SHIMANOホイール徹底解説|アルテグラグレードWH-RS500が脱初心者への最適解!?

【2022年4月更新】ロードバイク乗りなら知らない人はいないであろう、SHIMANOのコンポ。それでは、SHIMANOのホイールのイメージはつくだろうか?数あるホイールメーカーのなかでも、SHIMANOホイールといえば「優等生」な存在。

初めて完成車ホイールを交換する人のために、SHIMANOホイールの特徴やおすすめモデルを交えながらわかりやすく解説していこう。

FRAMEおすすめモデル、「WH-RS500」はこちら!

完成車ホイールの交換=いきなりスゴイ

ロードバイク初心者が手っ取り早く「初心者脱却」をもくろむならば、ホイールを交換するのが一番だと言われる。10数万円程度の完成車エントリーモデルには、いわゆる「鉄下駄」と呼ばれる安価で重いホイールがアッセンブルされていることが多い。

鉄下駄
日本伝統(?)のトレーニング用具である鉄下駄

この鉄下駄を5~8万円程度のホイールに替えてみれば、あら不思議。いままでとは異なる軽さと軽快なライドフィールを得ることができて、「あれ?」とビックリする。特に登坂時など、スイスイ走れてその威力を発揮する

それを初心者は「ズルい」と感じる。「なんでもっと早く教えてくれないんだよー!」というわけだ。

では数あるホイールのうち、SHIMANOのホイールが選ばれる理由とは?ここからは「シマノらしいホイール」が何たるかを紹介していく。

シマノのホイールは、ズバリ「優等生」

今回紹介するのは国産自転車パーツの雄、シマノ。デュラエースを筆頭に、コンポーネントでは世界シェア一位を誇るメーカーである。1999年より完組ホイールにも積極的に取り組んでおり、その性能はプロレースシーンでも高い評価を得ている

コンポーネントの区分け同様、105/アルテグラ/デュラエースといったカテゴリーがあり、使用するライダーの経験と脚によって選ぶことができる。品質はどれもベスト。ベストすぎて二の句が継げないほどのポテンシャルを持ち抱いている。

価格は他のホイールメーカーよりやや安め。デザイン的にはあまり特徴がなく、質実剛健だと評される。カンパニョーロやフルクラムと比べて見た目は地味であるが、見た目の特別さがないのは逆にシマノらしさと言っていい。突出したデザイン性はなくとも、シマノほどバランスのとれたホイールもなかなかないのだ。

シマノホイールのテクノロジー

ラインナップ紹介の前に、シマノのホイールに詰め込まれたテクノロジーを整理しておこう。

カーボンテクノロジー

  • カーボンリムテクノロジー
    材質、積層方法、硬化、および成形プロセスを最適化することで、優れたバランスを果たしている。強くかつ軽量で耐久性に優れ、スムーズなブレーキングが可能。
  • カーボンラミネート構造
    複数の層に重ねられた軽量で単一指向性を持つカーボンファイバーを超軽量のアルミニウムリム上に配置し、重量、剛性、そして乗り心地の最適なバランスを実現。両材質の強さと緩衝特性を合わせ持つ優れたリムを作り上げている。
  • Tナットリム
    ロースポークホイールでは、スポークのテンションが非常に高くなるため、従来のリム構造を変更する必要があった。そこでエンジニアたちは、応力の高いポイントを補強することに特化したTナットテクノロジーを開発。ねじ付きのリムとニップルの接触面も、スポークの軽量化を図りながら剛性の向上に貢献する。最適なスポークテンションが効率的に維持されるため、重量を最小限に抑えながら強度と剛性を高めている。
  • リムデザインストラテジー
    シマノの革新的なリムデザインストラテジーは、基本となる非常に軽いリム構造が出発点。これに、耐久性基準に達するために必要な最小限の要素を加えている。そうすることで並外れた軽さ、強靭さ、そして耐久性を実現。速さや非常にスムーズな走行感にとってのカギとなる上質さを得ている。

D2リム

D2リム
(出典:D2|株式会社シマノ

この機能を設計するにあたり、エンジニアは向かい風と横風を考慮し、実際のライディング条件下で最適な性能を得ようと考えた。試作品を用いて風洞や路上でのテストを重ねた結果、深いタイヤベッドを持つワイドリム形状が様々な条件の中で最も良く機能することに着目。

そこで開発された「D2リム」はヨー角(向かい風と横風が合わさった相対的な風の角度)が0〜15度のときに、従来のエアロダイナミクス性を持つリムよりも空気抵抗を軽減することに成功した。この新しいリムデザインはホイールの横剛性を高め、縦方向のコンプライアンスを改善し、路上での優れた制御性、快適さ、そして耐久性を実現している。

オプトバルスポークシステム

オプトバルスポークシステム
(出典:OptBal|株式会社シマノ

オプトバルスポークシステムとは、駆動系の14本と非駆動系7本で構成される21本のスポーク組みのこと。

近年のリアスピードの多段化により、従来の1:1スポーク組みではテンションのアンバランスがどうしても生じてしまう。こうしたアンバランスは、新しい11スピードカセットを使用するときにさらに大きくなり、駆動側のスポークに約2倍のテンションがかかる。

一般的にスポークテンションがアンバランスだと、破損やニップルのゆるみを招く傾向があり、耐久性や強度にも影響する。そこで生み出されたオプトバルデザインは、テンションのバランスを最適化することでホイールの剛性や強度を向上し、高い反応性と耐久性を実現した。

E-THRU アクスル

E-THRU アクスル
(出典:E-THRU|株式会社シマノ

この技術は、サスペンションのひずみを最小限に抑える構造となるようにデザインされている。機能的効果や利点としては、最適化されたローターやカセットの精度、軽量化、そしてシステム全体の剛性向上が挙げられる。重量と剛性が両立したシステムだ。

インターナルグリススリーブ

インターナルグリススリーブ
(出典:Internal Grease Sleeve|株式会社シマノ

ハブにスリーブとOリングを内蔵し、内部のグリスを適切に長く保つテクノロジー。これによって耐久性が高められ、初期性能が長期間維持される。

また、パーツの精度向上やスーパー研磨ボールレースの採用によって高い回転性が実現されている。

デジタルコーンベアリング・アジャストメントシステム

デジタルコーンベアリング・アジャストメントシステム
(出典:Digital Cone Bearing Adjustment System|株式会社シマノ

デジタルベアリング調整システムによりメンテナンスが容易となり、調整や整備が簡略化されている。ダブルロック不要のデジタル調整を基本とすることで、緻密なベアリング調整に必要な工具は5mmの六角レンチだけとなった。

エクストラワイドフランジ

エクストラワイドフランジ
(出典:Extra-Wide Flange|株式会社シマノ

左右2つのハブフランジとリムの間にできる三角形のベース部分を拡大。これにより横方向の強度を最大限に引き上げている。

また、カセット側のスポークの角度を抑えることで横剛性が向上し、駆動側と非駆動側でスポークのテンションを均一化。このフランジを装備したホイールはクラストップレベルのねじれ剛性を発揮し、パワー伝達効率を押し上げている。

カップ&コーンベアリング

カップ&コーンベアリング
(出典:Cup & Cone Bearing|株式会社シマノ

負荷の方向に応力が働きにくい工業型ベアリングとは異なり、 ダイレクトに応力が働くテクノロジー。耐久性の高さ、メンテナンス性の良さもメリットであり、全てのハブに採用される理由となっている。

105/ULTEGRA/DURA-ACEの特徴

最後にホイールを網羅的に紹介していく。まずは各カテゴリー全体のイメージを見ていきたいのだが、その前に注意しておくポイントがある。それは、シマノホイールの中にはデュラエース以外にグレード名が設けられていないものもあるという点だ。105とアルテグラに関しては、それぞれに相当するグレードのホイールもあわせて紹介していく。

  • 105(に相当するグレード)
    比較的廉価で汎用性があるタイプで、高いコストパフォーマンスを持つシリーズ。プロレース向けのテクノロジーが応用され、日常のライディングニーズに応えるタイプとなっている。空気力学を考慮したスリムなプロファイルと強靭な構造が一体となることで、様々な用途に応じた性能を発揮する。
  • ULTEGRA(に相当するグレードを含む)
    シマノ製ホイールの中軸を担うグレード。日常の練習用からレースまで、幅広く使えるオールラウンドなモデルが揃っている。FRAMEおすすめの「WH-RS500」など、初心者からステップアップするためのホイールである。
  • DURA-ACE
    プロが使うハイエンド・シリーズ。スピードを求めて空気力学特性を向上させたモデルから、軽量で優れた動力性能を極めたモデルまで、レースで究極な走りを求めるライダーが使用。価格も高く、廉価なロードバイクが一台買えるような「憧れ系」である。

それではシリーズ別に各ラインナップを挙げていこう。

105 相当グレード

コスパに優れた105シリーズ。低価格ながらディスクブレーキ、チューブレスタイヤに対応した新作は必見。

WH-RS300

エアロダイナミクス性能と剛性を高い次元で両立した新型クリンチャーホイール。シマノのホイールテクノロジーをより身近に感じられるモデルである。リム幅は23.2mm、リムハイトは24mmだ。推奨タイヤ幅は23~32mm。

  • 重量:1827g(前後ペア)
  • 参考価格:13,011円(フロント・税込)、14,000円(リア・税込)

WH-RS370

45mm幅タイヤまで対応のチューブレス&クリンチャー新型モデル。様々なコンディションにおいて安定したライディングを実現するディスクブレーキ専用ホイールである。リム幅は24.6mm、リムハイトは19mm。推奨タイヤ幅は28~45mmだ。

  • 重量:1980g(前後ペア)
  • 参考価格:14,603円(フロント・税込)、15,959円(リア・税込)

WH-RS100

17Cのワイドリムにより高い快適性と信頼性を実現。コストパフォーマンスに優れる11速対応のクリンチャーモデルだ。リム幅は23.2mm、リムハイトは24mm。推奨タイヤ幅は23~32mm。

  • 重量:1897g(前後ペア)
  • 参考価格:7,016円(フロント・税込)、7,255円(リア・税込)

WH-RS171

前後12mm E-THRUアクスルを採用し、140mmディスクブレーキローターに対応したエントリーモデルのホイール。昨今のトレンドであるワイドリムを取り入れており、28Cなどの幅広なタイヤとの組み合わせに最適。リム幅は24.6mm、リムハイトは19mm。推奨タイヤ幅は28~42mm。

  • 重量:1,995g(前後ペア)
  • 参考価格:9,927円(フロント・税込)、11,640円(リア・税込)

ULTEGRA 相当グレード

幅広いユースに対応する使い勝手が魅力=初心者脱却に最適なシリーズ。今回おすすめするWH-RS500もラインナップされている。

WH-RS500

これまで人気を集めていた「WH-6800」の後継アルミニウムモデル。日々の走り、またはレースに高いパフォーマンス性を発揮する、チューブレスとクリンチャータイヤ対応の優れたオールラウンドホイールだ。空気力学を考慮したスリムなプロファイルと強靭な構造が一体になることで、様々な用途に応じたハイクラスな性能を持つ。リム幅は20.8mm、リムハイトは24mm。推奨タイヤ幅は23~28mmである。

  • 重量:1,649g(前後ペア)
  • 参考価格:53,810円(税込)

初心者にWH-RS500が最適な理由とは?

カンパニョーロ、フルクラム、マヴィックといったホイールメーカーにおいて繰り広げられているミドルグレードの激戦区に参入した一品だが、ペアで約5万円という価格は最大の魅力。ライバルとなるカンパニョーロ・ゾンダやフルクラム・レーシング3と比べても、価格はこちらのほうが優勢でありながら、シマノならではの高いメンテナンス性や高精度のハブなど性能も見劣りしない

初心者が最初に交換するホイールとして自信を持っておすすめする機材だ。

WH-RS700-C30-CL

上級モデルのテクノロジーを継承した、カーボン&アルミコンポジットのクリンチャーエアロモデル。チューブレスタイヤにも対応し、高速走行で真価を発揮する。

  • 重量:1540g(前後ペア)
  • 参考価格:88,800円(税込)

WH-RS770

ディスクブレーキ用モデル。OptBalスポークシステムを採用し、剛性と強度が向上している。こちらもチューブレスに対応。

  • 重量:1,637g(前後ペア)
  • 参考価格:85,500円(税込)

ULTEGRA シリーズ

2021年のULTEGRAモデルチェンジに合わせ、ホイールもラインナップを刷新。上位モデルにも肉薄する性能と、比較的手が届きやすい価格が両立した。高性能なホイールを安く手に入れたい、という方におすすめ。そんなULTEGRAホイールには、リムハイトが異なる3つのモデルがラインナップされている。

WH-8170-C60

  • 重量:1,649g(前後ペア)
  • 参考価格:157,300円(前後ペア・税込)
シマノ(SHIMANO)

WH-8170-C50

  • 重量:1,570g(前後ペア)
  • 参考価格:157,300円(前後ペア・税込
シマノ(SHIMANO)

WH-8170-C36

  • 重量:1,488g(前後ペア)
  • 参考価格:157,300円(前後ペア・税込)
シマノ(SHIMANO)

DURA-ACE シリーズ

プロユースの「憧れ系」シリーズ。総合的なバランスがとれた一級品ホイールを求めるならこのシリーズから。

R9200系へのモデルチェンジ

2021年、新型デュラエース(R9200系)がリリースされた。ホイールもラインナップを一新、更なる進化を遂げた。旧モデルとの違いは主に以下の3点。

リムハイトの変更

リムハイトのラインナップが変更され、60mm、50mm、36mm(リア)の3種類となった。これまではローハイトのモデルとしてリア24mmのものが発売されていたが、刷新によって全体的に底上げされた格好。

中には重量が増えることを懸念し、少し残念に思われる方もいるかもしれない。しかしながら、以下で述べるようにそれ以上の軽量化が図られていることに注目したい。

12速への対応

R9200系へのモデルチェンジで、DURA-ACEはついに12速化を果たした。もちろん新モデルも12速に対応。一方で、11速をはじめとした従来のカセットを使用することはできない。今持っているコンポにこのホイールを合わせたかった、という方も多いだろうが、R9200系へアップグレードした暁にはぜひこのホイールを体感していただきたい。

軽量化

これまでも十分軽かったDURA-ACEホイールが、モデルチェンジによってさらに軽量に。中でもディスクブレーキ・チューブラー・リムハイト36mmのモデルは前後ペアで1,254gと、脅威の1,300g切り。軽量化を目指すライダーにとっても満足のスペックだ。

新型DURA-ACEを篠さんが体験した記事はコチラ!

選ぶ際の注意点

DURA-ACEのホイールはディスクブレーキ対応のモデルであるWH-R9170、リムブレーキ対応のモデルであるWH-R9100に分類される。その中でもWH-R9170にはチューブレス・チューブラーの2スペックがラインナップされている。

ディスクブレーキの場合にはチューブラーとチューブレスを選べるが、リムブレーキはチューブラー一択となる点に留意しておきたい。

また、12速専用ホイールであることも注意すべきポイントだ。11速以下では使用できないため、コンポーネントもDURA-ACEへアップグレードする必要がある。

ディスクブレーキ・チューブレス

WH-R9270-C60-TL

  • 重量:1,609g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

WH-R9270-C50-TL

  • 重量:1,461g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

WH-R9270-C36-TL

  • 重量:1,350g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

ディスクブレーキ・チューブラー

WH-R9270-C60-TU

  • 重量:1,437g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

WH-R9270-C50-TU

  • 重量:1,333g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

WH-R9270-C36-TU

  • 重量:1,254g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

リムブレーキ・チューブラー

WH-R9200-C60

  • 重量:1,449g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

WH-R9200-C50

  • 重量:1,309g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

WH-R9200-C36

  • 重量:1,286g(前後ペア)
  • 参考価格:233,530円(前後ペア・税込)

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監修:サイクルアシスト オオバ 大場忠徳

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WRITTEN BY増渕俊之

出版社勤務を経て、フリーランスの編集/ライター。編著に『これがデザイナーの道』『自転車ファンのためのiPhoneアプリガイド』『岡崎京子の仕事集』がある。現在、編集を手がけた岡崎京子の単行本『レアリティーズ』が発売中。

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