東京・北千住で行われたSCOTT(スコット)2017年モデル新製品展示会にお邪魔しました。
SCOTTはスイスに本拠地を置くスポーツバイク用品とスキー用品を取り扱うブランド。1989年ツールドフランスにて、グレッグ・レモン選手がSCOTT製のエアロハンドルバーを使用し優勝したことで一躍有名になりました。
その後カーボン技術が発展し、各社続々とカーボンを採用し始めると、SCOTTは当時の最軽量ロードフレームCR-1をリリースするなど、節目で大きな話題をさらいます。現在もFOIL、ADDICT、SOLACEをはじめ同社のカーボン技術をいかんなく発揮したモデルをリリースしています。
では、SCOTTのカーボン技術とはどんなものなのか、新製品をご紹介する前に簡単に押さえておきましょう。
SCOTTが持つ3つのカーボン
カーボンは軽くて当たり前。ただ軽いだけでなくユーザーが安全かつ快適に乗れることを前提に製品を作らなくてはなりません。例えばSCOTTのカーボンフレームはライダーの体重110kgまで対応した高い強度を誇っています。
SCOTTが開発したカーボンフレームは、それぞれHMX SL、HMX、HMFと大きく3つあります。HMX SL はSCOTTが誇る最軽量フレームADDICT SLにのみ採用されており、日本企業、東レが開発するT1000Gと言われるカーボン素材と、より高強度があるカーボンナノチューブを組み合わせたフレームです。結果的にSCOTTのラインナップで一番の強度と剛性(硬さ)、軽さを持っています。体重無制限というのも強さを物語ります。
そのあとにHMX、HMFと続きます。HMXもカーボンにかかるコストが高いため、限られた上級モデルのみ採用されます。HMFは3つの中で一番下のグレードになりますが、カーボンフレーム業界の平均水準よりも優れた強度が得られています。硬さも程よく抑えられ、カーボンバイク初心者の方には取り扱いやすく、完成車の中で一番の使用率です。
では2017年の主なラインナップを紹介していきます。
HFXを使ったSCOTTのエアロロードバイク-FOIL
HMXカーボンを使用したSCOTTのエアロロードバイクFOILの最上級モデルです。ギア回りはフルモデルチェンジしたシマノDURA ACEとアメリカ製のホイールメーカーZIPPの組み合わせ。100万越えですが、いつかは乗ってみたい1台ですね。
空気抵抗を考えハンドルはステムとの一体型。さらに丸型ではなく扁平デザインにすることでより空気抵抗を抑えることができます。
フロントブレーキ以外はすべてフレームの中に内蔵されるケーブル類。
SCOTTのイメージカラーである蛍光イエローが目を引くFOIL 10です。HMFカーボンを使用し、シマノULTEGRAの電動シフトを採用。(参考重量:7.66kg)
軽さが命-ADDICT
SCOTTの中で最も軽量化を推し進めたモデルがADDICTシリーズ。ヒルクライムや峠ライドのように、車体の軽さやぺダリングパワーを必要とする乗り方に適しています。ADDICT 15 Di2はHMXカーボンとシマノULTEGRA電動シフトの組み合わせです。
特に登りで著しく体力を消耗した中では、ギアチェンジをミスしてしまう場合があります。でも電動シフトならほとんど力を必要としないので、確実なギアチェンジと余計な体力の消耗が防げるのです。まさに軽さが命のバイクです。(参考重量:7.58kg)
BB部分を分厚くデザインすることで、登りや立ちこぎをした時のぺダリングパワーが逃げないよう考えた設計です。
本格的にロードバイクをはじめたい人にちょうど良いモデルADDICT 30。同じくエントリーユーザーに最適なシマノ105のコンポーネントを使用し、2×11の合計22段変速です。重量も8キロを切っていて価格に対して非常に魅力的な1台です。
快適性と高い振動吸収性-SOLACE
SCOTTのラインナップの中で、快適性、高い振動吸収性を持ったモデルがSOLACEです。SOLACE10 DISCはその名の通りディスクブレーキ仕様で、様々な路面のコンディションに対応できる万能なロードバイクです。油圧式ディスクブレーキの場合、通常のブレーキに比べ制動力がアップし、レバーに掛ける力も少なくて済みます。特に下りが続く道では、スピードが驚くほど上がるので、よりコントロールができるディスクブレーキは安心できるアイテムです。
高い振動吸収性をもたらすのが幅約10㎜ほどしかない非常に細いシートステーです。手で触っても大きくしなる構造は、シートポストを含め路面からの衝撃を和らげる効果があります。
ENDURANDEとは直訳すると耐久性、持久力などの意味がありますが、耐久レースはもちろん、ロングライドやツーリングに適したフレーム設計であることを示しています。FOILやADDICTに比べると前傾姿勢が比較的緩めになってることでENDURANCEな乗り方ができるという事です。
SCOTTのバイクの中で一番歴史あるモデルがCR1です。HMX、HMFカーボンができる前は同社のフラッグシップモデルでした。現在はエントリーグレードのカーボンバイクでありSCOTTのベストセラーモデルです。
中でもCR1 30はカーボンバイクを低価格でというユーザーに応えたモデル。シマノのエントリーコンポーネントのSORAは初めての人にも使いやすくギアの数も十分。時間をかけてコンポーネントをカスタマイズしていけば、最終的には機能性高いバイクに仕上がるでしょう。
CR1のハンドル形状は体の方向に戻ってくるような曲線の為、楽なポジションが取りやすいのも特徴です。
個人的に気になったのが、アルミモデルのSPEEDSTER 35。日本限定カラーです。サドルとバーテープを絡めたコーディネートが抜群で、ホワイトベースのフレームとオレンジのバランスがすごく良いと感じました。
エントリーバイクによく採用されるシマノTIAGRA。操作方法は上級グレードとほぼ同じなので、まずはロードバイクはじめてみようという人にはピッタリではないでしょうか。ちょうど私の友人も10万円台でロードバイクを探していたので、おすすめしてみようと思います。(参考重量:9.16kg)
レディースバイクも充実
カーボンとアルミ両方をラインナップしているSCOTTのレディースモデル。男性と比べて体力や筋肉量に差があるため、FOILとADDICTは入れず、HMFカーボンのSOLACEとSPEEDSTERをラインナップに加えています。
シマノTIAGRA仕様の合計20段変速。
同じくシマノTIAGRA仕様のアルミモデル。(参考重量:9.35kg)
シマノSORA仕様のアルミモデル。(参考重量:9.80kg)
アクセサリーにも注力
シューズやヘルメットをはじめ、アクセサリー類にも力入れているSCOTT。バイクとのコーディネートがしやすいカラーリングもさることながら、ひとつひとつ機能や使用方法を記したカタログを作成するなど、商品数も充実しています。
近年他社でもリリースしている紐靴タイプのロード用ビンディングシューズ。レーシーなデザインに飽きたら選んでみても良いですね。
先のリオ五輪でスイス人のニーノ・シュルター選手が、SCOTTを乗り、MTBクロスカントリー種目で金メダルを獲得。会場にはサイン入りジャージなどグッズが展示され、盛り上がりを見せていました。
まとめ
今回紹介したモデルは一部であり、SCOTTは非常に多くのラインナップを抱えています。例えばFOILは8車種、SPEEDSTERは12車種など、一つのモデルに対して選択肢が多いのが特徴です。グレードも各モデル名の後に続く数字が若い程高くなっていきます。パーツ構成や予算に細かく対応しているので、購入する側にとっては非常にメリットが多いブランドです。
カーボンフレームの技術も高く、自分にとって最適なカーボンは何なのか、強度、剛性(硬さ)、軽さを総合的に判断して選ぶことが出来そうです。そして初心者にはありがたいエントリーグレードの充実感。幅広いユーザーから支持を得ているのも納得ですね。