YouTubeで世界中の人々を魅了したスイム動画を保有し、トータル・イマージョン・スイム(以下TIスイム)のジャパン代表である竹内慎司さん。その泳ぎに魅了され、数々のスイマーやトライアスリートが彼の下で教わってきました。
その美しいクロールは世界中で話題となり、各国に熱烈なファンが存在します。普段は世界各国を飛び回っている竹内さんですが、今回日本へ滞在しているとの情報を入手。トライアスリートである当社代表の中島は竹内さんのビデオや書籍を読みあさって泳ぎを勉強しており、「こんな機会はめったにない、ぜひともお会いしたい」ということでご多忙のなか時間を作っていただきました。
また、25mを泳ぎきれないためこれからTIスイムで泳ぎを学び、トライアスロンを目指す予定のFRAME編集長も同席。
今回の前編では竹内さん自身の体験談にもとづき、TIスイムで教わればなぜ泳げるようになるのか、そしてコーチを務めるきっかけとなった秘話を語っていただきました。
もともと運動嫌い。たまたま見つけたTIスイムのビデオが人生を変えた
-経歴を教えてください
私は野村総合研究所というところで、コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。それから4年後にアメリカへ渡り、シリコンバレーでITビジネスを始めました。仕事はうまくいっていたんですが、忙しくて運動を全くしませんでした。
そんなときに「運動しないと糖尿病になるぞ」と医者から追い打ちをかけられましてね。それじゃあと一念発起して、中学生の時に水泳部に入っていたのを思い出し、水泳を再開することにしました。最初は25mを泳ぐと息も絶え絶えで運動になりませんでした。「これではいけない!」と考え、本格的に勉強しようと思い、教材を探すことに。
そんな時に、たまたま手に取ったのがTIスイムのビデオだった。でもTIスイムだから買ったわけではないんです。ショップで売られていた平泳ぎのビデオって大体39.95ドルなんですけど、TIスイムのビデオは平泳ぎのうえにバタフライも入って同じ39.95ドルだった。これはお買い得だと思ったんですね。
ただし、ビデオの通りに練習をしはじめたものの、最初は自分が何をやっているかわからなかったんですね。平泳ぎのはずが身体をうねる練習から始めましてね。平泳ぎしたいのに泳ぎ方を全然教えてくれないんですよ。なんでこんなことをするんだろうなー?と思ったことがいくつかあったんですけど、1カ月たったら平泳ぎができるようになっていた。これはすごい教材だな、と。
-そのTIスイムを日本へ持ち込んだ経緯についてお聞きしたいのですが
私が勉強した内容を知人に教えたのがきっかけですね。教えやすかったんですよ、ドリル形式だったから。その知人は最初25mも泳げなかったんですが、4回教えたら約1,500mノンストップで泳げるようになっちゃったんですね。本当にすごいメソッドで、自分だけじゃなくて他の人でも効果が出るというのがわかったので、日本に紹介したいなと。
当時、家族との時間を大切にしようと思い、仕事を減らしていたんですけど、商売したい欲求が湧いてきちゃって。その後日本での使用権を得るために正式なコーチになったのが2004年ですね。
専用プールは空輸して自分で組み立てた
-日本での使用権を得たあとは?
日本での独占使用権を得たんですが、教える場所がない、スタッフもいない状態からスタートしたわけですよ。そこで実家の向かいにあった空き地に、家を建てて小型のエンドレスプールを入れました。見た目は家ですが、扉を開けると目の前にプールがある。ほとんどプールで占められているんですね。このプールは米国製で、部品を空輸して自分で組み立てました。
最初はこのプールでビジネスをスタートしました。それが2005年。そうしたら今いるスタッフの何人かが「一緒にやりたい」と言ってくれて、一般のプールでもグループレッスンとしてワークショップを始めることができました。
有名なYouTube動画秘話
有名なYouTube動画秘話
日本では、私の泳ぎをきれいだと感じたり、声をかけたりしてくれる方が多いのですが、世界の人から見たらどうなんだろうっていうのが知りたくなったんです。
-それでThe Most Graceful Freestyle Swimming by Shinji Takeuchiをアップされたのですか
ビデオを作成するにあたり、プールの中を一人で泳いでいる絵が欲しかったのです。そこで現在TIスイムがレッスンを提供しているフィットネスクラブSKY FITがオープンする前日に、急いで撮りました。撮影したのはスタッフなので、画面がガタガタ揺れていますよね。それを私が編集して、音楽を選んではめ込んだわけですね。また文字によってビデオの印象に影響を与えたくなかったから、泳いでいる映像に文字は入れませんでした。「このクロールをあなたはいいと思いますか?」という風な問いかけを動画だけでやったみたんです。
そしたら著書『「週4時間」だけ働く。』で有名なティモシー・フェリスが「こんな風に泳ぎたい」ってブログで紹介してくれたんですね。これで一気に拡散してアクセス数が上がりました。彼はその後最新の著書「The 4-Hour Chef」で、オリンピック金メダリストのマイケル・フェルプスと私のビデオを比べているのですが、「フェルプスは速い。世界一速いけど、先生として教わるとしたら私は慎司を選択する」って書いてくれたんですね。それもあって、ティモシーファンから私の方へ流れてきてくれたって人は多いですね。今では640万アクセスくらいになり、毎日150カ国で3000人以上が私のビデオを再生しています。
-世界にも影響を与えているんですね
先日シンガポールのTIスイムが1日に5レース泳ぐイベントを開催して、私を招待してくれました。そのイベントでは、レースを完泳した人が私の泳ぐ姿のイラストが描いてあるポロシャツやTシャツをもらえるんです。レースが終わった後にはみんながそのシャツを着ている。異様な光景ですね。37歳で医者から警告を受けてしょうがなく始めた水泳が、世界中からすごく支持を受けているという状態になった。かつ私の影響で水泳を始めた方がたくさんいる。皆さんの健康維持に役に立っているんだと強く感じました。
後編へ続く
こうして世界で注目されるスイムコーチの一人となった竹内さん。後編では竹内さんが水泳を教えるために10年かけて研究してきた秘訣や、コーチ側におけるさまざまな問題について語っていただきます。