5月5日は自転車の日
神宮外苑の絵画館前で開催されたサイクルドリームフェスタに今年も参加した。毎年こどもの日に開催するのは意味があって、自転車の日でもあるからだ。これは元々自転車の業界団体が1981年の旧自転車基本法制定を祝って記念日としたのだが、今年5月1日に自転車活用推進法が施行され、第14条に「5月5日を自転車の日とする」と明記されたので国の記念日に昇格した。かつて、このイベントは上野公園や北の丸公園にある科学技術館等で行われていたが、5年前に絵画館前へ移転した。聞けば1981年の第1回も絵画館前だったとか。青山・神宮外苑エリアは東京都のスポーツクラスターのひとつにも指定され、自転車とは何かと相性がいい。
ステージは定番に加えて新顔も
開催当日は雲ひとつない五月晴れとなり会場は気温も上昇して暑いくらい。うちわが配布され扇ぎながらステージを見学する参加者も散見された。今年のステージプログラムは例年よりコンパクトになったが、トップバッターは定番となった栗村修さん&サッシャさんのJ SPORTSコンビ。毎年、これを聞きに来るというファンも大勢いて早くからステージ前に座って出待ちをしている。そこへピクトリというJ SPORTSオリジナルキャラクターのぬいぐるみを抱えて栗村さんが登壇するとワッと歓声が上がる。最初のツカみはオッケイ。毎回思うのだけど、専門用語のオンパレードな上に番組中のエピソードに反応して笑う聴衆ってすごいなあ。コアな話ほど盛り上がる。まあ、お二人ともトーク上手だけどね。
お次はピーポ君の自転車安全教室。例年、四谷警察署が協力してくれているのだけど、J SPORTSコンビのトークが終わると蜘蛛の子を散らすように聴衆がいなくなるのは(仕方ないとは言え)見ていて気の毒になる。でもせっかく警視庁にはBEEMS(ビームス)という自転車の交通安全啓発チームがあるのだから、ピーポ君と一緒に登壇してもらいたいものだ。子どもたちに「あんな風になりたいな」と思わせる格好いい警察官を見せてあげたい。
ピーポ君の次はオーストリッチ(アズマ産業)伊美さんが登壇してステージ前は再び人だかりになる。同社は輪行袋を中心に製造しているが、すべて職人さんの手作り。以前、取材で訪問したことがあるが工業用ミシンが大きな音を立てて生地を縫い合わせて行く。先代社長も現役の職人としてミシンを操つる姿には感動すら覚えた。伊美さんは各地で開催されるイベントで実演して参加者に使い方を伝授しているが毎回「分かりやすい」と好評だ。彼がステージを降りてからも質問は続き、ステージの袖でレクチャーしていた。
伊美さんの次はメンテナンス講座。なるしまフレンドの小畑さんが担当する。さすが元実業団レーサーで機材について詳しいのは当然だが、彼の素晴らしいのは人柄の良さが出ているところ。自転車専門店の店員さんの中には専門用語を知らないとバカにしたような表情が思わず出てしまう不埒者が時々いて閉口するが、彼に教えてもらうと素直に訊ける。初心者にとって心強い存在なのだ。
ステージの最後は新顔の(株)トキノさん。何の会社かと思ったらインドアサイクリングのフィットネススタジオを7月に始めるらしい。以前、筆者もコナミスポーツで体験したことがあるが、インストラクターの掛け声に合わせてエアロバイクを漕ぐ。ひたすら漕ぐ。そして大量の汗が出る。1回のライドで1,000Kcal程度消費するとの説明だったが、できれば私は屋外で風を感じて乗りたい。でもインドアサイクリングはニューヨーク辺りじゃ大人気だそうだから、フィットネスとして自転車を活用したい方にはいいのかも。
業界内外の様々な顔ぶれが参加
今回は自転車活用推進法の施行後初の自転車の日だったので、国土交通省も初めてブースを仕立てて参加した。ほとんど予算がない中でパネル展示くらいしか用意できなかったそうだが、来年からは予算を確保して参加したいと意気込みを語ってくれた。また筆者が教鞭を執る東京サイクルデザイン専門学校は卒業作品に試乗できるブースを初めて出した。年々イベントの認知度が上がり、それに伴って参加企業も増えている。来場者数は昨対約111%というから1割増である。ブースが増えて来場者も増える構図は素晴らしい。法の施行をきっかけにして、さらなる成長を期待したい。昨年あって今年なかったのがシマノのテクニカルサポートトラック。ブースが増えた分、置き場に困るというのが真相だと思うが、魅力は本物に触れてこそ伝わるもの。できれば復活させてもらいたい。その代わり黄色いマビックのニュートラルカーが会場に華を添えてくれていた。
GW定番イベントでファミリーに人気
GW後半は近場で過ごしたいファミリー層にぴったりの当イベントは、子ども向けの体験コーナーが目立つ。ペダルを漕ぐと発電して猫のぬいぐるみが踊り出す仕掛けをしたブースやキックバイクをはじめとする子ども車の体験コース、画面を見ながら競争するゲーム感覚のバーチャルレースなど、子ども達が楽しめる内容が盛りだくさんだ。小さい頃から自転車に親しんでもらうだけでなく、体系立てたルール教育やレースの楽しさを知ってもらうことでスポーツ自転車ファンを育てて行きたい。子ども達は未来そのもの。彼らを変えることが未来を変えることになるので、心して取り組みたい。
今年の感想と来年への期待
関係者と近況について情報交換ができるのも、イベントならではの特典だ。今回はサッシャさんからドイツで従来エコカーと言われてきたディーゼル車が最近規制対象となり入れないエリアが出来ていることを教えてもらったが、NOx(窒素酸化物)の方が人体に悪影響が大きいことが研究の結果分かったのだそう。自転車活用推進議員連盟プロジェクトチーム前座長の小泉昭男元参議院議員もサッシャさんと話をして感激し、海外の情報を交えて我々の知らないことを発信してもらいたいと伝えていたが、さっそくJ-WAVEで語ってくれているかもしれない。伊美さんや小畑さんとは自転車人口がますます増えてくれることを願って持ち場で頑張ろうと誓い合ったし、栗村さんには自転車月間の締めとしてTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)成功を祈念していると伝えた。
ここ数年は晴天に恵まれて運営に支障なかったが、ステージ前に大テントを設営して屋根にすれば雨が降ってもトークショーはできるし、降らなくても日除けになる。毎年、暑い思いをして聞いてくれている聴衆の皆さんに少しでも快適に過ごしてもらいたいと願っているので、国土交通省の活用推進本部担当者に予算を付けてもらえるようお願いした。自転車活用推進法で国は自転車の日にふさわしい事業の実施に努めることとしたので、これだけ人が集まるイベントになったのだから、大テント1つ国が立てたくらいでバチは当たらないだろう。予算が増えれば諦めていたことが出来る場合もある。継続して開催することと趣旨に沿った内容を増やしていくことに尽きる。過剰な予算を付ける必要はないが、一昨年はステージが地面に赤いカーペット1枚敷いただけだったことを考えると「昔はしょぼいイベントだったけど随分立派になったよね」と関係者同士で談笑するのが密かな楽しみでもある。