初心者ライダーがひとりで100㎞ライドに出かけて問題なく帰ってくるためのメンテナンス方法を紹介する連載企画。続けて読んでもらえれば、ライド前に必要な準備はもちろん、ライド中のトラブルに対応/回避するために必要なメンテナンスの知識が身につくと思います。無事に100㎞ライドを終えたころには脱・初心者です!
タイヤをホイールごと取り外す
前回は出先でのパンク修理に必要な道具を紹介しました。今回は実際にパンクからの復帰方法を実践していきます。その前に、「あれ、空気抜けてるかも」と思ったら急な進路変更をしてはいけません。空気の抜けたタイヤは横方向のグリップを失っており、転倒する恐れがあるからです。落ち着いてまっすぐ止まりましょう。後続車に突っ込まれないよう、停止のハンドサインを出すか「ブレーキ!」と大声を発してくださいね。
無事に停止できたら、安全な場所に退避してパンク修理に取りかかります。決して不運を嘆かず、また心を乱すことなく、逆にスキルアップのチャンスなのだと言い聞かせるぐらいの前向きさで対処するのがいいでしょう。
はじめに、パンクしたタイヤをホイールごと外します。前輪はクイックレリーズレバーを起こしてレバーを左に3~5回転回せば簡単に外せます。「後輪の着脱が苦手」と感じているビギナーの方もいるかと思いますので、コツを解説していきましょう。
サドルを持ち上げた状態でクランクを回しながら変速操作をし、前後のギアをインナートップ(フロントリアともに最小ギア)にしましょう。インナートップは最もチェーンがたるみ、ホイールが外しやすくなります。ブレーキを解放し、クイックレリーズレバーをおこしてサドルを持ち上げると後輪はストンと下に落ちます。前輪には脱落防止の爪があるのでその幅の分クイックレリーズを回転させる必要がありますが、後輪はレバーを起こすだけで大丈夫です。
リアディレイラーと干渉して後輪が落ちない場合は、リアディレイラーを後方に回転させてやるとすんなり外れます。はめるときはチェーンをスプロケットの最小ギアに乗せ、リアディレイラーを前に回します。
この時点でホイールはフレームから外れていますが、まだチェーンとスプロケットが干渉しています。サドルを持ってフレームを高く維持しまたままホイールを少し持ち上げてチェーンの輪からスプロケットをバイクの左側に抜くと、ホイールが外れます。
このチェーンとスプロケットが邪魔をして後輪を脱着しにくくしています。外しやすいように、リアの変速機はトップにしておきましょう。外すときはトップギアからチェーンを抜き、はめるときはトップギアに乗せる。外すときは後方に、はめるときは前方にディレイラーを回す。これさえできれば後輪の脱着は簡単です。
チューブをホイールから取り外す
では、ここからが本題のパンク修理です。タイヤがホイールのリムに噛み合ってる端部をビードと呼びます。まずは片側のビードを全周に渡って中央へ押して、外しやすくします。バルブのナットを外してバルブを押し込み、チューブをビード付近から奥に逃がしておきます。中央へ寄せた側のビードのバルブの横にタイヤレバーを差し込み、タイヤレバーの後方をホイールの向こう側に押し込んでスポークに引っかけて固定します。こうすると、タイヤの片側のビードがリムの外側に外れます。タイヤレバーを使うときは、くれぐれも慎重に。チューブを避けて、タイヤのビードだけにタイヤレバーを差し込むようにしないと、チューブに穴を空けてしまう恐れがありますからね。
2本目のタイヤレバーはバルブの反対側に差し込みます。そして、タイヤとリムの隙間が大きくなっていれば、指やレバーの反対側を差し込んで滑らせていき、ビードを全周外していきます。タイヤレバーや指が滑らせられないほど固い場合は、タイヤレバーを差した箇所を手でしっかり抑えてからレバーを1本抜き、10cmほど間隔を空けて、レバーを差してビードを外す作業を繰り返します。
ビードが全部外れたら、バルブの反対側からチューブを引き出していきます。バルブは最後に引き抜きましょう。
新しいチューブを装着する
タイヤの内側に異物がないかチェックしたら、新品のチューブを用意します。輪の形状になるぐらいまで、少し空気を入れておきましょう。ねじれやビードに噛み込まれるリスクを減らせます。外すときとは反対に、バルブ部分からはめていきます。チューブがタイヤ内に収まったらビードをはめていきます。チューブにねじれや偏りがないか確認してください。
バルブを真下にしてホイールを地面に置きましょう。頂点からバルブのある真下へ向かい、両手の手のひらを使って左右均等にはめていきます。このときタイヤを左右に伸ばすようにしていくと、最後までうまくはまります。バルブ部分まで来たら、上下をひっくり返してバルブを上にしてはめましょう。手でムリならタイヤレバーを使います。くれぐれもレバーで新品のチューブを傷つけないように!
タイヤがはまったら、バルブ付近は収まりにくいのでバルブを押し込んでチューブをタイヤ内にしっかり収めます。全周にわたってビードをめくり、噛み込みがないかを調べましょう。チューブを噛んだ状態で空気を入れると新品のチューブをパンクさせてしまう恐れがあるので、念入りに調べてくださいね。それでは、CO2インフレーターを使ってエアーを入れていきます。充填量を調整するダイヤル付きのタイプは、ダイヤルを閉じてボンベをしっかり奥までねじ込んでからバルブに取り付けます。取り付け前にバルブ先端のバルブコアは緩めておきましょう。
ダイヤルを開くと瞬間的にチューブがパンパンになります。CO2ボンベはガスが抜けると一気に冷却されるので、付属のカバーかグローブを使って直に触らないようにしましょう。
以上が出先でのパンク対応のやり方です。タイヤは走行中にパンクしても外れないようにはめ合いがキツく作られているのですが、タイヤのビードとリムのビードが収まる箇所の形状を把握して上手くレバーを使えば着脱できますからね。最初はチューブを傷つけないように、焦らず確実に作業してください。何度か経験してコツをつかめば簡単な作業だと思えるはずです。慣れれば5分とかからず走り出せるようになりますよ!
●バックナンバー
第1回/空気の入れ方
第2回/簡単なチェーン掃除法
第3回/水を使わずチェーンを洗う(準備編)
第4回/水を使わずチェーンを洗う(実践編)
第5回/出先でのパンク修理に必要な七つのギア