クラシックバイクが集結。アラヤ、ラレー2017新製品展示会レポート
東京・品川でアラヤ、ラレーを取り扱っている新家工業株式会社の新製品展示会にいってきました。
新家工業株式会社とは、大阪に本社を置く、日本で初めて自転車用のリムを製造したメーカーとして知られています。さらに自社ブランドであるアラヤは現在のようなロードバイク、MTB、クロスバイクがはっきりとしたジャンルになる以前からスポーツバイクの製造を行っている老舗ブランドです。
1964年の東京オリンピックに先立ち、競技機材として開発したロードバイクを発売したり、7,80年代のサイクリングブームには、今では製造するメーカーも稀になったランドナーやスポルティーフを爆発的にヒットさせました。
そして、アメリカでMTBが誕生するとすぐさま日本に取り入れたのもアラヤでした。現在は欧米ブランドの台頭やユーザーの選択肢が広がったことで、以前のような勢いは落ち着きましたが、代わりに「日本人と日本での用途に合った自転車」というフレーズのもとアラヤでしかできない自転車作りに励んでいます。
それでは、アラヤがどんなものづくりをしているのか見ていきましょう。
ARAYA(アラヤ)
EXELLA Sportif(エクセラ スポルティーフ)
参考価格:税別216,000円
サイズ:510,550mm
アラヤの顔というべきモデルがエクセラ スポルティーフです。スポルティーフというのはフランス語でスポーツバイクの意。しかし現在のようなスポーツ車ではなく、前後泥除け、フロントキャリアを装備していることが前提の700Cホイールバイクを指す呼称です。
フレームの素材はもちろんクロモリ。フレームのダウンチューブに当時と同じ様式のシフトレバーを配置し、ビンテージバイクの雰囲気を引き立たせています。
7,80年代のサイクルブームを経験した世代が、懐かしさで再購入をしたり、若い世代がいつかはスポルティーフをという思いを抱いていたりと、エクセラ スポルティーフには特別な思い入れがある人が多いように感じます。
SWALLOW Randonneur(スワロー ランドナー)
参考価格:税別198,000円
サイズ:510,550mm
アラヤのもう一つ看板バイク、スワロー ランドナーです。ランドナーもフランスで発祥したスタイルで、2,3泊分の荷物が積めるようなバッグを搭載できる前後キャリア、前後泥除けを装備し、ホイールは26インチが基本的なスタイルです。フランスから持ち込まれたランドナーは、先述のサイクリングブームによって日本では独自に進化していったジャンルでもあります。
こちらもクロモリフレームでダウンチューブにシフトレバー配置、当時と比べ進化している点として、後ろのギアが10段変速となっていることでしょう。
こちらは色違いのスワロー ランドナー。ヘッドバッジには1903年と刻印され、アラヤのリムとロゴマークがすべての歴史を物語っているようです。
初登場は1967年までさかのぼり、当時の大学初任給の3倍もの価格で販売されたそうです。
SWALLOW Promenade(スワロープロムナード)
参考価格:税別79,000円
サイズ:450mm
こちらは今年から登場し、スワローシリーズの中でも女性向けに考えられたモデルです。なぜならフレームサイズが小さい事に加え、跨ぎやすいようにフレームがかなり斜めに走っています。このようなスタイルをミキストと言います。
モデル名にあるプロムナードとは、乗り手の方向に戻ってくる形をしたハンドルの事を指し、肩肘張らずゆったりとしたポジションを取れるハンドルです。画像のようにオプションでバスケットを装着してもハンドルが取られにくく、車体に安定感をもたらします。近所の買い物用に最適な自転車です。
TJS(ツバメ・ジテンシャ・スポーツ)
参考価格:税別65000円
サイズ:440,470,510,550mm
個性が強いアラヤのラインナップの中では非常に落ち着いた雰囲気の街乗り自転車です。シンプルな構成ですが、パンツの裾が汚れないようにチェーンガードやセンタースタンドなど実用的な装備もされママチャリのような軽快車とスポーツ車の中間モデルといった印象です。
Muddyfox CX Gravel(マディフォックスCXグラベル)
参考価格:税別100,000円
サイズ:460,500,540mm
マディフォックスというアラヤMTBの流れを汲み、シクロクロスやグラベルロードにもマルチに使えるバイクがマディフォックスCXグラベルです。シクロクロスは競技になりますが、グラベルとは林道のような未舗装道路や、河川敷、ヨーロッパの石畳などを長時間快適に走るために考えられた乗り方で、日本よりもそのような環境が多いアメリカで人気が急上昇しているジャンルです。
そのグラベルロードが手軽に始められる価格帯でもあり、セカンドバイクとしても楽しめるのではないかと思います。
RALEIGH(ラレー)
ラレーの発祥は19世紀のイギリス。内装変速機やハブダイナモなど現在も現役で活躍している製品を開発したメーカーです。レースにも積極的に参戦し、ツールドフランスをはじめ数々の勝利により栄光を極め、20世紀半ばに世界最大の自転車メーカーに発展しました。
現在も世界的にスポーツバイクの製造、販売を行っていますが、日本では新家工業がラレージャパンとして国内で販売するラレーのバイク全ての企画、製品化をしています。日本においてラレーはクラシカルなバイクという認識が先行していますが、実は海外のラレー製品を見るとほとんどが最先端のロードバイクや、MTBが主力であり、クラシックなスタイルのものはほとんど見かけません。
日本でクラシカルなラインナップが多い理由として、昔から、ラレーとアラヤブランドを持つ新家工業は業務的に強いきずなで結ばれており、日本版ラレーの企画、開発においても「日本人と日本での用途に合った自転車づくり」を重要視してきたからだと考えられます。
それでは、ラレーのラインナップを見ていきましょう。
CRTI(カールトンチームTI)
参考価格:税別290,000円
サイズ:495,533,570,610mm
1974年に発売されたモデルの復刻版、で2017年のフラッグシップモデルです。ヨーロッパのレースシーンで活躍した赤・黒・黄のカラーデザインを見ると、当時の記憶がよみがえる人もいるかもしれません。
フレームはもちろんクロモリ。イギリスの鋼管メーカー、レイノルズ社のパイプを使用しています。コンポーネントは今年デビューしたカンパニョーロのポテンザシリーズを採用。40年以上前にデザインされたフレームに最新パーツを組み込むことで、当時のイメージを残しながら高い機能性を持つバランスの良いバイクに仕上がっています。
CRN(カールトンN)
参考価格:税別120,000円
サイズ:420,490,520,570mm
クロモリフレームにメッキ加工されたフロントフォークがまぶしいCRN。ラレーのクロモリロードバイクで価格的、性能的にも人気のモデルです。コンポーネントはエントリー向けのシマノTIAGRAを採用し、メンテナンス性も高く、ロングライドなどの本格的な使い方も可能です。
CRA(カールトンA)
参考価格:税別98,000円
サイズ:450,500,550
CRAはシマノSORA仕様で、ロードバイクとしての使い方の他に、フロントギアにはチェーンの脱落と裾の汚れを防止するチェーンガイドを採用するなど、街乗りも視野に入れた構造となっています。
クロスバイクはクロモリの他にアルミフレームのラインナップもあります。
CRS(カールトンステンレス)
フレーム参考価格:税別232,000円
サイズ:480,520,560mm
クロモリフレームの敵と言えば錆。しかしそれをステンレスが解決に導く。それだけでステンレスを選択する理由になると思いますが、CRSのステンレスフレームはクロモリよりもさらに1.5倍の強度があります。憧れのステンレスというのも現実的になりやすい価格ではないでしょうか。
その他
完組ホイール全盛の今は、ユーザーのこだわりや特殊なケースがない限り、リム、ハブ、スポークで組むことは減ってきています。しかし、アラヤのリムはアラヤやラレーの完成車に採用されることで、安定的な人気を誇っています。
特にランドナーやスポルティーフはシルバー色のリムが絶対条件です。経年劣化や破損等で交換したいときにアラヤ製品がしっかりラインナップされていれば、非常に心強いですよね。
以上がアラヤとラレーが目指しているところの「日本人と日本での用途に合った自転車づくり」の答えではないでしょうか。両ブランドともクラシックさを前面に出しつつも、アラヤはエクセラやスワローでよりディープで個性的なラインナップを構え、ラレーはCRN,CRAのようにそれ1台でロングライド、通勤、街乗りも色々こなせるユーティリティ性を感じました。
最先端のカーボンフレーム多さに辟易したときに、このようなラインナップを見せられるとクロモリ、強いてはクラシックフレームの魅力にはまってしまうかもしれませんね。
公式サイトにてアラヤ、ラレーの全ラインナップが見られるのは10月中旬以降となっていますので、それまでしばらくの間お待ちください。
さて、同じ会場では、アラヤ、ラレーの他、数社が合同で展示会を開催していました。その中から一部ご紹介します。
rinproject(リンプロジェクト)
東京・浅草に本社兼直営店を構えるカジュアルサイクリングアパレルブランド、リンプロジェクトのブースです。
アラヤスワローやツーリングバイクに相性がよさそうなキャンバス生地のパニアバッグ(参考価格:税別19,000円)など直接自転車に取り付けるバッグや、
つい20数年前までレースにも着用されていた、ヘルメットの前身であるカスクの販売が有名です。(参考価格:税別9,500円から)
POC
スウェーデンの新鋭ブランドPOCです。重大な事故からアスリートを守るためにテストや研究開発を重ね、ヘルメット、ゴーグル、アイウェア、プロテクションなど、妥協なしの優れた製品をリリースしています。最近ではサイクルウェアの開発にも力を入れており、海外のサイクリングチームにも着用され、商品にフィードバックされています。
カラフルなラインナップが、安全性を高める一つの方法と考え、ヘルメットなど非常に明るいカラーが豊富です。
スウェーデンの新鋭ブランドPOCです。重大な事故からアスリートを守るためにテストや研究開発を重ね、ヘルメット、ゴーグル、アイウェア、プロテクションなど、妥協なしの優れた製品をリリースしています。最近ではサイクルウェアの開発にも力を入れており、海外のサイクリングチームにも着用され、商品にフィードバックされています。
カラフルなラインナップが、安全性を高める一つの方法と考え、ヘルメットなど非常に明るいカラーが豊富です。アイウェアもラインナップとカラーバリエーションが豊富。左右ワンピースのレンズはウィンタースポーツも得意とするいかにもPOCらしいデザインです。
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WRITTEN BYVIKING the MAINTENANCE
都内のプロショップに10年間在籍後、2015年VIKING the MAINTENANCE を設立。東京・西新宿を拠点にスポーク自転車の組付け、カスタマイズ、メンテナンスを軸に展開中。年2回富士山麓でサイクルイベントも企画中。 http://www.viking-the-maintenance.com/