日本初取材:バンドマンから自転車ブランドの社長に!?中国の自転車ブランドFactory Fiveとは?
バンドマンが引っ越しを転機に自転車ブランドの社長業を始めることになったという話を信じられますか?そんな体験をした人が、今回取材させてもらった中国の自転車ブランドFactory Five社長のタイラーさんです。カナダ人である彼がなぜ中国で自転車メーカーを立ち上げたのか。世界の自転車事情を知る彼が東京を走ってみて感じることとはどんなことなのでしょうか。直接本人に聞いてみました。
タイラーさんは彼が自主企画するThe Japanese Odysseyという東京から大阪まで14日間で2400kmもの距離を走りきるロングライドレースのため、日本にやってきました。
取材の前に、まず彼らのバイクチェックをしていきましょう。
タイラー:Factory Fave CEO
Columbus Zonaで作られたFactory Fiveのクロモリロードフレーム。フォークはEastonのE90カーボンフォークを取り付けていた。ペダルはMTB用のクリートのものを使用。
ジプシーさん:バイクブランド Faraci オーナー
TTハンドルバーを取り付けいかにもロングライド対応なディスクブレーキモデルのロードバイク。彼自身で設計したと話す、チタン製のフレームは700cのホイール+ロード用タイヤを取り付けることで舗装された道を走るロードバイクに、650cのホイール+オフロードタイヤを取り付けることでオフロード対応になる優れもの。
フォークは自身のブランドであるFaraciと書かれたカーボンフォーク。
自己紹介〜会社について
– 自己紹介をお願いします。
Tyler Bowa(タイラー・ボワ)です。私はカナダ人で今は中国(上海)に住んでいて、Factory Fiveという会社を経営しています。ちなみに過去カナダ、アメリカ、フランス、中国に住んだことがあります。
また私は2010年のはじめ頃に中国、上海でFactory Fiveという自転車のブランドを立ち上げました。
– なぜFactory Fiveを立ち上げようと思ったのですか?
私がカナダに住んでいた時はラッシュ時がひどくて困っていました。それで自転車に乗るようになりました。その後中国に引っ越して私たちは自転車のイベントを企画するようになりました。その後小さなスペースを借りて、会社としてスタートしました。
カナダは土地が広大で、何かを始めるという時に場所を確保することは難しくなかったのですが、ここ東京や上海ではいろいろなモノが密集していてなかなかそれが叶わなくて・・・なかなか苦労をしました。
– 中国に移り住んだ時、中国のサイクリストや自転車ショップに何を感じました?
中国に住んで感じたのは、それぞれの自転車ショップが独立しているということです。どういうことかというと、ブランドごとにそのブランドを取り扱う専門店しかない状況で、日本みたいに1つのお店の中で複数の自転車メーカーのパーツから選択して選べるという環境は向こうには存在しませんでした。
ここ日本やオーストラリアにいる時に感じるのは小さい自転車屋さんがとても多いということです。中国は大きいブランドの直営店だけだからその事実をとても感じます。ここにいるとお客さんがいろんな選択肢があるのが凄いなと感じてしまいます。
日本のお店だったら、この自転車をベースに、このパーツとこのパーツを付けて・・・なんて選べるでしょ。これは普通の中国の自転車ショップで行えることとは全く違うことだと感じます。そしてそれが羨ましかったです。
そしてそうした現状に気付いたとき、この中国の現状をさらに良い方向へと改善しなくてはならないなと確信したのです。
– 今中国に実店舗はあるのですか?
とても広い店舗が上海に一店舗あります。店内にはバーを作っていて、パーティーをしたりワークショップをしたりすることができるのですよ。
日本のドライバーは自転車に優しい
– 話を少し変えます。日本に来たのは何回目ですか?
おそらく5回目くらいです。
– 過去日本のさまざまな道路を走ったことがあると思いますが、中国の道路・交通環境と比べてどう感じますか?
日本の道はとにかく綺麗です。汚れてないし、凹みもない。だから本当に快適に走れる道だと思います。
それに走っていて思うのは、日本はドライバーも自転車のことを考えて走行していると感じます。また、中国の道は汚れており汚いのです。それに中国の多くのドライバーは自転車レーン外を走る自転車のことを考えて運転していませんね。中国の街を自転車で走るとストレスが溜まることは事実と言えるでしょう。
– 東京と上海、どちらの街の方が多くのサイクリストを見ますか?
中国は多いと思います。しかし、その人達の多くで移動手段が自転車しかないという人が多い印象がありますね。また、皆それぞれ乗っている自転車の種類が違うようにも感じますね。
その点、日本は地下鉄とかタクシーとか、電車とかバスとかさまざまな移動手段がありますよね。とても違う環境だと感じますよ。
– 日本ではブレーキが厳格に法律で定めされていて、たとえば昔リアブレーキのない自転車がブームになって社会問題になったことがありました。中国の交通法規はどのようになっていますか?
中国ではそういうものはないですね。もはやハンドルを持っていなかったりしても大体OKだと感じます。Everything is FINEだね(笑)
The Japanese Odysseyについて
– ようやくとなってしまいましたが、今回あなたが来日した目的であるThe Japanese Odyssey(ザ ジャパニーズ オデッセイ)についてお聞きします。日本で開催するのはこれが何度目ですか?
2回目です。昨年1回目を日本で開催したのですが、とても規模が小さかったですね。おそらく4-5人くらいしか参加しなかったと記憶しています。
– Facebookページを見ましたが今年は21人ものライダーが参加するようですね
実はさらに1人増えて22人になりました。こうやってライダーが増えていくことはとても良いことだと思います。
来年はそうだな・・・100人くらいの参加者が集まると良いですね。
日本のライダーが参加していないイベントになっているので、来年以降は是非日本のライダーが参加してほしいと願っていますよ。参加者の多くが海外から来るライダーだから、日本人の助けが本当に欲しいと思っています。
それは参加者もそうだしウェブメディアのような媒体の助けも欲しいところですね。
– その役割はFRAMEでやりましょうか・・・?
もちろん、ぜひやってほしい!日本人ライダーでいろいろなロングライドにチャレンジしている人は絶対にいるはずだから、そういう人たちに知ってもらえると嬉しいですね。
– 海外からの招聘選手が参加するようなレース以外で日本人ライダーが他の国の人と一緒に走ることってあまりないように思います。だからこういうチャンスに積極的に参加する日本人ライダーにとっては異文化理解にも繋がるし素敵な体験ができるのではないかと思いますね。
もし日本のライダーが英語が喋れないとしても、それって大きなことではないよね。一緒に走れば通じ合えるって思うから。・・・というか君(筆者)も来年参加したらどうだい?ピストバイクでさ(笑)
– それは無謀です・・・。でもトレーニングしておいても良さそうですね。
– 話をThe Japanese Odysseyに戻します。なぜこんなに長いロングライドの形式(東京〜大阪間をあえて2400kmもの険しいコースで走り切るレース)を取っているのですか?
3-4年前にUSAやヨーロッパでこういうような、もっと短い距離のライドを企画しました。オーガナイザーといってもその国の全てを知っている訳ではないからその国にいくまで謎な部分が多いのも事実でそこが面白いと感じています。
大規模なレースのような数百人で2本の道路を通り過ぎる光景は私にはとても退屈に感じてしまいます。どこで泊まるか、どんな話をするか、何を食べるかそういうこともThe Japanese Odysseyでは大事だと思っています。これはただのレースという訳ではないと思っています。
– The Japanese Odysseyのような長距離のレースを海外でやったことはありますか?
ここ日本で行うのが初めてです。それなので、日本のライダーが参加してくれるようになると嬉しいですね。
– 少し話を変えてしまいますが、聞きたい話があります。Factory FiveのInstagramのフォロワーは18-19万人というケタ違いの人数がいるかと思います。どうやってこんなに多くの人数のフォロワーを集めたのでしょうか?
自社の皆が格好良い画像をあげてくれるからだと思います。でも正直なぜと聞かれてもよくわからないというのが答えですね。今日話した通り中国では日本みたいなローカルな自転車ショップがあまりないので、そういった意味で皆さん興味を持ってくれているのかもしれませんね。
– 長くなりました。Factory Fiveの会社としての将来目標を教えて下さい。
いろいろな小さいモノ、自転車パーツだったり、アパレルだったりを作っていきたいですね。
– 中国国外に店舗として出店する計画はあるのですか?
海外に出て行くには、Factory Fiveが今より更に有名にならなくてはならないですから今のところ計画はないですね。もう一つ理由としてインターネットを通して世界中の人に私達の商品を見て・買ってもらうこと自体はとても簡単なので海外出店は計画していないですね。
急な予定だったのにも関わらず、取材に応じてくれたタイラーさん。カナダ人である彼が中国のどんな部分に問題意識を持ち、なぜ中国でビジネスをはじめたのかわかっていただけたのではないかと思います。
LINK : Factory Five
LINK : The Japanese Odyssey