【後編】平凡大学生がロードバイクで東南アジア横断、激走一人旅【ベトナム〜カンボジア〜タイ】
後編ではカンボジアからタイまでの旅の様子をお伝えします。
▼前編をまだ読んでいない方はこちらから!
目次
カンボジア横断〜約650kmの道のり〜
灼熱の王国、カンボジア
さて、前編でカンボジアに入国はしたものの、タイに行くためにはカンボジアを丸々横断しなくてはいけません。カンボジアは今回の旅で最も過酷な国でした。
昼間の気温は37度。季節は乾季。
空には雲ひとつなく、灼熱の太陽がジリジリと照りつけます。道の脇の草木は減って、砂地になり、砂漠に近い様子になるところも。
この過酷な条件の中、170km先の首都プノンペンを目指して走り出すも、あまりの暑さにたまらず休憩。
あまりに暑く、すぐに体力が尽きてしまうのでエナジードリンクでエネルギーチャージ!
熱中症で倒れてしまわないよう、水分補給とエネルギーチャージをこまめに取ります。私は30kmに1回は必ず止まるように心掛けていました。
この調子でひたすら一本道を走り続けます。カンボジアでは、ひたすら大きな道を走り続けるだけなので、1日の中で一度も曲がることのない日も珍しくありません。また、信号もまったくと言っていいほどないので、自分の意志以外で止まる機会は基本的にないです。
こんな道が延々と続く区間もあります。
基本的に山はなく、丘すらもないので一日中まっすぐな平坦道路を走り続けます。景色も100kmくらいでは大して変化しません!
走ることや景色が好きな私ですが、ここまで続くとさすがに飽きてきますね!
首都プノンペンを目前にメカトラブル
さて、2日間かけてプノンペンを目指し、ようやくプノンペンのビル群が見えてきました!
しかし市内に入る直前の橋に差し掛かったところで予想外のメカトラが!
ギアをローに入れようとレバーを押し込んだら、ローギアのさらに内側に入ってしまい、チェーンがスプロケットとホイールの間に挟まってしまいました……。
これは、飛行機輪行の際に曲がってしまったケーブルのせいで変速機の調整がずれてしまったために起こったトラブルだと考えられます。スプロケットとホイールのあいだにガッチリと挟まったチェーンがなかなか取れない……。
炎天下の中、悪戦苦闘すること30分。やっと噛み込んだチェーンを外すことができました! 途中、心配した現地の方が水を恵んでくれました。ありがたい!
そしてこちらが被害状況。
チェーンが挟まったことでスポークが2本、頭の部分から破断してしまいました!
スポークが折れたまま走るのは危ないので、とりあえず折れたスポークを抜き取ります。
パンク修理と同じ要領でタイヤを外し、さらにリムテープまで外すと折れたスポークは簡単に取り除けます。
タイヤを戻してホイールを車体に取り付けてみると大きなフレが出ています。スポークが2本も無くなったので当然でしょうか。
幸いディスクブレーキなのでフレの影響はリムブレーキほど受けないとは思いますが、このままこの先の行程(残り800kmくらい)を走るのはかなり怖いので自転車店に持っていくことにしました。
中心街の近くで壊れたこともあり、運良く近くにスポーツバイクのショップを見つけることができ、そこで直してもらうことに。
店内の様子はこちら。
2時間半ほど待って、修理が完了しました!
修理を担当していただいた方の話を聞いてみると、なんとスポークを5本も交換したそう! 折れてしまった2本以外にもダメージがあったので変えてくれたらしいです。
非常にありがたい話ですが、思ったよりも修理費が掛かりそうな予感がして緊張……。わがままですが、修理箇所を増やす際には一声かけてくれたらな……とも思ってしまいました。
そしてドキドキしてレジに向かうとお値段はなんと15ドル(約2,000円)でした!
これは安い?高い?
僕は安いと感じました!新品のスポークに交換、振れ取り調整までしてもらったのでもっともっとかかると思ってました。
何はともあれ、ひとまずきちんと走行できるようになったので安心です。振れもなくなり、完璧に直りました!
その後はカメラを片手に市内散策です。
道中の水分補給はココナッツで
さて、プノンペンからは今度はカンボジア屈指の観光名所であるアンコール・ワットを目指して走ります! 距離は約320kmです。
この区間はカンボジアの中でも最も厳しい区間でした。3日かけてアンコール・ワットを目指します。
1日目:130km、2日目:130km、3日目:60km
という変な距離配分が原因で疲れが溜まりました。
道中は非常に暑いので水分補給は欠かせません。どんな店にもたいていはココナッツジュースが置いてあるので注文します。
自然で、ほのかな甘さがオーバーヒート気味の体に染み渡ります。冷えているとなお美味しいです!
中の柔らかい部分までスプーンを借りてしっかりとこそぎ取って食べます。これがまた美味しい!
日本ではなかなか見ないココナッツジュースですが最高に美味です!
ちなみにこの区間の道路ではたくさんの牛が歩いているのを見かけます。
カンボジアの宝、アンコール・ワットを自転車で巡る
今回の旅のメインといっても良いアンコール・ワットに近づいてきました。
厳しい砂漠のような区間を超え、アンコール・ワットのある街、シェムリアップに近づくと急に森が出てきます。
道路の脇には木が生えるようになり、日陰ができて走りやすくなります。
シェムリアップに着いたのでこの日は休憩しました。アンコール・ワットなどの遺跡は次の日、丸1日使って回ることにしました。
次の日は朝から観光です。まずはアンコール・ワット周辺の遺跡群に入るためのチケットを買いにいきます。
看板にテンションが上がります。
まっすぐな通りを10kmほど走るとアンコール・ワットが出てきます!
自転車はアンコール・ワットの堀の目の前まで行って駐輪スペースにとめることができます。
歩いていると非常に暑いので、訪れる際は2Lくらい水をもっていくといいと思います。敷地内でも売っているのでそこまで神経質にならなくても大丈夫ですが。
アンコール・ワットの後は5kmほど離れた、タ・プロームという遺跡に向かいます。途中にも小規模な遺跡が至るところに点在しているので寄り道しながら進みます。
道路脇にもずっと遺跡があります。
このあたりは道もきれいで見どころも多く、自転車で回っていて非常に楽しい!
ジャングルの中を走るサイクリングロードもあるので、アンコール・ワットを訪れる際には自転車に乗ってみるのがいいかもしれませんね!
いくつか遺跡に寄り道しているうちにタ・プローム遺跡に着きました。この遺跡はアンコール・ワット周辺の遺跡で最もおもしろいと私は思います!
こちらはジャングルに飲み込まれてしまった遺跡、タ・プローム。
自然の迫力に圧倒されます。
このエリアはに狭い範囲にたくさんの遺跡があるので、訪れる人はぜひ自転車で回ってみてください! 自転車ならではの視点でたくさんのおもしろいことに気づきますよ!
謎な魚を補給、そして緊張のタイ入国
さて、アンコールワットを過ぎると次の目的地はタイ。国境まで150km。2日あれば余裕をもって行けそうです。
観光地を抜けると再び何もないゾーンに戻ります。
そしてさらに悪いことに向かい風がひどくなってきました。
ここまでの300kmもずっと向かい風でしたが、ここにきて強くなります。
18km/hくらいでゆっくりとこぐしかなさそうです。この時点で心が折れかけていましたが、止まってもどうにもならないのでゆっくりと、それでも着実に前に進み続けます。
国境手前30kmのところでカンボジアでの最後の昼休憩をします。この時の所持金は100円ほど。驚愕の少なさに自分も驚きます。
お腹が減っていましたが、小さい水とエナジードリンクしか買えませんでした。お金は多めに持っておくべきです(当然のことですが)。
子猫がたくさんいたので戯れて遊びます。
猫たちと遊んでいると、店の主人が話しかけてくれました。英語が堪能な方で、さまざまなことを話しているうちに仲良くなりました!
そしてなんと、私のお金がない現状を知って昼ごはんを作ってくれました!
家の後ろの川から取ってきた魚のようですが、魚の名前は彼も知らないそうです。大丈夫……?
でもちゃんと美味しかったです!
なぜか彼の両親とテレビ通話をしたりしてだいぶ仲良くなれました。笑
私が出発する際にはなんと2Lの水と補給食を持たせてくれました! 昼ごはんから水まで、本当にありがたい限りです。この旅では皆さんの優しさにたくさん救われました。
さて、国境に着くとまずはカンボジアの出国審査です。ベトナムでのことがあるので緊張しましたが、今回は大丈夫でした。
しかし、トラブルはタイの入国審査時に起こります。
どうやら私の書いた入国審査の書類が間違っていたようで、入国させられないと言われてしまいました。さすがにそれは困るので粘って話をしてなんとかならないかと交渉しました。
何回か列に並び直し、しばらく話をし、最終的に私が日本人で日本のパスポートをしっかりと所持していることを確認すると「まぁいいか」といった渋い顔で通してくれました。
日本という信頼の高い国に感謝です!
何はともあれ、タイに入国できたので良かったですがなぜこうも国境でトラブルが起きるのか不思議です。
国境でのトラブルは焦るので嫌ですね!
旅の最終フェーズ、タイ 〜食と文化の街〜
すぐさま受けるタイの洗礼
タイに入るとすぐに違和感が。そうです、タイは日本と同じ左車線です。国境の門を越えたとたん変わるので順応が大変です!
そして少し走るとこんな道になりました……。
ベトナムやカンボジアにも「何もない」場所はありましたが、少なくとも休憩できるような店はところどころありました。
が、タイの「何もない」は、文字通り何もないです。初めにあったコンビニを逃したらその後50km全く何もなく、水も尽きてしまい危ないところでした。
そしてやっと見つけたコンビニで昼食を。
そぼろ丼。美味しいです。が、あまりの辛さにしばらくは味覚がなくなってしまいました。
まさにタイの洗礼です。
ちなみにおもしろかったものでいうと、こんな標識がありました。
日数調整で急遽ルート変更
タイに入ったところで、ついに走りに疲れがみえてくるようになりました。ここまでですでに700km以上走っています。
元の予定だとあとバンコクまで400km走ることになっています。しかし残りの日数と体力を考えるとなかなか厳しそう。
バンコクで観光もすることを考えるとルートを短縮した方が良さそうです。そこで本来のルートを変更して100kmほど短縮しました。
これは正しい判断だったのではないかと思います。
最終目的地、バンコク到着!食と文化を堪能!
ベトナムのホーチミンから出発して12日。ついに最終目的地であるバンコクに着きました! ここまで1,000kmちょっと。よく頑張った、自分!
頑張ったご褒美にバンコクを楽しみたいと思います!
ルートを短縮したので、丸2日間バンコク観光ができました!
まずタイ・バンコクといえば寺院! というわけでタイの3大寺院である
- ワット・プラケオ(エメラルド寺院)
- ワット・ポー(涅槃仏寺院)
- ワット・アルン(暁の寺)
に加え、プラネタリウム寺院として有名なワット・パークナムを自転車で訪れました。
※中には撮影禁止の場所もあるので注意しましょう!
こちらはワット・アルン(暁の寺)。
撮影禁止の寺院は紹介できないので皆さんが実際に行って確かめてみてください! あまりの荘厳さに感動しますよ!
寺院の次はやはりグルメでしょう。
タイの料理には美味しいものがたっくさんあります!
これはタイの代表的料理、カオマンガイ!
そして二大巨頭のもう一角、トムヤムクン!
酸っぱくて辛いスープと、エビから出た甘み、そしてパクチーの香りのハーモニーに病みつきになります! ちなみに私は2日間で3回も食べました!
そして奥に見えるのが代表的スイーツのカオニャオ・マムアン! ココナッツミルクで炊いたもち米と、フルーティーなマンゴーの組み合わせは最高としか言いようがありません!
空港へ、そして帰国
ついに14日間の全行程を終え、日本に帰国するため空港に向かいます。
しかし、最後の難関が待ち受けていました。それはスワンナプーム国際空港です。アジアのハブ空港なので巨大でした。
空港に着いたものの自転車で空港ロビーに行くための道が見つけられず、小一時間ほど迷っていました。空港の係員さんに聞いて回ったところ、自転車禁止の場所を走っても構わないということで、なんとかたどり着くことができましたが、そもそも空港が自転車で入っていくような設計になっていないので、タクシーなどで行くことをおすすめします。
2週間お世話になった相棒を輪行するために分解します。
行きでの反省を生かし、今回はリアディレイラーを外して輪行しました。帰りは特に自転車にダメージがなかったので良かったです!
深夜の便で、無事日本に帰国することができました!
やっぱり自転車旅は最高だった!
今回走行したルートはこちら。
ベトナムのホーチミンから出発し、タイのバンコクをゴールとする計1,100kmの道のりでした!黄色の星をつけたところで宿泊しています。
健康面についてですが、幸い15日間で大きく体調を崩すことはありませんでした。多少お腹を壊したことはありましたが、不衛生さが原因ではなく、単純に辛すぎるものを食べたからだと思われます!
膝などの関節痛もまったく出ず、2週間を通して至って健康体で過ごすことができました。
今回、この旅行が私自身初めての一人旅でした。国内でも一人で旅をしたことがなく、一人であることの不安も多くありましたが、なんとか無事に旅を終えることができました。
言葉が通じない中で多くの人々に助けてもらい、ありがたいと思うのと同時に自分もそうありたいと強く思った期間でもありました。
この旅が自分にとってどのような意味を持つかはまだはっきりとは分かりませんが、胸を張って言えるのは、今の自分にとって100点満点の旅だったということです!
前編、後編と長々綴らせてもらいましたが、今回の私の記事を見て「自転車での旅っておもしろそう!」とか「東南アジアに行ってみたい!」と思ってくれたらうれしいです! ありがとうございました!
あと、最後に一つ自慢です!
この1,100kmの道のりで一度もパンクしませんでした!
タイヤはシュワルベのP デュラノというものです。参考までに!