南半球最大の自転車レース「ツアー・ダウンアンダー」って、どんなレース?
目次
いまさら人に聞けないツアー・ダウンアンダーの基礎知識
画像出典:Santos Tour Down Under Facebook
1月16日よりオーストラリアの南オーストラリア州アデレード周辺で、6日間のステージレース(2日間以上に渡って行われるレース)「ツアー・ダウンアンダー」が開幕する。ロードレース世界チャンピオンのペーテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ/スロバキア)のようなスター選手が参加するなど、ロードレースシーズンの始まりを告げるレースとして、年々華やかになってきている南半球最大の自転車レースだ。
ところで、みなさんはこのレースについて、どのくらいご存じだろうか? 今さら人に聞けないツアー・ダウンアンダーの基礎知識をご紹介しよう。
ツアー・ダウンアンダーの歴史
ロードレースが盛んでなかった国が一人の選手の出現で変化
ツアー・ダウンアンダーの第1回大会は1999年。2018年でやっと20回大会を迎えることとなった若いレースである。19世紀末から盛んになった自転車レースの本場はヨーロッパであり、そもそもオーストラリアに伝統的な自転車レースは存在しなかった。
しかし、1980年にオーストラリアのフィル・アンダーソンがフランスのプジョーチームからプロデビューすると状況は変わり始める。フィルがヨーロッパで活躍を始めると、それまで自転車ロードレースが盛んではなかったオーストラリアでも、にわかに自転車ロードレースのブームが起こるようになる。
ちなみにトラックレースはオーストラリアでも昔から盛んで、強豪選手も数多くいた。世界選10連覇の中野浩一と覇を競ったジョン・ニコルソンは、70年代にシマノの広告にも登場していて、日本でもちょっと名の知られた存在だった。
その後、オーストラリアが国家プロジェクトとして自転車選手を養成するようになると、ステュワート・オグレディー、ロビー・マキュアン、ブラッドリー・マクギーといった優れたロード選手が数多く輩出されるようになる。
▲選手当時のステュワート・オグレディー。サイクルキャップだけで走っているのが時代を感じさせる。
画像出典:Stuart O’Grady Cycling Facebook
現代ではオーストラリアは自転車強豪国のひとつとして数えられるまでになった。
ワイン企業がスポンサー、ツアー・ダウンアンダーを1999年に創設
こうした背景のなか、オーストラリアでも大規模なステージレースを行おうという気運が高まり始める。1999年に世界的なワイン企業のジェイコブス・クリークがスポンサーとなり、6日間のステージレース「ツアー・ダウンアンダー」が行われる運びとなったのである。舞台には、ジェイコブス・クリークがある南オーストラリア州アデレード周辺が選ばれた。
実はジェイコブス・クリークの親会社は、酒類で知られたフランスの大企業「ベルノー・リカール」だ。古いファンならご存じだと思うが、80年代までUCI(国際自転車競技連合)のポイントで競われるレース「スーパー・プレステージ・ペルノー」のスポンサーをしていた会社である。おそらく、オーストラリアでの販売を拡大するという目的もあったのだろう。
「陽気なオージーが楽しむためのレース」が国際レースに発展
第1回大会の優勝者は、前出のステュワート・オグレディー。その後、国別の優勝回数は、オーストラリアが11勝と圧倒的な成績を収めている。
今日はトレーニングの途中で、アデレード出身の偉大な元自転車選手(元チームメイト)のステュアート・オグレディさんのカフェ“The velo precinct”に行ってきた。雰囲気がまるでRoubaixの競技場に似ていてワクワクする作りになっていてとても良かった?☕️ pic.twitter.com/U3J4ticlU3
— Fumiyuki Beppu (@Fumybeppu) 2018年1月10日
▲ツアーダウンアンダー出場のためオーストラリアを訪れている別府史之選手のツイート、オグレディー選手は今はカフェを経営しているらしい
ジロ・デ・イタリアではイタリア人選手が強いように、あるいはロンド・ファン・フラーンデレンではベルギー人選手が圧倒的な成績を収めているように、自転車レースでは地元の選手が国の威信をかけて勝ちにくるということの現れである。まさに、ツアー・ダウンアンダーは、南半球最大の自転車レースであるとともに、オーストラリア人によるオーストラリアのためのレースということができるだろう。
とはいえ、舞台はオーストラリア。そんなドロドロとした雰囲気はなく、ロードレース・ファンにとっては「陽気なオージーが楽しむためのレース」という理解で間違いないだろう。沿道にはさまざまなコスチュームを着たファンが数多く見られ、みんな思い思いにレースを楽しんでいる様子は、ツール・ド・フランスなどと何ら変わりはない。
▲観客もレースを思い切り楽しむのはヨーロッパのレースと同じ。
画像出典:Santos Tour Down Under Facebook
ツアー・ダウンアンダーは2008年UCIレースに
2008年には、ヨーロッパ以外で初めてこのレースがUCIプロツアーに組み込まれ、名実ともに世界の一流レースと肩を並べることになるとともに、ヨーロッパからもたくさんの一流選手が参加するようになった。
2010年には石油・天然ガスなどを扱うエネルギー会社のサントスがスポンサーとなり、さらに大会の規模が拡大。そして、今ではその年の開幕レースという位置づけになるほどの認知度となったのである。
TOP画像出典:Santos Tour Down Under Facebook