ショップにズラリと並ぶスポーツサイクルを見ていると、ディスクブレーキ搭載のモデルを多く目にするはず。ロードバイクやクロスバイクでも主流になりつつある「ディスクブレーキ」、初めての1台に選ぶのは果たしてアリなのでしょうか?
FRAMEのYou Tubeチャンネルでは、専門家にブレーキタイプの選び方を教えてもらいました。この記事では、各タイプの特徴やメリット、おすすめシチュエーションまで、さらに掘り下げてチェックしていきましょう。
目次
初めての1台にディスクブレーキのクロスバイクは “アリ”!
スポーツサイクルのブレーキは大きく分けて2種類あります。ディスクブレーキとリムブレーキです。ひと昔前はリムブレーキ車が主流でしたが、最近ではディスクブレーキを採用するスポーツサイクルが増えています。
初めての1台にクロスバイクを検討しているなら、ディスクブレーキモデルという選択はズバリ、”アリ”! クロスバイクでも今後ディスクブレーキは主流になってくるでしょうし、リムブレーキとは違った特有のメリットがたくさんあるのです。
「そもそもディスクブレーキって何?」という疑問から、その強みが発揮されるシチュエーションまで、オススメする理由をしっかりと解説していきます。
ディスクブレーキとリムブレーキの違い
ディスクブレーキは、ホイールの中心に付いている銀色の円盤部分でブレーキをかけます。上の画像を見ても、左側の自転車にはホイールの中心に円盤があることがわかりますね。
いっぽうリムブレーキは、フロントフォークとシートステーの根本部分*にあるブレーキパーツでブレーキをかけます。
*)設置場所に例外あり
それぞれ詳しくチェックしていきましょう。
ディスクブレーキとは
ディスクブレーキは、ホイールのハブ(回転軸)に取り付けられた金属製の円盤を挟みこむことでブレーキをかける構造です。(ディスクとは “円盤” の意)
銀色の円盤は「ディスクローター」と呼ばれ、走行中は高速で回転するディスクローターを、ブレーキパッドで左右から挟みこむことでブレーキがかかります。
2種類のディスクブレーキ「機械式と油圧式」
ディスクブレーキには、ブレーキパッドを操作する仕組みによって2つの種類に分けられます。
ワイヤーの力で動かすものを機械式ディスクブレーキ(メカニカルディスクブレーキ)、油圧の力で動かすものを油圧式ディスクブレーキといいます。
- 機械式ディスクブレーキ
ワイヤーでブレーキパッドを操作する。メリットは構造が簡単なので低コストである点。デメリットは、油圧式と比べるとブレーキの引きが若干重くなってしまうこと。
- 油圧式ディスクブレーキ
オイルに圧力をかけることでブレーキパッドを操作する。メリットはブレーキレバーの引きが軽い点。デメリットはオイル充填などメンテナンスが少し複雑であること。
memo:
悪路や急斜面を下るMTBでは、いち早くディスクブレーキが導入されてきました。近年ではロードバイク・クロスバイクでもディスクブレーキを搭載するモデルが増え、主流になりつつあります。
2020年のツール・ド・フランスでは全22チーム中19チームがディスクブレーキモデルを使用しました。(2018年は1チームのみ)
リムブレーキとは
リムブレーキは、車輪のリム部をゴム製のブレーキシューで挟みこむことでブレーキをかけます。
リムブレーキの種類
リムブレーキには、いくつか種類があります。ここでは代表的な3種のリムブレーキをチェックしておきましょう。
- キャリパーブレーキ
ブレーキ自体がコンパクトかつ軽量で、主にロードバイクに見られるブレーキです。下のふたつと比べ、細かなスピードコントロールを重視した設計になっています。クリアランス(左右のブレーキシューの間)が狭いので、太いタイヤは入りません。
- Vブレーキ
構造がシンプルなためメンテナンスが簡単で、制動力が高いです。フィールドや路上で止まる場面が多く、高いストッピングパワーが必要なクロスバイクやMTBに多く採用されています。ブレーキのアームが長いため、てこの原理が上手く利用でき、より強い力で挟みこむことができます。
- カンチブレーキ
泥が溜まりにくく太いタイヤも装着できることから、オフロード競技で使われるシクロクロスやツーリング車のランドナーなどに使用されていました。Vブレーキの元となったブレーキです。
ディスクブレーキとリムブレーキ、見た目はどう違う?
ディスクブレーキはフォークやシートステーがスッキリします。円盤の存在がバイクデザインのアクセントにも。リムにブレーキパッドの影響を与えずに済むため、カラーリングなどリムデザインの自由度が高いのも特徴(ロゴ・模様があるバイクも)。
いっぽうリムブレーキはホイールのハブ部分(特に前輪)がスッキリとした印象に。
ディスクブレーキのメリット
雨天でも制動力が落ちにくい
雨の中を走ると水や泥を巻き上げますよね。それがブレーキ部分に付着すると制動力は落ちます。しかし、ディスクブレーキは巻き上げた水や砂が付着しにくい場所(ホイール中心)に位置することや、水はけが良いローターの形状のおかげで、 強い雨が降るコンディションでも制動力が落ちにくいです。
油圧式なら軽いタッチで高い制動力
油圧式ディスクブレーキは、ワイヤーではなくオイルの力でブレーキをかけます。構造は車やバイクのブレーキとほぼ同じす。レバーを引いた力が油圧の原理で増強されパッドに伝わるため、軽いタッチでもブレーキをしっかりかけられます。
(筆者の経験から、油圧式ディスクブレーキなら下り坂であっても指1本でブレーキをかけられますよ!)
メンテナンスの頻度が少ない
たとえばリムブレーキは、ゴムシューの削りカスの掃除といった日常的なメンテナンスが必要です。ディスクブレーキなら、ライドの度に必要なメンテナンスは基本的にありません。(たまにローターを乾いたペーパーなどで拭き取る程度)
ただしパッドの交換や、油圧式ディスクブレーキならオイルの交換など確かな技術が必要なメンテナンスもありますので、年に1度はお店で点検してもらうようにしましょう。
太いタイヤが使える
リムブレーキは車輪を挟む構造上どうしてもタイヤ幅に制約が生じるのに対し、ディスクブレーキ用のフレームはタイヤクリアランスが広いため、25C*以上のタイヤも余裕で入ります。
タイヤを太くすると安定感が増しますし、グリップも良くなります。太めのブロックタイヤにすれば、グラベルバイクとしても使えますね。
*)25C:ロードバイクで主流のタイヤ幅
デメリットはある?
価格
リムブレーキと比べると、同じグレードでも少し値段が高くなります。
同グレードのパーツで組まれたクロスバイク完成車(6〜7万円)の価格差の目安は、約1万円。
セルフメンテナンスには知識が必要
ブレーキパッド、ディスクローターは油分に非常に弱いので素手で触ってはいけません。また、油圧式ディスクブレーキはブレーキオイルに気泡が入ってしまうと、ブレーキの効きが悪くなってしまいます。これらを知らずにメンテナンスをしてしまうと、ブレーキがまったく効かなくなるという可能性も…
メンテナンスを自分でするのであれば、メーカーのマニュアルを読むなどして知識を付ける必要があります。不安がある方は専門店にお任せするのが良いでしょう。
リムブレーキのメリット
重量が軽い
ブレーキパーツが少ないため、自転車全体の重量が軽くなります。ロードバイクでヒルクライムを楽しむ人などは軽量なリムブレーキモデルを好んで使います。登りでは重量がタイムに直結するからです。
とはいえ軽くなるといっても200~400g程度。通勤・通学に使う場合や、クロスバイクであれば大きなメリットにならないでしょう。
メンテナンスがラク
リムブレーキはなんといっても構造がシンプルなため、直感的にメンテナンスすることができます。ブレーキクリアランス(ブレーキシューの間)が広いので、ブレーキとリムの干渉もしにくいです。
またブレーキシューの摩耗具合がひと目でわかるので、交換時期が分かりやすい点もメリット。(ディスクブレーキはブレーキパッドがとても薄く、摩耗具合が分かりにくい)
デメリットはある?
雨だと制動力が低下
リムブレーキは雨天時は制動力が落ちます。地面から近い位置にあるリムは、雨の日に水や泥をまともに受けてしまいますし、ブレーキシューがゴム製のため、水分が付着すると効きが悪くなってしまうためです。
またリムやフレームに、ブレーキングによる泥やシューのゴムが付着して汚れが酷くなる側面も。雨天走行では、シューの減りも激しいです。
どっちを選ぶ?シチュエーション別オススメブレーキタイプ
ディスクブレーキとリムブレーキの違いがわかったところで、シチュエーション別に適したタイプはどちらなのかチェックしてみましょう!
▼シチュエーション一覧はこちら
通勤・通学で使うなら?
→急な雨にも対応できるディスクブレーキが安心!
雨が降るか降らないか微妙な時ってありますよね。ディスクブレーキモデルであれば、急に雨が降ってきても、ブレーキ性能が落ちにくいためより安全です。(もちろんリムブレーキでも止まれないわけではないので、スピードの出し過ぎに気をつければ問題はありません)
ただウェットな下り坂など「ちょっと怖いな」と感じるシーンでも、ディスクブレーキならより安心して走行できます。
坂道が多い、長い下り坂がある
→軽いタッチで高い制動力が得られる油圧式ディスクブレーキを強くオススメ!
前述したように、油圧式ディスクブレーキはブレーキレバーの引きが軽いです。下り坂でブレーキレバーを強く握っていると、だんだん腕と肩が疲れてきます。真冬の寒い日は手に力がなかなか入らないなんてことも……。
油圧式ディスクブレーキであれば指1本で余裕をもって止まれます。(これホント!)
軽さを追求したい
→リムブレーキがオススメ
少しでも軽いバイクが欲しい場合にはリムブレーキモデルがオススメ。ブレーキパーツが少ないため、200~400g程度軽いです。軽さを重視するヒルクライマーはリムブレーキモデルを好んで使います。
ただし、最近はディスクモデルもかなり軽量化が進んでいます。完成車重量が6kgを下回るディスクロードも発売されているくらいですから!
輪行するなら?
→リムブレーキがオススメ
慣れてしまえば、リムブレーキタイプもディスクブレーキタイプも輪行にかかる時間は変わりません。ただディスクブレーキタイプの場合、注意すべきことがいくつかあり少し面倒です。例えば、「ホイールを外した状態でブレーキレバーを握らない」「ディスクローターを素手で触らない」など。
女性には?
→やっぱりディスクブレーキがオススメ!
一般的に、女性は男性より握力が弱いです。特にロングライドや下り坂などの場面では、小さな力でブレーキをかけられると疲労感も軽減されます。軽いタッチでレバーを引ける油圧式ディスクブレーキがオススメです。
ロングライドをするなら?
→ディスクブレーキがオススメ
ロングライドをする上で、避けて通れないのが信号ストップと下り坂。短時間のライドであればなんてことないブレーキング操作も、長時間乗っていると腕や肩に疲労がたまります。
軽い力でブレーキレバーを引ける油圧式ディスクブレーキであれば、上半身に疲労をためにくいため、ロングライドに挑戦したい方にオススメです。
注意!「”あとからディスクブレーキに” は ✕ 」
とりあえずリムブレーキモデルを買っておいて、いずれディスクブレーキに変えたらいいかな、と思った人は要注意。リムブレーキからディスクブレーキへのアップグレードはできません。
なぜならリムブレーキモデルとディスクブレーキモデルではフレームの規格が違うから。リムブレーキモデルのフレームにディスクブレーキをつけることはできないのです。
ディスクブレーキで幅広い楽しみ方を
ディスクブレーキを採用したモデルは、クロスバイクでも年々増えています。
これから主流となるディスクブレーキモデルを買っておけば、たとえばホイールをアップグレードする時も選択肢が増えます。
またディスクブレーキモデルはグラベル用の太いタイヤを使えるモデルも多く、楽しみ方が増えるという一面も。路面状況に左右されずに高い制動力を発揮するディスクブレーキと、太いタイヤの組み合わせは安定感抜群です。
初めてのクロスバイク、是非ディスクブレーキモデルにしてみてはいかがでしょうか?
リムブレーキタイプでもディスクブレーキタイプでも定期的なメンテナンスは必要なので、気になることがあればお店に相談してくださいね。
動画はこちらから
→「ディスクブレーキとリムブレーキ違いを専門家が解説【クロスバイク】の選び方」
動画でお話を聞いたお店:
サイクルベースあさひ千駄ヶ谷デプト
所在地:〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-14-5
TEL / FAX:03-5786-1220 / 03-5786-1221
営業時間:10:00~20:00
店休日:8/20、12/30~1/1、2/19
提供:シマノセールス株式会社
記事監修:サイクルアシストオオバ 大場忠徳
▶ディスクブレーキのメンテンナスを知る
けんたさん!ディスクブレーキ、メンテナンスしてる……?ロードバイクやクロスバイクでもディスクブレーキがスタンダードになりつつあ... ディスクブレーキのローターも消耗するって本当?交換の目安やアップグレードまで... - FRAME : フレイム |