【アルテグラDi2】電動コンポのメリット・デメリット|パーツの価格とセット例【デュラエース・105も】
電動コンポーネント、愛用者に言わせると「一度使うとやめられなくなる」シロモノらしい。電動ならではのシフトチェンジのレスポンスは感動さえ覚えるほど。スイッチひとつで変速がきまるのだから、力の弱い女性や手の小さいライダーにもピッタリだ。
コンポは自転車の中でも中核となるパーツ。大きな投資ともなるだろうから、アルテグラDi2経験者が教えるメリット・デメリットをしっかり押さえておきたい。最後にはアルテグラとデュラエース両方のセット例と、価格を含めた各パーツも紹介する。電動コンポを考えている人は必読だ。
目次
電動コンポを使うということ
電動コンポーネントとは、その名の通り電力でディレイラーをコントロールする機構のこと。ワイヤーの張力によって制御する機械式と異なり、スイッチひとつでシフトチェンジすることができる大変便利なものだ。代表的なものとして、シマノのDi2の他、カンパニューロのEPS、スラムのeTapがあり、コンポーネント大手3社がすべて電動式のコンポを販売している。
機械式ワイヤーがいらなくなった代わりに、エレクトリックワイヤーに繋がれた前後ディレイラーにモーターが組み込まれ、そのモーターが駆動して変速する。あわせて、モーターを動かすためのバッテリーをフレームに装備することになる。電動コンポーネントの黎明期にはバッテリーを直接フレームにボルトで留めていたが、現在はフレーム内部に収納することが可能となり、見た目もスマートになっている。
電動コンポーネント対応のフレームも各メーカーが取り揃えるようになった。もはや特別な存在ではなく、ロード乗りにとっては(予算があれば)普通に溶け込んだ電動コンポーネント。今回はシマノDi2の紹介とともに、その世界を今一度おさらいしてみよう。
Di2とは
2009年にデビューしたシマノ・デュラエースDi2。Di2とは「デジタル・インテグレイテッド・インテリジェンス」の略称。要となるのは、SIS(シマノ・インデックス・システム)を礎に、Di2コンセプトのもと開発されたコンピュータ制御による高精度なシフティングである。
そのSEIS(シマノ・エレクトロニック・インテリジェント・システム)と呼ばれる機構は、シフトスイッチからのライダーの意思を電気信号に変換し、鋭いレスポンスとともにディレイラーに伝える。そして前後ギアの位置関係に応じて最適な動作を行ない、変速をコントロールすることが可能だ。
変速はレバーのスイッチを軽く押すだけの超ショートストローク。刻一刻と変化するコンディションやスピード、路面状況に応じて、ライダーは感じるがままに適切なギヤへとシフトチェンジが可能だ。レースの現場だけではなく、すべてのサイクリストが大きなアドバンテージを得ることができる。
2021年には第4世代となるR9200系が発表され、着実に進化を遂げている。特筆すべきは、ついに12速化を果たした点であろう。リアディレイラーはR9100系に続いてシャドータイプ(内側にオフセットした形状)を採用、最大ローギアが34Tに対応とワイドレシオ化。フロントディレイラーも構造が一新され、軽量化が図られている。
また、2011年にはセカンドグレードとしてアルテグラDi2もリリース。こちらも2021年にR8100系が発表され、デュラエースDi2のDNAを注入しながらも手頃な値段の電動コンポーネントとして人気を博している。
Di2のメリット
ここからは実際のアルテグラDi2ユーザーの声をもとに、リアルなメリット・デメリットを紹介していこう。
変速調整の簡単さ
変速がストレスフリーであることに加えて、調整の楽さがメリットとして挙げられる。ショップで組み上げてもらった際、ディレイラーの初期調整をした後は、基本的に狂うことがない。機械式のように、時間経過でワイヤーが伸びてしまうなどのメンテナンスの頻度を大幅に減らすことができる。ホイール交換などで再調整が必要な場合も、手順通り行えば数分で作業が完了するのは大きなメリットと言えるだろう。
ワイヤー配置の自由度が高い
機械式ワイヤーの代わりにエレクトリックワイヤーが繫がっているが、取り回しが簡単で自由度が高い。急に曲げてしまうと引きが重くなってしまう機械式ワイヤーと異なり、いくら曲げても変速に影響が出ないという利点がある。特に最近のエアロロードは、空力のため無理なワイヤー配置を強いられることも少なくないため、電動コンポーネントを使うことで変速のロスをなくすことができる。
手の小さい人や力の弱い人でも安心
レバーのダウンサイジングと同時に、握力の弱い人でも容易に変速できるのもメリットだろう。機械式のレバーでは、ワイヤーを物理的に引っ張る必要があるため、どうしてもある程度の力を必要とする。特にフロント側をシフトアップする際はレバーを奥まで押しこむ必要があるため、手の小さい人や女性は苦労しがちだ。電動コンポーネントの場合はスイッチを指先で押すだけで済む。操作が楽になった結果、変速回数が増えるために適切なギヤを使うことが多くなり、走りのパフォーマンス向上にも繫がる。
Di2のデメリット
デメリットを探すのは難しいが、あえて言うならば価格が高いこと。デュラエースDi2となれば新車が一台買えてしまうほどの価格となる。そのへんは悩みどころである。
また、当然と言えば当然だが、電動コンポーネントにはバッテリー切れという事態が起こりかねない。後述するがバッテリーの持ちは良い。しかし、うっかり充電忘れや長距離ライドに出かけた際に……という場合がある。
バッテリー切れとなったDi2の挙動は、最初にフロントの変速ができなくなる。アウターにある場合はアウターから、インナーにある場合はインナーから動かなくなり、しばらくの間リアだけは変速できる状態が続く。最終的に変速ができなくなり、シングルフリー状態となる。
◎監修メカニックのひとこと
Di2の場合、シフターが単なるスイッチなので比較的操作を間違えやすいということもあります。実際、登りで重いギアに入れてしまったことがありました。機械式の場合、シフトアップとシフトダウンのストロークが全く違い、直感的にわかるので大丈夫ですが……
カンパニョーロはシフトアップとシフトダウンのレバーが独立しているため、間違えにくくなっています。そこは優れているポイントですね。
Di2機能紹介
ここからは、電動だからできる素晴らしい機能の数々をご覧にいれよう。
シンクロナイズド・シフティング
シンクロモードではひとつのシフターで前後のディレイラーを制御することが可能。フロントディレイラーがリアディレイラーの位置を検知し、ベストなチェーンラインとなるよう、最も効率の良いギアに自動的にシフトする。これによりフロントシフティングやトリム操作が不要となり、ライディングへの集中力を高めることができる。
セミ・シンクロモードでは、フロントディレイラーの手動シフトに合わせて、リアディレイラーが自動的にリカバリー変速を行ない、急激なギア比の変化によるストレスを軽減する。
リモートスイッチ
Di2システムでは、様々なライディングに応えるシフトスイッチを用意しているのも特徴的だ。基本となるデュアルコントロールレバーの他、トライアスロン用、DHバー用、サテライトシフトユニット、リモートスプリンターシフターがある。
上ハンドルで流しているときに便利なサテライトスイッチ、または下ハンドル時の変速を楽にするスプリンタースイッチなど、ブラケット以外を握っていても指を伸ばさず変速可能。
スマートフォンとの連携
スマートフォンとE-TUBE PROJECTを同期させることで、多段変速設定やライダーの繊細な感覚に合わせた変速タイミングを設定できる。また、前後ディレイラーの変速スイッチや、シフトアップ、シフトダウンのスイッチを入れ替えて設定することも可能。さらに最新のファームウェアへのアップデートも簡単に行なえる。
※連動させるにはワイヤレスユニットが必要となる。
Di2にまつわるQ&A
電動ならではの気になる疑問を一挙解決していこう。
バッテリーの持ちは?
1000km以上持つと言われている。基本的には変速回数によって決まると言ってよい。
また内臓バッテリータイプであれば、モバイルバッテリーからの充電も可能。ブルベや泊まりがけのロングライドでも安心だ。
雨でも平気なの? 洗車は?
電気で動作するので雨に弱そうなイメージがあるが、実際はまったく問題がない。大雨のレースでも使われているくらい防水性能が高い。
洗車に関しての注意点は次の3点。
- エレクトリックワイヤーがきちんと奥まで差し込まれていること
- 外装バッテリーは装着したまま、接続端子をむき出しにしないこと
- 高圧洗浄機を使わないこと
以上を守れば水を使った洗車も可能だ。ただし、濡れた状態でのエレクトリックワイヤーの付け外しはしないよう注意しよう。
今使っているロードバイクに載せられる?
一部フレームにより装着できない場合があるが、現行のほぼすべてのロードバイクに搭載可能。互換性のある機械式変速システムが搭載されたロードバイクならば、載せ替えのための最小限のパーツでDi2システムにアップグレードできる。
実際の変速はどんな感じ?
非常にスムーズ。スイッチひとつで確実な変速を得られる。滑らかすぎて気づかないほどストレスフリーな変速だ。一度体験すれば、その虜となるだろう。また、後述するシンクロナイズド・シフティングにより、さらに効率的なシフト操作が可能だ。
メンテナンスの頻度は?
機械式と比べて断然少ない。Di2システムのエレクトリックワイヤーは変速の指示を電気信号で伝えるため、機械式ワイヤーのような伸びやほつれがなく、定期的な変速調整やワイヤー交換が不要。最小限のメンテナンスで、優れた変速性能をキープしたままライディングを楽しむことができる。
セット紹介
デュラエースとアルテグラ双方の最新型Di2(※2022年6月現在)を、各パーツとセット例を挙げて価格&重量とともに紹介していこう。
DURA-ACE Di2
R9270シリーズ・内装用セット(一例)
以下の内容をセットとしたときの例を挙げる。
デュアルコントロールレバー、フロントディレイラー、リアディレイラー、クランク、スプロケット、チェーン、ディスクブレーキ、ローター、バッテリー、充電コネクタ
セット価格:¥451,887(税込) ※別途、車体に合わせた長さのエレクトリックワイヤーが必要
※2022年6月現在、世界的なパーツの供給不足の影響により、R9270シリーズは品切れ中です。ULTEGRAなど他のコンポも検討してみてはいかがでしょうか。
パーツ一覧
デュアルコントロールレバー | フロントディレイラー | リアディレイラー | クランクセット(50-34T) | スプロケット(11-30T) | チェーン | ディスクブレーキ | ローター | バッテリー | 充電コネクタ | |
※画像は右用レバー | ||||||||||
重量 | 350g(ペア) | 96g | 215g | 685g | 223g | 242g | 230g(ペア) | 108g(160mm)、88g(140mm) | – | – |
価格(税込) | ¥112,036(ペア) | ¥49,550 | ¥88,704 | ¥67,452 | ¥43,197 | ¥7,871 | ¥36,960 | ¥18,124(2枚) | ¥22,220 | ¥5,763 |
※クランクの取り付けには、各フレームの規格に適合したBBが必要です。また、お手持ちのホイールが10速以下の場合、11速や12速に対応したホイールも必要となります。Di2への換装にあたっては、ショップと必要パーツの相談をよくすることをおすすめします。
ULTEGRA Di2
R8170シリーズ・内装用セット
以下の内容をセットとしたときの例を挙げる。
デュアルコントロールレバー、フロントディレイラー、リアディレイラー、クランク、スプロケット、チェーン、ディスクブレーキ、ローター、バッテリー、充電コネクタ
セット価格:¥268,434(税込)
※別途、車体に合わせた長さのエレクトリックワイヤーが必要
パーツ一覧
デュアルコントロールレバー | フロントディレイラー | リアディレイラー | クランクセット(50-34T) | スプロケット(11-30T) | チェーン | ディスクブレーキ | ローター(160mm) | バッテリー | 充電コネクタ | |
重量 | 391g(ペア) | 110g | 262g | 700g(50-34T) | 291g | 252g | 282g | 127g(160mm)、106g(140mm) | – | – |
価格 | ¥83,160 | ¥28,413 | ¥45,276 | ¥34,881 | ¥12,705 | ¥5,443 | ¥18,365 | ¥12,208(2枚) | ¥22,220 | ¥5,763 |
※クランクの取り付けには、各フレームの規格に適合したBBが必要です。また、お手持ちのホイールが10速以下の場合、11速や12速に対応したホイールも必要となります。Di2への換装にあたっては、ショップと必要パーツの相談をよくすることをおすすめします。
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比べると?
DURA-ACE | ULTEGRA | ||
重量 | 2,237g | 2,521g | -284g |
セット価格 | ¥451,887 | ¥268,434 | +¥183,451 |
セットの重量・価格を比較すると、DURA-ACEはULTEGRAに比べ約284g軽量であるが、約18万円高いという結果に。DURA-ACEはプロ向けのグレードとして、1gでも軽く、より性能を高くすることを第一としているが、ULTEGRAは高い性能を維持しながら、費用対効果の面も考えられている。
DURA-ACEはこのような設計思想から、さらなる高みを目指すレーサーにとって最適なチョイスとなるだろう。
一方で、ULTEGRAはハイエンドグレードと呼ぶにふさわしい性能を追求しながらも、現実的に手が届きやすい価格を兼ね備えたモデルである。そのため、プロが使用する機材に近いものを(比較的)お手頃な価格で手に入れたいホビーレーサー、さらには快適性を追求したいロングライドが好きなサイクリストなどにおすすめだ。
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まとめると
革命と呼ばれたデュラエースDi2の登場から10年以上が経過し、自転車シーンにすっかり浸透した電動コンポーネントはいまだに進化をし続ける。今後も新たなアップデートを繰り広げるに違いない。そして普及もますます広がるだろう。その潮流に乗り遅れないように、あなたも導入を考えてみてはいかがだろうか?
ユーザーフレンドリーなDi2システムは、必ずあなたの走りを変えてくれるはずだ。
All Photos (C) SHIMANO
監修:Viking the Maintenance 石橋