2018ロード世界選手権|バルベルデが念願の世界チャンピオンに!
9月30日にオーストリア・インスブルックで、ロード世界選手権・男子エリートロードレースが行われた。史上希に見る難コースを制したのは、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)。これまで世界選で2位2回、3位4回と合計6回も表彰台に上ってきた38歳の大ベテランが、ついに一番高いところに上り詰めた。
有力候補は逃げを容認
レースは、インスブルック郊外の町・クーフシュタインをスタートし、周回コースに入るまでの約80kmは、大きな登りが一つあるものの、比較的単調に進む。周回コースのアップダウンが厳しい分、ここでまずは足馴らしをしてもらおうという設定だ。中継の画像も単調にならず、美しいオーストリアの景色を映し出す。
スタートするとすぐに、カスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップフロアーズ)、ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、ライアン・ミューレン(アイルランド、トレック・セガフレード)、トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、グルパマFDJ)らの逃げが始まった。
ツール・ド・フランスのようなステージレースならば、逃げを潰すために激しいアタック合戦が見られるところだ。しかし、世界選ではこういった逃げはいわば定番のようなもので、距離も長いのでまず決まることはない。集団もこの逃げを容認し、あえて追わないこととした。そのため、逃げ集団とメイン集団との差はみるみる開き、その差は最大で17分30秒まで開いた。
近年まれに見る難コース
プロフィールマップを見れば一目瞭然なのだが、今回のインスブルックのコースは距離258.5kmに対して獲得標高差4670mという近年まれに見る難コースだ。これだけ登りが厳しいと、ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)やヘント〜ウェヴェルヘムのようなフランドルのクラシックやパリ〜ルーベで活躍するような選手には完全に不向き。フレーシュ・ワロンヌやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュなどのアルデンヌ・クラシックで活躍するような選手や、グランツールで上位に入るような選手に有利だといえる。
そのため、レースの前から世界選3連覇中だったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の4連覇は厳しいのではないかという意見が有力だった。サガンはパリ〜ルーベなどでは圧倒的な強さを発揮する選手だが、アルデンヌ・クラシックのような厳しい登りが連続するレースは苦手としているのだ。そして、それはレースが始まってみると、すぐに現実のものとなる。
周回コースに入って周回を重ねるごとに、メイン集団の人数は少しずつ減少していく。この厳しいコースで集団から後れるということは、完走は厳しくなるということだ。次々とバイクを降りる選手が出てくる。そして王者サガンも、残り4周回というところでついに遅れてしまった。日本から唯一出場していた中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)も同じくこの時点で遅れている。
最終周回でレースが動く
序盤からの逃げ集団で、カスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップフロアーズ)、ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)の2人が最後まで残っていたが、最終周回に入ると計ったかのように追走集団がこれを吸収。ここから、実力者たちの本当のレースが始まった。
まず、今年のアムステル・ゴールドレースの覇者ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)が切れ味の良いアタックを決め、最後の登りへ単独で突入する。しかし、徐々に勾配がきつくなってくると失速。ロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)らがペースを作る強力な集団に追いつかれてしまう。そして、バルデ、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)の3人が先頭で最後の登りを越えた。
やや遅れて最後の登りを越えたトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)が、残り1.5km地点で先頭の3人に合流し、バルベルデ、バルデ、ウッズ、デュムランの4人のスプリントで雌雄を決することとなった。こうなると、スプリント力に勝るバルベルデががぜん有利だ。ラスト350mから力強いスプリントを開始すると、そのままトップフィニッシュ。ついに念願の世界チャンピオンとなった。
表彰台で念願のアルカンシェルを着たバルベルデは、うれし涙を隠そうとはしなかった。さっそく、モビスターチームのフェイスブックページのアイコンも、アルカンシェルをあしらったものに変えられた。いかにこの勝利がバルベルデにとって、そしてチームにとって待ち望まれていたものかがよくわかる。
リザルト
男子エリートロードレース 258.5km
1 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)6h46’41”
2 ロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)
3 マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
4 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
5 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)+13″
6 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)+43″
7 ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)
8 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)
9 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
10 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
DNF ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
DNF 中根英登(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ)