車の存在を知ってもらい、安ければ新品にコダワラナイ学生に買ってもらう。何が楽しくて活動しているのか理解しがたいが、学生たちはとても楽しそうにやっている。自分たちが他人の役に立つことを喜びにしているようで、今風の社会起業家に近い発想なのだろう。
自宅付近に大学がある方は新入生歓迎イベントに顔を出してみるといい。佐賀大以外にも千葉大で同様の取り組みがあると聞いたことがあるので、大学によってはリサイクル自転車を格安で入手できるかもしれない。
学園祭企画「Re:CYCLING」。乗らなくなった自転車を再生し販売するプロジェクトショップです。今年も目玉商品が出揃っています。売り切れ必至です! #cycle #東京サイクルデザイン専門学校 #自転車 #bicycle #学園祭 #専門学校 pic.twitter.com/jdYNFbx2Oi
— 東京サイクルデザイン専門学校 (@TCD_cycle) 2017年10月7日
また、渋谷にある東京サイクルデザイン専門学校では毎年秋にMUGという文化祭があり学生たちがリサイクルした自転車を販売しているが、フレームビルダーになる修行をしているだけあってレベルが高い。毎年完売してしまうが、初日の午前中に行けば高確率で買うことができる。
防犯登録の申請と解除は確実に
▲防犯登録の一例。各都道府県により金額や書類形式は変わる。
出典:京都府自転車防犯登録推進協議会
自転車を買うと法律で防犯登録をしなければならないことになっているが、登録しなくても罰則はない。ただし、登録していないと警察官に止められた際に「盗難自転車では?」と要らぬ疑いをかけられ足止めを食らう可能性が高いので登録しておこう。
登録証(黄色)と同じ番号が書かれた登録カード控え(紙)を携帯しておくと、職質の際スムーズに解放してもらえる。エリアによっても異なるが東京都の場合は登録料500円で10年間有効。10年を過ぎたら再登録の必要がある。
登録の際に渡される登録カードと免許証など身分を証明できる物を持って自転車店に持ち込めばOKだ。登録カードを失くしても登録証が自転車に貼ってあれば大丈夫。
自転車を他人に譲渡する場合は同様に自転車店へ持ち込んで解除してもらい、新しい所有者へ譲渡証明書を渡す必要がある。譲渡証明書はネットからダウンロードできるので、プリントアウトして記入しておく。これをしておかないと最悪の場合、新たな所有者が防犯登録を受け付けてもらえない。自転車店としては盗品かもしれない自転車に防犯登録することを嫌うからだ。大切に乗り続けてもらいたいなら最後まで面倒を見てあげよう。
自転車文化向上には中古市場の拡大を
▲中古車市場に広がるお手頃な中古車がクルマの流通の大きな要因になってきた
昔、中古車情報誌カーセンサーの大江編集長と一緒に仕事をしていた時、彼が言っていたのは「新車は、お金の余っている人が買えばいい。中古車になると1年落ちでもガクンと値段が下がるけど、クルマとしては慣らしが終わって真の実力が出てくる頃なので、もっと中古車に注目してもらいたい」だった。
もちろん誰の手垢も付いてないクルマの方が気分はいいし、前所有者がどういう使い方をしていたのかまでは分からない。それでも中古市場が存在することで新車に早く乗り換えることができるし、これから実力を発揮する中古車を格安でゲットすることもできる。
最近は若い人たちのクルマ離れで中古車も売れなくなっているのだろうけど、中古市場があることで多くの人がクルマを取得できて市場を活性化して来た。2017年の輸入車販売実績は景気回復で20年ぶりに30万台の大台に乗せたそうだ。
多くの高級輸入車ディーラーが認定中古車を販売しているように、高級自転車をリサイクルして格安で販売する企業が増えてくれると間口が広がって自転車人口はさらに増えるだろう。一部のコアな人たちは見向きもしないだろうけど、これから始めようかと悩んでいる人にとって敷居を下げる誘いが業界側からあってしかるべきではないか。
高級乗用車メーカーは毎年イヤーモデルを出すことで、強制的にフェイスアップして販売増を目指してきた。自転車業界も同様の戦略で展開してきたが、すでに一巡してしまっている。
中古車を頑張って売ったら、ますます新車が売れなくなると考えるのは早計で、新車が買える人はとうの昔に買ってしまっているのだから、新たな顧客(ニューエントリー)層を開拓してファンを増やして行かないといけないことくらい、とっくに気づいているはずだ。「売れない」とこぼすばかりでは見通しも暗い。
将来にわたって自転車ファンを増やすためにもリサイクル自転車の存在感が上がっていくことを願う。そのためには最初の印象が大切。中古でも整備状態のいい自転車は快適に走るという認識を浸透させるのがミッションだ。
直営店を持っているバイクブランドの皆さん、旧車を下取る買い替えキャンペーンを展開してみてはいかがだろうか。認定中古自転車というカテゴリーを切り拓き、定着させれば売上・利益とも大幅に伸ばすチャンスが待っている。
TOP画像:東京サイクルデザイン専門学校Facebook