フルームのマイヨジョーヌに黄信号?2017ツール・ド・フランス大予想

いよいよ7月1日からツール・ド・フランスが始まる。今年のツールで、最も優勝に近い選手は誰なのか? 大胆に予想してみたいと思う。

まず、誰もが優勝候補筆頭に挙げているのが、2013、2015、2016年のツールの覇者クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)だ。しかし、過去3度の優勝では、かならずその直前のクリテリウム・デュ・ドフィネでも総合優勝している。今年は総合優勝したヤコブ・フールサン(デンマーク、アスタナ)に遅れること1分33秒の総合4位。「ドフィネで勝った選手がツールで勝つ」という方程式に当てはめるなら、今年のフルームの優勝は黄信号といわざるを得ない。もっとも、ドフィネはフルームにとってあくまでも調整レースであるから、上手く調整ができた上での総合4位だったのであれば、そう心配する必要もないのかもしれないが…。

今年も優勝候補筆頭は、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)だ (C)A.S.O.

そうなると気になるのが、フールサンがツールで勝つ素養があるか否かだ。これまでドフィネのほか、ツアー・オブ・デンマーク3勝(2008、2009、2010年)、ツアー・オブ・オーストリア1勝(2012年)、ツアー・オブ・ルクセンブルク1勝(2012年)、ツール・ド・スロベニア1勝(2009年)と1週間程度のステージレースでは抜群の強さを見せてきたフールサンだが、3週間のグランツールでは、これといった成績は残せていない。ツールでは2013年の総合7位が最高位だ。ただ今年は、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ以降はドフィネだけに参加して、ツール一本に絞った調整をしている。リエージュでは強豪のリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)を抑えての総合優勝だっただけに、「もしかしたら」ということはじゅうぶんにありえる。ダークホースとしてフールサンを挙げておきたい。

6月のクリテリウム・デュ・ドフィネで総合優勝を果たしたヤコブ・フールサン(デンマーク、アスタナ) (C)A.S.O.

さて、フルームに次ぐ本命候補であるが、やはり今挙げたリッチー・ポートだろう。ドフィネではフールサンに敗れ総合2位となったものの、4月のツール・ド・ロマンディでは圧倒的な強さで総合優勝。1月のツアー・ダウンアンダーでも総合優勝しており、その安定感は抜群だ。いわゆる「バッドデー」さえ克服できれば、ツールでも総合優勝の可能性はじゅうぶんにある。事実、フルームは今年最大のライバルとして、ポートの名を挙げている。

フルームが最大のライバルとして名前を挙げるのが、元チームメイトのリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)だ (C)A.S.O.

次に挙げておくべきなのが、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)だ。2014年にジロ・デ・イタリアを、2016年にはブエルタ・ア・エスパーニャを制しており、あと足りないのはツール・ド・フランスの制覇のみ。本人のモチベーションもかなり高いはずである。これまで参加したツールでは2013年に2位、2015年にも2位、2016年は3位と抜群の安定感を示しており、ポートよりもむしろ怖いのはキンタナの方ではないかと思われる。チームメイトに百戦錬磨の強豪アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がいるというのも心強いところ。

ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)も、フルームにとって最も手強い選手の一人だ (C)A.S.O.

ダークホースとしてフールサンの名前を先に挙げてしまったが、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)も手強い。ジロは故障からキャンセルしてしまったが、6月25日に行われたイタリア選手権で独走優勝。復活をアピールしている。2015年のブエルタを制しているこの男は、3週間のグランツールで勝つすべを知っている。フールサンと上手くタッグを組めば、フルームにとってかなり手強い存在になるだろう。

イタリアチャンピオンのファビオ・アル(イタリア、アスタナ、左端)。完全復活していれば、総合優勝も夢ではない。チームメイトのヤコブ・フールサン(デンマーク、アスタナ、左端)と上手く噛み合えば、「もしかしたら」もあり得る (C)ASTANA TEAM

「グランツールで勝つすべを知っている」といえば、やはりアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)の名前を挙げておかなければいけないだろう。ツール2勝(2007、2009年)、ジロ2勝(2008、2015年)、ブエルタ3勝(2008、2012、2014年)というリザルトは、今年の参加選手の中では最高の実績である。34歳の今年、キャリアの最後を花道をツール・ド・フランス優勝で飾りたいという意欲はかなり高い。昨年のような落車によるリタイアがないことを祈るのみだ。

グランツールの勝ち方を最も知っている男、アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)。引退の花道を、ツール優勝で飾れるか? (C)A.S.O.

昨年のツールでフルームに次ぐ総合2位だったロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)は、フランス期待の星である。何しろ、フランス人によるツール優勝は1985年のベルナール・イノー以来途絶えているのであるから、フランス人のフラストレーションは相当なものだ。いや、フランス人だけではない。自転車レースファンの多くが「そろそろフランス人選手に勝ってもらわないと」と思っているはず。果たしてバルデは、そのフラストレーションを解消してくれるのであろうか? ツールだけでなく、ドフィネやボルタ・ア・カタルーニャ、パリ~ニース、ツール・ド・ロマンディなどで1桁の成績は数多く残しているのだが、バルデに不足しているのは「優勝」の2文字。このツールで一皮むけることを期待したい。

フランス期待の星、ロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)。1985年のベルナール・イノー以来途絶えているフランス人選手の優勝だが、この男が今年はやってくれるか? (C)A.S.O.
フランス期待の星、ロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアル)。1985年のベルナール・イノー以来途絶えているフランス人選手の優勝だが、この男が今年はやってくれるか? (C)A.S.O.

その他にも、ティボー・ピノ(フランス、FDJ)、サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)、エステバン。チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)、ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)など、活躍しそうな選手を挙げればきりがない。果たして、今年のマイヨジョーヌは誰が獲得するのだろうか? しばらく眠れない夜が続きそうだ。

今年、最終ステージでこのような乾杯をするのは誰なのか? しばらく、眠れない夜が続く (C)A.S.O.

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WRITTEN BY仲沢 隆

仲沢 隆 自転車ジャーナリスト。早稲田大学大学院で、ヨーロッパの自転車文化史を研究。著書に『ロードバイク進化論』『超一流選手の愛用品』、訳書に『カンパニョーロ −自転車競技の歴史を“変速”した革新のパーツたち−』がある。

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