「自転車通勤したいのに会社の総務部が許してくれない」「許してもらえないから会社に内緒でジテツーしてる」……そんな人も少なくない自転車通勤途上国ニッポン。先日このフレイムに掲載された内海潤さんの記事は心強いものでしたね!
わたしが暮らしているロンドンも自転車のブームが続いていますが、このブームを下支えしているのは2000年頃から急増した自転車通勤する人たちです。自転車通勤する人は毎年増え続けていて、都心などでは朝晩の通勤ラッシュ時には、クルマの交通量を自転車が超える区間が多くなってきています。
自転車通勤するスタッフは病欠や遅刻が少なく生産性が高い!
とはいえ日本同様、「フン、たかが自転車」と自転車のパワーを知らないクルマ脳な人が多く、自転車利用を促進したい人たちやNGO、自転車競技連盟、一部の新聞などが、自転車の効能をいろいろな統計や計算で説明して世論を形成しようとしてくれています。
まずは、会社の社長や総務の人に聞かせたい、社員が自転車通勤をすると会社にどのようなメリットがあるか。英国の場合ですが、社員の病欠は雇用主にはおよそ3万円の損失。平均的な病欠は年間4.5日なのに対し、自転車通勤者はわずか2.4日なのだそうです(1)。また、自転車は渋滞や電車の遅延の影響を受けにくいので、遅刻が大幅に減少します。
自転車通勤をしてきたスタッフは始業時にすでに脳が活性化しているので、生産性が高いこともロンドンではほぼ常識になってきています。自転車通勤者2500人と雇用主100社にとったアンケートでは、雇用主の2/3が自転車通勤をしているスタッフはより元気でよいと答え、スタッフは82%が自転車通勤のおかげでストレスが軽減していると答え、77%が仕事に集中できるとしていると出ていました(2)。
ちなみに、より有能なスタッフを獲得するためには、社内に駐輪場やシャワーがあることが不可欠ということは、ロンドンの企業では常識になりつつあります。より快適な自転車通勤のできる企業にデキる社員が転職していってしまうからです。これは本当。
自転車通勤する人は市町村の財政に貢献している
自転車通勤は社会にとってもプラスになります。自転車先進都市コペンハーゲンの試算では、クルマによる移動1kmが自転車にとって代わられるたびに市の財政約90円が節約されるそうです。カナダのバンクーバー市を使った試算では、同じ5kmをクルマと自転車それぞれで移動した場合、クルマは市に約300円の負担をかけていて(排気や騒音、道路などインフラへの負担、事故損害リスクなど)、自転車は市に約60円貢献する計算になるのだとか(健康効果、生産性アップなど)(3)。
コペンハーゲンのデータを使ったルンド大学の研究でも、クルマは自転車の6倍、社会やそこに住む人々に負担をかけている(税金が使われている)という結論になったそうです(4)。
さらに高齢化が進む日本でも見逃せないのが自転車通勤による健康促進効果。自転車に定期的に乗ることで生活習慣病や精神疾患などが減るので、もしも英国がデンマークと同レベルの自転車活用国になれば、20年間で170億ポンド(2兆3000億円)の医療費の節約になると期待できるそうです(4)。日本の人口は英国のざっと2倍なので、単純計算すれば4兆円も節約できるという仮説になります。
自転車レーンができた商店街は売上げがアップ
さらにさらに、自転車通勤の人が増えると、地域の経済も活性化します。ニューヨーク市交通局の2014年の調査では、隔離されたタイプの自転車レーンが敷設された商店街では売上が24%アップしたという結果が出ています。オランダやドイツの都市の調査では、中心地からクルマを締め出して歩行者と自転車だけが入れるようにすると、シャッター街だった中心地に人が戻る傾向がはっきり確認されているとのこと(5)。
また、複数の調査から、自転車に乗る人は乗らない人よりも買い物の支出が多い傾向も見えてきています。これは自転車に乗ってお腹がすくからなのか、自転車で交通費が節約できた分趣味などに使っているのか、さらなる調査が待たれるところです!
これらの数字や調査結果を持って、まずは総務に交渉してみてはいかがでしょうか。会社がなかなか聞く耳を持ってくれなくても、同僚や友だちや家族との会話の中で、話題としてふってみては。ここでのポイントは、自転車通勤は、自転車通勤をする人だけでなく、自転車に全く乗らない人にもお得なんですよ、ということ。「どうやら自転車が増えるとイイらしいね!」という世論が高まれば、あなたの会社も自転車通勤解禁に一歩近づくはずです。
出典
(1) Sustran
(2) Cyclescheme
(3) MovingForward.discoursemedia.org
(4) CyclingUK
(5) British Cycling