ディープリムホイールのメリット・デメリットとおすすめ6選
今回はレースでよく見る憧れのホイール”ディープリムホイール”について取り上げます。
もともとトラック競技で誕生したディープリムホイールは、軽量なカーボン素材の台頭により、多少起伏のあるロードレースでも日常的に使われるようになりました。
今では技術も成熟し、高剛性化など様々な利点が生まれたため、山岳ステージでもディープリムホイールを使うプロレーサーもちらほらいます。そんなディープリムホイールの利点と欠点を整理してみました。
目次
ディープリムのメリット
高速域での空気抵抗を減らせる
自転車は前に進む乗り物である以上、速く走ろうとする行為は、そのままいかに空気抵抗を打ち破るかの戦いであると言ってよいでしょう。
事実自転車が前に進む際に抵抗になる力のうち、およそ80%から90%は空気抵抗と言われています。残りはタイヤの転がり抵抗と、ドライブトレインや人間の摩擦、または加減速時の加速度抵抗です。
サイクリストにとっておなじみのCervélo社も、空気抵抗をなるべく減らすために実験を行うなど、様々な取り組みを行っています。そして、そこから得た知見を活かしたバイク作りを行っているのです。
このことからも、自転車の回転部の抵抗を減らしたりパーツの重量を軽くしたりするよりも、空気抵抗を減らすほうが速度UPのためには何倍も有効であることがわかります。
トラックの後ろなどといった強烈なスリップストリーム環境であれば空気抵抗はほぼゼロになり、人によっては100km/hを超える速度を出すことも可能です(絶対真似しないでくださいね!)。
さて、そんな自転車乗りの大敵である空気抵抗ですが、全体のうち約80%を占める人間の体に当たる風はなかなか減らすのが難しい。人間の体の形状を変えるためにできることは限られているからですね。
一方、空気抵抗全体のうち約10%はホイールが占めていると言われます。つまり計算すると、自転車で前に進む際に抵抗になる力のうち、8~9%がホイールの空気抵抗によるものです。こうしてみると結構影響があると思いませんか?
そして肝心のディープリム化によるホイールの空気抵抗軽減効果ですが……
実は一概に数字を出すことはとても難しいのです。
なぜかと言いますと、ホイールは回転体であるがゆえに、空気抵抗の大きさを決める因子がリム形状だけでなく、スポークの本数や形状といった因子も関係する多変数パラメータだからです。
ただし傾向的にリムが高いと高速域での空気抵抗が小さいことは間違いありません。このページでは各社のホイールの50km/h走行時の空気抵抗を風洞で計測していますが、それらをリムハイトごとにプロットすると以下のようになります。
(データ引用元:Roues Artisanales)
下に行くほど空気抵抗が小さいのですが、全体的にリムの高さが高くなれば空気抵抗が小さくなる、右下がりの傾向が見て取れると思います。
もちろん速度40km/h、30km/hでは結果が違ってきますが、高速になればなるほどディープリムが有利なことには間違いないでしょう。
ホイールの剛性が高くパワーロスが少ない
ホビーライダーの中でも大柄な方などは、ホイールの硬さによってはたわみを感じるかもしれません。
ホイールのたわみはパワーロスに繋がるため、エネルギー効率という観点で見ると無限に硬いホイールこそが最も優れたホイールです。ただ、実際には硬すぎると脚への反力が強いため、適度な硬さのホイールが最も優れているということになるのですが。
さて、ホイールを硬くする方法にはいくつかあり、
- スポークテンション(スポークの張力)を上げる
- スポークの本数を増やす
- リムハイト(リムの高さ)を上げる/リム剛性を上げる
などの手段があります。この内、ディープリムホイールはリムにボリュームをもたせて剛性を確保できるため、同じスポーク本数、テンションでもロープロファイルホイールとくらべて剛性を高くできます。
プロ選手が山岳でディープリムを使う理由には剛性の高さも関係しているようです。
定速巡航が楽
ディープリムは外周部が重い分、ロープロファイルホイールに比べ慣性モーメント(回転させる、あるいは止める際に必要な力)が大きいです。
つまり、回すためには大きなエネルギーが要るし、回転を止めるためにも大きなエネルギーが必要とされます。
一見これはデメリットに思えますが、定速で長距離を走行する場合は速度が落ちにくいというアドバンテージになるのです。一度スピードに乗れば減速しにくいため、トライアスロンやフラットステージでは重量増を承知で高いリムハイトのホイールを履くことが多いです。
見た目がかっこいい
説明不要ですよね。見た目だけじゃないけど見た目は継続して乗ることのモチベーションに大きく関係してくることでしょう!
特に昨今のエアロ形状に凝ったフレームには、ロープロファイル(リムハイトが浅いリムを用いたホイール)よりもディープリムのほうが圧倒的に似合います。
ディープリムのデメリット
重量が増える
いくら軽いカーボンを用いているとは言え、リムに用いる材料が単純に増えるため、ロープロファイルホイールに比べると200g程度重くなることがほとんどです。
また、単純に重いだけでなく、回転体であるホイールの、しかも慣性モーメントに最も影響する外周部の重さが増しているため、踏み出し、アタックなどの加減速時にはどうしてもペダリングが鈍る感覚があります。
バイクを軽量チューンしたい方や、ヒルクライムメインの方などは、ディープリムの採用には慎重になったほうが良いでしょう。
高い
ディープリムはカーボンを使用することを前提にしているので、必然的に価格が高くなります。
アルミリムのディープリムもあるにはありますが、恩恵よりも負の側面が気になるようになり導入するだけ損になる可能性もあります。
興味がある人はFast Foward、LightweightやCampagnoloのディープリムの値段を調べてみてください……度肝を抜かれますよ。
横風に弱い
ディープリムは前方からの風にはとても強いですが、横から風が吹くと風をモロに受ける抵抗板と化します。
特に操舵に関わる前輪のディープリムに突風などが吹き付ければバイク挙動にも影響し、最悪の場合落車しかねません。
トライアスロンのセッティングで前輪をディープリム、後輪をディスクにしている選手が多いのは、前輪をディスクにするとリスクが大きすぎるという理由もあります。
それに対し風の吹く心配のない屋内のトラック競技では、前輪後輪にディスクホイールを採用している選手を多く見ることができます。
ディープリムホイールを使用する場合には、サイクリングのルートを変えるなど、横風を避けるよう注意することも時に重要となってきます。
選ぶときのポイントと注意点
ホイール選びにはいくつかポイントがあります。ここでは、特に重要な「リムハイト」「タイヤの種類」「ブレーキのタイプ」「リム幅」について解説していきます。
まずは”セミディープリム”から!
ディープリムホイールを選ぶ際には、リムハイト(リムの高さ)を基準にするのがよいでしょう。一般的にはリムハイトの高低によって重量や値段が決まります。
特に最初の一本にはセミディープリムと呼ばれる、リムハイトが40mm前後のホイールを選んでみることをおすすめします。空力の観点ではリムハイトが高ければ高いほど走行性能が向上しますが、重量が増えることや横風にあおられやすくなることを考えると、まずはセミディープリムにしたほうが総合的に恩恵を受けられると思います。
タイヤの種類
ロードバイクに用いられるタイヤには、「クリンチャー」、「チューブラー」、「チューブレス」の3種類があります。「クリンチャー」はタイヤの中にチューブが入っているもの、「チューブラー」はチューブがタイヤの中に縫いこまれているもの、「チューブレス」チューブを必要としないものです。
中でも最近はチューブレスが流行りつつあり、使用する人も増えています。ホイール購入を機にチューブレスへ移行するのもアリです。
ブレーキのタイプ
リムブレーキ用、ディスクブレーキ用は構造が全く違うため、互換性はありません。間違えて購入しないように注意しましょう。
リム幅
ディープリムホイールのみならずホイール全般に当てはまることですが、ホイールによってリム幅が違うという点には注意しておきましょう。なぜなら、ホイールを交換するとブレーキレバーの引きしろが変わってしまうからです。
特に、1台の自転車で複数のホイールを使い分ける場合は要注意です。リム幅が狭いホイールにブレーキの調整を合わせている場合、リム幅が広いホイールへ交換すると、リムとブレーキシューのクリアランスが少なくなってしまいます。逆も然り、リム幅が広いホイールにセッティングを合わせている場合にはクリアランスが多くなります。
最近はワイドリムを取り入れたホイールも多く、一昔前に比べるとリム幅が広い傾向にあります。ディープリムと他のホイールの両方を使いたいという方は、ブレーキの調整も行うようにしましょう。
ディープリムホイールおすすめ6選
ここからは、おすすめのディープリムホイールを紹介していきます。
Prime BlackEdition
イギリスの通販サイトWiggleが扱うPrime。カーボンのディープリムホイールが5万円台からラインナップされており、初めての1本におススメです。
リムブレーキタイプのカーボンクリンチャーホイールです。この価格帯ながらチューブレスにも対応しています。
リムやハブなど細部にこだわりを持たせたBlackEdition。重量も1,506gと、ロープロファイトのホイールにも引けを取らない軽さが魅力。
SHIMANO DURA-ACE WH-R9270
走行性能と価格を両立したDURA-ACEシリーズのホイール。2021年にはサイクリスト待望のリニューアルが施されました。12速専用のため、2022年3月の時点では新型DURA-ACEしか使用できないのが玉に瑕。
Campagnolo Bora One Cult
イタリアンブランド、カンパニョーロの人気シリーズであるボーラ。CULTベアリングを採用し、高い回転性能と耐久性が実現されています。G3組みの美しさもサイクリストの間で評判です。
Fulcrum Speed
カンパニョーロの姉妹ブランドであるフルクラム。パワーの伝達効率を向上させる2:1組みが特徴的です。
Speedはフルクラムの中でも本格的なグレードに位置づけられます。レースなどにてその真価を発揮させることができるでしょう。
おすすめショップ
『Probikeshop』は、欧州の人気ブランドや日本未発売のブランドをはじめとしたスポーツバイクの専門サイト。ディープリムホイールの品揃えも豊富です。
- 購入前にオンライン相談できます。
- 購入後の出張サポートは年3回まで無料です。
まとめ:ディープリムはどんな人に向いているか
メリットもあればデメリットも多いディープリムですが、使いこなせれば強力な武器になることは間違いありません。ロード乗りの間では決戦でディープリムを履くときに「最終兵器」とか「飛び道具」とか呼んだりもします。
上に書いた特徴を踏まえると、以下のキーワードにピンとくる人は導入を考えてもいいのではないでしょうか。
- 平地メイン
- 脚力に自信あり(重いホイールでも回せる、巡航速度が高い)
- 大柄
- トライアスリート
- 見た目命
ちなみに自分は貧脚ですが完全に見た目でディープリムを購入しました!アディオス!