【2021/03更新】 プロライダーには当たり前のパワーメーターだが、近年ではトレーニング重視のシリアスライダーにもなじみ深いものとなってきた。
走りの質やクセがわかり、「効率の良いペダリング」を追求できるパワーメーターだが、実際に得られる数値とは何なのか。その機能やメリットはもとより、導入にあたり一番気になる値段相場まで、余すところなく紹介していこう。
目次
パワーメーターとは?
パワーメーターとは、自転車を漕ぐ際にペダルに踏み込んだ力を測定する計器のこと。出力の単位をW(ワット)として数値化し、客観的に自分の走りを知るものだ。パワーを計ることで走力がリアルタイムにわかって、ライド後のデータからコンディションや疲労度など「走りの質」を解析することができる。
4つのメイン機能
パワーメーターの機能としては主に下記が挙げられる。
- ペダルを回したときの力を計測
- ペダリングの力の方向や強度を視覚的に表示
- どれほどの踏力がペダルに伝わっているか効率測定
- ログによりPCやスマホなどでライドを記録・解析
具体的にはクランクやペダル、あるいはハブにセンサー(歪みゲージ)を組み込み、ペダリングにより金属が歪んだり伸びたりすると電子信号を発信する。その電子信号をトルク値に換算して、ペダルの回転数(ケイデンス)を掛け合わせたパワー値を専用デバイスやサイクルコンピューターなどに通信するようになっている。
走りの質とクセを知る
こうした「走りの質」が視覚化できるとともに、自分の走りのクセも見つけ出すことができる。
例えば左右のペダリングトルクの違い、トルクの掛かりどころの違いなど。自分でも気づかなかったクセを見つけ出すことで、より無駄のない効率の良いペダリングに近づくというわけだ。
心拍計じゃダメ?パワーメーターならではのメリット
従来、自転車トレーニングおいてのツールは心拍計が大勢を占めてきた。しかし、心拍数は体調や睡眠、ケイデンスなどの内的条件、および気温、湿度、坂、風などの外的条件による影響が大きい。さらに心拍の表示にラグがあり、平均化されて計器に表示されるという欠点がある。その点、パワーメーターはこうした条件にかかわらず出力を瞬時に正確に数値化することで、心拍計に代わるツールとなりつつある。
ペース配分の目安にもなる
プロレースの現場では、特にヒルクライム時のペーシング(ペース配分)で使用されることが多い。簡単に述べると、山岳でアタックをかけて脚が売り切れになるよりも、一定のペースを守って走るほうがゴールに近いということだ。その指標となるのがパワーメーターでのFTP(Functional Threshold Power)である。
FTPとは、1時間走り続けて極限までペダルを回し終えた出力のこと。パワーメーターを使ったトレーニングの際には、最初にこの値を測定する。その目的は、コースやシチュエーションに合わせてパワーを配分すること。まずは自分の出力を把握して、効率よくペーシングすることが大事だ。FTPが高ければ分配できる出力も大きくなるので、より速く走れるようになる。
パワーメーターの3つの種類
パワーメーターの種類は、大きく分けて3つ。クランク・ペダル・ハブと、取り付け位置によって異なる。
クランク取り付けタイプは一番ポピュラー。左右クランクで歪みを計測するもの、あるいは4iiii(フォーアイ)製のように片側クランクのみで計測できるものがある。ただしクランク長を替える場合は、改めて買い替えしなければならない。シマノ製のようなクランク一体型も同様だ。
ペダルタイプはGARMIN製が代表的。ペダル軸にセンサーが組み込まれており、ペダリング時の歪みで計測する。ライダーのパワーが最初に伝達するところなので誤差が少ないだろう。取り付けも簡単で、クランクを替えても自分で対処できる。しかし、クリート方式がルック・ケオしか対応していないのが惜しい。
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パワーメーター導入のQ&A
基本的にロードバイクならば、一部を除いて使用可能だ。一部とはセンサーがフレームと干渉してしまうような場合。そうならないように、自分のロードバイクとの適合性は、購入する際の必須確認ポイントといえる。
あとはデータを表示させるデバイス。ANT+やBluetoothに対応のサイクルコンピューターやペダリングモニターなど専用品が必須だ。
購入したらすぐ使える?
買ったらすぐ使えるか?その質問への答えは概ね「YES」である。
大きな手間はかからないが、乗る前にはセンサーとサイクルコンピューターやデバイスのペアリング(同期)をしなければならない。
また、パワーを正確に計測するために、「校正*」という作業が必要になる。「校正」はサイクルコンピューターを使えば、非常に簡単にできるので初心者でも安心だ。
*)校正:パワーメーターはクランク等の歪みからパワーを算出しているが、気温によって歪みが変わる。クランクは金属のため、気温が高いと歪みやすくなり、気温が低いと歪みにくくなる。この気温の変化に対応する作業が「校正」。
組み付けは自分でできる?
クランクやペダルの付け替えを自分でできる人ならば可能。できない場合はショップに依頼するのが賢明だ。何と言ってもパワーメーターは精密機械。ちょっとした取り付けミスで破損、あるいは精度が狂う可能性がある。腕に自信がない人はプロのメンテナンスに任せよう。
またメーカーによっては、きちんとメーカー主催の講習会を受講したショップでないと取り扱うことができないパワーメーターもある。
購入に当たっては、取り扱い実績のあるショップでの購入をおすすめする。
充電は?
電源は充電式が多く、シマノ製の場合はおよそ2時間半で満充電され、300時間の使用が可能。GIANTの「POWER PRO」の場合は1回の満充電で100時間(およそ1600km)とされている。ペダル型パワーメーターのガーミン Vector3は電池式で、最大稼働時間は約120時間。バッテリー残量は、本体のLEDインジケーターや専用デバイスで示される。サイクルコンピューターやデバイスの充電も忘れずにしておきたい。
パワーメーターの値段相場、片足であれば5万円以下で購入可能
ひと昔前は数十万円したパワーメーターだが、最近はコストダウンを果たしている。安いものではPOWERTAPの前輪ハブ用が25,000円。後輪用でも63,800円である。
クランク式で片足計測タイプであれば、4iiiiが35,000円ほどで買える。クランク式で両足計測タイプは100,000円~150,000円ほどの価格帯がメイン。
ペダル式ではAssioma UNOが5,979 円(税抜:Amazon価格2021/02時点)から手に入る。
これにプラスして、サイクルコンピューターや専用デバイスが10,000 円~50,000円ほどかかると思ってよい。安く買おうと思えば10万円で、自分のパワーを可視化することができるだろう。
おすすめパワーメーター
それでは実際に、パワーメーターをそれぞれの特徴とあわせて紹介していこう。
4iiii(フォーアイ) プレシジョン R7000
左クランクのみを交換すれば良いので、特殊な工具も必要なく簡単にできる。電源には交換可能なコインバッテリーを採用し、稼働時間は約100時間。
クランク長は165,170,172.5,175mmから選択可能だ。
参考価格:
シマノ 105 R7000 : 32,000円
シマノ Ultegra R8000 : 42,000円
シマノ Dura-Ace R9100 : 52,000円
シマノ GRX RX810 :42,000円
ガーミン Vector 3
左右独立計測が可能なペダル型パワーメーター。ペダルポッドを内蔵して手軽に取り付けが可能で、バイク間での付け替えも容易だ。また、シッティング/ダンシングを検出して、それぞれの時間とパワー値を測定。ポジションによる差異を確認することもできる。PCOという機能ではペダル面に対するトルクの分布を表示。これによりクリートの適切なポジションを得られる。同社製のEdgeデバイスやPC&モバイルサイト「ガーミンコネクト」などと連携してデータの分析が可能だ。Edgeユーザーなら、なおさら欲しい一品である。しかし、前述したように対応クリートがルック・ケオのみ。
価格:128,000円(税抜)
シマノ FC-R9100-P
デュラエース(R9100系)のクランクにパワーメーターを組み込んだ一体型。見た目にもスマートで精悍なイメージを放つ。測定できるのはパワー、パワー左右バランス、ペダルスムーズネス、ケイデンス、トルクエフェクティブネス。ペダルスムーズネスはペダリング効率を表し、トルクエフェクティブネスはパワーがどれほどトルク伝達されているか示すものだ。電源はシャフトに充電式リチウムイオンバッテリーを内蔵。専用デバイスはないが、ANT+やBluetooth LEに対応するサイクルコンピューターと同期可能である。
価格:133,768円~150,845円(税抜)
ステージズ サイクリング パワーメーター G3 L Ultegra R8000
本モデル対応クランクはUltegra R8000。SHIMANOで言えばほかにデュラエース、105、XTRのクランク対応モデルを用意。さらにカンパニョーロ、スラム、キャノンデール、FSA対応モデルも展開され、ラインナップの豊富さはステージズの特徴といえる。
左クランクアームのみのセッティングで取り付けは簡単。小型で軽量、干渉の心配も少ない。
複雑な機能はないものの、シンプルでとっつきやすいので、とにかくパワーメーターを使ってみたい人にはおすすめできる。2018年からLR両側モデルも登場。
価格:53,900円(税抜)
POWERTAP GS
ストレートプルスポーク方式、スターラチェットシステムの「DT Swiss 240S」にパワーメーターを組み込んだハブ型パワーメーター。内側にセンサーなど計測部品を納め、精度も高く衝撃にも強い。フロント用とリア用があり、あらかじめ搭載された完組ホイールも豊富に用意。また、同社からはペダル型とチェーンリング型のパワーメーターもリリースされている。いずれもパワーメーターのリーディングブランドらしい作りで、どの製品も比較的廉価なのが魅力だ。
価格:
シマノ/スラム:58,000円(税抜:Amazon価格2021/02時点)
カンパ:71,818円(税抜:Amazon価格2021/02時点)
FAVERO ASSIOMA DUO
Assiomaパワーメーターはペダル式のため、取り付けが非常に簡単にできる。パワー数値を計測するだけでなく、左右のペダリングバランス、ペダリングの滑らかさも計測することができるため本格的なトレーニングにも対応。
ペダルのボディ部分には電子機器が搭載されていないため、万が一落車をしてしまった時も、電子機器部分までは故障しないようになっている。公式サイトではスペアパーツを取り扱っているので、破損時も安心である。
対応するクリートはLOOK・ケオタイプのクリートなるが、購入時に1セット付属してくる。
ASSIOMA DUOの他に、片足計測タイプのASSIOMA UNOも発売されている。
価格:80,000円(税抜)
GIANT POWER PRO(ULTEGRA R8000)
2019年モデルから完成車に導入された新たなパワーメーター。取得できる情報は、パワー、ペダルバランス、フォースアングル、ケイデンスなどで、専用デバイス「GIANT NEOS TRACK」の他、ANT+対応サイクルコンピューターによりデータを表示する。2019年の登場以来、パワーメーター搭載モデルは14車種まで増えた(2019年は8車種)。特に「TCR ADVANCED 2 DISC SE」は30万円を切る価格となっている。コンポは油圧ディスクブレーキを擁する「105」、フレームはカーボンであることを考えると破格である。
価格:100,000円(税抜)
コンポーネント:シマノ・アルテグラ
サイズ:165、170、172.5、 175mm
LINK:POWER PRO|GIANT
GIANTのPOWER PROをもっと知りたいならこちらから
→「【2019年最新】パワーメーター搭載完成車で28万!?GIANT POWER PRO徹底解剖」
まとめると
手頃な価格帯の商品の登場により、パワーメーターによるトレーニングはプロをはじめとする一部のサイクリスト以外の一般ライダーにも浸透しつつあるものだ。走りをダイレクトに数値化することでモチベーションにも繫がる。トレーニングやレースの他、たとえばロングライドでもペースを考えた走りや、余計な力を使わず効率の良いヒルクライムに最適なツールだ。低価格化した現在、パワーメーターは高嶺の花ではなくなった。あなたのマシンにも、いまこそパワーメーターの投入を考えてみてはいかがだろうか?
Top photo © intertec
監修:
サイクルアシスト オオバ 大場忠徳