競輪の世界で活躍する牛山貴広選手、西谷岳文選手、植松仁選手。彼らは競輪の選手であると同時にスピードスケート選手でもあります。
このように「スピードスケート選手から競輪選手に転向した」という例は珍しくないのです。
両者の共通点を考えてみると、競輪の選手もスピードスケート選手も同じように態勢を低くして鍛えられた太腿の筋肉を生かして戦っている印象がありますよね。
私は小学生の時からフィギュアスケートをしていたので、いつも間近でスピードスケートの選手がトレーニングするのを見ていました。
今回は「なぜ競輪選手にスピードスケート選手が多いのか?」という疑問を、自転車とスピードスケートの共通点を踏まえながら考察していきたいと思います。
スピードスケートと自転車の共通点
スピードスケートも競輪も、基本は全身運動なので、懸垂や腹筋背筋、ダンベルの使用といった基礎的なトレーニングはどちらも必須になります。それに加えて最も鍛える必要があるのはやはり下半身の足腰です。
陸上の長距離選手とスピードスケート選手では筋肉の鍛え方が違うように、通常ならばスポーツそれぞれの特性によって必要なところに必要な分の筋肉をつけていく必要があります。
しかしどちらの競技も長時間の前傾姿勢を維持できるように身体のバランスを鍛える必要があるため、必然的に選手として必要になる肉体の理想像が似通っているのです。
そのためスクワットや陸上で行う短距離のダッシュ、わざとギアを重くして自転車で坂道を繰り返し登ったりと、両者ともに足を太くし鍛える訓練をしています。
両者の鍛えるべき重要な筋肉は、代表的な筋肉の名を挙げると、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、ハムストリングスなどです。
大腿四頭筋は大腿骨に繋がる大腿筋のうち、大腿骨を挟み四方に存在する筋肉の総称で、大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋の4つの筋頭からなっています。跳躍力を重視されるスポーツで重宝され、瞬発力を発揮するには欠かせない筋肉です。
ハムストリングスは大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋の3つの大腿後面にある筋を合わせてそう呼びます。主に下肢の動き作ったり、運動能力に大きく影響したりする部分であるとされています。
しかしトレーニングをするのが難しい筋肉で、肉離れなどの故障を起こしやすい箇所であることも知られています。
こうして、スピードスケート選手も競輪の選手も、身体全体を鍛えつつも下半身の筋肉に効果的に力を伝えられるようなトレーニングをしているのです。
スピードスケート選手にとって切っても切れない自転車
スピードスケート大会の会場に足を運んでみると、選手控え室付近にはサイクルトレーナーが整然と設置されています。このようにスケートと自転車は切っても切れない関係にあるのです。
サイクルトレーナーは主に筋力アップの他、心肺機能を鍛えたり、長時間身体を酷使することによって精神力を鍛えたりもできます。さらに大会中にはウォーミングアップやクールダウン時に使用されます。
スピードスケート選手はサイクルトレーナーに限らず、日頃の練習では選手の環境によって、自転車の種類は違いますがサイクルトレーナー、エアロバイク、ピストバイク、ロードバイクなどに乗ってトレーニングをしているのです。
また、スピードスケート選手は、酸素最大摂取量等の運動負荷試験を行う際に自転車を使っています。サイクリングとは少し違って、傾斜の付いたベルトコンベアー(トレッドミル)の上で自転車に乗って測定するので、自転車の技術も一流なのです。
スピードスケートから競輪に転向した選手
スピードスケートから競輪への転向をした選手に、牛山貴広選手がいます。
彼はトリノ五輪に出場しており、1000mで1分11秒21で28位、1500mで1分50秒59で35位、団体追い抜きでは8位に終わりました。
その後五輪閉幕直後に競輪の選手を養成する日本競輪学校に特別選抜試験の願書を提出し、合格したのです。
このように牛山選手をはじめ、スピードスケートで思うような結果を残せなかった選手でも、競輪に転向して活躍している選手もいます。
最後に
これまでで説明したように、スピードスケートと競輪にはトレーニングの過程で密接に結び付いているスポーツであることが分かりました。
夏場に自転車で汗を流していた人も、今までに鍛えた筋肉を使ってスピードスケートで成果を出せるかもしれません。
この冬、あなたも是非銀盤の氷上で輝いてください!!