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中国最新事情レポートin 北京・天津〜シェアサイクルと交通事情に見る進化速度の凄まじさ

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シェアサイクルはその後どう発展しているのか?

北京のシェアサイクルは大手2社に集約


▲整然と美しく駐車された北京大学周辺のシェアサイクル。

 昨年に引き続き天津自転車協会からお招きがあり、中国を訪問して来た。前回は北京を素通りしたが、今回は2泊を割いて北京大学〜清華大学エリアを中心にシェアサイクルの現状を中心に調査した。天津には3泊して天津自転車ショーを見学し同時開催されたシンポジウムに参加したほか、市内シェアサイクル事情を調査したが昨年からずいぶん変わっていた。

 まず、シェアサイクルは多くの会社が林立する状態から、「モバイク」「オフォ」の大手2社に集約された。もちろん3位の「ブルーゴーゴー」や先行していた官営シェアサイクルもゼロではないが、利用されているのは圧倒的にオレンジとイエローの自転車である。

 大量に投入されたシェアサイクルが歩道からあふれて社会問題となったり、川に投げ捨てられたり、空き地に積み上げられたりもしたが、人を雇って整然と並べるようになった。本当に必要な台数より遥かに多いことは誰の目にも明らかだが、街角で見渡す限り同じ色の自転車が並ぶ光景には、ある種の美しさすら感じる。

北京では大学特別モデルや自転車用のロードスイーパーも登場


▲北京大学特別モデルのオフォ。前輪ホイールカバーに「北京大学」の文字。


▲新型のモバイクは北京市民からも好評なようだ。

北京大学~清華大学周辺がシェアサイクルのメッカだと聞いていたので視察に向かう。

 駅出口を上がると見渡す限りのシェアサイクル。オフォは北京大学OBが起業したこともあって北京大学の特別モデルがある。モバイクは改良型が投入され、市民は新モデルを好んで借りていた。さすがに駅から離れると置いてあるシェアサイクルは減ってくるが、自転車道はシェアサイクルが数多く走っている。

 街角で10分間、台数を数えてみたところマイ自転車44台、シェアサイクル45台(モバイク30台、オフォ15台)、電動車99台。

 驚いたのが、北京市内では自転車道専用の小さなロードスイーパーがあって路面を清掃していたこと。車道用の大きなタイプは散水車と清掃車が1台になっていて、それはそれで興味深いが自転車道専用の小さいタイプも開発して、すでに運用しているという事実に驚愕した。やるなあ、中国。今回、北京もだが天津も道端のゴミが減りキレイになっていて驚いた。

 北京市内の移動は地下鉄が便利だ。北京の人口は東京以上だから約40秒ごとに次の電車が来るが、すべて満員で乗換駅でもなければ乗客が降りず乗れない。3本くらい見送ったところでようやく乗れた。そういった事情もあるからか、地下鉄への輪行は禁止されているが、シェアサイクルと網の目のような地下鉄路線を考えると、わざわざ輪行をする必要はないのかもしれない。


▲北京の地下鉄路線図。東京メトロにも匹敵しそうな細かさだ。

天津は北京よりシェア率が高い!


▲天津市内に駐輪されているオフォ。

 天津市内のシェアサイクルについても考察しておきたい。北京同様に街角で10分間、台数を数えてみたところマイ自転車28台、シェアサイクル46台(モバイク18台、オフォ28台)、電動車49台という結果。ちなみに土曜の昼である。北京は平日朝だったので単純比較できないが、北京よりシェアサイクルの利用度が高いのは昨年も同じ傾向だった。これは推測だが、天津は北京に比べて地下鉄網が未発達だという点も関係しているかもしれない。

目覚ましい経済の発展で乗り物にも革新が


▲昔ながらのヴェロタクシーは観光客にも利用されているが……。

 北京では清朝時代の街並みが続く恭王府へ向かい、前海・后海と呼ばれる池の周りを走るヴェロタクシーを視察した。空車のおじさんから「日本から来た人!」と日本語で声を掛けられ、誰かが教えたなと苦笑する。タクシーでホテルへ戻り荷物を取ってから天津へ移動するつもりだったが、天安門付近が封鎖されていて混むのでイヤだと乗車拒否された。気軽に利用できることで人々に親しまれたヴェロタクシーも乗車拒否をしているようでは、滴滴(ディーディー/私用車配車サービス)という新しいサービスの登場に淘汰されてしまうだろう。


▲中華仕様の最新型新幹線。

 北京南駅から天津駅までは約130kmあるが京津高鉄(新幹線)だと約30分だ。4列シートの1等車で65.5元(約1,400円)だから、東京駅から三島までと距離が同じでも料金は半額以下。営業運転速度は最高時速350kmだが、事故があると減速するらしい。我々が乗った日は時速297kmが最高だった。それでもまったく揺れないし、加減速の違和感もない。ちょうど100%中華仕様の新型列車デビュー当日で席の予約が変更されてしまい、5号車から1号車まで歩かされたのはご愛嬌だが。

 インドネシアのジョコ大統領が中国から新幹線を導入すると決めた際には日本の新幹線の方が絶対優秀なのにと残念に思ったが、実際に乗ってみるとその自信も揺らぐほど。かつては技術的に遅れていたが5段飛ばしで成長を続ける中国。スーツケースなど大型荷物を置く場所も確保されており、日本が技術にあぐらをかいたままだと、近いうちに足元をすくわれるのではと心配になる。


▲新幹線の時速は客席の電光掲示板でも知らされる。

モーターショーさながらの天津自転車ショー!

 天津自転車ショー会場には相変わらずビートの効いた音楽が鳴り響いており、日本で「サイクルモード」を主催するテレビ大阪エクスプロのお二方も「日本じゃ有り得ない」と大いに驚いていた。会場の入口正面には今年も「愛馬(AIMA)」が陣取り、約800㎡という大きなブースを展開していた。良いか悪いか置いておき、常識を破るという点において天津自転車ショーは最高のステージに違いない。良く言えばプロダクトアウトが速いこと。悪く言えば何でもあり。「これあかんヤツやろ」とか言っている暇があったら手を動かして機先を制すべしなのだ。

昨年からの進化のポイントは3つ

ざっくり言って昨年から進化している点は以下の3つ。

  • ますますモーターショーの色合いが濃くなりコンパニオンの数が増えた
  • 4輪電動車の展示台数が劇的に増えた
  • 2輪電動車はバリエーションやキャラクター物が劇的に増えた

ということ。あと昨年は多かったノーパンクタイヤの展示だが、普及が進んだのかドライバーを刺したタイヤを展示していたのはたった1つのブースだけだった。

華やかなコンパニオンは市場成長の証


▲モーターショーも顔負け(?)のコンパニオン。

 まずコンパニオンは露出度も上がりカメラ親父が群がっていたが、これも日本のサイクルモードでは考えられない。天津自転車ショーは電動車メインの中国国内向けイベントだが、かつての自転車メーカーが電動車にシフトしたことでコンパニオンを複数派遣させられるほどの体力を付け、次々と新製品を繰り出すようになっている。

ペダルが再びついた2輪電動車はバリエーション豊かに


▲街中に駐車された4輪電動車。隣の乗用車と比較しても省スペース。

 次に4輪電動車だが「なぜ自転車ショーに展示?」という質問にマジレスすると、どちらも免許証やナンバープレートが要らない乗り物だから。中国独自のカテゴリーでバッテリーとモーターで動く乗り物すべてを「電動車」と呼んでいるのだ。電動車というカテゴリーは今後も参入が増えるだろう。これを日本に持って来て走らせるには様々な手続きが必要だが、独自の進化を遂げており一見の価値がある。音もなく走る電動車は公害を出さないので政府も容認しており、一般的なクルマもEV(電気自動車)が増えている。滴滴で北京空港からホテルまでEVに乗ったが、静かで力強く何の不満もなかった。


▲キャリーバック状にトランスフォームするものもあった。

 その2輪電動車も普及から差別化の時代に入った。これは4輪もだが、有名なキャラクターをあしらったモデルが多数展示されていた。「やっちまってるな」と苦笑するしかない。多くのモデルでカラーバリエーションが豊富に展示されていたほか、変身バイクのような提案も増えた。政府当局から一旦は不問とされたペダルの装着義務が再び適用されたため各社とも対応商品をショー展示へ間に合わせてきたが、市民が漕ぐとは到底思えない。何のために再び規制するのか理解に苦しむ。

最後に

 政府当局の朝令暮改にもめげず、したたかに消費者のニーズにマッチした製品ラインナップを展開する大手メーカーがいくつもあり、それを支えるパーツメーカーが山ほどあって一大産業になっている。電動車は多くの雇用を生んでいるし、多くの顧客を満足させている。成長率こそ一段落したが、14億の公民が生む内需は日本の比ではない。様々な移動手段を駆使してエネルギッシュに活動し、外貨を続々と獲得する現代の中国。かつては日本にもあったギラギラした躍動感に改めて刺激を受ける旅となった。

 わずか1年でも大きく変化していた中国の大都市、北京と天津。来年も行く機会があれば定点観測を続けたい。

B!

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