愛車にもっと荷物を積めたら良いのに。
ベースキャリアの取り付けは、そんな願いを叶えてくれるかもしれません。
車に積める荷物の量は初めから決まっているものですが、家族が増えたり、アウトドアな趣味が増えたりすると、車に積むことができる荷物の量は相対的に減少してしまいます。荷物が増えるたびに大きな車に買い替えるというのも、現実的ではありません。
車の買い替えを考える前に「ベースキャリアの取り付け」を視野に入れてみてはいかがでしょうか? ベースキャリアの種類や注意点、まず候補にいれたい3大ブランドについて、現役一級自動車整備士が解説します。
目次
ベースキャリアとは?
ベースキャリアは、ルーフキャリア(車の屋根の上に乗せる外付け荷台)を搭載するための土台となるパーツです。
メーカーによって名称は異なりますが、「車の屋根の上に荷台を取り付けるための台」は全部ベースキャリアと呼んでしまって問題ありません。
ベースキャリアがあれば、目的に合わせてルーフキャリアを取り換え、様々な荷物を運べます。
たとえば、車を運転している時に「あの対向車、屋根にカヌーを乗せてる!」と驚いたことはありませんか?
ベースキャリアがあれば、カヌーを車で運ぶこともできてしまうのです。
ベースキャリアの構造
ベースキャリアには多くの種類があります。
実際にベースキャリアを取り付けようと考えても「どれを選べば良いのか分からない」と感じてしまうのは、全く自然なことです。
ベースキャリアは、一般的に「バー」「フット」「取り付けキット(フック)」という、3つのパーツで成り立っています。
3つのパーツの役割を知り「自分が何を運びたいのか」をイメージすれば、必ず自分にピッタリのベースキャリアを選ぶことができるでしょう。
ベースキャリア自体の名前もそうなのですが、ベースキャリアを構成する3つのパーツの名前も、メーカーによって異なります。
バー
ベースキャリアの一番上にある、長い棒状の部分です。
ルーフキャリアと荷物の重みを直接受け止める部分です。そのため重量のある荷物を乗せる場合や、凸凹した悪路を頻繁に走行する場合は、充分な強度があるバーを選択する必要があります。
車の屋根は、意外と薄い金属板でできているので、衝撃は厳禁(手で押してみると分かりますが、強く押すと凹む可能性があります)。
万が一、バーが曲がったり折れたりした場合、車の屋根が無事である可能性は低いです。バーは強度にも注目してみてください。
また、形状によっては低速時でも風切り音がするため、走行中の音が気になると言う人は、静音性に優れたバーを選ぶと良いでしょう。
フット(ステー)
バーを支える柱の役割を果たすのがフット(ステー)です。
小さな体積で全方向への荷重に耐えなければならないため、バーよりも一層、強度に注目しなければなりません。
フットはベースキャリア全体の高さを決定するパーツでもあります。
長いほど重心が上に上がり、カーブ走行時の感覚が変わるので注意が必要です。短い方が立体駐車場やトンネルなどの高さ制限を気にしなくて済みますが、洗車時に手が入らないため、拭き上げが困難になることも。
自分の運転の仕方や、高さの制限、洗車の頻度なども含めて考えてみてください。
また、屋根形状は車種によって異なるため「自分の車とフットが適合するか」は、きちんと調べておく必要があります。
調べても良く分からない場合は、いくつか気に入った候補を選んでおき、販売店やディーラーに相談してみると良いでしょう。
取付キット(フック、ホルダー)
フットの下にくっついている部分が取り付けキットです。
車種の屋根形状によっては、取り付けキットが必要な場合があります。
取り付けキットは、車体とフットを固定するために使用します。そのため「強度」と「自分の車に適合するか」が重要です。
ルーフレールがない車種は、フットをレールに固定できないため、取り付けキットを装着する必要があります。
基本的には同じメーカーでそろえる
3つのパーツはそれぞれの役割があり、色々な組み合わせを考えることも可能です。
異なるメーカーのパーツを組み合わせることも可能な場合が多いですが、その場合は「メーカーの保証を受けることができなくなってしまう」ことも知っておきましょう。
(それぞれのメーカーは自社製品のことは良く理解していますが、他社製品の性能や安全に関わる規格などは知りません。そのため複数のメーカーの製品を組み合わせた場合は、保証ができなくなってしまうのです)
特別なこだわりが無いのであれば、それぞれのパーツの役割を考慮しつつ、同じメーカー・同じシリーズで揃える方が簡単で安心です。
ベースキャリアの取り付け方
カーショップなどに依頼して取り付けてもらう方法もありますが、洗車時など「外したい」と思う機会もありますので、自分で取り付け・取り外しができるようになっておきましょう。
ベースキャリアの取り付け方は、車種によって(厳密には屋根形状によって)異なります。
屋根形状は大まかに「ルーフオン」「ルーフレール」「ダイレクトルーフレール」「レインガーター」の4種類のタイプがあります。自分の車がどのタイプにあたるのか、知っておきましょう。
ルーフオンタイプ
車の屋根(ルーフ)上に何もないタイプです。
近頃の車では空力特性向上のため、ルーフに凹凸があったりしますが、その凹凸がダイレクトルーフレールかレインガーターでない限りは、全てルーフオンタイプであると言えます。
セダン、ワゴン、コンパクトハッチバックなどに多い印象です。
※注意※
外見では見分けがつきにくいですが、ルーフオンタイプにはベースキャリア「取り付けポイント」が付いている車もあります。
「取り付けポイント」で装着する場合、フットや取り付けキットの形状も異なります。ルーフオンタイプの車にベースキャリアを取り付けたい時は、「取り付けポイント」の有無を充分に確認してから適合するベースキャリアを購入しましょう。
- 取り付け方
ルーフオンタイプは基本的に、ベースキャリアを取り付けることが可能な「頑丈な出っ張り」がないため、車種ごとに専用の取り付けキットが必要になります。
取り付けキットの形状は車種によって異なりますが、説明書さえ読めば、取り付けで迷うことはありません。説明書にしっかりと目を通してベースキャリアを組み立て、正しい場所に取り付けてください。
一般的には、「ドア付近の車体を挟んで掴む」ような構造をしています。
ルーフレール
ルーフに、明らかにレールだと分かる物が付いているタイプです。
このタイプは車体ではなく、レールにベースキャリアを取り付けます。ルーフレールの太さはレールによって異なるため、きちんと適合するベースキャリアを選択する必要があります。
取り付け場所が車体ではなくレールのため、塗装・車体を傷めないという点がメリットです。SUVでは、ルーフレールが標準装備になっている車もあります。
- 取り付け方
ルーフレール自体がベースキャリアを取り付けるための物なので、非常に簡単に取り付け可能です。
説明書の通りにバーとフットを組み上げたら、レールに乗せて固定します。固定位置の調整も容易なため、小さいものから大きなものまで、多くの種類のルーフキャリアを選択できる点は非常に魅力的です。
ダイレクトルーフレール
ルーフの左右端近くにレールを成型したタイプで、パッと見ただけだとルーフオンタイプに見えます。
ダイレクトルーフレールは「車体と一体化したレール」として使用可能なように設計されていますが、とにかく見分けがつきにくいことが特徴です(ダイレクトルーフレールにはルーフオンタイプのように、取り付けポイントを内蔵しているタイプもあります)。
外見的にはレールのように見えても、デザイン性のためだけに取り付けられているパーツも存在します。新車購入時からよく知っている自分の車であれば勘違いしようもありませんが、元々中古車で、どんなカスタマイズが施されているのか不明な車であれば、注意が必要です。
ベースキャリアを取り付けたいと考えている時は、自分の車がそもそもダイレクトルーフレールタイプの車なのか、ルーフオンタイプの車なのか、把握しておく必要があります。自分で調べるか販売店に問い合わせるなどしてみましょう。
- 取り付け方
基本的にはルーフレールと同様に、簡単に取り付け可能です(事前のタイプ判別が一番難しいかもしれません)。
ただ、構造上「レールをぐるりと掴むことが不可能」なため、長期間の使用や、激しい振動があった場合は、固定部位に「ゆるみが発生していないか」確認する必要があります。
レインガータータイプ
ルーフ左右端に雨どいが付いているタイプをレインガータータイプと呼びます。
遠目にはルーフオンタイプに似た形ですが、近くで見ると見分けがつくので、判別は簡単です。ミニバンやワンボックスなど、全体的に四角いフォルムの車に多いタイプになります。
- 取り付け方
適合するフットは、レインガーターの内溝に引っ掛け、大外からホールドするタイプが多いです。取り付け・取り外し共に簡単です。
このタイプは車体が大きい場合が多く、ルーフキャリアも大きな物が選べます。ただし、重量物を積載する場合は、荷物の重量に合わせて取り付け本数を増やす必要がある点に注意してください。
>>ルーフレールをもっと詳しく。こちらからどうぞ。
新しい生活様式を求めノビノビとした遊び場へ出掛けよう!キャンプ道具や自転車を持っていけたらな……でももうこれ以上愛車に荷物は積... ルーフレールとは?種類からメリット・デメリットまでプロが解説! - FRAME : フレイム |
ベースキャリアを取り付ける際の注意点
上手く活用すれば、とても便利なベースキャリアですが、運用する上で注意しなければならない点もあります。
あらかじめ注意点を把握しておくことは、トラブルを未然に防ぐことに繋がりますから、ベースキャリア取り付ける前に、簡単に把握しておきましょう。
車高が高くなる
トンネルを始めとした立体交差路や立体駐車場など、「車の高さ制限」がある場所は意外とあります。
今までは何も気にせず通行出来ていた場所でも通れなくなる可能性があります。
高さ制限がある場所には、必ず具体的な数値を告知する標識があります。ベースキャリアを取り付け、実際に使用するルーフキャリアを搭載し荷物を積んだ状態で「どのくらいの高さになったか」を知っておけば、いたずらに高さを気にする必要はなくなるでしょう。
また、車の重心が高くなると急カーブや高速走行時のカーブなどで、車全体がより大きく振られる感覚がします。
慌ててハンドルを操作すると事故の元になってしまうので「車高が高くなれば大きく振られる」ということを覚えておき、より一層の安全運転を心がけましょう。
積載可能な重量を確認する
この重さ以上の荷物を積んだ場合は安全が保障できないという制限ラインは、パーツによって異なります。
重たい荷物を積載する予定が無いのであれば、あまり気にする必要はありませんが、アウトドア用品などをまとめて大量に積載する場合や、小分けできないほど大きな重量物を積載する予定がある場合は注意が必要です。
ベースキャリアは、路面の凹凸の衝撃を直に受けます。
瞬間的に性能以上の負荷がかかった場合はパーツが変形したり、破損する可能性があるため、積載可能重量以上の荷物は、絶対に積まないでください。
ベースキャリアの積載可能な重量は、必ず把握しておきましょう。
適合した車に取り付ける
フットや取り付けキットが、どこかを「挟んで掴む」ことによって固定されている以上、固定部位の形状は極めて重要です。
車種別専用の取り付けキットは、固定部位に対応し最大限の固定力を発揮するために存在しています。
しつこいようですが「自分の車に適合するベースキャリア」を取り付けましょう。
適合しないということは「上手く噛み合わない」ということなので、脱落する危険性が高まります。
折角、車を便利で楽に使うためベースキャリアを取り付けても、トラブルが起きてしまっては便利も楽もありません。
自分の車にあったベースキャリアを選択し、固定部にゆるみや破損が無いか、定期的に保守点検を行いトラブルを未然に防ぎましょう。
ベースキャリアの主なブランド
日本において主要なベースキャリアブランドは3つあります。
- THULE(スーリー)
- Terzo(テルッツォ)
- INNO(イノー)
それぞれのブランドの特色を知って、自分の車にピッタリなベースキャリアを探してみましょう。
THULE
スーリーは、スウェーデンに本社を持つ世界最大のカーキャリアメーカーです。日本においても「カーキャリアの元祖」と呼んでも良い実績を誇ります。
“Bring your life”( THULEの公式HPより)というモットーの元、安全で快適、スタイリッシュにギアを運べる製品の設計・開発を行っています。
長い歴史を持ち、変化するレジャーの流行にも応えてきたため、様々なルーフキャリア・多彩な用途に対応するベースキャリアを提供できる「選択肢の多さ」が魅力です。
「とりあえず最初に」または「いよいよ最後に」ラインナップを確認したいブランドだと言えます。
また世界展開している企業なので、外車に対する適合力は抜群です。自分の車が「外車なんだよなぁ」と思っている人は、取り付けを諦める前にスーリーのベースキャリアを探してみてはいかがでしょう。
Terzo
自動車部品およびカー用品メーカーであるPIAA(ピア)が提供する日本のブランドです。日本の会社であるため、日本車との適合は豊富で、軽自動車に適合するベースキャリアも豊富です。
“Adventure with you 冒険には、パートナーが必要だ。”( Terzoの公式HPはこちら)
バラエティ豊かなルーフボックス、装着するだけでアドベンチャー感な雰囲気がぐっと増す実用性とデザイン性を兼ね備えた大人気バスケットラック、車内、ルーフ、リアハッチにそれぞれ目的に応じて選べるサイクルキャリアなど、アクティブなアウトドア派の方はぜひチェックしてみましょう。
またスマートでコンパクトなルーフキャリアはテルッツォのお家芸とも言えます。「車体が小さいから大きいルーフキャリアはちょっと……」「薄いキャリアが欲しい」、そんな人にとって、ローライダーという傑作薄型ルーフキャリアを生み出したテルッツォは必見ブランドです。
INNO
カー用品やレジャー用品などを製造・販売するカーメイトが提供する日本のブランドで、現在、日本市場でトップシェアを誇ります。実用的かつコストパフォーマンスに優れるイメージが強いブランドと言えます。
“INNOVATION あなたのレジャーをもっと快適に”( INNOの公式HPはこちら)というキャッチコピーの示す通り、幅広いレジャーに対応したベースキャリア・ルーフキャリアを提供しています。
日本の会社であるため、日本車との適合は豊富で、軽自動車に適合するベースキャリアもあります。
そんなINNOについて1番お知らせしたいことは、まさにinnovation、面白そうな物を開発しているということ。
過去には東京モーターショーで、「スマートフォンで操作可能な電動ルーフボックス」といったコンセプトモデルを参考出品していました。ガジェット好きにも刺さりそうななんとも現代らしいアイテム。 INNO の公式HPでコンセプトムービーが視聴できますので、興味が湧いた方はぜひご覧になって下さい。【リンクはこちら】
ルーフキャリアに新しい流行が生まれそうな予感がします。
INNO ではLINEのチャットボットで適合を手軽に調べることもできます。こちらのリンク内にあるQRコードからチェックしてみてください。
3つのブランドの特色を、何となくでもお伝えできたでしょうか。
紹介した内容は、それぞれのブランドが持つ魅力の、ごく一部でしかありません。
各ブランドのホームページなどを参考にしつつ、じっくり自分の求めるベースキャリアを探すというのも、探す楽しみのある、オススメの方法です。
まとめ
ベースキャリアは自分の車と適合しさえすれば、簡単に取り付け可能で、様々な荷物を運べるようになります。どんな荷物を、どのくらい積載するか想定し、充分な性能を持った適合ベースキャリアを選択しましょう。
THULE(スーリー)/Terzo(テルッツォ)/INNO(イノー)
まずはこの3つのブランドからチェックして、自分にぴったりのベースキャリアを取り付け、自分の車を「もっと便利に、もっと楽しく」しましょう。