自転車になくてはならないタイヤ。その種類は大きく分けて「クリンチャー」「チューブラー」「チューブレス」の3つ。乗り心地や交換方法など、それぞれにメリット・デメリットがある。初めての交換に最適なタイプは一体どれなのか?
いま乗っているバイクのタイヤに不満足な人、初心者からのステップアップをしたい人、自分でパンク修理や交換をしたい人……そんな人たち向けて「タイヤの完全ガイド」を残しておこう。
目次
低コストでパフォーマンス効果が高い「タイヤ交換」
タイヤは自転車の中で、直接路面と触れる大事なパーツだ。普段、あまり気にせず完成車についてきたタイヤで走っている人も多いと思うが、走りを変えたければタイヤの交換から始めるのが良い。低コストでパフォーマンスの違いを即体験できる。また、ヒルクライム、ロングライド、レースなど、自転車に乗るシチュエーションごとに特化したタイヤがあり、目的によって選べるだろう。
ロードバイクのタイヤは3種類
ロードバイクのタイヤの種類は、クリンチャー、チューブラー、チューブレスの3タイプ。それぞれの特徴、メリット&デメリットなどをまとめてみよう。
クリンチャーとは?
自転車タイヤの中でも最もポピュラーなもの。タイヤ両端のビードをリム内側の溝に引っかけ、内部に収めたチューブを空気で膨らますことにより、ビードがリムに押し付けられて密閉するようになっている。またタイヤとリムのはめ合わせの違いで、日本で使われるタイヤにはWO(ワイヤードオン)とHE(フックドエッジ)のふたつの規格がある(後述)。
- メリット
- パンク修理が楽。タイヤからチューブを引き出して交換するだけでいい。出先での携行品が身軽(パンク用チューブ、タイヤレバー)
- 対応ホイールの種類が豊富。エントリーモデルからハイエンドモデルまで選べる
- 取り扱っているショップが多いので簡単に手に入れられる
- そのポピュラーさゆえ、各メーカーのラインナップが多彩
- 高コスパ。シンプルながら耐久性が高い
- デメリット
- 低圧だとリム打ちパンクしやすい
- タイヤとチューブの摩擦により、他のタイプと比べて走行抵抗が上がる
おすすめクリンチャータイヤ
- GRAND PRIX 5000 (コンチネンタル)
- RACE A EVO4 (パナレーサー)
クリンチャーの詳しい解説&おすすめタイヤはこちらから!
チューブラーとは?
ゴム製のインナーチューブを袋状のケーシング(またはカーカス)と呼ばれる素材で縫い包み、接地面のトレッド部にコンパウンド(ゴム)を貼ったタイヤのこと。簡単に言えば、チューブをコンパウンドで包んで一体化した構造だ。リムセメントと呼ばれる接着剤や専用の両面テープでホイールと接合する。
- メリット
- ホイールのリム、タイヤともに軽量で、乗り味がしなやかで高速性能を維持できる
- 構造上リム打ちパンクのリスクが少ない
- その他の要因で起こるパンクも起きにくく、タイヤ補修剤のシーラントを併用することで耐パンク性能が高い
- パンクしてもクリンチャーと異なり、ゆっくりと空気が抜けていく「スローパンク」となるので、急場はしのげる
- デメリット
- リムセメントで接合している場合、タイヤ交換に手間がかかる
- 交換用のタイヤを携行するのがかさばる
- 一度パンクしたタイヤは修繕が難しく使い捨てとなる
- 対応ホイールが高額
おすすめチューブラータイヤ
- COMPETITION (コンチネンタル)
- RACE A EVO4 (パナレーサー)
チューブレスとは?
名の通りチューブを必要としないタイヤのこと。構造はクリンチャーと似ているが、リムにスポーク穴のない専用ホイールに装着することで空気を内部に充填する仕組みだ。内側にはチューブに相当するブチルゴムの層があり、ビード部分は空気が漏れないように、より密閉性が高い形状となっている。また、シーラント剤を使用することを前提としたチューブレスレディというタイプもある。
- メリット
- 転がりが軽く、乗り心地が良い
- 低圧での走行も可能
- チューブがない構造のため、クリンチャーのようなリム打ちパンクがない
- 異物が突き刺さってパンクした際にも、大きな穴や裂け目が開きにくく急激な減圧が起こらない
- パンク部分に直接パッチを貼って修理も可能
- 出先などでのパンクでは、暫定的にチューブを入れてクリンンチャー化することで難を逃れられる
- デメリット
- ビードが硬く、タイヤの脱着に苦労する
- 対応ホイールが少なくて高価
おすすめチューブレスタイヤ
- AGILEST TLR (パナレーサー)
- Formula PRO TUBELESS READY S-Light (IRC)
チューブレスの詳しい解説&おすすめタイヤはこちらから!
タイヤの選び方
おすすめのタイヤ幅
数年前までは23Cが大勢を占めていたが、最近では、乗り心地がよく速く走れるという理由で主流になりつつある25Cサイズを使う人も多くなった。タイヤを交換する機会が増えた現在、その機能をいま一度振り返ってみると、大きく4つ。
- ライダーと自転車の荷重を支えること
- 駆動力/制動力を路面に伝えること
- 路面からの衝撃を緩和すること
- 方向を転換/維持すること
以上4つの性能が、タイヤに求められるものである。
走行性能、耐久性を考慮すれば、やはりトレンドは25Cとなるだろう。
溝の選び方
タイヤの表面に彫られた溝(トレッドパターン)は様々あり、排水、制動力、駆動力、操作性などに効果が現れるとされている。しかし自転車の場合、微々たるものと考えてよい。
自動車のタイヤは地面との接地面積が大きいため、溝によるグリップ力の強化がみられるが、接地面積が小さい自転車の場合、その実用性は低い。荒れた路面を走るときにブロックタイヤを使用するのは理にかなっているが、ロードバイクで舗装路を走るだけならば、溝はあまり気にせず、好みのパターンを選ぶのがいい。
交換方法の違い
ビードのあるクリンチャーとチューブレスは基本構造は同様。リムに片側のタイヤをはめ込み、クリンチャーならチューブを内部に入れ、チューブレスはそのまま、もう一方のリム片側にタイヤを挟み込んでいく。この際、チューブレスはリムの内部溝にビードを落としていく感覚だとうまくいく。どちらも専用レバーがあれば交換がはかどるだろう。
チューブラーはリム接合面にリムセメントを塗るか、あるいは両面テープを貼り、そこにタイヤを接着する。大事なのはセンタリング。装着したタイヤの中心軸がズレないようにするため、軽く空気を入れて揉むようにしながら微調整していく。また、接着の最適化のため、リムセメント、両面テープともに24時間程度の放置が望ましい。
それぞれの詳しい交換方法はコチラから!
→クリンチャータイヤ:パンク対応
→チューブラータイヤ:交換方法
→チューブレスタイヤ:着脱方法
交換のタイミング
クリンチャー、チューブラー、チューブレスともに、ほとんどのメーカー公表値では約1年、3000〜5000kmが交換の基準とされている。しかし、これはライダーの乗り方で異なる。未舗装路や高温気象下での走行、体重やトルクのかけ方などによってタイヤの減りは影響するからだ。また、前輪よりも後輪のほうが早くすり減りやすい。
簡単に交換のタイミングを知りたいのであれば、タイヤ上にスリップサインをつけているメーカー品を履くのがおすすめ。タイヤがすり減ることで小さな丸形のスリップサインが消えていくので、完全に消える前に交換する目安となるので便利だ。
ホイールとの適合性
各タイヤとも対応ホイールが必要だ。
例外はクリンチャーとチューブレスの互換性。基本的にチューブレス対応ホイールは、クリンチャータイヤの装着が可能。シマノのアルテグラグレードのホイール、カンパニョーロとフルクラムで製品化されている「2WAY-FIT」ならば両者の併用が可能である。その他のメーカー製のほとんどは併用を推奨していないため、それぞれ対応ホイールを用意しなければならない。
チューブラーは完全独立型の専用品となる。
タイヤの規格・表記
クリンチャーの部分で述べた「WO」と「HE」。WO (Wired On:ワイヤードオン)は英国とフランスの規格。ビード部の形状は共通だがサイズの表記が異なり、英国規格は「28×1-5/8」のようにインチ×インチ、フランス規格は「700×23C」のようにミリ×ミリ表記となっている。さらに「28-622」のように表記されるものは、ETRTOという欧州の工業規格である。ロードバイクやクロスバイクはフランス規格、軽快車は英国規格だ。
HE (Hocked Edge:ホックドエッジ)は米国の規格である。単位はインチ表記。マウンテンバイクやBMX、ミニベロなどに採用されている。
「WO」と「HE」とはビードの形状や内径が異なり互換性はないので注意。
用途別おすすめタイヤ
最初のタイヤ交換におすすめなのは?
まだ自分が「初心者だな」と思っているうちはパンク修理が楽で各メーカーのラインナップが多彩なクリンチャータイヤをオススメする。最も広く普及していることから、様々なアクシデントの際に入手や修理が簡単にでき、自転車屋さんやライド仲間に直してもらうこともできるだろう。
用途別に厳選したおすすめクリンチャータイヤはこちらから!
レースなどを視野に入れ始めたら?
キャリアを積んでレースなどを視野に入れ始めたら、チューブラー、チューブレスを使ってみることをおすすめする。プロレースや競輪の世界で使われているように、転がり抵抗が低く、走行性に秀でているからだ。
チューブラーは最軽量かつ走行性能が群を抜いて秀でている、言わば「本番専用」タイヤ。
チューブラーはクリンチャーと比べて高価で、パンクした際の修繕が難しいので買い替えしなければならないデメリットがある。しかし耐パンク性能が高く、パンクしてもスローパンクとして急所は凌ぐことができることから、ここ一番で用いることをおすすめする。
チューブレスの一番の長所は「耐パンク性能」。
走行性が高く、パンクにも強いことから現在もロードレースなどで使われているが、オススメするのはMTBなどでの使用。耐パンク性のメリットは低い空気圧で走っても、リム打ちによるパンクの心配がないことにある。ゆえに荒れた路面を走行するMTBなどにおいて、メリットを最大限生かすことができる。
まずはチューブ交換という手も
ホイール交換などの初期投資の関係で、なかなかクリンチャー以外のタイヤを試せない人には、チューブを違うものに換えてみるのもおもしろい。
メーカーの完成車についているチューブは、いわゆる普通の、スタンダードなもの。
これをラテックスチューブやPanaracerのR-Airチューブに換えるだけでも走行感の違いを楽しめる。
チューブについて詳しく知りたいならコチラから!
まとめると
自転車に乗っている限り、パンクのリスクは避けて通れないもの。ツーリングなどでの突発的なパンクに自分で対処できるかどうかで、タイヤ選びをしなくてはならない。そして走行性能、耐久性、耐パンク性など、タイヤのスペックから最適なものを選びとることが必要だ。評判の良いタイヤはその時々トレンドが変わるので、ショップやネットなどで情報収集することも大事。
繰り返すが、クリンチャーからチューブラー、もしくはチューブレスへの乗り換えはホイールも変えるということ。その点を考慮して、自分の走りにぴったり合ったタイヤ選びをしてみよう。
監修:
サイクルアシスト オオバ 大場忠徳