自転車コンポーネントの世界最大シェアを誇るSHIMANOのトップグレード、DURA-ACE(デュラエース)。誰しも憧れるこのコンポ、もし組み替えるなら費用はいくら?実際どんな変化が?そもそもデュラエースのすごさって……?
そんな「デュラエースへのアップグレード」に関するあらゆる疑問を、現役のプロメカニックにとことん聞いてみた。データだけではわからない、リアルな情報は大いに参考になるはずだ。
目次
デュラエースを使うということ
デュラエース、それはロードバイク乗りにとって一度は使ってみたいと思う最高峰のコンポーネントだ。1972年のデビュー以降モデルチェンジを繰り返し、2009年には世界初の電動式(Di2)が発表され、自転車コンポーネントに新たな風を吹き込んだ。現行モデルとしては2021年に最新のR9200がリリースされた。
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デュラエースへ交換|現役メカニックによるQ&A
実際にコンポを替えたいと思っても、リアルな情報はなかなか集まりにくい。ここはプロに聞くのが一番。
今回は現役のプロメカニックである大場忠徳氏によるQ&A解説をご覧いただこう。デュラエースにアップデートすると一体何がどう変わるのか。ユーザーと直にやり取りしているからこそわかる生の情報満載でお届けする。
大場忠徳
愛知県の自転車店「サイクルアシストオオバ」の店長。 自転車関連会社で営業、企画職を経て、サイクルアシストオオバを開業。販売や修理以外にも、メカニックとしてのイベント参加、講習会講師などその活躍は多岐にわたる。
「ツール・ド・おきなわ」のオフィシャルメカニック歴は10年以上。
コンポを交換=トータル性能のアップ
──そもそもコンポーネントのアップグレードは何が目的でしょうか?スピードアップ? 変速など操作性?
(大場)最終的にはスピードアップにつながるのでしょうが、それよりももっと具体的な目的でアップグレードを提案することが多いです。何よりも性能アップが目的でしょう。シフトタッチ、ブレーキング性能、剛性感……そういったトータル性能が格段にアップします。
また、性能には関係ありませんが、仕上げの美しさもありますね。ヒルクライムなどを目指すライダーにとって軽量化も外せません。あとは趣味の世界ですから、所有感や満足度を満たされたい、という気持ちもありますね。
105、アルテグラ → デュラエースへの組み換え
当然、最上位グレードへの交換となると、現在のコンポとの性能差がどれだけ感じられるかは気になるところだろう。
全体的な変化のイメージと、各パーツで感じられる効果性能について聞いてみよう。
デュラエースに乗せ換えたときの変化
──重量面での変化はどのように感じられますか?
当然、105やアルテグラなど下位グレードよりも軽く、フルコンポでしたらかなりの軽量化になります。スプロケットはかなり軽量ですが、ホイールの回転中心部のため体感はできません。一方、STIレバーはハンドル上に取り付けられるパーツですので、操作性の良さと相まって軽さを体感できます。
フルコンポによるトータルな軽量化は、当然バイク全体の重量の軽量化 に直結しますので、ヒルクライムなど軽さが走りに繫がる用途には、その恩恵を最大限に受けられるでしょう。
──動作性能や精度、耐久性、剛性など、デュラエースの特筆すべきポイントは?
どのパーツも軽く、耐久性もあり、剛性感もあります。ただ、レバーやブレーキなど、各パーツによって違いの感じ方に差があります。
──なるほど、ではSTIレバーはどうでしょうか?
これは違いを感じやすいパーツです。言い換えれば対費用効果の大きなパーツです。手が直接触れるパーツですし、軽さも体感しやすい。そして何と言ってもシフティング、ブレーキングともに、レバータッチがとても軽くてスムーズ。ブレーキングに関しては、下りなどでレバーを握り込んでも〝よれない〟ので、安心して握り込めます。ブレーキキャリパーもデュラエースにすれば、さらにその安心感は増大します。
──ではブレーキキャリパー単体で見るとどうでしょうか?
こちらは軽さよりも、剛性感を含めたブレーキング性能が他グレードと比べて圧倒的に違います。STIレバーと並んで対費用効果の高いパーツですね。パワフルでストッピングパワーが強く、ググっと効いてくれます。女性にこそ使っていただきたいパーツです。例えば105グレードで組んだ女性用ロードバイクでも、ブレーキだけでもデュラエースを使っていただきたいです。
──クランクはどうですか?
こちらは何と言っても圧倒的な剛性感でしょう。人によっては感じにくいかもしれませんが、パワフルな人ほどメリットを感じるパーツです。そして、他グレードよりも、歯数やクランクの長さといったバリエーションが多いのも特徴です。
その他デュラエースのパーツ類も、もちろん耐久性があり軽いです。
──ありがとうございます。では、たとえばコントロール性能を重視したとき、一番メリットを体感できるパーツがありますか?
STIレバーとブレーキキャリパーですね。軽くてしっかりとしたレバータッチと、圧倒的にパワフルで制動力の高いブレーキキャリパーのマッチングは最高です。ライバルメーカーのカンパニョーロのブレーキが、ロックしにくい〝じんわり〟効くコントロール性重視なのに対し、デュラエースは〝ガツンと〟効く制動力重視タイプと言えるかもしれません。どちらが正しいということはなく、乗り方や好み次第です。
バイクやホイールとの互換性
──自分のバイクには載せられるか確認すべきですか?
ロードバイクのフレームであれば、大抵のバイクには取り付け可能ですが、あまり安価なフレームの場合はやはり釣り合いが取れないと思います。例えばフレーム強度が十分でないと、ブレーキのパワーに対してフレームが負けてしまい、たわんで下りなどでブルブル震えるようなノッキング現象を起こす場合があります。
──怖い!高速ダウンヒルを想像するとゾッとしますね…
同じく安価なフレームですと、フレームの精度が悪く、緻密なデュラエースの変速性能を引き出すことができません。具体的には、フレームのリヤエンド(リアディレイラー取り付け部)の精度が甘いと、変速性が悪くなります。デュラエースのリアディレイラーはベアリングプーリーを採用しており、ガタや狂いの少ない精密な作りになっているので、フレーム側の精度が悪いとうまく作動しません。
──上位コンポゆえに安価なフレームでは性能を発揮できないわけですね。ではホイールとのマッチングなどあるのでしょうか?
デュラエースはリヤ11速※ですから、当然ながら10速ホイールには取り付けられません。一部のメーカーからは、10速ホイールに取り付けられる11速スプロケットが販売されていますが。(※取材当時。最新のR9200は12速)
アルテグラ・105とデュラエースMIXについて
──アルテグラや105とデュラエースのMIXなどはできますか? MIXを選択する人の理由とはどのようなものでしょうか?
現行世代のモデル間であれば基本的にMIX可能です。MIXを選択する理由は、やはり費用面でしょうね。限られた予算の中で憧れのデュラエースを装着したい! という願いをかなえてくれるのがMIXアッセンブルというわけです。
──MIXする際、デュラエースに換えるべきおすすめパーツ、逆に下位グレードでも良いパーツなどありますか?
STIやブレーキはデュラエースにする効果は大きいですが、スプロケットやチェーンなどは、さほど大きな違いはありませんので、アルテグラや105でもいいかもしれませんね。
デュラエース交換にかかる費用
──コンポ交換の料金内訳はどうなりますか?
コンポ自体の費用については、ホイールやペダルを別にしてもシマノの税別定価ベースで20万円オーバー※となり、セカンドグレードのアルテグラの倍以上※の価格です。そこに工賃が加わりますが、工賃はお店によっても、フレームの構造によっても違います。例えばケーブル類がフル内蔵されたフレームの場合は、より組み換え作業が複雑になるため、工賃も高めになる場合が多いです。
(※取材当時。デュラエース・アルテグラともに現在は価格が異なりますのでご注意ください)
──工賃にかかる費用の目安を教えて頂けますか?
フルコンポを組み付けた場合で、ざっくりな工賃はだいたい15,000円から25,000円くらいではないでしょうか。お店によって価格幅があると思いますが、ここで大切なのは工賃の高い安いではありません。自分のリクエストをきちんと聞き入れ、それを具現化してくれるかどうか、今後のメンテナンスも含め、末長くお付き合いできるかどうか、そういったことを踏まえてオーダーして欲しいです。
──なるほど、必ずしも「費用が安い=最良」ではないわけですね。
メカニックは言わば自転車のお医者さんです。自分との相性を見極めたうえでお世話になる人(お店)を選べば、多少の工賃の高低なんて大きな問題ではないと思います。
──今後の付き合いなど長い目で見ると、費用より優先すべきは「自分との相性」なんですね。
それから費用面で、コンポ以外にもバーテープが必要なのをお忘れなく。テープは組み換え時に剥がしてしまいますからね。
▼おすすめバーテープはこちらから!
メンテナンスや維持費用の変化はある?
──105(それより下位グレード)から載せ換えた場合、メンテナンス面で気をつけることや、維持費用で大きく変わることはありますか?
メンテナンス面で特に変わることはありません。基本はどのグレードでも同じです。維持費用に関わるのは消耗部品ですが、ブレーキシューのゴム部分は実はデュラエースもアルテグラも105も同じです。チェーンに関しては大きく費用が変わりますが、さほど性能差が出ないパーツなので、アルテグラや105でも良いかもしれません。
ケーブル類もデュラエース・グレードは高いです。ポリマーコートと呼ばれる処理を施したケーブルを採用しています。価格の高さ、そしてポリマーコートが剥がれると、それがカスとなって目詰まりを起こすことがあるため、私は105グレードのオプティスリックケーブルをおすすめしています。
Di2(電動)のメリット、費用は?
──電動コンポのメリットはどのような点でしょうか?
メリットは何と言ってもボタンをワンタッチするだけで変速する、その簡単さ です。ボタンを押すだけなので力も必要ありませんし、レバー操作の加減も必要ありません。特にフロントは機械式だとある程度の力が必要ですが、電動式ならあっさりと変速できます。
それからトリム操作(リアとのチェーンラインに合わせてフロントディレイラーの位置を微調節する操作)の必要もなく、オートマチックにトリム調整 されます。操作が苦手で力の弱い女性にこそ使っていただきたいですね。
──逆に、電動ならではのデメリットは?
当然ながらバッテリー切れを起こすと作動しなくなります。また、コードが断線したり差し込み口から抜けたりしても作動しなくなります。
──選ぶ際の基準、機械式と電動それぞれに適した乗り方はありますか?
基準とか適した乗り方とかはありませんが、力の弱い女性にこそおすすめしたいですね。もちろん、レースなどで成績を上げたい本格ライダーにもおすすめです。ロングライド派の方で疲労を少しでも抑えたいライドにもいいですね。
──電動ならではの注意点がありますか?
バッテリー切れを起こす前に充電をする必要があります。また、疲れてくると「どっちのボタンを押すとどっちに動く?」というのが一瞬わからなくなる時があります。落ち着いて、ボタンの押し間違いのないようにしないといけませんね。
──Di2と機械式の価格差(工賃の差)はありますか?
これは何とも言えないですね。お店によって違うと思いますが、私のところでは電動だからといって特別、機械式と工賃差は出ませんね。
最新のデュラエース|R9200
デュラエースへ交換したときのイメージはついただろうか?デュラエースへのアップグレードは、あなたをより快適なサイクルライフへと導いてくれるに違いない。
コンポーネントセット
新型デュラエースのコンセプトは「より速く」と至ってシンプル。その舞台がシャンゼリゼだろうと地元の坂道であろうと、常に最高の性能が引き出せるよう設計された究極のドライブトレインだ。ここでは各パーツにわけてスペックを確認していこう。
STIレバー
ついにラインナップはDi2のみに。素早く直感的なシフト操作と優れたバイクコントロール性能が特徴だ。
油圧ディスクブレーキ用
価格:112,036円(ペア/税込)
重量:350g(ペア)
リムブレーキ用
価格:87,665円(ペア/税込)
重量:230g(ペア)
フロント/リアブレーキ
ディスクブレーキはシマノ史上最もコンパクトなサイズを実現。パッドクリアランスを10%広げることでローターとの擦れを軽減している。
キャリパーブレーキは軽量でありながら剛性と操作性能を兼ね備えている。
ディスクブレーキ
価格:18,711円(フロント/税込)
18,249円(リア/税込)
重量:230g(ペア)
デュアルピボットブレーキ
価格:43,890円(ペア/税込)
重量:327g(ペア)
ダイレクトマウントブレーキ
価格:23,216円(フロント/税込)
重量:156g(フロント)
価格:23,216円(リア/税込)
重量:154g(リア/税込)
フロント/リアディレイラー
リアディレイラー最大の特徴はなんといっても12速化だろう。ギアレンジの広さと最速の変速スピードは、レースでの勝利と自己ベストの更新に貢献してくれるに違いない。
そして、どちらともDi2のみのラインナップとなっている。
フロントディレイラー
価格:49,550円(税込)
重量:96g
リアディレイラー
価格:88,704円(税込)
重量:215g
クランク
本作より54-40Tが追加された。剛性、強度、重量、回転性能の全てが最適化され、無駄のない走りを実現している。
価格:67,452円(税込)
重量:685g(50-34T)
スプロケット
12段のギアの組み合わせは、まさにレースで勝つための設計。11速のフリーボディにも対応しているので、ホイールを買い替えずとも取り付け可能だ。新たに追加された34Tは、ヒルクライムの強い味方になってくれるに違いない。
価格:39,270円(税込)
重量:223g(11-30T)
ホイール
最後にデュラエースのホイールを紹介しておこう。
本作は全て12速のカセットにのみ対応。リムハイトはC60・C50・C36の3種類で、それぞれチューブラー/チューブレスの2モデルのラインナップ。ブレーキタイプはリムブレーキ/ディスクブレーキの2種類だ。(※チューブレスはディスクブレーキタイプのみ)
C60
スプリントやタイムトライアルで活躍するディープリム。究極のエアロ効果に加え、横剛性が前作よりも20%強化された。
チューブレス・ディスクブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント751g リア858g 合計1,609g
チューブラー・ディスクブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント668g リア769g 合計:1,437g
チューブラー・リムブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント653g リア796g 合計:1,449g
C50
どんな起伏にも対応する、万能のレーシングホイール。前作のC40よりも軽量でありながらもさらに優れたエアロダイナミクス性能を持ち合わせた、最強の一本だ。
チューブレス・ディスクブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント673g リア786g 合計:1,459g
チューブラー・ディスクブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント610g リア723g 合計:1,333g
チューブラー・リムブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント586g リア723g 合計:1,309g
C36
ただ軽量化すれば良いという訳ではない。本作は特にリムの軽さにこだわっており、世界最高峰のレースで山岳賞を獲得するに値する、そんなホイールといえるだろう。
チューブレス・ディスクブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント620g リア730g 合計:1,350g
チューブラー・ディスクブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント522g リア632g 合計:1,154g
チューブラー・リムブレーキ
価格:233,530円(前後/税込)
重量:フロント602g リア684g 合計:1,286g
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