九州で自転車とコーヒーを考える Vol.2
自然と自転車との関わり合い方、そしてコーヒー
自然を自然として認識してその景色の美しさや気配に心から感嘆するようになったのは一体いつからだろう?福岡といっても田舎育ちの僕にとって意識するまでもなく自然はごく身近な存在だった。それがいつからか十代の時に聞いたロックや二十代でたくさん観た映画のように自然が心の拠り所になったのは僕にとってはロードバイクに乗り始めたことによる部分が大きい。人によってはそれが登山だという人もいるだろう。
ロードバイクの乗り方も人それぞれだ。レースに出る人、通勤で乗る人、平地だけ乗る人、山を好んで乗る人。ロードバイクに乗り始めて7年ほど。今の乗り方を決定づけたのはたぶん2年目のこと。2012年5月12日と13日に阿蘇にSNSで知り合った3人で泊まりがけのツーリングに出かけたことだ。博多駅集合で大分県日田駅まで輪行。阿蘇の麓の民宿で一泊して帰りは阿蘇山頂まで登ってまた日田まで帰ってきた。
それまで複数で乗るよりも圧倒的に一人で乗ることの方が多く、ましてや自転車でそのまま宿に泊まるなんて考えたこともなかった。今考えてもこの時の装備はなかなか無謀でクラシックなランドヌールのイメージがあったからかクロモリのロードバイク、メリノウールのジャージ、ブルックスの革サドル、重たいキャラダイスのサドルバッグ、その中には着替えや補給食と一緒に”エアロプレス”というコーヒーメーカーを忍ばせていって宿で他のふたりにコーヒーを振る舞った。極力荷物を減らすために宿でジャージを洗い、一晩干したものの翌日は生乾きであのツンとした匂いが忘れられない。
活火山によって生まれた九州独自の地形美
くじゅうから阿蘇にかけての地形は多くの人を魅了する。地質学者ではないのでよくわからないけど僕らの生活する所と違う要因は大きな活火山によるということだけは間違い無いだろう。なだらかな牧草地、突如隆起する外輪山。車でも何度か訪れたことがもちろんあったのだけれど自転車で登ってみるとまた違う感動を覚えるのだから不思議だ。
視界が開けた所から下を覗いてみると麓の水田に張られた水面が鮮やかな緑を写し返している。何度も阿蘇を訪れてみてわかったことは阿蘇の自然はありのままの自然の姿ではなく野焼きなど人為によってその美しさが保たれているということだ。荒々しい自然に寄り添って生きる人の姿もまた美しい阿蘇の自然の姿だ。