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「ツール・ド・東北」は、未来へつながる自転車イベント

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2013年11月3日、Yahoo! JAPANと河北新報社の主催で開催された「ツール・ド・東北 2013 in 宮城・三陸」(以下「ツール・ド・東北」)。2014年も、9月14日に宮城県石巻にてスタートの合図が鳴らされます。

そこで今回は、ヤフー株式会社 復興支援室 室長 須永浩一氏に大会の概要や、「ツール・ド・東北」開催にかける想いなどを伺いました。

震災からの復興をテーマにプロジェクトが始動

ーー 「ツール・ド・東北」を開催するに至った経緯をお知らせください。

東日本大震災の後、ヤフーが「 課題解決エンジン」として、現地に対して何ができるかチャレンジするプロジェクトの一貫としてスタートしました。

具体的には、2012年4月「復興支援室」を立ち上げ、7月に宮城県石巻市に「ヤフー石巻復興ベース」を構え、現地に入ることからはじめたんです。私も発案者として、石巻に移り住みました。

でも、その頃は自転車というキーワードはなく、何ができるか手探りの状態だったんです。きっかけとなったのは、地元紙を発行する新聞社である「河北新報社」さんという強力なパートナーを得たこと。同社は、50年以上前の戦災からの復興を目的とした「三笠宮杯東北一周自転車競争大会」や「ツール・ド・東北」というイベントに長年携わっていたので、これからは震災からの復興をテーマに一緒に何かできないかと考え、新生「ツール・ド・東北」のプロジェクトが始動しました。

ーー 復興をテーマにした「ツール・ド・東北」は、どのようなコンセプトを掲げたのでしょうか?

「ツール・ド・東北」を開催するにあたり、私たちは3つのコンセプトを設けました。

長く続けられる大会にする

このイベントは復興支援のためのプロジェクトなので、あえて、「10年程度続ける」ということを明言しました。そうすれば、壊れていた道路が整備されたり、新たに建設された防潮堤によって逆に美しい海岸線が見えなくなってしまうということもあるなど、同じコースでも景色が変わっていくことを認識できるはずです。

復興のためには、改善されるものがあれば失うものもあります。そして、その現実を参加者の方に見ていただくことで、新たな復興への世論というものが生まれてくるかもしれません。そのためにも続けていくことが重要だと考えています。

未来へつながる道をつくる

ヤフーは道路などのインフラをつくる企業ではありません。また、スポーツイベントを本業とする会社でもありません。

そのため、私たちはこのイベントで収益をあげることを目指すのではなく、参加費などを「ツール・ド・東北基金」にプールし、将来的に自転車と観光に関連した助成に充てたいと考えました。

そうすることで、行政や地元の企業と協力した、新たな事業にもつながります。例えば、サイクリングロードを整備したり、レンタルサイクル用の自転車を寄付することで、自転車をきっかけにした観光を促進できるかもしれません。

このように、私たちは未来に残る何かを、このイベントでつくっていきたいと思っています。

世界トップレベルの自転車レースを育てるきっかけに

例えばマラソンは、日本でも国際大会が行われることでプロのランナーが海外から訪れる機会があります。その結果、人気を集め競技人口も増えるという好循環になっています。

では、国内の自転車レースはどうでしょうか?残念ながら世界で活躍するライダーが参加するようなものはほとんどありません。

だからこそ、「ツール・ド・東北」が、そのきっかけを生む役割を担えればいいなと思っています。世界の三大スポーツの1つと言われているほど人気のある自転車レースが東北で開催されれば、世界中のメディアが発信することになり、結果的に東北の状況を世界に知ってもらうことにもなるのではないかと考えています。

応援してたら、応援されてた。

ーー 今年で2回目の開催ですが、1回目と比べて何が変わりましたか?

昨年の第1回目は、とにかく開催することが目的でした。反省点もたくさんありましたが、それ以上に反響が大きかったので、基本のコンセプトは変えていません。

例えば、レース途中の補給ステーションには通常、バナナとか栄養ドリンクを置きますよね?「ツール・ド・東北」では、選手が訪れる各エリアの一番美味しいものを出してくださいと自治体にお願いしたため、女川ではサンマを使った「女川汁(サンマのつみれ汁)」、雄勝ではホタテなどの名産を提供することができました。

また想像以上だったのが、地元の方の応援ですね。私自身は運営者としてコースに出ることがなかったのですが、参加者からは東北を応援しに行ったのに逆に応援していただいたのが嬉しかったという声を多くいただきました。

ーー 地元の方とのつながりを感じるイベントですね。コースは今までと一緒でしょうか?

今回から、気仙沼まで走る220キロのコースも追加しました。コースが長くなったので、実は開催時期も11月から今回は9月に移行しました。そのことで、日照時間が約2時間違うため、ロングライドも可能になったんです。

また、「ツール・ド・東北」の大きな特徴は、競争(レース)ではない、ファンライドイベントだということです。順位を付けず、参加者には東北のコースを楽しみながら走っていただきたいと思っています。

ーー 昨年の完走率は99%とお聞きしましたが、走行中のトラブル、怪我などはありませんでしたか?

単独で転んでリタイアされた方はいましたし、昨年はパンクが多かったですね。東北の道はまだまだ整備されていないところもあり、道にも突起物が落ちていることも。そのため、もし自転車にトラブルが起きても対応できるように、メカニックチームやサポートライダーのボランティアを展開し、さらに今年は体制を2倍近くに強化して、よりフォローできる体制を組んでいます。また参加費に自転車保険が含まれていますので、何かあっても保険でカバーできるなど、参加者が安心して走れるような取り組みをしています。

ーー 昨年はチケットが人気ですぐに完売したようですが、今年はどうでしたか?

昨年は先行スタートの権利を持つ抽選のエントリー枠と、先着順のエントリー枠で募集を行いました。結果、抽選枠はとても高い倍率となり、先着枠も15分で売り切れてしまいました。先着枠は仕事があり買えなかったなどの不満も出たので、今年は完全に抽選にすることに。倍率は約2倍ほどあり、抽選に漏れた方には申し訳ないと思っています。

そのため、今年からボランティアの新しい制度「ツール・ド・東北 クルー」を立ち上げました。クルー(ボランティア)として運営にご協力いただいた方には、翌年に出走できる権利が得られます。なるべく多くの方にこの大会に携わっていただき、東北の方と交流したり、東北の今を感じていただきたいと思っています。

ーー 色々お話をお聞きしていていると「ツール・ド・東北」は、単なる自転車のイベントではない“想い”の詰まった大会だということを感じます

そうですね。例えば、地元の一般家庭で空いているお部屋を「ツール・ド・東北」参加者に提供していただく、「民泊」という試みを行いました。現地に泊まった方の中には、今でも手紙などでやりとりしているなんてこともありますし、東北の食材をお取り寄せしている参加者もいます。

また当社の強みであるITを活用し、専用のスマホアプリを導入してコーススタンプを獲得できるようにしたり、参加できなかった方もバーチャルで参加する仕組みを整えたり、通常の自転車レースにはない試みも実施しています。

ヤフーでは「爆速」という企業テーマがありますが、プロジェクトチームが同じ方向を向いて速いスピードで進化している手応えを私は感じています。

ーー 最後に、今年の「ツール・ド・東北 2014」にかける意気込みを聞かせてください。

ヤフーでは、リアルな場でコンテンツを作ることは今までしてきませんでした。「ツール・ド・東北」は、まさにヤフーらしくない事業です。

だからこそ、昨年は完全に“挑戦”でした。自前のノウハウができた今年は、それをもとにさらに内容を進化させていきたいですね。

また、昨年このイベントを開催したことで、地元の行政や経済界の反応も良い方向へガラッと変わりました。「おっ、あのヤフーさんがやることなら協力するよ」みたいに。今後は、参加者やボランティ含めさらに規模を拡大し、日本一の大会にしていきたいと思っています。

そのために、これからもヤフーらしくない挑戦にたくさん取り組むことが、私の意気込みですね。

(終)

ツール・ド・東北のフォトレポートもあわせてご覧ください。
写真とともに振り返る、ツール・ド・東北2014実走レポート

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