シャマルミレはハイスペック志向の初心者に最適!?カンパニョーロ・シャマルホイール大解剖
目次
ホイールを替えるということ
走りを変えたい——ロード乗りにとって、よくある課題だ。大まかに言えば「バイクを替えろ」となるが、そうもいかない財布事情。
そこで手っ取り早く述べるなら、ホイールの交換をおすすめする。軽くて進みが良く、剛性感のあるホイールを選ぶことで、初心者からの脱却、中級者のパフォーマンス向上を図れる。それなりのコストはかかるが、費用対効果が即に感じられ、走りの質を刷新してくれるのがホイールだ。
初心者だけど高性能に惹かれてしまう……!カンパニョーロという選択肢
人気のあるホイールメーカーはシマノ、カンパニョーロ、フルクラム、マヴィックといったところだろうか。各社ともに品質が良い軽量&高性能ホイールをラインナップしているが、群を抜いて憧れのブランドがカンパニョーロだろう。
プロ仕様のBORA(ボーラ)をはじめ、ZONDA(ゾンダ)やEURUS(ユーラス)など各グレードのホイールが展開されているが、今回ピックアップするSHAMAL(シャマル)はどういった立ち位置にいるのだろうか。
シャマル=アルミ製レーシングホイールのパイオニア
今回紹介するのは、カンパニョーロホイールの中でもミドルプロファイルの「シャマル」シリーズだ。実はカンパブランドの中でも最も歴史が長く、カンパニョーロ初の完組みホイールがシャマルである。
アルミ製ハイエンドなクリンチャーアルミホイールで、ライナップには「シャマル・ミレ」と「シャマル・ウルトラ」の2種がある。グレードは「シャマル・ミレ」のほうが高く、リムブレーキ式。一方の「シャマル・ウルトラ」はディスクブレーキ仕様とリムブレーキ式の2タイプある。以下、それぞれの特徴を記していこう。
SHAMAL MILLE(シャマル・ミレ)
アルミ製レーシングホイールの最高峰。パフォーマンスに関わる大きなアドバンテージを持ちながら、プラズマ電解酸化処理を施された表面処理がエレガントで艶のある外観となっており魅力的だ。この表面処理は、ウェット・コンディションでもドライ・コンディションでも、通常のアルミ・リムよりも確実で強力な制動力を発揮する(ブレーキパッドは専用品を使用)。
2017年に17Cにワイドリム化され、リム/タイヤ間のインターフェイスと25/28mmタイヤを装着した際の性能が大きく向上した。また、ブラックの酸化処理を施したアルミ製ブラック・アノダイズド・ニップルをリムの外側に配置している。これによりメンテナンスは容易になり、調整の頻度を少なくすることが可能となり、さらに外観は完璧なダーク・ルックスとなった。
スポークはフロント16本のラジアル組み、リア21本のG3組み。G3組みはカンパニョーロの他のホイールにも多用されているお家芸で、ドライブ側をダブルに組んで振動を抑え、横方向に対する剛性とホイールのパワー伝達を向上させている。
さらに「スポーク・アンチ・ローテーション」を採用。これはスポークを常にエアロダイナミック・ポジションに固定するシステムだ。
こだわりはベアリングにも現れている。前後で異なる径を使用する「セラミックUSBベアリング」である。フロント28mm、リア30mmとなっており、摩擦の軽減と軽量化、そして優れた回転性能を併せ持ち、長期に渡り高いパフォーマンスを維持する。
またリムの外側にスポーク・ホールのない「MoMag」を採用。構造自体の耐久性がアップし、リムテープの必要がなく軽量化に貢献している。
リムハイトは前25mm、後28mm。ディープリムほどのインパクトはないが、静かに主張するデカールがカンパニョーロらしい。
カーボン製ハブ・ボディが横方向に対する高剛性をもたらし、アルミ製アクスルがホイールの軽量化を果たしている。また「オーバーサイズ・フランジ」がねじれに対する剛性を向上させ、どんなペース変化にも高い反応性を発揮する。
肝心の走り具合だが、ユーザーの意見で目立つのは剛性の高さ。ダンシングでペダルを踏んでも、歪むことなく推進力に変換されるという声がある。特にヒルクライム時、トルクをかけるほど応えてくれるというのも特徴のひとつ。ロングライドも得意で、かつレースでもトレーニングでもオールマイティに使用することができるホイールだ。
ゾンダよりワングレード上が欲しい……シャマルミレがジャストマッチ!
価格は手が出せるギリギリのところ。初心者向けの第一候補ならば「ゾンダ」だが、より軽量でハイスペック志向の人にはぴったりだ。また、同価格帯のライバルにシマノ・デュラエース相応の「WH-R9170-C40」とフルクラム「レーシングゼロ」が挙げられるが、メンテナンスのしやすさとG3組みスポークのデザインの美しさ、ブランドイメージとしては「シャマル・ミレ」に軍配が上がるだろう。
価格:168,000円(税抜)
重量:1459g
SHAMAL ULTRA(シャマル・ウルトラ)ディスクブレーキ
クリンチャータイヤとチューブレスタイヤの両方を使用できる「2ウェイフィット」が特徴のひとつ。22mmのリム幅は重量とパフォーマンスの完璧なバランスを生み出し、25Cタイヤとの組み合わせでハイレベルの快適性を実現している。
リムハイトは前27mm、後30mm。ニップル・コンタクト・エリアに最大限の剛性を確保し、余分なマテリアルは切削。これにより軽量化とホイールの操作性が大きく向上した。
フロント・スポークはブレーキ側に14本、ドライブ側に7本のアルミ製エアロ・スポークを配置。リア・スポークはブレーキ側に7本、ドライブ側に14本のアルミ製エアロ・スポークを配置し、エアロダイナミクスと反応性を向上させながら、ディスク・サイドの剛性とブレーキ・トルクに対する高い強度を確保している。また、スポークの回転を防止する「ブラック・アノタイズド・セルフ・ロック・ニップル」を採用。
フロントとリアのスルーアクスルは、ひとつの仕様のみを製品化することで高いパフォーマンスを実現し、効果的にパワーを伝達する。さらに「セラミックUSBウルトラ・スムース・ベアリング」が円滑で、抵抗のない優れた回転を生み出している。
マイクロ・セッティングによる調整ロックは正確なハブ調整が可能。また「メガ・G3」システムのアルミ製リア・ハブ・ボディは効果的なエアロダイナミクスと反応性を実現し、ブレーキ・サイドは制動時にかかる大きなトルクを吸収する。
価格:172,000円(税抜)
重量:1557g
SHAMAL ULTRA(シャマル・ウルトラ)リムブレーキ
ディスクブレーキ仕様と同じく、こちらもクリンチャータイヤとチューブレスタイヤのどちらも使用できる「2ウェイ・フィット」だ。容易にタイヤが取り付けできる「ウルトラ・フィット」により最高の安全性と摩擦を軽減し、エネルギーの分散を抑制する。リム幅は17mmで、リムハイトは前26mm、後30mm。
独自の「メガ・G3」スポークパターンは、ホイール両側の完璧なスポーク・テンション・バランスを実現。ストレスを軽減し、横方向の剛性とホイールへのパワー伝達に優れている。
また「セルフ・ロック・ニップル」はリム上での摩擦をなくして、スポークの位置をキープしてテンションを最適化する。さらにアルミ製エアロ・スポークが最高のエアロダイナミクス性能を持ち、軽量化と反応性の向上となっている。
外側にスポーク・ホールのないリム・プロファイル「MoMag」や「スポーク・アンチ・ローテーション・システム」「オーバーサイズ・フランジ」などの技術は「シャマル・ミレ」から引き継いでいる。その乗り味も「シャマル・ミレ」同様、高い剛性感がある。クリテリウムやヒルクライムからロングライドやツーリングまで、多用途に使えるオールラウンドなモデルだ。
価格:151,000円(クリンチャー/税抜)
重量:1449g(クリンチャー)
価格:157,000円(2ウェイフィット/税抜)
重量:1475g(2ウェイフィット)
私がシャマルミレを使う理由
最後に、ホイールをシャマルミレに換えて1年になるユーザーの声を紹介したい。すぐに感じられた利点と、シャマルミレというホイールの総括を挙げてもらった。
---
鉄下駄→シャマルミレの換装ですぐに感じた点は以下のとおり。
- 2km/hほど巡航速度があがった
- ヒルクライムで恩恵あり(限界獲得標高1,500m→2,500m以上/日)
- ブレーキが本当によく効く
高負荷環境で生きる剛性の高さ
シャマルミレで目立つのは剛性の高さ。ダンシングで踏んでも歪むことなく、推進力に変換される感じがします。この高剛性の恩恵を一番受けたのは、富士ヒルのときです。斜度がアップするワインディングはトルクをかけて一気に抜けるのが効率的なので毎回そのようにしていましたが、シャマルミレでそれをやるとほかの参加者を何人も抜けました。ぼくは急斜面で相対的に速く走れたわけです。それはシャマルミレがトルクをかけるほど応えてくれるホイールだからということになるでしょう。
平坦でも「ダンシングで踏んだときに加速する」という印象は変わりません。ぼくの脚力だと35〜37km/hあたりで「壁」を感じるので、それ以上に上げることは積極的にはしませんが、ダンシングをすれば上げること自体は容易です。鉄下駄はダンシングをしても加速感がなかったのでほとんどやりませんでしたが、シャマルミレ換装後は加速目的でのダンシングを多用しています。
このように、シャマルミレのアドバンテージは「ダンシングで踏んだとき」に一番感じられます。
一番このホイールにしてよかったと思ったのが、平均心拍数174bpm(最大心拍数の約90%、Strava推定90分平均182W)で走った富士ヒルだったというのは、このホイールの特徴をよく表しているように思います。
シャマルでアルミ最高峰を味わう
「シャマル・ミレ」と「シャマル・ウルトラ」で、どちらを買えばいいのか迷う人もいるだろう。スペック的にも価格的にもほぼ同格だが、プラズマ電解酸化処理を施して、リムの耐摩耗性と制動力のある「シャマル・ミレ」のほうが性能的に優位かもしれない。オールブラックの見た目も、愛車の足元を引き締めたいと考えるライダーに訴求力がある。
デメリットは専用ブレーキパッドが必要になるのでコストがかかる点。頻繁にホイールを交換して走るような人にとっては面倒だ。そのへんを十分に考えたほうがいい。
走るのが楽しくなり、走るのが好きになる「シャマル」シリーズ。きっとあなたを魅了するだろう。
TOP画像(C)カンパニョーロジャパン