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ツール・ド・フランスおっかけ旅 その3(最終回)~ラルプ・デュエズの絶景からパリへ

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2人で自転車1 台かついでやって来た、ぽっちゃり夫婦のツールおっかけ旅。第1回目はアヌシーでの休息日、第2回目はロム峠でのレース観戦をしてきました。 いよいよ旅も最後。まさに最終回にふさわしい山岳レースの最難関「ラルプ・デュエズ」での観戦リポートをお送りします。

最高の景色! スイスにほど近いアルプスのグランドン峠へ

今日はいよいよラルプ・デュエズでのレース観戦日! レースの前に立ち寄りたい所がある私達は、朝早くキャンプ場を出発しました。立ち寄りたい場所というのは「グランドン峠」。標高1924mからの景色は「絶景」ということを聞き、ぜひ行ってみたいと思っていたからです。

山頂に到着し車を降りると、そこはまさに「アルプス」のイメージそのもの! 真っ青な空の下、美しくそびえたつ山々を眼下に見渡すことができる素晴らしい景色が広がっていました。

▲標高1924m のグランドン峠。空がすぐ近くに感じられるグランドン峠の山頂。空気がおいしい!

▲クルマから自転車を降ろし、私だけ自転車に乗らせてもらい坂道を下っていきます。

しばらく行くと大きなダムが見えてきました。
山頂の景色も素晴らしかったのですが、このダムの辺り一帯が特に素敵でした。美しい湧水が流れ、道端には花が咲き風に揺れています。遠くの斜面には小さな山小屋があり、今にもハイジとペーターが駆け出してきそうな風情でした。

▲ダムに向かって自転車で坂を下ると風が気持ちいい!

▲美しい湧水の流れるグランドン峠

グランドン峠でのサイクリングと散歩を楽しんだ後、次はブールドアザンの街に向かいます。師匠のクルマでブールドアザンの近くまで行き、そこでクルマを降りて私達夫婦の荷物をすべて降ろしました。

一緒に旅をしてきた師匠とはここでお別れです。師匠3 日間ありがとうございました!
さて、ここからはもうクルマはありません。自転車 1 台に荷物を積んで、夫婦 2 人で歩いて旅を続けます。

ブールドアザンでレンタサイクルを探すも……

師匠と別れ、歩いてブールドアザンの街へ移動してきました。ここはラルプ・デュエズの裾野にある街です。レースが始まる前にゴール近くの山頂まで行くのですが、日本から自転車を持ってきていない私は、この街でレンタサイクルを借り、ラルプデュエズの山を自転車で登りたいと考えてやって来ました。

ブールドアザンのレンタサイクルはネットで予約ができるようになっているのですが、日本から予約しようとした時、何度やってもクレジットカードがエラーになってしまい上手く予約することができませんでした。
「まぁ、朝早くお店に行けば 1 台くらい借りられるでしょ」と思いやって来たのですが、その考えは甘かった。「予約が一杯でお貸しできる自転車はありません」と断られてしまいました……。慌てて別のレンタサイクル屋に行ってみましたが、どこも同じ答え。

結局レンタサイクルを借りることはできませんでした。ショックです。

でもこれは完全に自業自得。準備不足だった自分の責任です。どうやらヨーロッパではクレジットカードのセキュリティが厳しいため、サイトによっては日本のカードだと設定を変えないと使えないようなのです。先にもっと調べてちゃんと予約しておけばよかったと後悔しましたが、もう後の祭り。

▲お祭りムードのブールドアザンの街。レンタサイクル屋を探す旦那さん。

仕方がないのでサイクリングは諦め、気持ちを切り替えて街の観光とレース観戦を楽しむことにしました。早速、ブールドアザンの街でショッピングと食べ歩きをに向かいます。ここには、自転車ショップ、自転車ウェアや小物等の店、レンタサイクルと、自転車関連のお店がたくさんあり、まさに自転車の街といった感じです。

まずは腹ごしらえと、ホワイトチョコでコーティングされたエクレアを買って食べました。こっちのケーキやパンは日本より一回り大きくて、食いしん坊夫婦には嬉しい限りです! その後お土産のワゴンを覗いている時に、オーストラリア人の方から話しかけられて少し話をしました。

「今 5週間のバケーション中でヨーロッパを回っているんだ。」
「ごっ、5週間ですか!?」 ・・・・・・・・・いやー羨ましすぎる!!!

1週間も休みをもらい、こうしてツール・ド・フランスを見に来られているだけで充分幸せなのですが、一度でいいからそんなに長い期間、海外を自転車で旅してみたいものです。
7月のフランスには、彼のように長いバケーション中の人々がたくさんいて、そのことで観光地の時間がよりゆっくりと流れているように感じられました。そのゆったりとした空気の中に身を置いていると癒されるので、7月のフランスが私はとても好きです。

▲自転車ラックのあるカフェがいくつもあります。自転車用品店にいた、まさに本場の「フレンチ」ブルドッグ! ツール・ド・フランスで賑う街をじっと眺めていました。

▲私も自転車に乗りたかった……。

悪魔おじさんディディと待ち合わせ

ブールドアザンでショッピングを楽しんだ私達は、次なる目的地ラルプ・デュエズを目指します。これからラルプ・デュエズの山岳レース観戦のために山を登るのですが、その前に 1 つ、私には楽しみにしていることがありました。それは、旦那さんの友達、悪魔おじさんディディと待ち合わせをしていることです!

ディディとは既に3日前にアヌシーでバッタリ会ってはいましたが、今日のようにあらかじめ待ち合わせをして会う時、ディディはある準備をして待っていてくれるのです。自転車を引く旦那さんとひたすら歩いて山道の手前まで来た時、派手なキャンピングカーの前に、ディディが 椅子でウトウトしながら私達を待っていてくれるのが見えました。

「ディーディー!!」

旦那さんが大きな声で叫ぶと、ディディははっと顔を上げ、手に持っている槍を大きく 振って大きなオペラ歌手のようないい声で旦那さんの名前を呼んでくれます。

「マサーオ!!!!」

小走りにかけよると、クルマの前にはペイントが! ディディが準備してくれているあることとはこのペイントのことです。ツール・ド・フランスでは、レースの路上にペンキで選手の名前や出場チームの名前等を書いて応援するのですが、ディディは選手の名前ではなく、私達の名前を書いて待っていてくれるのです。早くから来て私達のために書いてくれ
たんだなぁとディディのおもてなしに大感激し、再会を喜び合います。

▲後ろには「さいたま」の文字が! 今年の「さいたまクリテリウム」にも現れてくれるのでしょうか? 愛犬の名前まで書いてくれています

ちなみに、ディディはドイツ語しか話せません。ドイツ語のできない旦那さんとディディは25年間、片言の単語とボディランゲージのみで会話しています。そんな2人がどうやって毎年待ち合わせ場所を決めるのか不思議に思い、旦那さんに尋ねるとその待ち合わせ手段を見せてくれました。

なんと!こんな感じの絵のメールでやりとりしているのです。外国語を話せなくても文章が書けなくても、こうして通じ合うことができるんだと2人から教えられました。

▲出会った頃1995年の旦那さんとディディ。そしてメモ帳。

大盛り上がりのラルプ・デュエズ

ディディと別れ、私達はラルプ・デュエズの中腹までやって来ました。山岳レースの最難関となる地は、レースのハイライトを見ようと集まった観客でとても盛り上がっています。 たくさんの国旗が風にひるがえり、世界各国の人が集まっています。
あるコーナーポイントは、音楽が流れると子供 も大人もおばあちゃんも、みんなが一斉に踊り出す楽しいダンス会場になっていました。

▲ダンスで大盛り上がり

レース待ち時間はラルプデュエズで激坂ライドに挑戦!

強い日差しの中、私達は木陰を見つけて座り、そこで選手の到着を待ちました。日本とは違い湿度が低くからっとした気候なので、強い日差しを避けて日陰に入れば涼しく快適に過ごすことができます。

お昼ごはんを食べてコースを眺めていると、何人もの観客が自転車で坂を登っていきます。
いいなぁ、レンタサイクル(電動付ですが) を借りることができていれば、私もああして乗れていたのに・・・。私が悔しがってい ると、旦那さんが「じゃあ乗って来なよ」と言って、キャンプ用品や着替えの詰まったリアバックを自転車から取り外してくれました。

「えっ! じゃあ行ってくる!」
迷うことなく他の観客にならって、私も自転車で坂を登ってみました。
でも……キツイ、キツすぎる! 太ももがプルプルします。こんな激坂を選手は登り続けるなんてすごすぎます。私が必死に漕いでいると、レースの始まりを待っている観客達が「アレ! アレー!」と大きな声で応援してくれました。

「わたしに言ってくれてる!!」

まるで自分が選手になったかのような気分です。調子に乗りやすい私は声援に応えようと、ペダルをガシガシ踏み、坂をぐんぐん上ることができました。といってもほんのわずかな 距離ですが(笑)。応援の力って偉大ですね。


こんなことをしながら過ごしていると、ついにキャラバン隊がやって来ました。キャラバン隊が去った後は、もう間もなく選手達がやってくるはずです!

▲キャラバン隊。観客は手をあげて、クルマから投げられるキャラバングッズをキャッチします。

▲ついにレースを先導するオフィシャルカーがやってきました! 間もなく選手がやってきます。

▲来ましたー!! トップを走る選手に歓声が飛び交います「アレアレー!」。旦那「これクライスヴァイク選手ですね」

▲走る選手にギリギリまで近づいて応援する観客たち。イタリア・イギリス・フランス等、各国の熱い応援が繰り広げられます! 旦那「これはサガン選手ですね」

▲後方、大勢の選手がぎゅうぎゅう詰めになって激坂を登ってくるのはすごい迫力!

ラルプ・デュエズでのレースは迫力があり、大賑わいでとても見応えのあるレースでした。
観客の応援もこの上なく熱が入っており、選手のすぐそばまで近づいて声をかけたり、選手に並んでしばらく一緒に走る観客もいます。すごい人になると、レース後方で遅れている選手の背中を手で押して、選手が激坂を登るのをアシストする強者の観客もいました!
私はそんな観戦スタイルが許されるこのツール・ド・フランスの自由な空気がとてもいいなぁと思うのです。

キャンプ最終日

ラルプ・デュエズでの観戦を終えた私達は、ヴィジーユの街にあるキャンプ場までやってきてテントを張りました。明日はパリに戻ってホテルに一泊し、翌朝の飛行機で日本に帰らないといけないので、キャンプをするのも今夜でおしまいです。

▲キャンプ場に行くまでの道中、山に囲まれた美しい街並みを行きます。

▲キャンプ場につく手前の街で、夕食と朝食の食材を買いました。琵琶のようなフルーツがとても美味しかったです。

ここのキャンプ場には大きなレストランが併設されており、大勢のお客さんが夜中まで盛り上がっているとても賑やかな所でした。シャワーと夕食を終えると早々にテントに入った私達。静かなテントの中に、遠くのほうから軽快な音楽と時折どっと沸く笑い声が流れ込んできます。その声を聞きながらあっという間に眠りに落ち、最後のキャンプを終えました。

▲最終日のキャンプ場。「Le bois de Cornage」。隣にはコロンビア人の方が4人、私達と同じように自転車に積んだテントで泊まっていました。

キャンプ場からパリの街へ

翌朝、キャンプ場に近いヴィジーユ駅からグルノーブル駅へ行きTGVでパリまで。今日はフランス旅行最後の締めくくりに、パリでサイクリングをする予定です。

▲「Jarrie – Vizille駅」。列車の中へは、このまま自転車を持ち込めます。

▲Jarrie – Vizille駅前のブーランジェリーで、クロックムッシュとレモンケーキを購入。

パリの街をVelibでサイクリング

パリの駅に着くとすぐにホテルに向かい、自転車と荷物を置いて街に繰り出します。これから Velib(ヴェリブ )でパリの街をサイクリングするのです。

ヴェリブとは、パリで借りることのできるレンタル自転車です。街のあちらこちらにステーションがあり、好きなところで借りてどこのステーションへ返してもよいという、パリを散策するにはとても便利な自転車です。
レンタル料は電動付の場合、最初の30分以内であれば 1 ユーロ、30分~1時間までなら 2 ユーロ、その後1時間ごとに2ユーロが加算されます。

▲ヴェリブのステーション。ます、このタッチパネルを操作して利用登録します。クレジットカードを登録して、好きな自転車番号を選べば完了!

▲登録後は24時間、何度でも利用することができます。自転車専用道路があるので走りやすい!

▲自転車だと効率よくパリ市内を回れてとても楽しい!

1年越しのレストラン「PAGE35」

パリでのサイクリングを楽しんだ後、私達はフランスでの最後の夕食にレストラン「PAGE35」を訪れました。ここは去年来てとてもよかったので、1 年ぶり、念願の再訪です。ここの店員さんはとても親切で、温かいおもてなしをしてくれます。おばあちゃんが 1人で夕食を食べに来ていたのですが、店員さんはソファにおばあちゃんと横並びで座り、おばあちゃんと会話を始めました。「ボンソワー、マドモアゼル」。

おばあちゃんは私の隣に座り、テーブルを指で90となぞって年齢を教えてくれました。びっくりです! 元気 でチャーミングでとても90歳には見えません。大きな海老がたくさん載った料理をおいしそうに食べています。反対側の隣の席にはかわいい赤ちゃん連れのご夫婦が来て、みんなで賑やかに食事をしました。フランス旅行最後の夜は、とても楽しい夜でした。

▲大きな海老が美味しい!リゾット。この方が90歳のマドモアゼルです。

▲この方は熊本で温泉巡りをしたことがあるそうです。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、明日にはもう飛行機で日本に帰らなければなりません。私達夫婦のツールおっかけ旅行も間もなく終了です。山岳コースを自転車で走るのがとても気持ち良かったので、次はわたしも旦那さんのように自転車を担いで来て、もっとたくさん自転車に乗りながら観戦してみたいです!

でも、あの重い自転車を担いではるばる日本から 来るのは大変そうだから、またレンタサイクルになってしまうかな……。どちらの方法にせよ、次また来る時も自転車には必ず乗りたい。 今回、初めて山岳レースを観たことで、さらにツール・ド・フランスの魅力にはまってしまいました。
旦那さんが25年続けているこの「ツール・ド・フランスおっかけ旅行」。それを続ける限り、わたしも便乗してレースを追いかけたいです。

やっぱりできることなら、次は私も自転車を担いで。

B!

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