「自転車の処方箋」は、サイクリストの悩みに元プロロードレーサーが、スパっと回答する連載企画です。神奈川県のユウさんから「長い上りに苦手意識がある」という悩みに前編・中編とお答えいただきました。後編の今回は、実際のヒルクライムコースを例に、コースに応じたフォームとその選択方法について回答していただきます。それでは管さん、今回もよろしくお願いします!
前回は赤城山のコースは大きく3つに分けた中の第一セクションにあたる「緩い坂」の走り方を紹介しました。今回は中盤、激坂が続くセクションの走り方を紹介します。
激坂区間の「旧料金所~姫百合駐車場」では、太もも全体を使う
中盤のセクションは距離:6.2km、標高差:459m、平均勾配約:7.8%、ほぼ直登の区間になります。
旧料金所を過ぎると目の前には激坂区間が現れます。ここでこれまでの腰を深く曲げたフォームから一気に腰を起こし(上体を起こし)、ハムストリングに加えて四頭筋群を大きく活用していきましょう。
- キツい上りは力強くテンポの合うフォームで踏み込みたい
→直登のキツい上りは前傾の浅いフォームで身体を起こし、ハーフスクワットのイメージで。 - 膝伸展の四頭筋群メインのペダリングを目指そう
→前重心のダンシングを上手く取り入れて疲れを分散しよう。
腰を前に出して上体を起こし、65回転前後で力強く回す
ここではキツい勾配に対して、踏み込みを強く意識したいのでペダルを拇指球で捉えて円を描いてあげると四頭筋群の動員と連動がとれるでしょう。トルクが高いのでカカトは自然と下がっているはず。だから足首の位置はそれほど意識しなくてもよいです。
意識したいのは以下の3点
- 腰をサドル前方へ移動し、上体を起こす
- ハンドルの引きが強くなってきたら上ハンドルに持ち替える
- ペダルを拇指球で捉えて踏み込んでいく
もし、これでも踏み込みがツラくなってきた場合、活用したいのがダンシングです。
脚がツラくなってきたら“休む”ダンシングを使う
70回転を切るような低回転のペダリングでは、ダンシングへ移行してもそれほどスピードのロスにつながりません。「脚が売り切れてしまった!」ところから使いたいのが、体重を落としていくだけのダンシングです。
「ダンシングというとバイクをダイナミックに左右に振って……」とイメージしがちですが、それはまだ踏み込みの力が余っているときの場面。ここでは、ヒジを伸ばして胸を高い位置に置くことで、重心がバイクの前方へ移動し、ペダリングの踏み込み位置2時~3時で膝が序々に伸びてきます。
そして3時~5時あたりではカカトを下げるイメージだけもっておけば、体重でトルクがかかりペダルを落としていくことができます。
脚を踏みかえる場合は、脚が落ち切った反動で逆脚を2時の位置にトンッとのせ換えることで振りの少ないダンシングにつながります。脚が落ちるのが速くてテンポが掴みにくい場合はギアを1~2枚重くするとリズムを作れるでしょう。
「休むダンシング」とも言われているこのダンシングは、急勾配スピード域が10km/時速前後と低い状況では大きな武器になります。
激坂区間で意識したいポイントは3点
- ヒジを伸ばして胸を高く
- カカトを下げてペダルへ体重を預けていく
- 踏み切るタイミングで逆脚へ荷重を移行する
いよいよ次回は最後の区間です。最終区間は九十九折りが続くセクション。アウト側、イン側と走るコースに合わせてフォームを変えていく必要があります。まさにこれまでの応用編、という形になります。次回もお楽しみに!
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●バックナンバー
怖さを克服! うまい「下り」のための3つの基本フォーム ~自転車の処方箋 #01~
ヒルクライムの走り方。“いい感じ”で上るためのペーシングを知ろう!前編 ~自転車の処方箋 #02~
ヒルクライムの走り方。 “いい感じ”で上るためのペーシングを知ろう!中編 ~自転車の処方箋 #03~
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