日本初上陸のマグネシウムバイク、VAAST(ヴァースト)に乗る|マグネシウムって何がいいの?
マグネシウムでできた自転車、VAAST Bikes(ヴァーストバイクス)が日本に初上陸した。
多くの人は、「マグネシウム?何だそれ、チタンみたいなものか?」状態だろう。何となく凄そうではあるが、その乗り心地は全く想像できない。そこで今回、FRAME編集部はVAAST Bikesの日本初上陸発表会を取材した。試乗もしたので、マグネシウムバイクの乗り心地について正直に書く。
そして記事の最後に、マグネシウムバイクは”買い”なのか、”見送り”なのか結論を出す。
目次
VAAST Bikesとは
VAAST Bikesと書いて、ヴァーストバイクスと読む。2019年、アメリカのアウトドア総合商社「United Wheels」の資本によって設立されたブランドだ。
VAAST Bikesといえば、何と言ってもマグネシウムフレーム。アルミやチタンよりも強度が高く、軽量なAllite スーパーマグネシウムをフレーム素材に採用する。また、100%リサイクル可能なフレームをつくるなど、エコへの関心も高いバイクブランドだ。
一番の疑問、なぜマグネシウム?
近年、フレーム素材はアルミやカーボンが主流であり、マグネシウムを採用するバイクブランドは無いに等しい。VAAST Bikesはなぜ、フレーム素材にマグネシウムを採用するのだろう?その理由はいくつかある。
環境にやさしいから
VAAST Bikesがマグネシウムフレームを採用する理由はいくつかあるが、最大の理由は環境に優しいからだ。
なんとVAAST Bikesのマグネシウムフレームは、100%リサイクル可能だという。加えて、マグネシウムは資源量が多く、採取も比較的簡単だ。マグネシウムの原料は海水からも採取できる。マグネシウムであれば、フレームを製造する時や廃棄(リサイクル)する時の環境負荷を減らせるというわけだ。
アルミ、チタンと比べて圧倒的に強くて軽いから
VAAST Bikesが採用するAllite スーパーマグネシウムは、アルミやチタンと比べ圧倒的に軽く、強度も高い。フレームにAllite スーパーマグネシウムを使うオールロードバイクA/1を手に持ってみたが、やはり軽量に仕上がっていた。
マグネシウムは強度が高いゆえに、フレームを薄くできる。下の画像はチェーンステーだがかなり薄い。アルミやカーボンでは強度が足りず、ここまで薄くすることはできない。
逆に、マグネシウムの弱点は?
マグネシウムの弱点としてよく挙げられるのは、腐食しやすいことだ。しかし、マグネシウムにセラミックの被膜を貼る技術は格段に進化し、弱点はほぼ克服したという。
VAAST BIKES JAPANの石神さんは、「腐食性能は基本的にアルミと同等。それでアルミより軽くて強いなら、マグネシウムを選ぶ」と説明した。
ズバリ、お値段
ニューバイクが登場すると気になるもの、それが値段だ。近年は自転車価格が高騰し、完成車価格が100万円を超えても驚かないようになってしまった。それでは、VAAST Bikesの価格設定を見てみよう。
最上位モデル A/1 (SRAM Rival AXS仕様)
最上位モデルには、高級感のあるSRAM Rival AXSを装備。お値段は完成車で478,000円。電動コンポ装備で、この値段はかなり良心的なのではないか。
中位モデル A/1 (Shimano GRX仕様)
上記のA/1(SRAM Rival AXS仕様)と違うのは、コンポーネントとカラーだけだ。コンポーネントはShimano GRXで、価格は420,000円。クランクにはアルミではなく、カーボンクランクを使うなど、パーツ選びに妥協は一切ない。
ラインナップには、この2台以外にもGRX 2X仕様やフレームセットなどがある。一番安い完成車はA/1 (Shimano GRX 2X仕様)で315,000円だ。フレーム、フォークは上で紹介した2台と共通だ。
ここまで環境を考えるバイクブランドがあっただろうか
マグネシウムのフレームが100%リサイクルでき、環境に優しいことは先述した通りだ。驚くのは、バイクを梱包する箱まで100%リサイクル可能であることだ。
梱包時にパーツ同士を繋ぎ合わせるためのバンドまで有効活用する。バンドをサドル下に取り付けると、予備チューブやタイヤを携帯することができる。
試乗レポート
9月26日の日本初上陸発表会では、試乗体験会も行われた。VAASTに試乗してみて感じたことを正直に書く。
コース
試乗コースはグラベルを含む7km。アップダウンが多く、バイク性能のチェックにはもってこいのコースだ。
試乗バイク
最上位モデルのA/1 (SRAM Rival AXS仕様)に試乗した。ホイールサイズは650bだ。ちなみに、このフレームは650bのホイールも700cのホイールも付けられる。
完成車重量は、XSサイズのペダル込みで9.4kg。
ホイールやコンポをカスタムすれば、より軽量に仕上げることも可能。VAAST BIKES JAPANの石神さんは自身のバイクA/1をカスタムし、7.5kgまで軽量化させた。
これがマグネシウムの振動吸収性能か!
オンロードを走っているときは、振動吸収性の良し悪しはイマイチ分からなかった。しかし、オフロードに入るとマグネシウムフレームの振動吸収性能が遺憾なく発揮された。VAAST bikesによると、マグネシウムはアルミと比べて振動吸収性が20%高いという。
グラベルや舗装の悪い道を走ってもハンドルが暴れないため、コントロールがしやすい。路面が悪く、急勾配の下り坂でも安心して下れた。
安定した走りには、左右非対称のドロップドチェーンステーによる低重心化も一役買っているだろう。また、フレームをホリゾンタルにするのも振動吸収性を考えてのことだ。
なぜか、平地と下りが速い
今回試乗したのは、いわゆるオールロードバイクだ。どこにでも行けるバイクで、空力性能に特化した印象は無かった。そのため、高速域は弱いのではないかと予想していた。しかし、実際に乗ってみると全く違った。平地でも下りでも、気持ちよくスピードが伸びてゆく。なぜなのかは、よく分からない。
ロードバイクと比べると、登りは苦手
普段ロードバイクにしか乗らない筆者からすると、VAAST bikesの登坂性能は物足りなく感じた。太めのグラベルタイヤで試乗したため、当たり前といえば当たり前だが、登りは重たく感じる。ロードバイクのような登坂性能を期待しているとガッカリするかもしれない。
オンロードを軽快に登りたいなら、ロードバイク用のホイールとタイヤに換えることをおすすめする。フレーム自体は軽いので、劇的に走りが変わるのではないか。
ただ、ダンシングはとてもしやすかった。ハンドルを力強く降っても、グニャグニャと力が逃げる感じが無かった。マグネシウムの高い剛性のおかげだろうか。
マグネシウムバイクは”買い”なのか、”見送り”なのか
環境に優しく、アルミやチタンより軽く強いマグネシウムバイク「VAAST bikes」。実際に試乗をした筆者が、マグネシウムバイクは”買い”なのか、”見送り”なのか結論を出す。
グラベルライドを楽しみたいなら
買い。試乗レポートの通り、振動吸収性は抜群でアルミより20%も高い。アルミのグラベルバイクを買うより、マグネシウムバイクを買う方がメリットは多そうだ。振動吸収性が良いことに加え、軽くて強い。同じ価格帯であれば、アルミバイクを選ぶ理由が見当たらない。
ヒルクライムを楽しみたいなら
見送り。軽量なカーボンロードを買った方が速いに決まっている。マグネシウムバイク「VAAST bikes」はあくまでもオールロードバイクだ。
初めての一台として買うなら
買い。最近は自転車価格がどんどん上がってきている。そんな中、VAAST bikesの値付けは大分良心的だ。ほんの少しだけ無理すれば、最初の一台としても手が届く価格だ。そして、この一台さえあれば本格的なグラベルからオンロードまで走れる。最初にこの一台買っておけば、何種類もの楽しみ方ができるのではないだろうか。
まだ日本に上陸したばかりなので、他の人とも被ることもまずない。「今ならVAAST bikesの日本人第一号になれますよ」と石神さんは話す。
環境問題に関心があるなら
即買い。VAAST bikesは環境に優しいことを最重要視するバイクブランドだ。フレームには100%リサイクル可能なマグネシウムを使用し、梱包の箱までリサイクル可能にこだわる。環境に優しいバイクといったらVAASTという認識が広まるのも、遠い未来の話では無さそうだ。
まとめ
マグネシウムフレームは、アルミと比べ振動吸収性が20%高く、優しい乗り心地が特徴。グラベルコースを走れば、マグネシウムフレームの振動吸収性の高さが分かるはずだ。加えて、マグネシウムフレームは100%リサイクルすることができ、環境にも優しい。
近年は自転車価格が高騰しているが、VAAST bikesは最上位モデルでも50万円いかない。最上位モデルが電動コンポを装備していることを考えると、かなりお得感がある。どうやら、VAAST bikesはお財布にも優しい自転車のようだ。
- VAAST bikesの詳細はこちら
- twitter: @vaastbikesjapan
▼試乗予約などはこちら。試乗を希望する方は以下のメールアドレスにご連絡ください。VAAST bikesで小田原のグラベルを含むコースを走れます。
- mail:vaastbikesjapan@gmail.com