自転車に貼られたあのシール。意外と知らない「防犯登録制度」の仕組み

都道府県警察名と管理番号が書いてある防犯登録標識(登録シール)はみなさん見たことあるだろうか? 自転車を購入すると当たり前のように防犯登録するよう販売店から言われ、登録とともにこのシールを貼られるけれども、登録しないと罰せられるようなものだろうか? 

制度のあらましと登録方法

普段、何気なく見ているが制度の中身についてはよく分からないという方が多いので、まずは制度について説明する。そもそも自転車の防犯登録が義務化された背景として、駅前を中心に多くの自転車が放置されていたことにより、人の通行や活動を妨げる社会問題になっていたことが挙げられる。放置自転車の何割かは盗難された自転車であり、所有者が現れないまま、いつまでも放置されることになるので、防犯登録を義務化して所有者を特定し、速やかに返還することで放置自転車を減らす目的があった。

 自転車防犯登録制度は昭和55年(1980年)に成立し、平成6年(1994年)に改正された「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」の第12条に規定があり、登録が義務化されている。

 自転車を新規に購入した際のほか、有効期限が過ぎたり、譲渡等により所有者が変わった際、県をまたいで引っ越しした際は都道府県の公安委員会が指定した防犯登録所で登録し直さなければいけない。例外として、結婚で姓が変わった場合などは登録内容を修正してもらえる(無料)。登録料は概ね500~600円(非課税)だが、 後述する通り県によって有効期限は大きく異なる。

登録時に必要なものとしては以下のものが挙げられる

  • 自転車本体
  • 公的機関発行の身分証明書(運転免許証・健康保険証など)
  • 外国国籍の方は外国人登録証明書
  • 保証書または販売証明書(販売店名・商品名・車体番号などが全て明記されているもの)
  • 登録料

となっている。

 再登録の際は自転車本体と登録シール(車体に貼ったままでよい)を持参しよう。シールを剥がしてしまった場合には登録カード(登録時に渡されるお客様控え)でも大丈夫。ここで注意なのが、登録シール、カードともにない場合。盗難車ではないという証明が難しくなってしまうのだ。スマホで登録カードを撮影、保存しておくなど、万が一に備えておきたい。

 新車購入時は販売店が強制的に貼付するので問題ないが、それ以外は利用者任せになっているので、無効になった登録シールが貼られたままになっていたり、有効期限内でも登録シールが剥がれてしまっていたりすることも多いだろう。だが、盗難された際に戻ってくる可能性が高まるので、居住地を移転した場合なども面倒臭がらずに移転先で防犯登録所になっている警察署や自転車販売店へ持ち込みたい。盗難された際は身分証明書と登録カードを持って最寄りの交番などへ行き、盗難届を作成してもらおう。

登録しないと罰則はあるの?

登録シールが貼られていなければ、警官に所有を証明するのは困難
▲登録シールが貼られていなければ、警官に所有を証明するのは困難

 防犯登録は義務化されているが、罰則規定がないので登録しなくても罰せられることはない。登録シールが貼られていないという理由で警察官に呼び止められることもないが、職務質問などで呼び止められると厄介だ。「なぜ、登録標識が貼られていないか?」というところから説明責任が生じる。それだけでも気が重いところに、自分の自転車だということを証明する手段に乏しいので「盗難車ではないのか」という疑問を晴らすのには大変な労力を要する。

 登録カードを財布などに入れて携帯しておけば所有者が一目瞭然になるので、あとは本人だと証明する免許証などを見せればいいだけだ。数百円ケチって警官を見るたびドキドキするのはナンセンスだと思うが、いかがだろうか。

登録漏れもあり?!ネット販売の落とし穴

便利なネット通販だが、自転車については慎重に判断したい
▲便利なネット通販だが、自転車については慎重に判断したい

 自転車は機械モノなので定期的なメンテナンスが欠かせないこともあり、できる限り実店舗で購入して時々点検してもらってほしいが、今やネット通販全盛時代である。他の商品群と同様に自転車もポチッと買ってしまう方が増えている。それゆえ、防犯登録について説明しないまま完成車を売る業者が後を絶たない。

 この場合は利用者の方で防犯登録をする必要があるが、自転車防犯登録所の看板を表示している販売店へ自転車本体を含め必要なものを持って、わざわざ出向かなければならない。

 その際に真新しい自転車ならまだしも、経年劣化が認められ登録シールも貼られてない自転車を持ち込まれると、販売店としては「盗難自転車ではないのか?」という疑念に苦しむことになる。それが高級自転車ともなれば、なおさら慎重に前所有者の譲渡証明書や自転車店の販売証明書を確認しなくてはならない。そういった一連の作業が面倒だからと、新車であれ中古車であれ、他店購入の自転車は防犯登録手続きを受け付けないと決めている販売店もあるくらいだ。

 かつて筆者も通販やオークションで自転車を買って散々痛い目に遭った経験があるから改めて言うが、とりわけ高級自転車は信頼できる実店舗で買って、同時に防犯登録も済ませてしまいたい。

登録の更新や名義変更はどうすればいい?

 前所有者が作成した譲渡証明書があれば、わざわざシールを貼り変えずに所有者の名義変更でいいじゃないかという声も聞くが、現在のシステムでは一旦登録を抹消してから再登録する必要がある。ただし県内の引っ越しや3親等以内の家族から自転車をもらった場合、結婚時の姓名変更は交番・駐在所、警察署へ行けば無料で修正してくれる。

 また意外と見落としがちなのが、登録には有効期限があるという点。防犯登録の有効期限は最短の京都府・沖縄県の5年から始まり、7年、8年、10年、20年、無制限と都道府県によってマチマチなので、登録したら一度ご自分の県では何年で有効期限が切れるのか、確認することをオススメする。

 もう譲渡すらせず、粗大ゴミで処分する場合には抹消手続きをしておこう。まだ乗れて、値段が付くならオークションで売ってもいいが、その際は登録の抹消に加えて、先述の譲渡証明書を各県の防犯協力会ホームページからダウンロードして作成しておき、新所有者へ渡してあげよう。いずれも自転車本体を防犯登録所まで持って行かなければならないのが手間だが、万が一登録情報が生きたままだと新所有者に迷惑が掛かることがある。

以下、東京都の防犯協会のサイトを参考までに。

 東京都自転車商防犯協会

「防犯」なのに防げない。防犯登録制度の問題点とは

施錠をしていても盗難されることはある。そのときにどうするか?
▲施錠をしていても盗難されることはある。そのときにどうするか?

 いざ愛車が盗難された場合にこの制度で登録されたデータベースを利用して、ただちに捜索を!と思うかもしれないが、ここに大きな問題がある。

 自転車を盗まれた場合は最初に交番へ届け出ると思うが、防犯登録制度は都道府県によって有効期限が異なるほか、各県の警察本部ごとにデータが蓄積されていて所有者情報が開示されないことになっており、他都道府県での登録されている場合は直接データ照会ができないのだ。自転車が犯罪に使われた可能性のある場合や自転車事故で本人の意識がない場合などに限り、登録された県の警察本部に依頼して照会するが、これも時間がかかってしまうのが難点だ。これだけインターネットやクラウドサービスが普及して技術的に何ら問題がないのに、所有者データが全国で共有されていないというのは怠慢だと思われても仕方がない。

 また全ての自転車を防犯登録することになっているが、防犯登録所である自転車販売店の登録作業は義務化されていないため、実際には登録漏れが存在するし、登録シールも剥がそうと思えば剥がせてしまう。登録時に必要となる車体番号はメーカーが独自に刻印しているものであり、国から割り当てされたものではないので同じ番号の別車体が存在し得る。

 それと「防犯」とは言うものの、実際には犯行を防ぐ効果はなく、盗難された後の発見と返却に効果があるだけなので、今後は車体の位置情報を把握することで防犯機能を付帯すべきである。現状では窃盗犯が登録シールを剥がして転売すると、時間差で旧所有者、新所有者それぞれに容疑が掛かることがある

運用から四半世紀。そろそろ制度の見直しが必要

GPSの普及により盗難車を即時に追跡できる時代は近いかもしれない
▲GPSの普及により盗難車を即時に追跡できる時代は近いかもしれない

 一方で、義務化されてから24年近くが経過し、都道府県が独自のやり方で進めてきた防犯登録制度を抜本的に改善するには多大な労力を要する。いざやるとなると年金記録問題のようにコンピュータへの誤入力も気掛かりだ。また、外国から輸入する自転車の全てに車体番号を割り当てて刻印させるつもりか、そんなの無理に決まっていると言われることがあるが、果たして本当にそうだろうか。

 これまでも技術の進歩が不可能を可能にしてきたということは、インターネットの普及を見ても明らかだ。現在、我が国の上空には人工衛星「みちびき」が4機も打ち上がっているが、いずれは7機体制になる予定でアメリカのGPS衛星も加わり、より安く、より正確な位置測定が可能な時代が到来する

 すでにシェアサイクル大手のモバイクなどは自社のすべての自転車をGPS経由で位置特定し、どのような使われ方をしているかを情報処理し、ビッグデータとして自治体へ有料で提供を始めている。将来は所有する自転車が予期せず移動させられた場合は手元のスマホでアラームが鳴るばかりか、追跡できるようにさえなるはずだ。そうなって初めて、言葉だけだった「防犯」機能が手に入る。現在のように販売店へ防犯登録の手続きをするためだけに行く必要もなくなるだろう。

 もしかすると、従来の発想とは全く違うアプローチで、現在挙げられている幾つかの制度課題が簡単に解決できる時代が案外早く来るかもしれない。

監修者・現役プロメカニックの要点チェックリスト

●保証書の類いは保管しましょう
購入店ではないところで登録の依頼をする場合の所有確認に役立ちます。
●譲渡品の場合:譲渡証明の書類と保証書類をもらいましょう
●防犯登録の登録証は失くさないように大切に保管しましょう

※登録シールを貼る場所に決まりはありませんが、必ずフレームに貼ることになっています。
マッドガードやハンドルといったパーツはもちろん、フロントフォークもフレームではないので貼ないので注意!(ほとんどの場合は販売店が貼るので問題ないはずです)

決してカッコいいシールではありませんが 余計なトラブルを回避するためにも、そしていざ盗難に遭った時などのためにも 自身の所有を証明する唯一の手段として 防犯登録はしていただきたいですね!

サイクルアシスト オオバ 大場忠徳

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

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WRITTEN BY内海潤

NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長 東京サイクルデザイン専門学校の非常勤講師として次世代の自転車人を育てる一方、イベントや講演会などを通じて自転車の楽しさや正しい活用を訴える活動を続けている。テレビへの出演多数。共著書に「これが男の痩せ方だ!」「移動貧困社会からの脱却」がある。別名「日本で一番自転車乗りの権利を考えている*事務局長」(*FRAME編集部見解)

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