ヒルクライムの走り方。 “いい感じ”で上るためのペーシングを知ろう!中編 ~自転車の処方箋 #03~

2013 インタープロ時代の筆者 写真 河西正史
2013 インタープロ時代の筆者 写真 河西正史

「自転車の処方箋」は、サイクリストの悩みに元プロロードレーサーが、スパっと回答する連載企画です。神奈川県のユウさんから「長い上りに苦手意識がある」という悩みに前回は上りの基本のフォームと回転数の視点からお答えいただきました。中編の今回は、上りに適したパーツ類、さらには実際のヒルクライムコースを例にあげながら「いい感じで上る」ための事前準備について回答していただきます。それでは管さん、今回もよろしくお願いします!

赤城山ヒルクライムに向けたペーシング例

プロサイクリングチームAVENTURA CYCLINGの運営代表/プレイングディレクター 管洋介さん
「いい感じで登りたい」ヒルクライムのペーシングを想像しやすい例として今回は赤城山を舞台にしてみましょう。9月には毎年ヒルクライムレースが行われていて(※赤城山ヒルクライムは2018年は9月30日に予定)、距離20.8km、標高差1313m、最大勾配9.7%と上りごたえがあるコースとして初心者からベテランまで人気のコースです。

今回走るにあたっての目標は・・・

  • 最大心拍数の70%~80%程度の強度を保つ
  • 集中力が切れないようにベストな感覚で走りきること

その上でバイクからコースまで、攻略する上で準備しておきたいことなどを紹介します。※最大心拍数に関しては前編で解説していますので、そちらも確認してみてください。

ヒルクライムに最適なバイクの仕様

ロードバイクの運動強度を支えるのが、トルクに大きく関わるギア比です。
一般的なロードバイクはギア比はフロント 50T×36T、リアは12-28T
最大斜度が10%近くになるヒルクライムに挑戦するならリアが28T以上のスプロケットを準備するのがおススメです。入手しやすいのが11-32Tです。歯数は、11・12・13・14・16・18・20・22・25・28・32Tの構成。

歯数は、11・12・13・14・16・18・20・22・25・28・32Tの構成
走るのがヒルクライムが多いというのであれば、11T-13Tは不要なギアかもしれません。また14-28Tというギアも便利な歯数が揃っています。歯数は14・15・16・17・18・19-・20・21・22・25・28の構成です。

完成車を購入すると、大体は11-28T、12-28Tのギアがついていることが多いと思います。もし前編のケイデンス、心拍数などのデータを見て、斜度5%程度でも60回転を大きく下回ってしまうなど体力的に苦しいと感じる場合は、32Tなどより大きなギアを準備することは大切です。また一番頻繁に使うギアの前後が揃っていることもペーシングに役立ちます。

計画性をもったペーシング

まだ見ぬ長い登りに挑戦するのは楽しいものですが、「途中でくたびれて止まってしまうかも…」と不安に思うライダーにおススメなのが、事前にインターネットで登りのおおよその特徴を予習しておくことです。コースの全容を知れば、経験していたことのある似た様な平均勾配の登りと重ねあわせて、そのタイム乗算すればかかる時間の目安も見えてきます。

計画性をもったペーシング
たとえば赤城山ヒルクライムを攻略するにあたって、その平均勾配に近い短めの峠としては、山伏峠 名栗側 [埼玉県] が挙げられます。

  • 距離:4.2km
  • 平均勾配:6.7%
  • 獲得標高:281m

この峠を70%~80%の運動強度で挑んだタイムの5倍が、赤城山の目標タイムとして現実的なものになってきます。要するに目標とする坂になかなか行けない場合は、近くのマイ峠の中から、目標の坂に近いものを見つけてることが大切になります。
そのマイ峠からおおよその目標タイムが見えてくると、想像力も膨らみますよね。

ここでさらに赤城山ヒルクライムコースのフルコースデータをチェックしてみるとペーシングで大事な「走りの計画性」がグッと増します。

距離20.8km、標高差1313m、平均勾配6.4%、最大勾配9.7%

全体的に見れば富士あざみラインほどキツそうに見えませんが、あくまで平均勾配を見れば、の話です。ここでルートラボ等で細かく地図をたどりながらチェックを入れると赤城山ヒルクライムのディテールがグッと見えてきます。

コース状況を細かくチェックし、それに対応したフォームで走る

ルートラボなどの地図上でコースの形状と勾配の特徴をたどると、次の3つの大きな特徴と対策が見えてきます。

出展:まえばし赤城山ヒルクライム大会
出展:まえばし赤城山ヒルクライム大会
  1. スタート~旧料金所
    距離:8.9km、標高差:411m平均勾配約:4.6%(ほぼ直登)
    攻略のポイント

    • 緩い上りはバイクが惰性で走ってくれることを生かしたい
      やや前傾の深いフォームをとり、ハムストリングス中心で踏んでいこう
  2. 旧料金所~姫百合駐車場
    距離:6.2km、標高差:459m、平均勾配約:7.8%(ほぼ直登)
    攻略のポイント

    • キツい上りは力強くテンポの合うフォームで踏み込みたい
      →直登のキツい上りは前傾の浅いフォームで身体を起こし、ハーフスクワットのイメージで膝伸展の四頭筋群メインのペダリングを目指そう
      →前重心のダンシングを上手く取り入れて疲れを分散しよう
  3. 姫百合駐車場~頂上 
    距離:5.7km、標高差:411m、平均勾配約:7.7%(九十九折を多く含む)
    攻略のポイント

    • 緩急の変化があっても一定の集中力と出力を保ちたい。
      →直線の直登、さらに九十九折はインコースとアウトコースでの勾配の感覚が変わります。勾配変化に柔軟に対応してクレバーに走ろう。

今回のまとめ・・・

今回はヒルクライムで「いい感じで上る」ための最適な準備を紹介しました。
次回は・・・赤城山ヒルクライムをコースを例にして目標の運動強度を保つために、コースの勾配に合わせたフォームを紹介していきます。お楽しみに!

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WRITTEN BY管洋介

1980年生 A型 日本スポーツ協会公認コーチ 競技歴22年のベテラン。国内外で50ステージレース以上経験し、スペインで5シーズン BRICO IBERIA 、VIVEROS [現 CONTROL PACK]と契約、国内ではアクアタマを設立、インタープロ、マトリックス、群馬グリフィンを経て、国内の有望な若手選手とファーストエイドなど安全啓蒙を指南できるメンバーを集めたAVENTURA CYCLINGを2017年に設立、走りながら監督を務める。プロカメラマンでもあり、自転車雑誌の製作に長く関わっている。現在はプロライディングアドバイザーとして初心者向けのライディングレッスンなどを多く手がける。

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