東京都でも自転車保険が義務化!ホントに必要?国交省担当者に聞いた重要性と国の想い
いよいよ4月から東京都でも自転車保険が義務化になります。私たちはいつまでに何をしなければいけないのでしょうか?
そもそも対象範囲は?東京都民ではないけど都内通勤している人や、旅行でレンタサイクルを使った場合は?義務化で知っておきたい基礎知識にくわえ、今日に至るまでの流れを国土交通省の自転車活用推進本部事務局で聞いてきました。国が自転車保険の義務化を促進する理由と想いに迫ります。
目次
そもそも自転車保険とは?「自分のケガ」と「相手への賠償」を補償
自転車損害賠償保険等とは、自転車の利用によって生じた損害を賠償するための保険・共済のこと。「自転車保険」などの名称で販売されるもののほか、点検整備された自転車の車体についてくる保険(TSマーク付帯保険)などがあります。
また、既に加入している自動車保険や火災保険などに特約として付帯されている場合もあります。
東京都で義務化となる自転車保険は「被害者のケガ」を補償するもの
例えば「自転車保険」は、
- 自転車事故で発生した運転者本人のケガの補償・・・傷害保険
- 自転車事故で発生した被害者のケガの補償・・・個人賠償責任保険
が含まれる場合が大半です。
広義の自転車保険には盗難や車体損傷を補償してくれる保険も含まれますが、今回東京都で義務化される保険は②の個人賠償責任保険であって、①の傷害保険は含まれていません。
LINK:東京都交通安全課ホームページ「令和2年4月1日から都内で自転車を利用する場合には、対人賠償事故に備える保険等に加入している必要があります!」
4月からいよいよ東京都でも義務化。対象は?開始日は?
今回、義務化される対象者は自転車利用者、保護者、事業者、自転車貸付事業者となっており、2020年4月1日(水)から東京都内で自転車を利用する人、全員が加入対象です。
東京都内で自転車を利用する人とはつまり、
- 住まいは茨城県(未義務化)で、自転車で都内へ通勤している人も
- たまたまサイクリングで通りかかっただけの人も
- 住まいは茨城県で、未成年の子どもが自転車で都内へ遊びに行った場合も
- 業務で都内を自転車で走る人も(※1)
- 旅行で都内を訪れてレンタサイクルに乗る人も(※2)
- 自転車を持って日本を訪れた外国人も(※3)
- 都内でシェアサイクルに乗る人も(※4)
皆さん、何らかの損害賠償責任保険に入っていることが求められます。
※1 業務で自転車に乗る人を雇っている事業者が保険に入る必要があります
※2 レンタサイクルを貸す事業者が保険に入る必要があります
※3 訪日外国人が日本で自転車に乗る場合は海外旅行保険などに入る必要があります
※4 シェアサイクルを貸す事業者が保険に入る必要があります
- 2020年4月1日(水)開始
- 23区を含む東京都全域
- 東京都内で自転車を利用する人、全員が対象
▶もし未加入だったら罰則は?”ちょっとそこまで”でも入っておきたい理由があります。
→「保険に入らなかったら罰則がある?近所に買い物でも入っておきたい3つの理由」
▶ピッタリの自転車保険を選ぼう!
国交省担当者に聞く!国が自転車保険の義務化を促進する理由と想い
ここからは自転車保険の義務化について、国土交通省の自転車活用推進本部事務局で話を聞いてきました。なぜ義務化するほど保険加入が重要なのか、今日にいたるまでの背景を交えて理解を深めていきましょう。
答えてくれた人:国土交通省自転車活用推進本部事務局 課長補佐 中尾 忠頼さん
自転車活用推進本部は、日本で初めての自転車理念法となる「自転車活用推進法」に基づき設置されました。従来の自転車道の整備や安全利用の促進などに加え、自転車の利活用による環境づくりや、国民の健康増進なども謳っています。
本部事務局の課長補佐を務める中尾さんは、カナダのバンクーバーへの留学経験もあり内外の自転車事情に明るい方です。
なぜ今?東京都での自転車保険義務化の流れ
──東京都での自転車保険義務化の流れについて教えてください。
中尾「まず、自転車活用推進法は2017年に施行されたばかりの新しい法律ですが、交通事故被害者を救済する目的で、自転車の運行により人の生命または身体が害された場合における損害賠償保障制度について検討して行くこととあります」
「翌2018年には、政府が自転車活用推進計画を策定します。各地方自治体へ条例による加入促進を要請し、より具体的な形となりました」
「これを受け、2019年には有識者などからなる検討委員会が開催されます。クルマの自賠責保険に相当する”強制加入”保険についても議論されましたが、国内に約7,000万台あるとされる自転車を市町村が登録する必要があり、課題が残ります」
──課題とは、具体的にどういったものですか?
中尾「たとえば自転車登録の事務負担やシステムコストの財源確保もですし、自転車利用者のニーズに合った多種多様な保険商品が市場に供給されなくなるおそれもあります」
「そうすると本来の目的である自転車利用の促進を阻害してしまう可能性もあるわけです。そこで当面は、自治体の条例制定のサポートや国による情報提供の強化を行うことで、自転車損害賠償責任保険等への加入促進を図ることとしました」
中尾「2015年の兵庫県を皮切りに、各自治体において保険加入を義務化する条例が制定されてきています。推進本部としても標準条例(条例のひな型)を作成して都道府県等へ周知し、自転車損害賠償責任保険等の加入義務化を支援してきています」
「そして今般、東京都において条例改正により義務化されることとなりました。2019年末の時点で義務化を決めている都道府県は13箇所、政令市は7箇所ありますが、首都である東京都の義務化は、事業活動における自転車利用を含め全国にもたらすインパクトは大きいと考えられます」
LINK:全国の加入率は?昨年義務化した地域では増加したのか?
──義務化の背景として、危険運転(イヤホンを付けての運転やスマホを持っての片手運転、夜間無灯火など)の増加は関係していますか?
中尾「自転車の活用を広げるためには、まずは安全に自転車を利用していただくことが大前提です。自転車に関連する事故が長期的にみて減少してきているのに対し、自転車対歩行者や自転車同士の事故は近年減っていません。自転車の交通事故における法令違反の大半は、安全運転義務違反と交差点安全進行義務違反となっています」
「自転車事故を防止するには、まずは安全ルールをしっかりと守って事故を起こさないよう心掛けていただくことが大切で、国としては自転車安全利用五則の周知により利用者への啓発に努めています」
──では保険加入は、具体的にどのような点で重要なのでしょうか?
中尾「近年、自転車事故により自転車利用者に対する高額賠償命令が下される事例が発生しています。万が一、自転車利用中に他人をけがさせてしまったときに、その損害を補償できる保険に加入していることは大変重要です」
中尾「クルマの場合は、車検のたびに強制加入させられる自賠責保険がありますね。自転車だと、京都市のように保険加入率が80%を超える地域がある一方で、全国平均では60%に留まっています*」
*)「自転車対歩行者」事故の歩行者死亡・重傷事故における自転車運転者の自転車損害賠償責任保険等加入状況(2017年):警察庁データ
「自分が保険に加入しているかどうか分からないという人も約1割います。自転車によって他人を死なせたりけがをさせたりした場合の補償(個人賠償責任保険)は、自動車保険や火災保険、あるいはクレジットカードなどに基本補償や特約として付帯している場合があります」
高校生が最も自転車事故を起こしている?
中尾「自転車事故の頻度は、最も高い高校生をはじめ未成年において高くみられます。標準条例では学校側に対し、自転車を利用する児童・生徒、その保護者に向けて自転車損害賠償責任保険等の情報提供を行うよう促しています。東京都も今回の改正条例の施行に向け、都内にある学校へ情報提供を図っています」
中尾「また最近では自転車通勤を選択する人も徐々に増えているようですが、ヘルメットの着用はもちろん、自転車損害賠償保険にも必ず入ってもらいたいですね」
「政府では、来年度からスタートする「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトで、自転車通勤を推進する企業や団体を国が認定します。駐輪場の確保、安全教育の実施、自転車保険加入義務化した企業・団体(事業所単位から申請可)を「宣言企業」、さらに、その中から特に優れた自転車通勤推進に関する取組を実施する企業・団体を「優良企業」に認定する取組です」
自転車と保険のこれから
中尾「明治時代から自転車を積極的に取り入れて利用してきた日本ですが、自転車活用推進法ができ、ようやく日本も自転車先進国を目指すスタートラインに立ったところです」
「先述のとおり、自転車利用の促進には自転車を安全に安心して利用できることが必要です。そのため、交通安全ルールの順守とともに万が一に備えた自転車損害賠償責任保険等への加入が今後とも大変重要です」
まとめ
ようやく自転車保険も損保会社を選べる時代になって来ました。ただし保険は転ばぬ先の杖だと頭で理解していても、いざ加入となると行動が伴わないようです。
LINEほけんの調査によると約4割もいる未加入者たちは「月々の保険料が高い」、「罰則のない努力義務だから」、「どの保険を選べばいいか分からない」などの理由を挙げて、今後も加入しない意向だと聞いています。
月々100円から加入できる自転車保険もある中で、高いと言われてもなあと思いますが、被害者の立場を考慮すれば未加入者が約6分に1件(2018年 警察庁調べ 全国平均)起きている自転車事故の当事者にならないよう、祈るばかりです。