モバイク白書には、日本のこれからが書かれているのかもしれない
いまや世界中のいろいろな都市で、交通手段として大事な役目を担っているシェアサイクル。日本でもドコモバイクシェアを始めとするシェアサイクルがありますが、破竹の勢いでシェアサイクルが延び続けるお隣の中国に比べると、普及率はまだまだです。
そんな中、ついに中国シェアサイクルの大手、Mobike(モバイク)が札幌からスタートします。これ、一部では「黒船来襲」と呼ばれるほどで、ここから日本のシェアサイクルの普及状況や利用状況がどう変わっていくのか、恐れおののく人もいます。
そんな中公開されているモバイク白書(英語版)を見てみると、シェアサイクルの急激な広がりで街が・社会がどう変わっていったかをインフォグラフィックでわかりやすく説明してあります。FRAME編集部はモバイクの許可を得て、日本語に翻訳してみました。以下はその中でも面白いポイントの抜粋です。
こちらを、中国シェアサイクルの現状/また道路事情・行政事情も含め日本の自転車事情をよく知る「日本で一番自転車乗りの権利を考える男*」こと自転車活用推進研究会・内海事務局長に解説していただきます。
街に自転車を呼び戻す
中国の都市交通の歴史的傾向
現在地から目的地まで乗って行けるシェアサイクルは免許も要らず盗難の心配や探す手間とも無縁だし安価で気軽に利用できることから、急速に普及して市民の足として本当に良く使われている。
利用者プロフィール
必要に迫られて利用する人が多いはずなので通勤・通学や外食・買い物は想定通りだが、シェアサイクルをレジャーや運動に利用している人が3割強もいるというアンケート結果は少し意外な気もする。
バイクシェアリングの規模は驚くほど急拡大し、既に中国の半分をカバー
日本市場で事業展開する難しさと中国企業の「やる時はやる」といったバイタリティやスピード感には心底驚く。彼らが起こす様々な問題を大目に見て来た中国当局だが、さすがに最近は眼に余るとして規制が始まっており、今後の成長には疑問符も。
利用履歴全体を見ると男性利用者の方が女性利用者よりも頻繁に利用
日本で調査しても同様の結果だろう。ただし男性退職者が最も長く、最も速く移動しているという結果には驚いた。健康増進のためにエクササイズとして利用しているのだろうか?
自転車利用による街の変化
バイクシェアリングにより自転車利用が2倍に増加
天津では地下鉄の工事が進んでおり、今後ますますシェアサイクル+公共交通機関の組み合わせが便利になる予定。所有する自転車は探す手間と盗難の心配があるので減って行き、さらにシェアサイクル利用者が増えて行くと思われる。
車利用は半数以下に減少
クルマからのリプレイス率がデータ通りならば実に素晴らしい結果であり、問題解決は時間の問題だが実際そうなのだろうか。パリのヴェリブは元々歩いている人たちが乗るようになっただけで結局クルマは減らなかった。真の解決策になり得るのか、経過を継続的に見てみたい。
違法三輪タクシーの利用は53%減少
しかも人々の移動ニーズがあって、ブラックと言えるレベルの過労ドライバーが200人以上も存在していたようだから、社会問題の解決策としてもピカイチだろう。ドライバーたちの再就職については別の問題として残るけれども、もはや世直しと呼べるレベルに達している。
バイクシェアリングでバスや地下鉄への乗り継ぎが便利に
線的移動で大量輸送を担って来た公共交通機関は小回りが利かないが、公共交通機関+シェアサイクルの連携は解決策を提供できる。バス停や鉄道駅に隣接したシェアサイクルの配置は自転車の機動力を高め、スムーズな移動を実現させてラストワンマイル問題を解決できる。
バイクシェアリング+公共交通機関は、最も効率的な移動手段
多くの利用者はシェアサイクルを5km未満で乗り捨てるため、クルマよりも早く目的地に到着できるが、さすがに荷物が多い時や雨の日はクルマが有利だ。晴れていて1人で近距離移動なら迷わず自転車を使うべきだ。
夜間のMobike利用
バイクシェアリングで都市の二酸化炭素排出量を削減
我々が視察した際も空は常に霞んでいて晴れていても青く見えなかったが、最終日だけは青空が見えた。このままシェアサイクルの活用が進めば、また青空が数多く見られるようになるに違いない。
バイクシェアリングで省エネ
日本でもトヨタとマツダが垣根を越えて提携するなど業界再編が進むが、人ひとりが移動するのに、わざわざ1トンもの鉄の塊を動かす必要はない。自転車のエンジンは人間で人間の燃料は脂肪と糖である。体重より軽い乗り物に乗って脂肪を燃やせば済むことだ。
バイクシェアリングで都市空間を節約
数年前に付置義務台数の見直しも行われており、マンションなどで駐車場が空いて駐輪場が溢れているケースなどは調べて用途を変更した方がいい。
よりよい街づくりを共に実現
バイクシェアリングで公共交通機関を補完
最近でこそ上海や北京で返却用手続き用として電子柵を設けるケースが増えているが、好きな場所で借りられて、どこでも乗り捨て出来る点が市民に歓迎されたことも事実だ。今後、返却手続きは決められた場所でのみ行うことになりそうで当初持っていた魅力が下がるため、市民からどう評価されるのか注目されている。