【2023年】エアロロード比較「マドン」vs「プロペル」vs「FOIL RC」vs「S5」
今回、FRAMEが注目したのはエアロロードバイク。2021年にUCI車両規定が改定され、フレーム設計の自由度が上がった。改定後はより薄く空力に長けたフレームを設計できるため、エアロロードの大幅な性能向上が予想されていた。
そして、各社からエアロロードの2023年モデルが満を持して発表された。予想通り、各社ともUCI車両規定の緩和を反映し、フレーム設計を大胆に変更。シートチューブ開口部が目を引く「TREK マドン」、大幅な軽量化に成功した「GIANT プロペル」が代表例だ。
今回は、新UCIルールの下で大幅な進化を遂げた2023年モデルのエアロロード4台を比較してみよう。
最新エアロロードバイク4台
比較する最新エアロロード4台(すべて2023年モデル)は
- TREK マドン
- GIANT プロペル
- SCOTT FOIL RC
- CERVELO S5
4台の特徴を以下にざっくりとまとめる。今回、比較するのはそれぞれの最上位モデルだ。
TREK マドン
TREK マドンの最上位モデル「Madone SLR 9 Gen 7」。
2021年に改訂されたUCIの車両規定に基づき、まったく新しいエアロチューブ形状を採用。特にシートチューブの開口部IsoFlowが目を引く。ヘッドチューブから後方に流れてきた空気をIsoFlowでスムーズに後方に流すことにより、空力性能を向上させる。
また、従来のIsoSpeedと比べてシンプルな機構になったことで、軽量化にもつながっている。この第7世代マドンは、マドン史上最も空力性能に優れ、マドン史上最も軽い。
※Shimano Dura-Ace Di2仕様とSRAM RED eTap AXS仕様があるが、今回の比較では前者を用いる。
GIANT プロペル
GIANT プロペルの最上位モデル「PROPEL ADVANCED SL 0」。
フルモデルチェンジし、大幅な軽量化を達成した。先代のPROPEL ADVANCED SL 1 DISCが7.7kgとエアロロードらしい重量だったの対し、新型プロペルはエアロロードとは思えないほど軽量に仕上がった。
フレーム、フォークは新設計されスリムな形状に。それでも剛性は失われていないどころか、フレーム剛性が9.9%向上したという。
空気抵抗を最小化するために開発された専用のボトルケージにも注目だ。空気抵抗を極限まで減らそうとするGIANTの本気度が伝わる。
SCOTT FOIL RC
SCOTT FOIL RCの最上位モデル「FOIL RC ULTIMATE」。
2021年のUCIの設計レギュレーション更新を受け、設計を大幅に見直した。大型化されたヘッドチューブは、走行時の空気抵抗を減らすほか、ケーブルルーティングもスムーズにする。
シートステイの位置が低く、シートポストの角度が起きているのも新型FOILの特徴。TTバイクに似た形状だ。同社のTTバイク「PLASMA RC PRO 2022」と比べてみると、フレーム後部の形状が似ていることが分かる。
新型FOIL RCは、エアロ性能が21%向上、9%の軽量化に成功した。
※今回の比較で用いる「FOIL RC ULTIMATE」は国内展開予定なし。
CERVELO S5
CERVELOのエアロロード最上位モデル「S5 Disc R9270 Dura Ace Di2」。
ツール・ド・フランス2022でのユンボ・ヴィスマ勢の活躍は記憶にも新しい。それを支えたのが、CERVELOの新型S5だ。UCIのエアロダイナミクスデザインに関する新しいレギュレーションを受け、S5はよりエアロに仕上がった。ヘッドチューブとBB周りのボリュームがより増えている。
そしてCERVELO S5と言えば、V字ステムだ。2023年モデルでも引き続き、V字ステムが採用される。V字ステムには空気を後方へスムーズに流す効果がある。
※今回の比較では、Shimano Dura-Ace Di2仕様を用いる。
TTバイクとエアロロードの違いは?
上で紹介した4台のエアロロードは、ぱっと見ではTTバイクのようだ。ここで2つの違いを簡単に整理しておこう
- TTバイク:単独走行によるスピードに特化
- エアロロード:アップダウンもコーナーもダッシュやスプリントもこなすロードバイク
4台のスペックを比較
上記4台の最新エアロロードを比較してみよう。今回は単純なスペックのみの比較だ。実際のところはそれぞれのバイクに乗ってみないと分からないが、スペック比較は分かりやすいだけに誰もが気になってしまうもの。
それでは、各社が本気で研究・開発した最新のエアロロード4台を比較してみよう。
監修:サイクルアシストオオバ 大場忠徳
重量
TREK マドン | GIANT プロペル | SCOTT FOIL RC | CERVELO S5 | |
重量 | 7.1 kg(※1 ) | 6.8kg(※2 ) | 7.22kg(※3 ) | 重量不明 |
GIANT プロペルが唯一の6kg台。プロペルの6.8kgはUCI重量規定ピッタリの重量だ。TREK マドン、SCOTT FOIL RCも7kg台前半。エアロロードの中では、かなり軽量な部類に入る。
前世代のGIANT プロペルはここまで軽量ではなかった。フルモデルチェンジし、フレーム設計を一新した結果、大幅な軽量化に成功したのだ。
下の画像を見てほしい。青色が前世代のプロペルのフレーム形状を表し、黒色が新フレームの形状だ。前世代と比べ、特に車体後部がシェイプアップされたのが分かる。
タイヤクリアランス
TREK マドン | GIANT プロペル | SCOTT FOIL RC | CERVELO S5 | |
タイヤクリアランス | 28mm | 30mm | 30mm | 34mm |
タイヤクリアランスが広くなければ、太めのタイヤを履けない。近年、太めのタイヤが流行っているがどんな利点があるのだろう?
利点を一つ挙げるとすれば、太いタイヤほどエアボリュームが増えるため、振動吸収性が良くなる。段差が一つもない綺麗な道なんて、ほとんど無い。太めのタイヤを履いて快適性を確保するのが昨今のトレンドだ。
表の通りだが、タイヤクリアランスはCERVELO S5が圧倒的に広い。CERVELOによると、太いホイールとタイヤは、快適性に優れるだけでなく空力的にも速いという。
CERVELO S5の完成車に付属してくるタイヤは28mmだ。タイヤクリアランスにはまだ余裕があるので、ライダーの好みによってより太いタイヤを履くこともできる。
※もちろん太いタイヤほど重いので、一概に太いタイヤを履けばいいということではない。
コンポーネント
TREK マドン | GIANT プロペル | SCOTT FOIL RC | CERVELO S5 | |
シフター | Shimano Dura-Ace R9270 Di2 | Shimano Dura-Ace R9270 Di2 | SRAM RED eTap AXS | Shimano Dura-Ace R9270 Di2 |
クランク | Shimano Dura-Ace R9200 | Shimano Dura-Ace R9200(パワメ付き) | SRAM RED Power meter Crankset | Shimano Dura-Ace R9200 |
流石はフラッグシップモデル。コンポーネントは最上級グレードのものばかりである。
各社で違いが出たのはクランクだ。GIANT プロペルとSCOTT FOIL RCのクランクには、パワーメーターが付属する。一方、TREK マドンとCERVELO S5のクランクはパワーメーターが付属しない普通のクランクだ。
付属ホイール重量
TREK マドン | GIANT プロペル | SCOTT FOIL RC | CERVELO S5 | |
付属ホイール重量 | 1410g | 1349g | 1,815g | 1514g(※) |
GIANT プロペルに付属するホイールの軽さが際立つ。これは、CADEXが新発表した「CADEX 50 ULTRA DISC」という50mmハイトのエアロホイールだ。50mmハイトで1349gという軽さは驚異的。
CERVELO S5はReserve(リザーブ)のホイールを採用。あまり馴染みのないホイールだが、サンタクルーズ社とCERVELOが共同で開発したホイールだ。
表を見ると、SCOTT FOIL RCに付属するホイールの重量が一回り重い。しかし、重いホイールが悪いわけではない。付属するのは、空力に優れたZippのホイール「454 NSW」。巡航性能が高いホイールで、坂でも平地でもスピードを維持しやすい。
価格
TREK マドン | GIANT プロペル | SCOTT FOIL RC | CERVELO S5 | |
価格(税込) | 1,668,700円 | 1,595,000円 | 未定(※) | 2,145,000円 |
コスパ最強ブランドと称されるGIANT。その名は伊達じゃない。GIANT プロペルはパワーメーター付きであることを考えると、やはり最強だなと思ってしまう。
しかし、それでも150万円を超えるわけだが……。
まとめ
- シートチューブに斬新な開口部を設けたマドン
- UCI重量規定ギリギリの6.8kgまで軽量化したプロペル
- TTバイク並みのジオメトリにしてきたFOIL RC
- 広いタイヤクリアランスを確保し空力と快適性を最大化したS5
UCI車両規定が改訂されたこともあり、2023年モデルのエアロロードは今までとは全く違った設計になった。
エアロロードは今後も進化を続けるはずだが、UCI規定が変更されない限り、今回のような大幅アップデートは起きないと見られる。UCI規定改訂を存分に活かし大幅な進化を遂げた今が、エアロロードの買い時だ。