延々続く斜度10%オーバー。心の強さも試される「足柄峠」に行ってみよう
足柄峠は、神奈川と静岡の県境にある峠道です。箱根の北、御殿場の南東にある、と言えば、位置はイメージしやすいでしょうか。
地元のヒルクライマーたちのトレーニングスポットである一方で、「二度と行きたくない」と語るサイクリストも。
今回は、実際どんな峠なのか、レポートしましょう。
足柄峠のスタート~金太郎の里まで
県道78号線「足柄街道」を突き進めば、足柄峠にたどり着きます。最寄り駅は小田急小田原線・新松田駅や大雄山線・大雄山駅。都内から輪行するなら、新松田駅から自走するのがおすすめです。
足柄街道に入ると、すぐにゆるい上り坂がお出迎え。Stravaのセグメントによると、平均斜度は3.2%、ヒルクライマーたちのタイム計測もこの辺りからスタートするようです。
序盤は、この写真のようなストレートが続きます。中央奥に見える特徴的な形の山は、矢倉岳(やぐらだけ)。
ところどころ斜度がアップし、最大で8%ほどになります。
標識に足柄峠の文字が登場。背後の不穏な急斜面に気づいた方は鋭い。
手前がフラットなのもあってインパクト十分なこの激坂は、足柄峠の代名詞として有名。走行時にガーミンで確認できた斜度は12%ほど(正直、もっとある気がしますが…)。
ちなみに、ここから先を足柄峠とする見方もあり、タイム計測スタートもここから、というクライマーもいるようです。
坂の途中にこんな看板が。ここから静岡県境を越えて7kmほど上ったところがゴールです。
ちなみに、書いている人は初めて上ったときは、この看板に気づけませんでした。
なぜって…アスファルトを見ていたから…。見ていたというか、見えてしまうというか。坂が壁のように行く手を遮っています。さすがは怪力で知られる金太郎のホームグラウンド。脚力も鍛えられそうです。嫌になるくらい。
激坂を抜けるとワインディングロードに突入。斜度は少しマシになって7~9%くらいでしょうか。とはいえ、斜度10%前後あるコーナーが何度も登場するので、まるで楽になった気がしません。
地蔵堂トンネルが見えたらもう一息。
「金太郎のふるさと」という看板が…!
でも、やったぜ、ゴール!とはいかないんですよね。足柄峠の山頂は静岡県境のさらに先。まだ4kmほど上らねばなりません。
足柄峠の「耐えられない長さ」
「長い記事だなぁ」と思った方もいるでしょうか。でも、もう少しだけお付き合いください。長くなるのも致し方ないのです。足柄峠はとにかく長いんですから。
といっても、単に距離が長いわけではありません。ゴールまでとにかく時間がかかるのです。どういうことかは、この先を見ていただければすぐにわかるはず。
金太郎のふるさとの先に見えてくるのがこの景色。ズドーンと続くストレート。ここ、ずっと斜度10%です。
上りきると、今度はこの景色。向こう側で道が斜め上に続いているさまには、思わず「つらい…」と呟いてしまうだけの破壊力があります。
激しいワインディングロードがスタート。道もやや荒れ気味、斜度は当然のように10%オーバー。
空も近くなってなかなか爽快に見えますが、のんびりと眺めている余裕がある人は多くないでしょう。カーブ部分はどれも斜度15%はあるでしょうか。
それが…
手を変え、
品を変え、襲いかかってきます。
この辺りの平均斜度は11%。足柄峠は全長11kmほどと抜群に長いわけではありませんが、激烈な斜度でスピードなど出ようはずもありません。遅々として進まないのでそれ以上に長く感じます。これがもうただひたすら辛い。
頭の上に道がある絶望感を和田峠などで体験された方もいるかと思いますが、足柄峠でも体験できます。延々と急斜面を上らされて、それがまだ続くという事実を突きつけられたとき、サイクリストは足をつくことになります。
コーナーのイン側を走るのはやめておきましょう。アウト側と斜度がちがいすぎます。
また頭の上に道が…。
斜度10%超えの激坂であることを示す標識が点在。足柄峠に屈するか、歯を食いしばってこの苦行を続けるかの二択を定期的に迫ってくる心折設計。
足柄峠で試されるのは単なる脚力ではなく、メンタルの強さを含めた、サイクリストとしての総合的な実力。
そんな足柄峠もいよいよ終わりです。
突然、右手に富士山が。この景色は地味な山道を上り続けた心と身体にはいいカンフル剤。
静岡県に突入。
真のラスト区間はこちら。
最後の最後までブレることなく急斜面です。
それを上りきれば、「足柄城址」と記された石碑があり、ゴール。
御殿場側の景色が特にすばらしい
苦行めいた上りが延々続く足柄峠ですが、展望台からの景色は圧巻。御殿場市街の奥に鎮座する富士山の雄大さを見ることができれば、「来てよかった…」と思うはず。
この日は空気が澄んでいて、富士山山頂の雪景色までよく見えました。足柄峠は、富士山にもっとも迫れるヒルクライムコースのひとつという一面も持っています。
また、相模湾を一望することもできます。
静岡県境付近にある足柄明神に足を運べば、江ノ島まで見通すことができます。奥に薄く見える海岸線は、逗子海岸ですね。
山頂付近には金太郎像など、足柄峠の歴史や伝説にまつわるモニュメントなども。
途中で休憩してもOK
カロリー補給をするなら、本番区間が始まる直前にある「金太郎のふるさと」がおすすめです。その先の険しさを考えれば、「足柄古道万葉うどん」や「ふれあい処茶屋ふじや」、和風喫茶店「うるし亭」などで脚を休めていくのは、悪い判断ではありません。
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まとめ
全長約11km、ラスト約4kmはほぼ常時10%オーバーという情け容赦ない足柄峠のコースプロファイルは、神奈川県内のみならず関東全体で見てもハードな部類。魔境のひとつと言ってもいいのではないかと思います。その一方で、山頂からの景色は必見レベルのすばらしさ。都内からだと遠いのが玉に瑕ですが、気になった方はチャレンジライドに訪れてみてください。