意外と簡単!メカニックが伝授する、ロードバイクのスプロケットの脱着・交換方法
【2022年9月更新】こんにちは。久しぶりにFRAMEに記事を寄稿させていただきました自転車メカニックの石橋です。
今回紹介する内容は、カセットスプロケット(以下スプロケット)の脱着・交換についてです。スプロケットとは、何枚も重なっている後ろのギアの歯の集合体のこと。本格的なロードバイクのスプロケットは8〜12段のギアが存在します。
スプロケットの脱着を覚えることで、クリーニングをメインとしたメンテナンスが非常にやりやすくなります。
また、歯数の違うスプロケットを手軽に交換できるようになるので覚えておいて損は絶対ありませんし、実際にそれほど難しい手順ではないので、見ていきましょう。
目次
工具はたったの2つでOK
スプロケット脱着には以下の2つの専用工具が必要になります。専用工具ではありますが、たったの2つ。セットで販売されていることも多いです。
簡単!外す手順は4ステップ
ではまず、ホイールからスプロケットを外す手順をご紹介します。
1.スプロケットリムーバーをスプロケットに巻き付ける
スプロケットを外す際は、共回りしないように、スプロケットリムーバーを使いスプロケットを押さえ付けます。この時、ロー側(大きい歯のほう)に巻き付ける方がしっかりとスプロケットを押さえることができます。
2.ロックリング締め付け工具をはめる
スプロケットのロックリングの形状に合った締め付け工具が必要です。例えばシマノ製のスプロケットならシマノ対応用、カンパニョーロのスプロケットならカンパ対応用が必要になります。今回はシマノ製のスプロケットを使用しているのでシマノ対応のロックリング締め付け工具を使用します。
3.左に回してロックリングを取り外す
ロックリングは正ネジで締まっているので、左回しにして緩めます。ある程度まで緩めたら、そのあとは締め付け工具をロックリングから外します。
4.スプロケットリムーバーを取り外す
スプロケットリムーバーを外し、ロックロングも手で回して取り外すと、ハブからスプロケットを取り出し完了です。
シマノ製の11速スプロケットはロー側5枚以外はすべて1枚単位でバラバラに構成されており、クリーニングも非常にしやすくなっています。
例えば、油汚れがひどい場合はパーツクリーナーでしばらく漬け込むことで汚れを浮かし、ブラシでこすっていくと汚れが落ちやすくなります。
交換をする場合の注意点
スプロケットは消耗品。ある程度使い続けていると交換が必要になってきます。
交換にかかる費用は、使うスプロケットのグレードにもよりますが、5,000円〜1万円程度です。自分で交換するのが不安な場合、ショップに任せるとパーツ代に加えて工賃5,000円前後が発生します。
1. 交換のタイミング
スプロケット交換のタイミングは摩耗の程度で判断します。歯とびをする、しっかり調整をしているのに変速がうまく決まらないなどがわかりやすい目安です。
このような場合は、スプロケットの歯先が削れてしまってチェーンとうまく噛み合わなくなってしまっている可能性があります。早めの交換が機材にも優しいです。
2. スプロケット枚数の注意
スプロケットを購入する際は段数に注意しましょう。11速のコンポーネントを使っていれば11段、12速であれば12段のスプロケットを購入しなければなりません。なお、同じ段数であればコンポ間の互換性があるものもあり、11速105コンポに11速DURA-ACEスプロケットを取り付けることも可能です。
SHIMANO(シマノ)CS-R7000 105 11S 11-28T
11速105のスプロケット。11-28Tの最も一般的な歯数のものです。
SHIMANO(シマノ)CS-R8100 ULTEGRA 12S 11-30T
12速ULTEGRAのスプロケット。
3. スペーサーについて
実はスプロケット全体の幅は、段数によって若干異なります。一方、ホイールのフリーの幅は統一されているので、スペーサーを挟むことでスプロケットの幅とフリーの幅を合わせなければなりません。
スペーサーには1.0mmと1.85mmの二種類が存在し、スプロケットまたはホイール購入時に付属します。最も一般的な11速用ホイールに各枚数のスプロケットを取り付ける際に必要なスペーサーは下のようになります。
スプロケット枚数 | スペーサー |
12* | なし |
11 | なし |
10 | 1.85mm + 1.0mm |
9 | 1.85mm |
8 | 1.85mm |
*11速と12速のスプロケットとフリーは基本的に互換性がありますが、一部の12速専用ホイールには12速のスプロケットしか使用できないので注意。
SHIMANO(シマノ)ロースペーサー 1.85mm
SHIMANO(シマノ)ロースペーサー 1.0mm
4. 歯数の注意
スプロケットの歯数変更で、最大歯数の大きいスプロケットを導入したい場合はリアディレイラーの交換が必要な場合があります。
例えばシマノ105 R7000系ではSS(ショートゲージ)リアディレイラーは歯数11-25T〜11-30T、GS(ミドルゲージ)は歯数11-28T〜11-34Tに対応しています。つまり、SSリアディレイラーで11-28Tを装着していた人が11-34Tに歯数変更する場合は、リアディレイラーもGSに変更する必要があるのです。
SHIMANO(シマノ)RD-R7000-GS 105 11S
ロングゲージの11速105のリアディレイラー
SHIMANO(シマノ)RD-R7000-SS 105 11S
ショートゲージの11速105のリアディレイラー
SHIMANO(シマノ)RD-R8150 ULTEGRA Di2 12S
12速のULTEGRA、DURA-ACEでは、ゲージ長が1つに集約されました。
なお、12速105の11-36Tスプロケットのみは,ULTEGRAとDURA-ACEのリアディレイラーが対応していないので、105のリアディレイラーが必要となります。
5. チェーンの長さ
歯数を変更する場合は、チェーンの長さも変更する必要がある場合があります。特に最大歯数を大きくする場合はチェーンを長くする必要があるので、新たなチェーンを用意してください。スプロケット段数によって必要なチェーンが異なるので注意しましょう。
SHIMANO(シマノ)CN-HG601 105 11S 116リンク
こちらは11速用の105グレードのチェーン。
▶︎チェーン交換についてはコチラ!
取付は3ポイントをチェック
クリーニングが終わり、再度ハブにスプロケットを取り付けていきましょう。取付は非常に簡単です。使用する工具はロックリング締め付け工具のみです。
1.ロー側3枚から歯を取り付ける
ロー側からハブにはめ込んでいきます。この時ハブのフリーボディーの溝とスプロケットの溝を合わせなくては取付ができない仕組みになっています。
2.歯の間はスペーサーで等間隔に
1枚の歯はそのまま重ねてしまうと歯同士が接触してしまいます。その間に噛ませるのが黒いスペーサーです。
3.ロックリング締め付け工具で固定
全ての歯を入れ終えたらロックリング締め付け工具で固定し完了です。スプロケットを取り付ける際はリムーバーは不要です。ロックリング締め付け工具のみ使用します。この際,ロックリングを斜めから締めてしまわないように注意しましょう。ネジを舐める原因となってしまいます。
まとめ
改めて、スプロケットの取り外しを覚えておくと、以下のようなメリットがあります。
- 定期的にしっかりスプロケットをメンテナンスできる
- ギア比の異なるスプロケットが試せる
その結果、愛車をきれいに保つことにつながりますし、ギア比を変えることで今まで以上のスピードアップやヒルクライムに有利に働くでしょう。
工具の調達など最初はコストがかかりますが、長く使えるものなので是非持っておくと良いと思います。ぜひお試しあれ!
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WRITTEN BYVIKING the MAINTENANCE
都内のプロショップに10年間在籍後、2015年VIKING the MAINTENANCE を設立。東京・西新宿を拠点にスポーク自転車の組付け、カスタマイズ、メンテナンスを軸に展開中。年2回富士山麓でサイクルイベントも企画中。 http://www.viking-the-maintenance.com/