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東大生ローディー成長記 第2話「ロードバイクのトレーニング教えて!国会図書館さん!」

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こんばんは、東京大学農学部4年の大島拓司です。いきなりですがクイズです。
ロードバイク初心者がツール・ド・おきなわを目指すにあたり、まずやるべきことって何だと思いますか?

とりあえずロードバイクにいっぱい乗る?ノンノン、そんな人は東大には受かりません。(ごめんなさい、冗談です。)

答えは「効率の良いトレーニング方法を調べる」じゃないでしょうか。

というわけで、東大生ローディー成長記、第2話「ロードバイクのトレーニング、教えて!国会図書館さん!」始まります。(参考文献はページ下部)

運動時のエネルギー供給系

国会図書館(にあった銅像)さんに挨拶する様子

大島「こんにちは、国会図書館さん。今日はどんなトレーニングをすればロードバイクで速く長距離を走れるのか教えてもらいに来ました。よろしくお願いいたします」

銅像「こんにちは、大島くん。八王子から永田町までよく来たね。具体的なトレーニングの話をする前に、人体のエネルギー供給の仕組みの話からはじめようか」

大島「いえ、そんなのでもいいです。早くトレーニング方法の話をして下さい」

銅像「まぁまぁ、慌てない慌てない。体内でどんなことが起きているのか知ってないと、なんでそのトレーニングで効果があるのか分からないからね。

そもそも体を動かすってことは、全て筋肉が収縮することによって起こっている。そして、筋肉が収縮するためにはアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれる物質が使われるんだ。

このATPを供給するシステムには、①ATP-PCr系、②解糖系、③有酸素系の3つがあるよ」

大島「なんで3つもあるんですか?1つじゃダメなんですか?」

銅像「この3つにはそれぞれ長所短所があって、運動の強度によってどのシステムを使うかが変わるんだ。

まずは①ATP-PCr系の話からしよう。

100m競走のように、筋の収縮が速く、強く行われるような強度の高い運動の場合には、まず体内に少しだけ存在するATPが使われて、アデノシン二リン酸(ADP)と呼ばれる物質に変化する。そしてそのあと、筋肉の中にあるクレアチンリン酸(PCr)という物質が分解されて、そのとき発生するエネルギーでADPをATPに再合成する。これをATP-PCr系と呼ぶよ。

ATP-PCr系の仕組み

でも、体内のATPやPCrは量に限りがあって、ATP-PCr系では7~8秒くらいしかエネルギーを供給できないんだ。100m走のペースをずっと維持できないのはそのためだよ」

大島「なるほど、ATP-PCr系は短距離走用なんですね」

エネルギー供給系への理解を深める私(別撮りなので服が違う)

銅像「そうだね。じゃあ、次に②解糖系の話をしよう。

ATP-PCr系でのエネルギー供給しきれない場合、血液や筋肉中の糖質を乳酸へ変換することでADPをATPに再合成するんだ。これを解糖系と呼ぶよ。

解糖系の仕組み

でも解糖系も32~33秒くらいしか持たないんだ。400m走のペースもずっと維持できないよね。

大島「解糖系は中距離走用ですね」

銅像「そうそう。そして、ATP-PCr系と解糖系はATPの供給に酸素を必要としないから無酸素系と呼ばれているよ。

じゃあ、最後に③有酸素系の話をしよう。

有酸素系は、細胞に存在するミトコンドリア内で、主に糖質と脂質をエネルギー源として、酸素を用いてADPをATPに再合成するんだ。

有酸素系の仕組み

ATPの供給速度は3つの系の中ではもっとも遅い。だけど、酸素が十分供給されて、体内の糖質や脂質がなくならない限り、時間的には無限にATPを供給し続けることが可能なんだ」

最大酸素摂取量とAT値

インタビューの様子

大島「エネルギー供給系の話、面白くて勉強にはなったけど、ロードバイクのトレーニングと関係あるんですか?」

銅像「もちろん大アリだよ。有酸素系は酸素を用いてATPを供給するんだったよね。ということは、酸素を取り込む量を増やせば有酸素系のエネルギー供給力が上がるはず。

体内に取り込むことができる最大の酸素量は「最大酸素摂取量」と呼ばれていて、全身持久力の指標として利用されているんだ。

スポーツをしていない男性の最大酸素摂取量はだいたい40ml/kg/分くらいだけど、持久的競技の一流男性選手は80ml/kg/分にまで達することが報告されているよ」

大島「80!?すごい!!じゃあ最大酸素摂取量を上げればロードバイクで速く走れるんですね」

銅像「ところがどっこい、話はそんなに単純じゃない。最大酸素摂取量に関して研究が進むにつれて、一流選手の最大酸素摂取量とランニング成績に相関が見られないケースも報告され始めたんだ。

ところがどっこい

そこで注目され始めたのが無酸素性作業閾値(AT値)だ。

運動強度が徐々に高くなるような運動を考えてみよう。エネルギー供給は、最初は有酸素系が中心に行われる。しかし、ある時点で有酸素系では追いつかなくなって、無酸素系による供給割合が大幅に増える。そして、運動を長時間続けられなくなってしまうよね。

こうして有酸素系から無酸素系へ移行する運動強度を無酸素性作業閾値(AT値)というんだ」

無酸素性作業閾値(AT値)の概略

大島「なるほど。AT値を越えると運動を長時間続けられなくなるわけだから、逆にAT値を上げれば高い運動強度を維持できるようになる、ってわけですね」

銅像「そう、その通りだ。最近では、最大酸素摂取量とAT値の両面からスポーツ選手の持久力を考えるのが良いとされているよ」

具体的なトレーニング法

頭を悩ます私(別撮り)

大島「で、最大酸素摂取量とAT値を上げるにはどんなトレーニングをすればいいんですか?」

銅像「トレーニングというのは、いくつか原則がある。なかでも大事なのが「過負荷の原則」。これは、伸ばしたいものに対して限界を少し超えるくらいの刺激を与えると良い、という原則だ。これから紹介するトレーニングも、それに則ったものになっているよ。

まず、AT値を上げるにはトレーニングとしてはメディオ、ソリアの二つが有名だね。メディオは、ATペースの90~100%くらいを10~20分維持するトレーニング。ソリアは、ATペースの100~130%を3~5分維持するトレーニングだ。

ATペースは定義としては「1時間を走り切れるギリギリの強度」のことなんだけど、測定するのは結構難しい。心拍計がある人は、メディオは最大心拍数の80~85%、ソリアは90%程度でやるのが良いとされているよ。

メディオは最低2セットを毎日、ソリアは2~3セットを週2~3回やるといいよ。セット間は10~20分の回復走を行おう。

最大酸素摂取量を上げるには、タバタプロトコルと呼ばれるトレーニングが有名だ。これは20秒間全力で自転車を漕いで10秒間休息を挟む、というのを6~7セット繰り返すトレーニングだ。週1~2回でも効果があると言われているよ。ちなみに、タバタプロトコルでは、有酸素系だけでなく、無酸素系の運動能力も強化できるから、とっても効率が良いんだ。

各トレーニングまとめ

トレーニング方法は今回紹介したもの以外にもたくさんあるし、人によって効果もまちまちだから、色々試してみよう」

実際にトレーニングしてみよう

大島「今日はすごく勉強になったなぁ。最初からソリアもタバタプロトコルもやるのはツラそうだし、とりあえずメディオ2セットくらいから始めよう。」

~メディオ開始~

大島「このペース結構きついな…。そろそろ10分くらいかね。サイコンポチポチ。」

サイコン「2分しか経ってないよ。」

大島「んんんんんんんん?」

1セット目終盤の私

~1セット目終了~

大島「いやこれ2セット無理でしょ…もうやめよ…」

FRAME編集部「ツール・ド・おきなわ完走できなかったら、どうなるかわかっているね…?」

大島「うわあああああああああああ!!」

2セット目終盤の私

練習後の私

無理のない範囲でやっていこうと思います…。

参考文献

  • 山本順一郎編(2014)『運動生理学 第三版』,化学同人
  • 藤巻利昭(1990)「スポーツ科学における最大酸素摂取量,無酸素性作業閾値」,『理学療法のための運動生理』5(2),101-106,運動生理研究会
  • ジョー・フリール『トライアスリート・トレーニング・バイブル』,OVERLANDER
  • 栗村修監修『最新!トッププロが教えるロードバイクトレーニング 2016』,洋泉社
  • 田畑泉(2015)『タバタ式トレーニング: 究極の科学的肉体改造メソッド』,扶桑社
  • 『funride』2009年11月号,P73,八重洲出版
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