なぜ今、幅広で真っ直ぐなハンドル?ハンドルから読み解くピストバイク文化

FRAME読者の皆さん、こんにちは。前回のRED HOOK CRIT(ピストバイクのクリテリウムレース)記事に引き続き、今回も365日ピストバイクの最新情報を調べないと気がすまないピストバイクマニアの私UDがまだまだ知られていないピストバイクの話題についてお届けします。

今回はずばりハンドルのお話。自転車のハンドルなんてドロップハンドル一択で終わりじゃないかと思ったロードバイク乗りのあなた、そんなことはありません。

今回はピストバイク界に近年流行る、異様にワイドなストレートハンドルについて考察します

カルチャーとしてのピストバイクを紐解く

まず、ピストバイクとハンドルの歴史を紐解いてみましょう。

今回は競輪の文化は別に考えて、アメリカ発のピストバイクのカルチャーについて考えていきます。ピストバイクが流行ったそもそもの大きな要因はメッセンジャーと呼ばれる自転車バイク便の人達が愛用したことが挙げられます。

ちなみにメッセンジャーを舞台にした映画としては、草なぎ剛さんが出演されていた「メッセンジャー」や、リアルなピストバイクメッセンジャーを描いた「プレミアム・ラッシュ」がお馴染みですね。


「プレミアム・ラッシュ」はノーブレーキ、信号無視当たり前でニューヨークの街中を駆け抜ける、ピストバイクアクションムービーなのですが、人によっては周囲の人を考えない運転をする主人公に殺意を覚えると思います。ただ、こうしたメッセンジャーがカルチャーの礎を築いていることは紛れもない事実なので、文化の理解を行なう観点からもぜひ見ていただきたい作品です。

ピストバイク・カルチャーにおけるハンドルブーム

さて、話をハンドルの話に戻しましょう近年の日本のピストバイクのハンドルカルチャーはこういった具合です。

1.コンパクトなライザーバーハンドルが流行る
2.ロード用ドロップハンドル文化の到来
3.黒船ワイドライザーバーハンドルの襲来

一つずつ解説していきます。

短すぎなライザーバーが流行った訳

「ブレーキなし。問題なし。」なんて看板が出て世間からの批判を集めるほど、良くも悪くもピストバイクが流行った2005-2008年。当時流行ったのはコンパクトなライザーバーでした。

ロードバイクに乗っている人はわかるでしょうが、ドロップハンドルの標準サイズは400mm(自転車パーツはcmでなくmmで表記されることがほとんど)です。しかしながら、当時のピストバイク乗り達の標準サイズは340mm-380mmと短いサイズでした。

実際にそのサイズのハンドルを握ってみればわかるのですが、肩幅より一回りかそれ以上狭いサイズは腕を八の字のように内側に縮めて握らなければならないサイズになります。

ハンドルの上で握る場所を変えるスペースすらない極短仕様。それでも尚、このサイズのハンドルがが流行ったのには2つ大きな理由があると私は考えます。

1つ目は当時のピストバイクのブームは今よりも、圧倒的に見た目重視だったことが挙げられます。

当時は1にも2にもお洒落であることが重要視された
当時は1にも2にもお洒落であることが重要視された

ハンドルのイメージから来るコンパクトな見た目、更にVelocityなどのカラフルなディープリムのホイールを装着しステッカーを貼ったその見た目はファッションの一部としての自転車であり、スポーツとしてのバイシクルのそれとは完全に一線を画していました。

2つ目は通り抜けの為の短さという実用性の観点です。

メッセンジャーの強みは交通渋滞を楽々すり抜けていく自転車ならではの乗り方によるものが大きかったです。それは慢性的な渋滞に悩まされる日本でも同じです。

むしろ日本の交通環境としては今ほど自転車通勤がメジャーになっていなかった当時、左車線端を自転車が走ってくるという認識がドライバーにも少なかったようでライダー達自身の危機回避の意味もあり、ハンドルが更に短く、また更に短くという風にショートになっていきました。

圧倒的乗りやすさへ。ロード用のドロップハンドルがブームに

何を今更という内容ではあるのですが、ショートにし過ぎたピストバイク乗りは気付きました。ショートのハンドルは握りにくい、と。

この当たり前のことに気付くのにピストバイク乗りが気付くのは、ショートのハンドルブームのその数年後だから面白いのですがこの頃になるとピストバイク=ノーブレーキという風潮が世間に到来しており、そうした煽りを受けてか一過性のブームでピストバイクに乗っていた人は忽然と姿を消しました。

ゆえに、ピストバイクをブームでなく、生活の一部として乗る愛好家しか残らなくなっていました。そんな彼らが見た目よりも本質的な部分、ドロップハンドルの快適さに気付くのは時間の問題でしかなかったのかもしれません。

とはいえピストバイクのコンパクトさを追求する流れは受け継がれ、落差の小さいコンパクトサイズと称されるロードバイク向けドロップハンドルが人気になりました。

そんなドロップハンドルで快適な走りを覚えたピストバイク乗りは、次第に自転車の乗り方が変わっていきました。シートポストの長さやステムの長さなどを調整しポジションをロードバイクに近付け、よりロングライドが快適にできるようへと進化していきました。

しかし快適さを覚えたピストバイク乗り達に、海の向こうから黒船が迫ります。

MASH SFという黒船。空前のロングライザーバーブーム

MASH SFという黒船
MASH SFという黒船

ペリーが浦賀に来た時と同じように、いつの時代も新しい黒船の到来というものは今までの流れを大きく壊します。ピストバイクにおいてそれは、サンディエゴのピストバイククルー/映像クリエイティングチームMASH SFでした。

前回のピストバイクブーム期2007年の映像作品以来、丁度8年ぶりに製作されたフルサイズムービーMASH SF 2015で我々ピストバイク乗りは一同に驚くことになります。

MASH SF 2015 from MASH TRANSIT PRODUCTIONS on Vimeo.

アメリカの人気ライダー達が、とんでもなく横に長いMTB用のライザーバーを装着してダウンヒルを行なう様子が収録されているの様子が収録されていたのです。

「何だこれは、どこのライザーバーだ!」とピストバイク乗りの間で一斉に話題になりました。

MASH SFに映るハンドルがTHOMSONのライザーバーだと特定されるまでにそう時間はかかりませんでした。もちろん売り切れ続出です。

すぐさま人気自転車店BluelugがMADE IN JAPANの自転車パーツメーカーNITTOとコラボレーションでハンドルを発売したほど、そのブームは一気に日本のピストバイク乗りを包みました。

驚くのはその幅サイズ。680mm。お気付きだろうか。そう、ピストバイク乗りは馬鹿(苦笑)なのです。

渋滞の中車の脇をくぐり抜けるために、手で握れるぎりぎりまで短くしたことを完全に忘れてしまっているサイズ感。そして680mmというと街乗りクロスバイク向けのストレートハンドルでは長さが足りない。完全にMTB用のサイズ感なのです。

この幅広ライザーバーブームは流石にピストバイク乗りの中でも賛否が別れました。ようやく快適なドロップハンドルでの走行を覚えたのに、それらを全て忘れて楽しむために自転車のハンドルの幅を広げることをおこなったのです。

私はこの現象をピストバイク乗りの原点回帰だと見ています。

Just for FUN – ただ楽しむために

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自転車を走りに特化させていったピストバイク乗りが少しずつ忘れていたもの、それはクランクとリアホイールが一体になっている固定ギアを利用してスキッドをしたり、後ろ向きに走ってみたりしていたあの頃の純粋に自転車に乗る楽しさを忘れていたことでした。
危険なので公道では行わないようにしましょう。)

実際に装着してみると意外と操作性は高いです。それもそのはず、悪路でどんな衝撃が地上から襲ってくるかわからないMTB用に開発された幅広ライザーバーは衝撃吸収性に優れ、かつ衝撃がある間も握っていられるベストのポジションとして幅広いサイズが採用されているのです。

幅広のライザーバーは、快適なロングライドへの進化を無視して、すり抜けという合理的な意味合いを無視して、ピストバイク乗りが辿り着いた境地なのです。この非効率的な自転車の楽しみ方が生まれるのがピストバイク・カルチャーの素敵な所でもあります

まとめ

ピストバイクにおける近年のハンドル文化がお分かりいただけたでしょうか。

私からの意見は1つです。「好きなハンドルをつけたら良い」ということです。散々言っておいてこの結論かとガッカリする人もいるかもしれません。しかしピストバイクの良いところは、ライザーバーでも、ドロップでも、ブルホーンでも、プロムナードでもどんなハンドルを付けても格好良いと言うことのできる許容性だと感じています。

レースが基準でない、ストリートの感性から来る独特なカルチャーがピストバイクの面白い所なのです。あなたも自転車のハンドルを幅広ライザーバーに変更することを検討してみませんか?

Y’s Road オンライン アウトレットコーナー

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WRITTEN BYU-die

ヘヴィメタルとピストバイクをこよなく愛するカワリモノ。 クロスバイクを購入したことで自転車の楽しさに触れ、その後シングルスピード、ピストバイクと乗り換えている。現在の愛車は自らフレームから組んだアメリカのブランド、State BicycleのContender。 ちなみに好きなメタルバンドはParkway Drive。

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