3つのスキルでコーナリングの達人になろう~自転車の処方箋#13
「自転車の処方箋」は、サイクリストの悩みに元プロロードレーサーが、スパっと回答する連載企画です。今回は、ロードバイク2年目のTETSUさんからいただいた「コーナーを見るたびに手元に力が入り、足がすくんでしまう」という悩みをいただきました。それでは管さん、今回もよろしくお願いします!
まずは減速し、クランクを回しながら走ってみよう
コーナーへ入る直前って緊張しますよね。ただでさえ前傾の深いロードバイク。手元がこわばると重心コントロールする余裕もなくなります。固くならないでコーナーに入るためには、まずは怖さの原因であるスピードを十分に落とすこと。これができたら、ブレーキを当て利きさせながら少し足にかかるギアでペダリングを続けてコーナーへ入ってみましょう。難しいことを考えずに、すんなりと曲がれるはずです。
※参考リンク:下りのフォームの記事 ペダリングをしながらコーナーリング
最初にマスターしたいのが、この当て利きブレーキとペダリングを活用したコーナーリングです。これでコーナー中のスピードに慣れることにより、構えずに柔軟にフォームを作ることができます。そして次なるステップの、本格的なフォームでコーナーへ侵入できるでしょう。
トライしたい3つのコーナーリング
ペダルを回しながらコーナーリングができたら、次の3種類のコーナリングに挑戦してみましょう。
①クランク水平のコーナーリング
②外足荷重のコーナーリング
③リーンイン・リーンアウトのコーナーリング
今回は「①クランク水平のコーナーリング」について解説していきます!
①クランク水平のコーナーリング
クランクを水平にして、両足荷重でコーナーに入るテクニックです。
特徴は、下記の3つです。
- ブラケットを中心に握るライダーにオススメ
- 重心位置のコントロールに柔軟に対応でき、ブラインドコーナーや初見のコーナーに最適
- シケインやS字コーナーなどで左右へクイックにバイクを立て直すのが容易
以前の記事で両足荷重のスタンスを紹介しましたが、この技術はコーナーリングへも対応ができるのです。まずは自転車の上に立ったスタンディングの状態で習得し、シッティングへステップアップしていきます。このコーナーリングの練習には見通しのよい安全な広場などに目印を置いて練習してみましょう。
①-1. スタンディングでのコーナーリング
ブラケットを持ち、クランクを水平にスタンディングを行います。お腹に力を入れて体幹を硬め、ヘソでバイクの中心を探りながら、腕にも裏ももにも負担がかからないニュートラルの重心位置をつかんでみましょう。この体勢で右コーナーの時は右足を前に、左コーナーでは左足を前にしてコーナーへ侵入してみます。
すると上体は高い位置にあるにも関わらず、地面に近い位置で重心の支点を感じられ、コーナー側へ目線と意識を向けるだけでスルっとコーナーを抜けれるでしょう。これがスタンディングでのコーナーリングの基本です。
次に、直線路でハンドルを前方に軽く投げ出すように、ニュートラルから後ろへ、後ろからニュートラルへと、重心を動かす動作を繰り返してみましょう。
そして、ハンドルを右、または左に切ると同時にタイミング良く腰を引くと、バイクが左右に流れていくことが分かります。
慣れてきたら、コーナーの目印に向かいます。曲がる直前でスッと腰を引いてハンドルを曲がりたい方向に軽く投げるだけで、流れるようにコーナーリングができるはずです
。
前後への重心バランスをコントロールすることで、ハンドル荷重が抜けてバイクが流れる動きを体感できましたね。これで、バイクの後方へ重心を置けばコーナーリングは怖くないことが分かりました。
さらに、コーナーでバイクが左右にフラフラして怖いと感じる方にオススメしたいのが、両膝もしくは片膝をトップチューブに触れておくというテクニックです。バイクとの一体感が増し安定性が高くなったと、てきめんに感じるでしょう。
①-2. シッティングでのコーナーリング
スタンディングでのコーナーリングに慣れたら今度はサドルに腰をつけてみましょう。するとどうでしょう。先ほどまで前後に流れるように動けていた重心移動がサドルに座ることで制御されてしまうのが分かります。ではこの体勢でどうすれば前後の重心移動を意識出来るのか…。答えはスタンディングに立ち上がる瞬間の体勢を思い出すと見えてきます。
シッティングからスタンディングヘ移行したい場合、後ろ足でペダルを踏み込むとBB(ボトムブラケット)を中心にクランクを水平棒にして立ち上がれます。この瞬間の動きをコーナーに入る手前で行うことで、ほぼ座りながらスタンディングに近い重心移動ができるのです。
ここでのポイントは、コーナー前で後ろ足のカカトを下げて構えること。バイクから降りて地面に立った状態でカカトを支点に後ろ足のつま先を上げてみましょう(バイク上ではカカトが下がるイメージ)。すると後ろ足を動かしただけで腰が後に移ります。この動きをバイクの上で再現するのです。
シッティング状態でコーナーに入る手前に、後ろ足のカカトをスッと下げるだけで腰が後方へ落ち着きます。これで小さな前後の重心移動ができました。このテクニックは、場面によってはそのままコーナー中にスタンディングに移行しダイナミックに重心移動することも容易で、非常に便利です。それでも怖いと感じる方は前述のトップチューブに両膝、もしくは片膝を当てるテクニックを使用しましょう。内ももでサドルを少し挟んでも、同様の効果を得られます。
ちなみに、このフォームが苦手なコーナーも2つ紹介しておきます。
- レースなどスピードが落ちない状態でのきつめのコーナーリング
- 下りきった先の直角コーナー
上記のようなコーナーリングでは、スピードが高く身体にかかる遠心力が強くかかり、後ろ荷重でバイクを流すテクニックではバイクが膨らむこともしばしば。左右にライダーがいるときなどリスクを考えなければいけません。こうした場面では外足荷重のテクニックを行うと良いでしょう。
次回は、外足荷重のテクニックについて紐解いていきたいと思います。
●バックナンバー
第1回:上手い下りの走り方
第2回:楽しく上るための回転数と心拍数の関係
第3回:予習が上りを楽にする
第4回:緩い上りは“もも裏”で効率的に上る
第5回:平均勾配7.8%の激坂の走り方
第6回:斜度に合わせてシッティングとダンシングを使い分ける
第7回:バイバイ立ちゴケ! 走行スキルを高める“スタンス”とは?
第8回:「自転車が下手だな」と思うなら…各段にうまくなる“チョコチョコ乗り”を
第9回:段ボールでマスターする平地のダンシング前編
第10回:“華麗なダンシング”のための3つのポイント
第11回:スマートに止まるブレーキングの極意
第12回:安全に止まるためのバイクコントロール
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WRITTEN BY管洋介
1980年生 A型 日本スポーツ協会公認コーチ 競技歴22年のベテラン。国内外で50ステージレース以上経験し、スペインで5シーズン BRICO IBERIA 、VIVEROS [現 CONTROL PACK]と契約、国内ではアクアタマを設立、インタープロ、マトリックス、群馬グリフィンを経て、国内の有望な若手選手とファーストエイドなど安全啓蒙を指南できるメンバーを集めたAVENTURA CYCLINGを2017年に設立、走りながら監督を務める。プロカメラマンでもあり、自転車雑誌の製作に長く関わっている。現在はプロライディングアドバイザーとして初心者向けのライディングレッスンなどを多く手がける。